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亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

憶測広がるロバート・ゼーリックの寄稿、金を前面に出したのはなぜ?

2010年11月10日 23時41分42秒 | 金市場

ゼーリック世界銀行総裁の発言・・・ではなく英紙フィナンシャル・タイムズへの寄稿内容がメディアの関心を集めている。ドル、ユーロ、円など主要通貨を交え新たな国際通貨体制の構築を提唱し、金を物価や為替変動の参考指標として導入すべきとした。たしかこの人は以前から通貨制度に関連した金の利用を公言していたと記憶している。その面で、唐突に出て来た話ではない。昨年春に周小川中国人民銀行総裁が現行のドル基軸通貨体制ではない新たな制度の創設を提唱したのは記憶に新しい。IMF(国際通貨基金)の合成通貨とでも呼ぶべきSDR(特別引出権)を使おうなどと主張していたと思う。その後中国はIMFが発行するSDR債を500億ドル分購入。資本不足に直面するIMFに恩を売った。そしてこの秋の総会では投票権の拡大に漕ぎつけた。投票権のシェアで日本を抜かず敢えて3位に甘んじたのは、都合により“途上国”としての顔を使う戦略ともされた。

 

ゼーリック総裁自身は本日のシンガポールでの講演で金本位制自体への復帰を唱えるものではないとしたが、当然だろう。あくまで参考指標にするという点で、通貨バスケットの中に金を入れるのは有効という程度のものだろう。それが一部の報道では、金本位制主張のようなタイトルがついて一人歩きするのは、よくあることと言えよう。

 

ただし、以前より注目度の上がっているのは、今のカジノ化した世界経済がカネを刷ってばら撒く以外に救い様のない状況のなかで、早晩、通貨制度自体の見直しに向かわざるを得ないという予見が広がっていることがある。その面では“金を指標として入れる”という主張は、すでに新興国を始め通貨代替として金を認知し、保有を進めている現状を追認したという見方もできるだろう。

 

間違いなく言えるのは、管理通貨制度自体が曲がり角に来ていて、すでにグローバル化やネット網の進展で金融自体が進化を遂げているときに、旧来型の通貨制度自体の適合性が落ちているということ。早い話がドンドン刷ることのできる紙幣の価値の先行きを、みな真剣に心配し始めたということである。

 

ロバート・ゼーリックという人が世銀総裁のイスに座った際に、なぜ?と思ったのは当方だけではあるまい。ブッシュ政権でUSTR(アメリカ通商代表部)の代表として働いた後に、国務副長官から世銀総裁に転じた人で、かつて(若き頃)は父ブッシュの補佐官に抜擢されたこともある。多分に政治的な色彩の濃い人物。したがって、このタイミングでの寄稿にも、いろいろな憶測が付いて回る。いわく、今回の寄稿で金を前面に出したことで1400ドル突破の一助となったのは確か。ポールソンもジョージ・ソロスも儲かったことだろう・・・・などというのはその類。外野は、いろいろなことを言うのだが、まぁ、ありそうだなぁ、と思ってしまうようなバックグラウンドを持った人でもあるのだ。11月はヘッジファンドの多くが決算期でもある。まぁ、たまたまだけどね。


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