読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

シグマフォースシリーズ7『ギルドの系譜』(上・下)を読む

2015年07月30日 | 読書

◇『ギルドの系譜』(原題:Bloodline)
                   著
者: ジェームズ・ロリンズ(James Rollins)

                    訳 者: 桑田 健  2015.4 竹書房 刊(竹書房文庫)
     
     

  梅雨明け早々に始まった猛暑続きの中での読書。選択ジャンルはエンターテイメント。
  本書はたまたま図書館の新刊リストに上がっていたことからリクエストしたのであるが、
 人気本でかなり後順位だった。ようやく手に入って寸暇を惜しみ一気に読み進んだ。
  さすがジュイェームズ・ロリンズ。活劇らしくスリリングなアクションの展開で休む間
 もない。早く映画化してくれないだろうか。私がプロデューサーなら主役のグレイ・ピア
 スはトム・クルーズ、キャスリン・ブライアントはサンドラ・ブロックをあてようか。 
  シグマフォースシリーズ7で、シリーズはすでに11作まで刊行されている。『ギルドの
 系譜』は『ケルトの封印』、『ジェファーソンの密約』に次ぐ三部作の三作目。

  米国国防総省にDARPA(国防高等研究計画局)という組織がある(実在)。その傘下に
 あるシグマフォースという秘密特殊部隊(仮想)が主体。このシグマと、12世紀のテンプ
 ル騎士団に始まるという闇のテロ組織「ギルド」を牛耳る「真の血筋」との、手に汗を握
 る戦いが繰り広げられる。

  妊娠中の米国大統領の娘アマンダが誘拐された。誘拐を企てたと目されるのは「ギルド」。
 この誘拐事件をひた隠し、極秘のうちに短期間で奪回する役目を担ったシグマグループは、
 ケインという軍用犬として特殊訓練を受けたシェパード犬を伴うタッカーを仲間に引き入
 れて寸秒を争う戦いに挑む。

  ギルドは何百年という長い歴史の中で特定の一族が財力・政治力等を背景に指導性を発
 揮して来た。現米大統領ギャント一族がそれであるが、「真の血筋」を標榜する一味が支
 配力奪還を狙っている。謎のテロ組織はメンバーは厚いベールに覆われていて、政・財界
 ・科学技術・権力機構のあらゆる層に潜んでいる。大統領の孫が胎児のまま不老不死の実
 験材料として扱われようとしている。その背景にあるのは。

  長寿・不死の研究、究極のロボット戦士の研究、最先端人工構造物の展示場ドバイ、魅
 力ある戦闘場面が目白押しで、これを映画化すれば大当たりすること間違いなしだと思う
 のだが…。

(以上この項終わり)

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日本文学100年の名作第8巻を読む

2015年07月23日 | 読書

日本文学100年の名作第8巻 『薄情くじら』   

                            2015.4 新潮社 刊 (新潮文庫)

  

   新潮文庫で1914年の作品を皮きりに『日本文学100年の名作』を出している。
   本書は第8巻で1984年から1993年までの14人の作家の短編作品が載っている。
  編集委員は池内紀、川本三郎、松田哲夫の3人。いずれも著名な編集・評論家であ
  る。短編でしかも3人が選んだ作品なので、多くが小生の全く読んでいない作品で新
  鮮な気持ちで読めた。とはいえ本当に感動的だったのはわずか2作品。

   歌は世に連れ、世は歌に連れなどというが、小説もそれなりに時代の雰囲気を映し
  ているものと考えられるが、読んでみると意外とそうでもない。作者だって永く抱いて
  いた小説の主題・舞台を作品にしているわけで、直接的に時代を映した作品が多く
  書かれているわけでもあるまい。とはいうものの第8巻の対象時期1984年から
  1993年とはどういう時期だったか。『バブルが芽生え、やがて弾けて平成不況に突
  入する転換点。この時期に生まれた名作14編』というのが本書の帯の文言。

  1984年から立て続けに電電公社、専売公社、国鉄がNTT,JT,JRに民営化した。
  1985年にプラザ合意があって、86年にチェルノビル原発事故があった。
  1989年昭和天皇が崩御、消費税が導入された。天安門事件やベルリンの壁は崩壊し
  たのもこの年。やがて1990年、バブルが崩壊し、91年には湾岸戦争が勃発、ソ連
  が崩壊。そして93年にはEUが誕生した。

