読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

堂場瞬一の『アナザー フェイス』

2023年04月23日 | 読書

◇ 『アナザー フェイス

      著者:堂場瞬一  2010.7 文芸春秋社 刊(文春文庫)   

   
    
    著者おなじみの警察小説である。
 主人公は警視庁刑事部刑事総務課の警部補大友鉄。元捜査一課の刑事だったが、
2年前に妻を亡くし8歳の息子と二人の生活になって出退勤がほぼはっきりして
いる刑事総務課に異動になった。だが周囲には捜査一課復帰を期待されている。
そしてこれはという事件があると駆り出される。なぜか。それは大友が事情聴取
にあたるとだんまりを決め込んでいた相手も不思議と口を開く。生来人を安心さ
せる力を持っているらしい。

 そんなある日、事件捜査応援の指示が出た。
 事件は男児誘拐事件。身代金は1億円を要求された。男児は6歳、父親は都市
銀行の銀行員内海。銀行にも身代金の要求があり、銀行は支払いを決めた。身代
金目当て誘拐の成功率は低く、大抵身代金を受け取る段階で捕まることが多い。
 だが今回の犯人は身代金受け渡し場所にライブ会場として混雑する後楽園ドー
ムが指示された。見るからに雇われたらしい女子2人が1億円の袋を持って、後
楽園ドーム内に消えた。
 犯人と内海、銀行の関係など動機の解明、犯人割り出しの捜査は進むが、動機
解明は進まず、むしろ受け子となったらしい女子の割り出しに人海戦術で臨んだ
大友らのお蔭で犯人のあたりが付いた。そして内海と犯人との意外な関係も明ら
かになって…。

 端から狂言誘拐っぽい雰囲気であったが、銀行の不正融資などが背景にあるこ
とが明らかになって、大友の推理が当たる。
 筋書きは複雑ではないが大友の上司、同僚、部下、警察学校の同期、友人など
いろんな登場人物のキャラクターが醸し出す雰囲気が楽しい。

                         (以上この項終わり)


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1 コメント

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「アナザー フェイス」について (風早真希)
2023-06-03 09:09:25
小説で描かれる刑事と言えば、事件が起きたら、それこそ昼も夜も無く、警察署の中に泊まったり、一晩中交替で張り込みをしたりという様子が描かれますね。

実際にはどうなのか知りませんが、そうそう毎日、定時に帰宅できる状況ではないのでしょうね。

でも、この作品の主人公の大友は、息子と二人暮らしなので、そう言うわけにもいかないのです。

近くに住む義母が、息子の面倒を見てくれているのですが、大友はこの義母が大の苦手。

この大友は、イケメンで学生時代に演劇をしていたとの事で、被害者家族からの信頼感が得られ易いと言う設定になっているんですね。

この話の中で発生する誘拐事件は、犯人側が身代金をまんまと奪って、誘拐されていた子供も無事に帰ってきます。

ここからが大友の本当の出番で、事件の影響で過敏になっている被害者家族の中に入り込んでいきます。

まあこう言った部分が、この作品の中心となるはずですが、あまりその部分が強調される事は無いので、これでは普通の刑事による単なる誘拐事件の話になってしまいます。

もっと、子連れの刑事なのか、人に警戒心を与えない刑事でいくのか、はっきりとした方が良かったのではないかと思いました。

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