読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

江上剛の『大罪』を読む

2012年11月29日 | 読書

◇ 『大罪』 著者 : 江上 剛   2006.4 徳間書店 刊

   

  著者は1954年兵庫県生まれ。旧第一勧銀に入り、97年の第一勧銀総会屋事件では広報部次長として
 混乱収拾に当たった。高杉良の『金融腐蝕列島 呪縛』のモデルという。

  巻末には例によって「なお、本書はフィクションであり、実在の個人・団体等とは一切関係がありません。」
 とある。
  とはいうものの、こういう本に限って限りなくノンフィクションに近く、実在の個人・団体等がモデルとして存
 在することを経験的に知っている吾輩は興味津々と読む。
  高杉良や本書の著者江上剛もその辺の呼吸は相通じるものを持ち、実名を一字変えるなど、もじっては
 いてもいくつかの事件や報道で推測が付く人物が続々登場するので迫真性がある。セミフィクションとでも
 言ったらよいか、微妙な崖っぷちを歩む小説である。
 
  キリスト教では人を罪に導く恐れのある欲望を七つ挙げ、これを避けるようにという教えがある。
 「傲慢」・「嫉妬」・「暴食」・「色欲」・「怠惰」・「憤怒」・「貪欲」の七つである。
  かつては「虚飾」と「憂鬱」が含まれていたが、グレゴリウスⅠ世の時に虚飾は傲慢に含め、憂鬱は怠惰と
 一緒になって、新たに「嫉妬」が加えられた。虚飾は分かるがなぜ憂鬱が人の避けるべき欲望とされるのか
 私にはわからない。

  本書は大銀行の幹部による会社及び金融界における醜い権力争いの内幕を暴く内容であるが、著者は
 権謀術数のだまし合いの流れを七つの大罪に巧みに取り込んで小説として成功している。さすが作家であ
 る。財務大臣、金融庁長官、外資系投資会社、秘密探偵社と登場人物は多岐にわたる。
 (一部R-15指定間違いなしのシーンがあるので本書を読む時と場所に十分お気を付け下さい。)

                                                   (以上この項終わり)

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