白い花
春の朝
電車が郊外の水路に沿つて走るとき
むかふ岸の籬から一本の木がのびて
枝に白い花をいつぱいにつけてゐる
なんといふ花だらう
木蓮に肖て 見たこともない白い花
花の影は水底にも映つてゐて
そこをとほる私の心を一時 晴れやかにする
まるで死別した人に遭つて談笑してゐるやうな
しづかな明るい気持にする
それは決してこの世を厭離せず
たのしく肯定させるのだ
『泪した神』より
春の朝
電車が郊外の水路に沿つて走るとき
むかふ岸の籬から一本の木がのびて
枝に白い花をいつぱいにつけてゐる
なんといふ花だらう
木蓮に肖て 見たこともない白い花
花の影は水底にも映つてゐて
そこをとほる私の心を一時 晴れやかにする
まるで死別した人に遭つて談笑してゐるやうな
しづかな明るい気持にする
それは決してこの世を厭離せず
たのしく肯定させるのだ
『泪した神』より