仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

グリーフサポートと死生学④

2024年05月14日 | 苦しみは成長のとびら
『グリーフサポートと死生学』 (放送大学教材・2024/3/20・石丸彦・山崎浩司著)からの転載です。

・ 課題モデル
 心理学者J.W.ウォーデンは,グリーフのプロセスを完了するためには,喪失体験者自身が死別後に直面する複数の課題に取り組み,それらを達成する必要がある,とする課題モデル(task model)を提起した。
達成すべき課題とは,・死別喪失の現実を受け入れる,・グリーフの苦痛を消化していく,・故人のいない世界に適応する,・故人との永続的な繋がりを見出すこと,の4つである。ただし,段階(位相)モデルと
異なり,課題モデルではこれら4つの課題に取り組み達成する順序を規定していない。
・ 継続する絆
 上記3つのモデルでは,基本的に故人との絆を断ち切って,故人のいない世界に適応することでグリーフが解消される(グリーフのプロセスが終わる)との想定がある。この想定に基づき,グリーフは乗り越えるべき,克服すべきものと位置づけられる。しかし,死別体験者の多くが,実際には故人との絆を断ち切るのではなく,墓参で供養をしたり故人の写真に話しかけて追悼したりと,死別後も多様な形で故人の存在を感じ続けながら生活している。死別体験者が,物理的にはもう存在しない故人を心の中で位置づけなおし,故人との絆を断ち切ることなく継続さていくというグリーフの捉え方は,継続する絆(continuingbonds)と呼ばれる(第12章)。この概念では,グリーフを解消し克服し,乗り越えるべきものと位置づけず,グリーフのプロセスに明俑々終わりを想定していない。
・ 二重過程モデル
 ニ重過程モデル【dual process mode】)は,喪失体験者が死別後の生活を送るなか,喪失志向コーピングと回復志向コーピングからなる2つの志向に基づく対処行動を不規則に反復し,揺らぎながら徐々に重点を前者から後者に移してゆくという動的なモデルで,グリーフのプロセスを説明する(図1-1)。これは,継続する絆の概念と同じく,死別体験者は喪失体験による悲嘆を克服したり乗り越えたりしてからでないと,日常生活へ最適応する段階に移れないという考え方をとらないモデルである。
・ 意味再構成モデル
 死別後の自分の人生のうちに故人を位置づけなおす過程は,死別を境に断絶してしまった過去と未来を,新たに意味づけしなおすことで再びつなげる過程である。死別は,人がそれぞれ想定していた自分の人生物語を,多かれ少なかれ破綻させる。死別体験者は,故人が生前とは異なる形で自分に関わり続けるような新たな未来の物語を紡ぎ,その未来と整合的な過去の物語をも紡いでいこうとする。未来と過去を意味づけなおし,新たな人生物語を紡ぎなおしていくこの行為もクリープであるとの見方は,意味再構成モデル(meaning reconstruction model)と呼ばれる。
・ 死別後の人間的成長
 人はさまざまな困難への直面を経て成長することがあるのは,よく知られている。精神医学や心理学で,外傷後成長(posttraumatic growth)やストレス関連成長(stressイelated growth)と呼ばれるこうした人間的成長は,死別喪失の体験者にも認められることがある(第3章)。留意すべきは,・苦難に直面したあらゆる人間が成長するわけではないこと,・成長が見られることと,苦難や痛みや悲しみがないことはイコールでないこと,・成長が見られるからといって,その経験や出来事が必要であり望ましいことと捉えるべきではないこと,である。(以上)
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