読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

デボラ・クロンビーの『警視の不信』

2016年06月26日 | 読書

◇『警視の不信』(原題:AND JUSTICE THERE IN NONE) 
           著者:デボラ・クロンビー(DEBORAH CRONBIE)
           訳者:西田 佳子   2005.9 講談社 刊 (講談社文庫)

   


   

   ダンカン・キンケイド/ジェマ・ジェイムズを主人公とする『警視シリーズ』は、『警視の休暇』を皮切
  りに18作品を数え、うち13作が日本語訳で出版されている。社会派ミステリーとされるが、内容的
  には日本でいう警察ものである。主人公の二人とも警察官であり、刑事事件とともに二人の警察官
  とその家族・友人などを巡る人間関係の変化が魅力である。日本でも警官同士の夫婦はそうはい
  ないようだが、外国でも事情は同じではないだろうか。小生もこのシリーズ全部読んでいるわけで
  はないが、訳者西田氏によれば二人は同じ職場の上司と部下、一緒になれば職場結婚である。
   今回は舞台がロンドン。巡査部長であったジェマが警部補に昇進し、所轄のノティング・ヒル署の
  殺人課係長として事件に取り組む。管内で起きた凄惨な殺人事件に本庁(スコットランド・ヤード)
  の捜査一課のスタッフであるダンカン・キンケイドは上司に頼みこみこの事件捜査に割りこむ。この
  二人はお互いに子持ちのバツイチ。同居はしているがまだ結婚はしていない。二人の仲は部内でも
  公然の秘密で、年長のジェマの部下フランクスなどは女性の上司に我慢ならず、トップの警視に不
  満を直訴したりしている。男社会である警察では、男女共同参画時代とは言ってもこのような軋轢
  は世界中何処でも同じようである。

 
   さて肝心の事件はというと、大物アンティーク・ディーラー、カールの若くて美しい妻ドーンが喉を
  切られて殺された。似た手口の事件が2ヶ月前に起きている。連続殺人なのか。年の差婚の嫉妬
  深い夫カールの犯行か。あるいはドーンの不倫の相手フィリップか。ジェマとキンケイドは決め手と
  なる証拠もつかめないまま、警察上層部からのプレッシャーに押しつぶされるように次々と浮かぶ
  容疑者を追い続ける。
   そしてまたも殺人事件が発生。被害者はなんと有力な容疑者とされていたカールだった。
   混迷する捜査。そして思いもしなかった人物が浮かび上がる。

   読んでいて気がついたが、移民問題の難しさが、本書でもきめ細かく語られている。今のイギリス
  ではロンドンの中枢部でもロシア人、西インド諸島人、ポーランド人…が入り混じって住み、互いの
  疎外感を隠そうともせず、冷たいまなざしで監視し合う。子供はそんなことはお構いなく親しくなる。
  EU離脱か否かを決める国民投票は今日始まった。結果は僅差で離脱が決まった。
  人種のるつぼと化した欧州、英国。日本人は依然として余所ごとにしか受け取っていない。いずれ
  難民の大きな流れは日本をも襲うのではないだろうか。

   『警視シリーズ』最新作は『警視の因縁』(2015.6 刊 講談社文庫)
                                                  (以上この項終わり)

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いま畑では

2016年06月25日 | 畑の作物


◇ トマトが赤くなった
  カラス除けのネットを張ったトマトは一部で洋卓赤く実ってきた。

       

◇ 虫がついた小松菜
  このところ忙しくて草取りができなかったので雑草に埋まっている小松菜。ずい
 ぶん虫に食われているが、虫が食うということは農薬を使っていない証拠。多少見
 栄えが悪くても安心第一。というのは怠け者の言い訳か。

   
 
◇ インゲンはまだ花
  インゲンは蔓があちこちに延びだして時々誘導してやらないといけない。まだ花の
 状態で実はしばらく待たなければ。


  

◇ 分葱は分けつ中 
  人様より1カ月も遅れて植え替えた分葱は、今盛んに分けつ中。
  
   

◇ 落花生はいま
  小松菜の脇の畝が落花生。雑草と間違えそうであるが、生育は順調。
 まだ黄色の花は咲いていない。

  

◇ 庭の畑のきゅうり
  葉がうどんこ病なりかかって、あわてて砂糖と台所用洗剤数滴の予防剤
 をまいた。

   
 
                       (以上この項終わり)

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ロイド・シェパード『闇と影』(上・下)を読む

2016年06月11日 | 読書

◇『闇と影』(上/下)(原題:The English Monster)
                         著者:ロイド・シェパード(Lloyd Shepherd)
                訳者:林 香織

    


   つい先ごろ読んだ『リトル・クロウは舞いおりた』(著者:マーク・T・サリヴァン)は、リトル・クロウ
 と呼ばれるトレッキング・ディア・ハンターの物語。豊かで苛烈なカナダの大自然とオジロ鹿との
  闘いの物語とと思いきや、案に相違してアクションものだった。
    妻をハンターに鹿と誤って射殺された大学教授が、アメリカインディアンの呪術を身に着け、あ
  るハンティング・ツアーグループとそのガイドに対し復讐を挑む。そしてハンティング・ツアーの一
  員でありアメリカインディアンの血を引くるリトル・クロウが死力を尽くしてこれに立ち向かう。雪
 に 閉ざされたカナダの森林での壮絶な復讐劇は、息詰まるアクションの連続でハラハラし通し
 だった。

