入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’24年「春」(42)

2024年04月10日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

       荊口、遠くの山並みの右手背後に牧場がある
 
 淋しいと言えばそうだが、自分一人だけが季節に先駆けてそこにいると思えば、その淋しさも特権でも与えられたような気分に変わる。本当に人っ子一人としていなかった一昨日の牧場や入笠山周辺でのことだ。
 一冬の長きにくたびれた侘しい小屋の建物、生気のない枯草の原、曇り空が重い沈黙を辺り一帯に加え、いつもなら牧草地のそこかしこに見えるはずの鹿の姿もなかった。数少ない動きと言えば、遥か上空を悠然と旋回する2,3羽の鳶と、コナシの枝の間を忙しく飛び交う野鳥ぐらいで、季節は冬でもなければ春でもない、病み上がりの老人のような弛緩した時であった。

 そんな牧場へ上がる日も、ついに10日を切った。いつも炬燵に当たる際に使っていた座布団は一冬の間にすっかり擦り切れてしまい、綿が綻びから見えている。まさに炬燵の虜囚と言うに相応しい者の、うら寂しい名残りではないか。
 大過なく冬を越せたという安堵感もあれば、破れた布団が象徴するようにその間に流れた長い時間の中で、毎日まいにち米を研ぎ食物を作る姿を今更ながら他人のように思い、見ることができる。
 その後、一日を閉じる儀式に添える1合の酒と500㏄の缶ビールがあって、そこにたどり着くために長い山道を歩いてきた登山者のように、やっと訪れた解放感を味わう。

 サクラの咲き出したことも気付かずにいたくらいだから、散歩の距離は昨年と比べて半減した。それでも、心のラジオ体操、「座る」ことは毎日続けた。それ以外ではこの独り言を呟き、以前に読んだ本を再読し、少し絵を描き、夜にウクライナやパレスチナへ行ったりで、それで5か月が過ぎてしまった。
 時の浪費、無為徒食であったかも知れないが、しかし、それらのこと以外にどうしたらよかったのか、考えてみても答えなど出てこない。

 明日は懸案であったカタクリ峠に行く。天気さえ良ければ、一昨日の入笠よりかも気分の明るい春の山を楽しむことができるだろう。

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 本日はこの辺で、


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