読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

長岡弘樹の『殺人者の白い檻』

2023年04月29日 | 読書

◇『殺人者の白い檻

  作者: 長岡弘樹 2022.7 ㈱KADOKAWA 刊

  
 東崎病院の脳外科医師尾木敦也は休職中なのに病院長に呼び出され、脳動脈瘤
の外科手術を行った。患者は隣にある拘置所の死刑囚。手術の器械出しは敦也の
妹、奈々穂。
 手術が失敗すれば期せずして復讐を遂げることができる。医師の倫理観を優先
すれば手術を成功させなければならない。深刻なジレンマである。

 手術は成功した。しかし患者は右半身に麻痺が残るが、定永はリハビリに積極
的で、順調に回復している。死刑囚は健康体でないと刑は執行しない。彼は死刑
を望んでいるのかというと実は彼は盗みには入ったが殺人はしていないと否認し
ているのだが。

 定永が殺人を否定していることが気になって、敦也と奈々穂はとってあった報
道記録等から改めて事件の見直しをする。はたして彼は殺人者なのか。
 
 奈々穂がゆくゆくは結婚をと考えている理学療法士の村主。村主が担当する定
永の指導でリハビリは順調で機能回復が進んでいる。健康体になれば死刑執行可
となるのに定永は素直にリハビリに取り組む。冤罪を主張しているのに。

 被害者家族である医師、看護師と死刑確定の囚人を巡る心理的葛藤が淡々と綴
られる。

 バイクで怪我をして入院している久本という青年がいる。昔その父親が院内階
段で転落事故を起こし死んだたのは、主治医だった敦也の父と村主が原因者だっ
たのではないかと言って退院していった。

 なぜか奈々穂は村主との結婚をやめるという。奈々穂は久木の父親の事故を巡
って敦也の父と村主の間に深刻な諍いがあって、村主が敦也の父を殺した後盗み
に現れた定永を殴り気絶させたのではないかと自分なりの推理を兄に告げる。
 
 退院前、最後のリハビリ中に定永に抱き付かれたまま村主は脳卒中で倒れる。
定永は村主を真犯人と確信したのか。村主は定永が真相を突き止めたと覚った
のか。

 なお筆者は大学の社会学出身であるが、脳外科手術場面描写のリアル感は経験
者の如く抜群である。そして組んで仕事をしていた理学療法士が医療過誤を隠蔽
するために医師を殺害するだろうか、首を絞められながら覚えた手のひら感触を
ほんとに数年後まで記憶するものかなど不自然さがあるものの、人間の手の平が
意外繊細な記憶機能を持っていることを材料にサスペンスフルな医療ミステリー
に仕上げた力量はたいしたものである。

                         (以上この項終わり)
    

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令和5年のトマト栽培=2=

2023年04月28日 | 畑の作物

令和5年のトマト第二陣移植

   

  今年の天候具合から見るとそろそろトマト苗移植も適期到来と第二陣
 のトマトを植えた。やはり「ホーム桃太郎」かと思ったが、数年前に手
 掛けた「麗夏」があったので3本(左手前)、中玉(奥の2本)にした。
  畝にあらかじめポットの大きさの穴を作り、たっぷり水を注ぎ、水が
 浸みこんだところでポットから苗をはがし植える。根元は深く土をかけな
 い方が良いという人もいるが吾輩はこれには従わない。
  風が強いと倒伏する心配があるので取りあえずの支柱を立てて細紐で誘
 引した。

                        (以上この項終わり)

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水彩画で「柏ふるさと公園」

2023年04月27日 | 水彩画

新緑の柏ふるさと公園

  
     
                  Arches  F6
            新年度最初の写生会は集合場所が
「北柏ふるさと公園」。これまでにも四季折々に何度か写生に 
   ずだが手を入れ過ぎたかもしれない。右手の釣り人がアクセント。
          いろんな木々があって、それぞれ緑の色合いが違って面白い。
     油絵と違って余り迷って色を重ねていくと色が濁ってくる。それが水彩画の特徴。分かっていなが
   らつい手を加えてしまって反省することが多い。今回もややそんな憾みが残った。

          当日は風もなく22度を超え、夏日に近い高気温だった。
                                                (以上この項終わり)

 

   

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令和5年のトマト栽培開始=1=

2023年04月25日 | 畑の作物

◇ 連作栽培のトマト

  昨年は明らかに連作障害の症状「うどん粉病」に悩まされた。
 それでもしつこくトマト栽培に挑戦するのは、単純に「店頭で
 買うトマトより自分ちの畑で採れたトマトが数倍うまいから」
 という家人のおだてに乗ったから。
  1か月前に石灰を鋤き込んでPH調整をし、3週間前に配合肥
 料の元肥を施し、加えて連作障害を防ぐという某化学会社の顆粒
 肥料を鋤き込んでの満を持した挑戦。
  品種は定番の「ホーム桃太郎」1本だけ接ぎ木苗。トキタ種苗
 の大玉「豊作祈願」。子供だましのネーミングだが、さて成果如
 何。

  
       とりあえず1畝だけ7本。株間30センチ。
  奥は月端に蒔いた小松菜(第1回の間引き済)

  
   接ぎ木の大玉トマト。
                 (以上この項終わり)

コメント (3)
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堂場瞬一の『アナザー フェイス』

2023年04月23日 | 読書

◇ 『アナザー フェイス

      著者:堂場瞬一  2010.7 文芸春秋社 刊(文春文庫)   

   
    
    著者おなじみの警察小説である。
 主人公は警視庁刑事部刑事総務課の警部補大友鉄。元捜査一課の刑事だったが、
2年前に妻を亡くし8歳の息子と二人の生活になって出退勤がほぼはっきりして
いる刑事総務課に異動になった。だが周囲には捜査一課復帰を期待されている。
そしてこれはという事件があると駆り出される。なぜか。それは大友が事情聴取
にあたるとだんまりを決め込んでいた相手も不思議と口を開く。生来人を安心さ
せる力を持っているらしい。

 そんなある日、事件捜査応援の指示が出た。
 事件は男児誘拐事件。身代金は1億円を要求された。男児は6歳、父親は都市
銀行の銀行員内海。銀行にも身代金の要求があり、銀行は支払いを決めた。身代
金目当て誘拐の成功率は低く、大抵身代金を受け取る段階で捕まることが多い。
 だが今回の犯人は身代金受け渡し場所にライブ会場として混雑する後楽園ドー
ムが指示された。見るからに雇われたらしい女子2人が1億円の袋を持って、後
楽園ドーム内に消えた。
 犯人と内海、銀行の関係など動機の解明、犯人割り出しの捜査は進むが、動機
解明は進まず、むしろ受け子となったらしい女子の割り出しに人海戦術で臨んだ
大友らのお蔭で犯人のあたりが付いた。そして内海と犯人との意外な関係も明ら
かになって…。

 端から狂言誘拐っぽい雰囲気であったが、銀行の不正融資などが背景にあるこ
とが明らかになって、大友の推理が当たる。
 筋書きは複雑ではないが大友の上司、同僚、部下、警察学校の同期、友人など
いろんな登場人物のキャラクターが醸し出す雰囲気が楽しい。

                         (以上この項終わり)

コメント (1)
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