銀河夜想曲   ~Fantastic Ballades~

月が蒼く囁くと、人はいつしか海に浮かぶ舟に揺られ、
そして彼方、海原ワインのコルクに触れるを夢見、また、眠りにつく……

ちひろの絵・その6

2007年01月21日 02時34分09秒 | いわさきちひろ、その人と作品
ちら ちら こゆき
1958年



はじめての ゆき

うまれたての くすぐったい ささやき



雲をつかみたくって てぶくろ編んだら

そーっと雨がふってきて

わたしの指の お砂糖なめて

キラッと すこし

すこしずつ 光ったよ

雲のやさしい

ちいさな心に 着がえたよ



トースト食べてよかったな 

お砂糖たっぷりぬって よかったな



指が ほんのり じんじんする

てぶくろが しっとり ほわほわする



いつでも手は あらえるもの

あとちょっとだけ

あまい夢が とけないように

白いまばたき 着られるように




ふしぎなおきゃく

2007年01月11日 22時47分22秒 | 絵本・童話・児童文学
作 肥田美代子
絵 岡本颯子
ひさかたチャイルド



<粗筋>

ラーメンが美味しいと評判の『とんちんけん』に、ある日、目深に帽子を被ったお客がやって来る。
「ラーメン いっちょう、とびきり うまいやつを たのむよ」
ところがそのお客、店の主人けんさんがラーメンを出しても一口食べただけで帰ってしまう。
次の日も、そしてまた次の日もお客はやって来るが、やはりほんの少し食べただけで店を後にしてしまう。
自分のつくるラーメンのどこが気に入らないのか確かめたくなったけんさんは、そのお客の後を追ったが……



これは僕が子供の頃に繰り返し読んだ絵本で、昨年12月に復刊された。とにかくラーメンが美味しそうに描かれているのと、その謎のお客が毎回ラーメンを残した理由が子供心に印象深かったものだ。
店内に掲げられているラーメンの値段は初版当時の物価が窺われるし、他の頁でもその場の雰囲気が伝わってくる心地良い工夫が見受けられる。あたかも自分がその状況(物語後半部分)でラーメンを食べているようだ。そして何より、謎のお客がラーメンをほとんど食さなかった訳を知ったけんさんが、その後も以前と変わらずに店を営む結びが良い。温かい当時の世相までもが伝わってくる。

長らく絶版だったこの作品、大きな書店でなら容易に目にする事ができるだろうから、興味を持たれた方は是非。