夢の話です。さぶろうは恐い夢を見ています。茫漠たる恐怖が波のように押し寄せてきます。さぶろうの全身がいまにもフリーズをしようとしています。
懼れるな。恐れるな。怖れるな。畏れるな。恐れるものは何もないぞ。我、汝を守らん。声が響きます。声を聞きます。
そうだった。そうだったのだ。今生のおれはいかなる恐怖をも乗り越える修行をしに生まれて来ていたのだ。人生を恐怖のために浪費してはならん。
それをしきりに言い聞かせます。そして勇気を奮い起こします。平常心を取り戻して対処します。懼れるな、恐れるな。怖れるな。畏れるな。
こうして夢中降魔がかないました。どうだ、恐怖を超えれば、そここそおまへの真骨頂の領域だ。何事も適うであろう。さぶろうは超克を意識します。安堵します。
ここで目が覚めました。夢がさぶろうを後押ししているようです。起き上がってカーテンを捲ると外は明るい朝になっていました。