宅急便成功の歴史を忘れないことによる失敗

2017-05-09 00:00:33 | 企業抗争
クロネコヤマトが値上げになる。少し前に発表になった残業代未払いとかドライバーの過重労働とか解消するとそうなるようだが、直接原因がAmazonとすると、Amazonと無理な契約をした結果、他のお客様に値上げを実行するということになり、いささか割り切れない。

法人1000社と値上げ交渉といっても、大部分は通告のようなものなのだろう。

もう一つの原因が再配達ということで、1つの荷物を何度も運ぶという不合理な仕組みが採算を悪くし、また労働過重を招いている。

実は、昨年の末に羽田クロノゲートというヤマト運輸の最新基地を見学させてもらったおり、あまり書かなかったのだが、見学者から会社には2種類の質問があった。

一つ目は、「長時間労働が行われていないか」という点で、「まったくない」との回答だった。そんなはずはないだろうとは思ったが、外部からはよくわからない。もう一つは、サービス内容について、「サービスをもっと充実してほしい」ということで、一般配送とクール便では夏は荷物が熱くなるので、全部冷やしてほしいということを言い張る女性がいた。無茶苦茶なこと言うなあと思ったが、そういう人もいるのだろう。

ところで二十年ほど前に小倉昌男元社長の話を聞いたことがあるのだが、宅急便を始めたときの状況は、最大顧客だった三越から切られて会社存続が困難になった時、米国視察に行ってフェデックスの運送に触発されたということと、当時の日本では個人が荷物を運ぶ場合、鉄道駅まで自分で持って行き、目的地近くの鉄道駅に荷物が届き、あとは個人で取りに行かなければならないという悲惨な状況だったそうで、誰しも困るところに商売が転がっていたということだそうだ。


そしてヤマト運輸は宅急便というビジネスモデルを支えるためにネコシステムというオリジナルシステムを作って、業界のトップランナーになったわけだ。

ところが、その後、モータリゼーションが加速し、さらに運ぶ荷物が少量多品種に変わっていく。さらにAmazonはじめネット通販の比率が高まり運送量が増大し、さらに時間も多様化する。

私も3年ほど地方都市にいたのだが、そもそも昼間は家にいないし、月の半分は小刻みに出張していると、帰宅すると大手三社からの不在配達票が10枚単位でポストに入っていた。早い話が、「荷物が預かっているが、いつ、どうしたらいいのか」という連絡があれば、たぶん自分で取りに行くだろう。あるいはコンビニとか職場他の転送先を指定するとか。

おそらく、システムが外部に対してはあまり開かれていないため、顧客からみて重要なはずの二つの要素である「届けてほしい時に届ける」「なるべく早く届ける」のうち、後者を優先しているように思える。(といっても前者だけだと、ヤマトの倉庫が滞貨でパンクするのだろうが)

それに値上げをしても急にドライバーが増えるわけでもないし、システムを考えるべき事態だとは思う。あるいは、ヤマト自体がAmazonや楽天に匹敵するようなネットショップを始めればそもそも格安法人料金体系など作る必要はなくなるはずだ。