銀河夜想曲   ~Fantastic Ballades~

月が蒼く囁くと、人はいつしか海に浮かぶ舟に揺られ、
そして彼方、海原ワインのコルクに触れるを夢見、また、眠りにつく……

期待

2015年06月18日 00時19分51秒 | 散文(覚書)
人に期待しすぎていると
お前は一笑に付してしまったけれど
期待なんかしてやしない
それが当たり前だと思っているだけだ
しかしお前が言うのには
どうやらこの世にいる限り
自分の行っていること
思い巡らせていることを当たり前の基準にしては駄目なんだと
そういうことなんだろう
そういうことなんだろう

馬鹿みたいだ
そういうことなんだろう


私の会いたい人たち

2015年06月16日 18時08分03秒 | 散文(覚書)
夢の中や葬儀の場なんかじゃなく

私の会いたい人たちが

豊かな水と静かな樹木の生える

秘密の木漏れ日のような所で一堂に会せたら

どんなにいいだろう

その人たちが生きてきた背景を

目をつむって一緒にかみしめ合えたら

どんなに胸が一杯になるだろう

そうしてそこで

未来を共に縫い合わせていけたら

こんなに幸せなことはない

こんなに涙が喜ぶことはない

細い絹糸のような雨が泉に小さな円を描くように

こんなに尊いことはない




子どもたちは

2015年06月05日 23時25分18秒 | 散文(覚書)
子どもたちは毎日鬼ごっこをしている
子どもたちは毎日おままごとをしている
子どもたちは毎日かくれんぼをしている
子どもたちは毎日お絵描きをしている
子どもたちは毎日ブランコをこいでいる
子どもたちは毎日積み木を積んでいる
子どもたちは毎日誕生日ごっこをしている

ため息をつくことはあっても
子どもたちは絶望しない
ケンカをすることはあっても
子どもたちは素直に泣いてまた遊ぶ

大人も一日だけ
子どもになれる日というのがあったらいい
いや
一年に一日だけじゃあなくって
24時間のうち一時間だけでも
毎日
子どもに帰れる時間があったら本当にいい

きっと
世界は今より面白く
楽しく平和になれる

そのとき
みんなの宿題が
ひとつの輪っかになる



移ろう月に寄せて

2015年06月04日 03時19分42秒 | 散文(覚書)
昔よく祖母が教えてくれたお手玉を
すっかり中年になったこの夜に
この静かな一人だけの夜中に
ふと思ったのです

星もない黒い空
月だけが
私の心の中の小さな宇宙を見ているようで
私も
部屋の窓をゆっくり渡る月を見ているのです

お手玉をしたくても
祖母のおにぎりを食べたくても
月は静かに移ろうだけ

あの時のお手玉は
あの時の丸いおにぎりは
今この月の
移ろいだったのかもしれません

満月のように見えて
どこか欠けている
照り輝いているようで
儚き行く末を湛えている
月もお手玉おにぎりも

月が黒い雲に隠れるのは
誰かがその瞳に
墨汁を落としたからでしょうか
忘れたくない思い出を
忘れてしまった悔しさ故でしょうか



部屋の窓からは
すっかり月が消えてなくなりました

心のどこかで
今も祖母に教えてもらっているお手玉を
時折部屋へ吹き込む風たちが
邪魔をするのです

お手玉をしたくても
祖母のおにぎりを食べたくても
月は静かに移ろうだけ