  今度読んだ『闇と影』は言ってみれば英国の時代小説、大英帝国の揺籃期の物語である。これ
 までは近・現代イギリスを舞台にした推理ものしか読んだことがなかったので、これまた新鮮な
 思いで読み進んだ。

  話は17世紀中ごろの、新世界の植民地化をもくろむスペインやフランスにとって代わろうと盛
 んに暗躍していたピューリタン革命のころの話と、19世紀の初め、ロンドンのテムズ河川警察署
 管内で起きた惨殺事件をめぐる話が交互に語られる。この二つの流れがどこで結びつくのかわか
 らないまま二つの話が延々と続く。
  なにしろ17世紀当時まだシティ以外に基盤が固まっていなかった頃のワッピングやドックランズ
 など、低湿地だったテムズ川下流の沿岸開発以前の様子がヴィヴィッドに語られて実に興味深
 かった。

  ロンドンで一旗揚げようとオックスフォードシャーの田舎から出てきたビリー・アブラスは、海賊の首領
 モーガンに雇われスペインやポルトガルの商船を襲ったり、アフリカで奴隷狩りに加わったりし
 次第に重きをなす。新大陸フロリダで原住民に襲われたものの、九死に一生を得てやがて故郷
 に帰る。しかし船乗りとして、海賊としての世界を忘れがたいビリーは、妻を残し再び海へ。ジャ
 マイカでサトウキビのプランテーションで財を成すが、ジャマイカで副総督となったモーガンの葬
 儀への途次、雇っている奴隷らに囚われてしまう。影の犯人はモーガンのかかりつけの医師ス
 ローン。

  一方、19世紀の初頭。テムズ川沿岸港湾商業地の治安を司る治安判事ハリオットとその部下ホ
 ートンは、服地商マー一家と雇人のジェームズが惨殺された事件に取り込まれる。捜査が難航す
 るうちにまた似た惨殺事件が起こる。ホートンの行き付けの居酒屋<王の紋章>亭の親父ウィリ
 アムソンとその妻が、マー一家惨殺と同じ手口で殺 されたのである。共通のカギは現場に残され
 た1枚のスペインのペソ銀貨。
  一体犯人はだれか。

  実はビリーはフロリダで原住民に囚われた際、その地の老婆に呪いをかけられて、不死身の体
 になった。それはありがたいことか、悲しいことか。スローンはビリーを捉えロンドンに連れてきて、
 王立協会の一室に幽閉し永遠の命の秘密を探ろうとする。彼は19世紀にも生き延びたうえ囚わ
 れの身から脱し、イギリスでは法で禁じられることとなった奴隷売買に再び手を染めて、奴隷貿易
 に必要な食料や衣服などを調達する過程で、服地商のマーや食糧売買のウィリアムソンとの商談
 のこじれから彼らを殺す。

     所轄のシャドウェル署の治安判事はビリーの飲み仲間ジョンを犯人として捕らえる。ビリーは
 看守を買収しジョンを自殺に見せかけて絞殺する。そこにも1枚のペソ銀貨が残された。無能な
 警察に非難の声が殺到する。事件はハリオットの友人グレアムの手に委ねられることとなった。
 そしてついに新たな証言でビリーは逮捕される。しかし、何たることか王立協会の横やりでビリー
 は釈放される。だが、これはグレアムの策略だった。法の下でビリーを裁くことは難しい、実力行
 使で葬るしかないとハリエットとホートンを口説いてビリー爆殺の挙に出て成功する。
  おぞましきビリー・アブラス(The English Monster)は死んだ。

  珍しく長々とあらすじを書いてしまった。これは二つの殺人事件を初めいくつもの歴史的事実を
 元にしており、小説というよりも一種の物語である。大航海時代に乗り遅れた当時の小国イギ
 リスが、エリザベス一世の下、奴隷売買という破廉恥な所業で国富を蓄えたという歴史的事実を、
 切り裂きジャックとともに知られた「ラトクリフ街道殺人事件」と組み合わせ綴った、壮大な読み物
 として楽しめる。

                                               (以上この項終わり)
  

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いま畑では

2016年06月03日 | 畑の作物

◇ トマトのカラス避け
  トマト(大玉=桃太郎)は順調に成長中。近所の畑で青いトマトがカラスにやられたいう話を聞いて、
 昨年よりも早くカラス避けのネットを張った。ハウスではこんな心配をしないでもよい。トマトの露地物
 はハウス物に比べ味がいいのだが、こうした手間が大変である。

     


   

◇ きゅうり
  胡瓜は毎日採ることになるので手近な庭の畑につくっているが、すでに2本を収穫。順次2~3本ず
 つ収穫できる(予定)。木のよっては雄花ばかり多くて雌花が少ないものがある。

     

◇ いんげん
  間違って蔓ありインゲンを買ったらしく、大きくなってきたら蔓が出てきてあわてた。百円均一ショップ
 でネットを買って仕立てた。

   

  
 小松菜
  ソラマメは種を採って来年に備えた。畝が空いたので小松菜を蒔いた。小松菜は蒔き時を選ばない
 葉もの野菜であるが、この時期は何となくうまく育った記憶がない。さてどうなるか。

   

                                  (以上この項終わり)

コメント (2)
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