  深沢七郎、佐藤泰志、高井有一、田辺聖子、隆慶一郎、宮本輝、尾辻克彦、開高健、
  山田詠美、中島らも、阿川弘之、大城立裕、宮部みゆき、北村薫の14人の作品。
  あまりなじみのない作家が6人いた。
  本の表題『薄情くじら』は田辺聖子の作品である。この作家が並みいる著名作家の中
  で文化勲章をもらっていることに不思議を覚える。勲章なんて基準が良く分からない。
  それはさておき、感動的に読んだのは佐藤泰志の『美しい夏』と大城立裕の『夏草』。 
   『美しい夏』は、物憂さと、何はかとない焦りといらだたしさに満ちた青年期の一時期
  の心裡が描かれている。結婚を考えている女友達へのいわれなき八つ当たりや甘え
  などが自身の青春期の記憶と重なって感動的だった。ただ最後の1行、富士山に向か
  っての叫びは、個人的にはいただけない。青春期の苛立ちの気分がぶち壊しで蛇足
  である。
   『夏草』は沖縄出身の作家大城立裕の作品である。作者自身は兵として中国にいて
  苛烈を極めた沖縄戦を体験していないという。しかし生死を分ける戦場にあって、男
  が理性の赴くままに妻とともに自決を覚悟したその時に、ハブに遭遇し抱きあったそ
  の時の、妻の動悸と身体の温りで生への狭間を乗り越えるくだりが実に感動的であ
  った。また行為のあと「死にたくない」という妻の呟きに、あえて死を選ばず、生の延
  長上で迎える死ならそれを覚悟するというたくましい女性の死生観を見る思いがした。

  (以上この項終わり)

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畑の作物はいま

2015年07月06日 | 畑の作物

トマトはいま収穫期
  
  次々と樹熟していくトマト

  
  ネットで鴉から守られたトマト

  
  大玉・ホーム桃太郎

  

 落花生はかなが咲き始めた

  

  小松菜は育ちが早く

  
   6月24日播種の小松菜

  
   7月1日播種の双葉

  ◇ いんげんの

  

                              (以上この項終わり)

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堂場瞬一の『誤断』

2015年07月03日 | 読書

◇ 『誤断』 著者: 堂場 瞬一   2014.11中央公論社 刊

       
  
    堂場瞬一といえば警察小説の名手として知られている。しかし、本作はその系譜からは少々ずれている。
  内容からすれば薬害問題を扱ったサラリーマンものという感じであるが、正直言ってさして面白みはない。
  なぜか。保身と正義感の狭間で悩む勤め人のジレンマ。社会的責任と会社の存続の天秤を睨みながら
  右顧左眄する会社経営者。薬害を隠蔽しようとする製薬会社に敢然と立ち向かう地元医師と弁護士。
  登場人物はそれなりに整っているものの話はあまりに図式的で感動に乏しい。 

  長原製薬という会社の関節痛用鎮痛剤に成分記載の脱漏があり、副作用で意識混濁に伴う3件の事故
  があった。広報部員槇田高弘が、なぜか副社長安城隆雄にこの事件のもみ消しを命じられる。
  同社の創業の地は畑井市(仮想)湊地区。40年前ここで台風に伴う排水タンクの破損と廃水による薬害
  死亡事故があった。まだ若手であった安城は上司の命で補償金や脅しを使いもみ消しに奔走した。
  いまや創業家の社長を差し置いて、副社長として実質的に会社経営の実権を握る安城は、当時のおぞ
  ましい記憶を思い出し、創業家の遠いながらも縁戚に連なる槇田にもみ消しを命じたのである。    
  槇田は社会的正義と昇進をほのめかされた保身の間で悩む。悩んだ挙句、極秘を約束したにもかかわ
  らず懇意な関係にある同社の顧問弁護士高藤辰美に事情を話し助言を求める。

  ところが近年畑井市湊地区で40年前の薬害被害者と似た症状の患者が続出し、地域の真島医師らが
  長原製薬を訪れ責任追及の訴訟を起こす意向を伝えて来た。安城は再び槇田に実情調査を命じ、槇田
  は同期生の濱野と湊地区を訪れ患者の動静を探るが、地域の猛反発を受ける。会社の隠蔽体質に嫌気
  した槇田は辞職を覚悟で顧問弁護士の高藤とともに会社と戦うことを決意する。実は高藤は湊地区の出
  身であり、いまや地元の薬害被害者と同じ症状で苦しみ始めているところであった。
  
  この先槇田らがとった作戦は、いたずらに訴訟で会社をつぶすよりは訴訟外で両者が協力し合い、原因
  の究明と治療法の開発に取り組んだ方が双方の利益につながるとの考えを頑迷な会社経営陣に認めさ
  せることである。さて、その結果は。

                                                     (以上この項終わり)

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