作 W. シェイクスピア
翻訳 松岡和子
演出 吉田鋼太郎
出演
松坂桃李
吉田鋼太郎、溝端淳平、横田栄司、中河内雅貴、河内大和
間宮啓行、廣田高志、原 慎一郎、出光秀一郎、坪内 守、松本こうせい、長谷川 志
鈴木彰紀※、竪山隼太※、堀 源起※、續木淳平※、髙橋英希※、橋本好弘、大河原啓介、西村 聡、
岩倉弘樹、谷畑 聡、齋藤慎平、杉本政志、山田隼平、松尾竜兵、橋倉靖彦、河村岳司、沢海陽子、悠木つかさ、宮崎夢子
※さいたまネクスト・シアター
演奏:児島 亮介 & 中原 裕章 from Still Caravan
あらすじ
父ヘンリー四世の死とともにハル王子は新王となり、放蕩の限りを尽くした若い時代とはうって変わり才知溢れ尊敬を集めるヘンリー五世に成長した。フランス皇太子からの挑発を受けた新王は、ついにフランスへの遠征を決意する。勇猛果敢な新王のもと、意気揚々と進軍するイングランド軍。敵を迎え撃ち壊滅させようと、うずうずしているフランス軍。巻き込まれていく市民たち。"名誉“の名のもと、戦いは悲惨なものとなっていく。圧倒的な兵力で押し寄せるフランス軍に対し、瀕死の状態のイングランド軍。名君ヘンリー五世はこの窮地に何を考えるのか。どう立ち向かうのか。この大戦争は人々に何をもたらすのか――
待ってました!清泉女子大で米谷先生と松岡和子先生の講義を受け、白水社版とちくま文庫版の戯曲を読み込んで、この日を迎えました。しかも2列目役者さんが走りまくりの通路脇
今まで一生懸命読んでいた割には松岡先生が「都合の悪い情勢から国民の目をそらすために国外に戦をしかけ、そちらに目を向けさせる」という意味が最初の大司教たちの会話にあることに気づいたのは結構最近で、本日与野本町行きの電車で読み返したちくま文庫版からするすると情景が目に浮かぶようになり(遅い!)、お昼ごはんをいただいたカフェの壁に並べられたタイタス・アンドロニカス~アテネのタイモンまでのお写真をながめてはにんまりしていました
舞台は、若いハル王子とフォルスタッフの蜜月と決別からはじまり、この物語が「ヘンリー四世」からつながったものだということをくっきりと見せます。今回は説明役である吉田剛太郎さんも、あの役で。これ、うれしい演出です。
ポスターでも感じましたが、松坂桃李くんの鋭い視線がとても印象的で、ハル王子からヘンリー五世となったことを強く意識させられます。脚本のあの長台詞を心配したことが恥ずかしいくらい堂々たる、でも自分の方向がこれでよいのかと迷い、逡巡する若き王。なんとかっこいい!その瞳に、覚悟のようなものさえ感じました。フランス皇太子、溝端淳平くんもしかり。柔らかな髪の、優しいマーマレード・ボーイのような溝端くんはいません。眼光鋭く、がっちりとした骨太な姿に驚かせられます。庶民ピストル、中河内雅貴さんもしかり。あんなにすごいお芝居をする方だとは。なめてました。私。歌もダンスもみられます!
昔、フォルスタッフたちと遊び倒していた時代をフランス皇太子に馬鹿にされ、フランス領土に対する要求の返答に送られたテニスボールに激怒してフランス侵攻を決めたり、自分を裏切った臣下たちをバッサリ切る王。
ヘンリー五世は常にピリピリとした空気を纏って、まるで刃の上を渡っているようです。戦いの場面もすごい!暗い砦の上で国旗を振る光景には、ちょっとレミゼのバリケード思い出しました戦闘シーンには階段落ちなどもあり、ものすごかったです。説明役の剛太郎さんが「想像の翼を広げて、ここを戦場と思ってください」と言うまでもなく、ものすごく激しい戦いが繰り広げられます。通路もばんばん通ります。たくさんの兵士たちのマントが翻るせいなのか、客席まで風がびゅんびゅんきました。
フルーエリン、河内大和さんは、新国立で横田さんが演じたフルーエリンより怖いそして、ネギが半端ない頭につけたネギも太ければ、持ってるネギの量も半端なく、ネギの匂いがすごかったですなにせ、ここは埼玉、ふっかちゃんの地元
束チラシには、ネギ通販のも入ってました
相当に激しい戦闘を経て大勝利を収めるイングランド軍ですが、フランス領土から盗みを働いたかつての遊び仲間に処刑を言い渡し、その様子を砦の上から悲しげに眺めるヘンリー五世がせつなかったです。あくまでも公明正大、容赦なく正義を貫くということなのでしょう。為政者はつらいかも。
戦闘が終わり、フランスがイングランドの要求を全て受け入れ、フランス王女キャサリンに求婚する場面は、今までと一転、超キュートな王様キャサリンは宮崎夢子さんという文学座の方ですが、とても素敵でした。次女に英語を習う場面も、ふっと息の抜けるかわいらしさでした。
イングランドの、寄せ集めの兵士(スコットランドやアイルランド、ウェールズ)たちが、それぞれにお国言葉で喋りあうのも面白かったです。ただ、戯曲の中では印象的に感じた、「オラの国とは何だべ」という、アイデンティティーを問うような場面は、あまり強調されていないように感じました。また、「王の責任」について語られる大事な場面で、※最前列上手客席にとんでもないアクシデントがおきて、そこに集中することができなかったのが、とても残念でした。できればもう一度みたいなあ。。
※最前列上手にいらしたおばさまが突然奇声を上げたりお隣のお嬢さんの体を掴んだりしはじめ、周りのお客さんたちも対処しましたがどうしようもなく、劇場の方が退去させていました。
観劇歴は結構長いですけど、こんなのは初めてです。迷惑行為はどんなときでもやめてほしいです。