pippiのおもちゃ箱

舞台大好き、落語大好き、映画大好き、小説大好き、猫大好き!なpippiのつれづれ日記です。

国民の映画プレビュー公演初日@パルコ劇場C列センター

2011-03-07 17:03:09 | 観劇/コンサート
作・演出 三谷幸喜
出演 小日向文世 段田安則 白井晃 石田ゆり子
シルビア・グラブ 新妻聖子 今井朋彦 小林隆
平岳大 吉田羊 小林勝也 風間杜夫

舞台は1942年、第二次世界大戦下のドイツ・ベルリン。ありとあらゆる芸術は国家社会主義労働者党、つまりナチスのプロパガンダのために利用され、彼らは厳しい検閲の中で芸術活動を行っていた。すべてはナチスのためと言わんばかりに。
政治に翻弄される映画人、政治にとり憑かれたナチス高官たち。それぞれがそれぞれの立場でぶつかりあう、人間の誇りをかけて。。。

 

以下ネタバレ注意

いや、プレビュー初日ということでこちらもドキドキしながらこの日を迎えましたが、さすが名優ぞろいのこの舞台。すごいことになっていました。ナチスの宣伝相ゲッペルスの私邸で行われたパーティーを中心に繰り広げられる舞台ですが、ゲッペルスの小日向文世さんがまずすごい。かつてこの劇場で上演された海をゆく者では悪魔の役を演じた小日向さんですが、今回も足の不自由なゲッペルスを緩急自在に演じています。こわい。本当にこわいです。

女好きで倹約家でそこそこ妻のことも大事に思っている映画好きの人物が、最高権力者の妄想に踊らされるうちに大いなる勘違いに陥り、どこまでも暴走していく。何が正しく、何が間違っているかという感覚を失うことの恐ろしさがありました。その、素のゲッペルスやヒムラー長官(段田安則さん)、ゲーリング(白井晃さんはまじびっくり!な怪演)の普通っぷりにはかなり笑いを誘われますが、この人たちがその先に起きるホロコーストに深くかかわることを思えば、その対比の中にこそ恐怖が潜んでいることに気づかされて背筋が凍っていくのです。

そしてゲッペルスの妻、マグダ(石田ゆり子)。ゲッペルスとは理想の夫婦を演じていますが、幼く無邪気で考えなしにものを言う。彼女にも怖ろしい台詞があります。優しく穏やかで苦労もない人の悪気のかけらもないひと言。これからご覧になる方は小日向さんと石田さんそれぞれの「あるひと言」にきっと凍りつくことと思います。知識も教養もある人たちが、あきらかにおかしな考え方について(ヨーロッパの純血を守るためにユダヤ民族の血を根絶やしにするといった思想)はっきりNOと言えない時代があったことに戦慄を覚えますが、それでも最終的には人間の良心や心の正義を捨てていないドイツ人もちゃんといたことに少しほっとしました。そこに着目した作者の人間性を感じます。

この舞台、本当に芸達者な方ばかりで目移りしてしまいますが、それぞれの役割がとてもわかりやすく、物語の深刻さが胸にずんときます。今井朋彦さん(作家ケストナー)、小林勝也さん(老優グリュンドゲンス)が俳優ここにあり!な演技で本当に楽しそう。今井朋彦さんは実に複雑な立場にある作家の苦悩をまるでシェイクスピア劇のように演じています。小林勝也さんの「ファウスト」演技も実に秀逸。小林さんのメフィストフェレスを本舞台で観たいです。ミュージカル畑から参加のシルビア・グラブさんと新妻聖子は歌の場面もありますシルビアさんはメイクも当時な感じでデイトリッヒのようです。素敵でおちゃめ。新妻さんはしたたかで権力志向の映画監督。ちょっと意外な役まわりですが、きりっとしてストレートも十分いける感じがしました。

風間杜夫さん(俳優にして映画監督ヤニングス)は田中角栄ばりのこれも怪演。いい加減したたかに見える中にも信念の人。うますぎます。平岳大さん(俳優グスタフ・フレーリヒ)は、出てきた時、平幹二郎さんかと思いました。SPなどでは髪型を若くしていますが、似てますね~背がすらりと高く、立ち居振る舞いがとてもスマートでした。ゲッペルスの愛人、吉田羊さん(エルザ・フェーゼンマイヤー)もかわいらしくしたたか。

どの役者さんもすごいのですが、何といってもこの舞台の鍵を握っているのはゲッペルスの使用人にして映画を熟知しているフリッツ役、小林隆さん。その存在がこの物語の最後の展開に大きくかかわります。三谷幸喜さんがいかに小林隆さんという役者に信頼を置いているかがひしと伝わってきました。

とはいえ、三谷さんの作品です。何故、ここでこのギャグなの~と思わせる、深刻さを一時くずす、まさかのギャグがちょこちょことちりばめられています。これからご覧になる方はどうぞお楽しみに!

客席で三谷さんご自身と演劇評論家の扇田昭彦さんをお見かけしました。扇田先生の劇評が楽しみです。


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2 コメント

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楽しみ~♪ (mini)
2011-03-07 22:16:05
さっすがpippiさん、プレビュー公演からチェックとは!!

「国民の映画」チケ取りに苦労しましたが、私も何とかゲットしました(汗)

超楽しみですw
この豪華キャスティングの競演、ミモノですね~♪

ここの所ドイツづいている気が(^_^;)
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細かい小芝居をお見逃しなく! (pippi)
2011-03-07 22:46:19
本公演でこの作品がどんなふうに変化していくかも楽しみですね。たぶん、もうチケットとれないでしょうけど。。。もう一度後半に観てみたいです。
最初のシーンから怪しい段田ヒムラー長官の動きをお見逃しなく!
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