銀河夜想曲   ~Fantastic Ballades~

月が蒼く囁くと、人はいつしか海に浮かぶ舟に揺られ、
そして彼方、海原ワインのコルクに触れるを夢見、また、眠りにつく……

中村洋子:無伴奏チェロ組曲(全6曲)

2015年01月23日 00時28分26秒 | クラシック音楽
作曲家の中村洋子氏が、雅楽の様式や沖縄音階などの影響のもとに書いた6曲の無伴奏チェロ組曲。そのどれもが雄大で能弁、耳にしているつもりが身体丸ごと呑まれる感覚に陥ります。日本の四季や古き善き農村、祭りや宴といったものたちが走馬灯のように現れては消え、また現れます。チェロの跳躍する野太い音とうねり、弾き手ベッチャー(カラヤン時代のベルリンフィルで、1963~76年まで首席チェリスト)の絶え間ない唸りに凄みを感じずにはいられません。ふと宮沢賢治の作品世界を想起させる旋律やモチーフもあり、SACD層で聴けば尚、このアルバムの醍醐味を体感できます。心が打ち震える一種幽玄なメロディー、これは紛うことなき日本人作曲家が書いた、空前絶後の作品集です!! チェロを体で味わえる一枚!!

中村洋子:無伴奏チェロ組曲第一巻(第1番~第3番)
中村洋子:無伴奏チェロ組曲第二巻(第4番~第6番)


Grieg: Music for String Orchestra

2015年01月16日 02時17分46秒 | クラシック音楽
《収録曲》
グリーグ:弦楽四重奏曲 第1番 ト短調 Op.27(トニェッティ編)
      2つの悲しき旋律 Op.34
      恋愛詩 Op.43の5 (トニェッティ編)
      ホルベア組曲 Op.40

トニェッティ (Vn・指)/オーストラリア室内管弦楽団

グリーグの弦楽四重奏曲第1番は巌本真理SQの演奏が至極強烈なため、他の演奏ではほとんど聴いた事がなかったのですが、このオーケストラ編曲版もかなりインパクトが強いです!! 合奏の勢いが漲っていて、編曲の効果が正に覿面☆ ジャケットの印象そのままに、幾重もの緊密な白糸(弦楽群)が絡み合って、恐るべき滝の怒号となって聴き手に迫ります!! 一方、2つの悲しき旋律と恋愛詩(抒情小曲集の編曲!)では、晩秋の心境にも似たメロディーを切々と歌い上げています。とりわけ後者では、情感たっぷりのヴァイオリン独奏がピアノ・ソロでは味わえない夢を見させてくれます♪

BIS
BISSA1877

The Trio Sonata in 18th Century France

2015年01月12日 01時53分49秒 | クラシック音楽
《収録曲》
クープラン:神聖ローマ帝国の人々
ドレ:ソナタ ト短調Op.1の6
ルクレール:ソナタ第3番ト短調Op.13の6
ボワモルティエ:トリオ ホ短調Op.32の2
ギニヨン:ソナタ ニ長調Op.4の2

ロンドン・バロックの熟達した技が冴え渡る、18世紀フランス人作曲家のトリオ・ソナタを集めたアルバムです。中でも、ヴィオール奏者でもあったシャルル・ドレのソナタは貴重! 第1楽章の出だしがペルゴレージのスターバト・マーテルにそっくりで、また、第4楽章の旋律は悲哀と優美さが折り重なっていて心奪われます! ルクレールのソナタでは、ハープシコード演奏がないアリアの前半部分と最後が、物憂げな心の襞を表出しているようで非常に印象的☆

ロンドン・バロック
BIS
BIS1855

J.S.Bach: The Art of the Fugue

2015年01月11日 02時14分41秒 | クラシック音楽
1990年に録音したゴールトベルク変奏曲では、ディアパゾン誌で5つ星を獲得したシュ・シャオメイ。この度のフーガの技法でも演奏の品格さと高貴さは顕著ですが、淡く静かな佇まいの説得力や、興に乗ったかのように淀みなく進む見事な様は、あたかも変奏曲を聴くよう。それは、このBWV.1080に対して「ポリフォニー芸術の頂点としてだけではなく、変奏芸術の頂点としての作品でもある」という見解を示している彼女だからこそでしょう。現役のエマールや、かつての名手ニコラーエワ等の盤とは異なり、低音と高音の振幅の差が大きく、且つ非常にリズミカル。メンデルスゾーン・ザールでの適度な広がりを感じさせる録音が美しく、質感を伴った彼女の音色を最大限に活かしている点においても一価値があります。ピアノ演奏におけるフーガの技法に、新たな名盤の登場です!

Accentus Music
ACC30308CD

Schumann: Variationen & Fantasiestucke

2015年01月10日 00時21分32秒 | クラシック音楽
シューマンの作品がフォルテピアノで弾かれたCDは、例えば同時代のショパンに比べれば多くはないものの、このアルバムはその代表格と断言して良い極上のもの。初期と晩年の作品をシンメトリックに収めることで大きな環を描き、交錯するシューマンの安らぎと狂気を打鍵の絶妙な強弱によって表現しています。『アベック変奏曲』での音の瞬きと色彩感覚に溢れた様、『幻想小曲集』と『3つの幻想的小曲』での淡い夢語りと無残な揺曳、そして曰く付きの『主題と変奏(※)』における儚げで物憂い温もりなど、千変万化の表情付けが圧巻です! 特にペダルを使用した際のフォルテピアノの、淡雪の吐息のような幻想性は胸にいつまでも降り積もります。「この世のあまた全てが白に始まり白に帰す」とでも語っているような、A・シュタイアーによるシューマン。フォルテピアノが苦手という方にも是非聴いて頂きたい1枚です!!

Harmonia Mundi
HMC902171


※参照⇒ http://goo.gl/TiIY3e または http://goo.gl/NQ2ubx 


無題

2015年01月09日 01時35分29秒 | 雑感・徒然なる想い
皆幸せになりたいと願っている、出来る事なら人に対して優しくありたい、動物や植物をも愛でていたい、それは一つの道理であるはずなのに、日々の喧騒に追い立てられ疲弊する、慈愛に満ちた確かな鼓動を胸に刻印したいのに、いつの間にか出会えなくなっていて、命を絶ちもし、残り短い時間に驚愕する。



笑顔を見せ、微笑む事ができるのは人間だけですが、過去に囚われ、憐れみ、憂いの表情を浮かべられるのもまた動物の中では人間だけで、どちらも生きる上での美学と捉えて良いと思いますが、残り短い時間の中でどちらの美学を選択できるか、それはもう生まれた時から既に決まっているのかもしれません。