盤と駒のこと

2007-06-02 01:28:13 | しょうぎ
きょうは将棋の道具のこと。それも初心者の道具の話。

数年前から、ささやかな将棋教室を預かっていて、小学生を中心にかなりの数のこどもに接してきた。前は女の子も結構いたが、最近、ほとんどいなくなったのは、例の女流棋士独立騒ぎの中で、女流プロがビジネスとして、ほとんど儲からない職業ということがわかったからに違いないと思うが、本当は来ないこどもの気持ちを知ることはできない。そして、時々、将棋を覚えたてのこどもの親から、ある事を聞かれることがある。

「将棋盤や駒はどこで手に入れればいいのですか。」

c30266fe.jpgつまり、以前では考えられないのだが、盤や駒なしで将棋を始めるケースがあるということだ。おそらく、将棋ソフトなのだろう。で、もちろんソフトでも対局はできるが、基本的には相手は人間でないので、親切には教えてもらえない。さらに、間違ったところに駒を動かすことはできないし、禁じ手の二歩も打てないようになっている。だから、超初心者がソフトと対戦しても、強くなることは期待できないわけだ。どうしても、親とか兄弟とか友人などの人間と指さなければいけない。そのためには、ヴァーチャルではなくリアルな道具が必要になる。

ところが、いまや妥当な道具というのを入手することはかなり困難な状況のわけだ。まず、碁盤店が少ない。東京のような大都会でも都心に有名店は10店前後ではないだろうか。それも高級盤中心だ。数十万円から数百万円。足がついていなくても卓上のカヤ盤なら数万円である。覚えたばかりのこどもにそこまでは投資しないだろう。デパートにもあるだろうが、デパートがない場所も多い。

c30266fe.jpgたとえば、東京の港区には、中村碁盤店という高級碁盤店があるのだが、この店が有名なのは、売っている商品よりも、この地が歌舞伎忠臣蔵の登場人物の中で最初に退場する浅野某という殿様が切腹した場所だからだろう(本当はこの店の敷地の外側で執行されたらしい)。私のように、ある程度、道具の知識を持っていても、なかなか店内に足を踏み入れる勇気もおきない。

これが、ピアノやゴルフの場合、高い道具を使えば、少しは上達するということが期待(錯覚)できるわけだ。一方、どう考えても、高額な盤や駒を使ったからといって将棋が強くなるとは考えられないわけだ。ここに盤駒問題の核心の一つがあるわけだ。「カネを道具につぎこんでも、効果がない」ということだ。


しかし、一般的にはそうであっても、紙の盤にプラスティックの駒などでは、これまた進歩しない。だいたい、将棋が好きにならないはずだ。駒というのは他のゲームでもそうだろうが、姿が立派で、手になじむものがいい。たくさん対局することは上達の第一なのだから、高いものより愛着が出る道具がいい。となると、どうしても木製の道具ということになる。専門的にいえば、駒は御蔵島産の黄楊(ツゲ)、盤は日向産の榧の柾目物で六寸盤ということになる。さらに駒台は島桑四本足で駒箱は黒柿ともなれば、数百万円になるだろう。

c30266fe.jpgはっきりいえば、杉でもいいと思う。杉と黄楊の差と杉とプラステッィクの差を考えれば、もう大違いだ。文字は彫り駒でなければ、と考えがちだが、書き駒でもかなり十分である。安い彫駒で、簡略字(歩の裏側が「と」となってなく、「l」とかに省略しているもの)を使う位なら書き駒の方がいい。そして、盤と駒でせいぜい1500円程度でそろえられればいいのだが、実際はその10倍にもなってしまう。

この前、百均店で100円の盤と100円の駒を見つけたのだが、どうも、素材が木なのかプラスティックなのか判然としない不思議な商品だ。羽根のように軽いのだ。例のペットフードにプラスティックを混入させ水増ししたような話だ。駒や盤を食べることはないのだが・・指が赤くかぶれること位は考えられるだろう。

まあ、将棋連盟も、収入の一部は高級盤の委託販売によっているので、廉価品を作る意欲がないのはわかるが、2000円弱の木製の将棋盤駒セットを開発した方がいいのではないだろうか。将棋を覚えるこどもがいなくなれば、いかなるビジネスモデルも、いずれ破綻するからだ。


さて、2週間前の詰将棋だが、39手詰め。メールで解答を送っていただいた方の中には、合っているのに手数が違う人もいた。ゴルフでは過小申告の場合のみ失格だが、詰将棋では過大申告も間違いになる。

手順は、前半部が▲7四角(香筋遮断の限定打) △8一玉 ▲8三飛成 △8二飛 ▲同竜 △同玉 ▲8四飛 (▲8三飛では千日手模様になる) △9一玉(うっかりしやすい) ▲9四飛(ここから中盤) △8二玉 ▲9二飛成 △7三玉 ▲8三竜 △6四玉 ▲6三竜・・・・▲3八竜 △1七玉(ここから竜の一回転半ひねりが出る) ▲2六角 △1六玉 ▲1八竜 △2五玉 ▲1五竜 △3六玉 ▲3五竜 △2七玉 ▲3七竜 △1六玉 ▲1七歩 △2五玉 ▲3五竜 △1四玉 ▲1五竜まで。



c30266fe.jpg今週の問題は、詰将棋パラダイス5月号掲載作の改変図。解図後、うれしくなるような気分になれれば、と祈りたい。難解というより軽快。

いつものように、わかった!と思われた方は、コメント欄に最終手と手数と酷評をご記入いただければ、正誤判断。


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2 コメント

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はじめまして (リハル)
2007-06-06 07:04:10
はじめまして。将棋に関して検索している内に、このブログを知りました。
地方に住む私は、まさに本記事のごとく、将棋に興味を持っても、将棋店も将棋を指す場所もありません。
PCよりも本物の道具の方がぬくもりがあっていいと思うんですけどね。ネットも偽物があるようですし、ひとつひとつ表情が違うので、実物を見ないと躊躇してしまいます。
これからも将棋ネタお願いします。
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Unknown (おおた 葉一郎)
2007-06-06 11:12:47
リハルさま、石川の方の方ですね。
隣の福井県は日本将棋発祥の地という説もあります。朝倉館や丸岡城に盤や駒が展示されています。
妙な話ですが、高級な駒(つげ材)は堅いので安い盤はすぐに傷だらけになるのです。だから高級な駒には高級な盤ということになりがちです。杉やヒノキといった花粉症の敵みたいなものを切って、盤や駒にすればいいのに、とちょっと思います。
ところで、将棋ネタ+詰将棋は毎週土曜というスタイルになったます。
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