JAZZ最中

考えてみればJAZZばかり聞いてきた。いまもJAZZ最中。

ゲイリー・バートン自伝 / ゲイリー・バートン 著  熊木信太郎 訳

2017-07-02 20:54:08 | 


ゲイリー・バートンの自伝はたぶんいろいろなエピソードがあるだろうなとこれは買いを決めていた。ちょうど遠いところまで出張があるのでポチって準備した。
お休みにとどいたので、バートンのアルバムと並べてみた。アルバムは47枚あって、今はキースを押さえてトップ・ミュージシャンです。



400ページをこえるハード・カバーだから、そうたくさんは売れないだろう(結構高い)けれど、こちらはかなりのファンだからまず必須。
1日の往復で半分ぐらいまで来た。半分で「葬送」位だからそこに至る道が結構詳しい。
読み始めてみると、ほとんどのアルバムは知っているので、こちらは裏がとれて良くわかる。

抜き書きしだしたらきりがないだろうけれど、まずはゲイリーの理解の為の本質を。前書きの話題は私にとってどうでもいいことでかれの音楽。

1961年ジョージ・シアリングのグループに加わる前のバークレーの学生時代の話。

 一晩で一度ぐらいだろうか、馴染の曲でソロ演奏をしていると、予想もしていない短いフレーズを奏でているのだ。 ~
 それ以降、僕は”内なるプレイヤー”が持つ可能性をますます重視するようになった。自分の直感、本能、そして無意識との信頼関係を構築するという、生涯にわたる努力を始めたのもこのときだ。 ~
 自分の内側から聞こえる物事が、僕の学んだ一番大切なおのでないかと考えている。

この後ジョージ・シアリングとスタン・ゲッツのところで修行時代みたいなものを過ごすんだけどこれは面白い。オイオイこんなこと書いちゃっていいのというエピソード満載です。

書いたら版元に怒られるけれど、こんなに面白いんだから是非皆さん買って読んでくださいってことで、スタン・ゲッツのグループにいるころの話。アストアッド・ジルベルトと"イパネマの娘”をヒットさせて、ステージに立つようになっていたころの思い出。

 アストラッド・ジルベルトが絶世の美人と言われているけど、僕にはそうは思えず、 ~  しかし彼女自身は、他人が抗えない魅力をもっていると思いこんでいるらしい。彼女は男とあれば言い寄り(僕もその一人)、毎回のように何かを求めた。 ~
 僕は彼女の誘いに乗らなかった。 ~ 彼女は僕のことでスタンに文句をつけ、あいつはゲイに違いないとまで言ったそうだ。私に関心を寄せなかったのはあいつだけ、ということらしい。スタンにそれを言われたとき、僕らは二人して大笑いした。

 ~
 
 しかし僕がアストラッドを嫌いな本当の理由は、歌が下手なことにあった。

その後、スタンとジルベルトは関係するようになって、奥さんと緊張があったり、金銭的なもつれから(どっちもどっち)訴訟問題になってアストラッドとの共演はなくなる。こんなに面白い話なのに、それがもっと面白い。
 その2年後、ギャラに目がくらんでアストラッドをいれてヨーロッパ・ツアーにでる。

 ツアー4日目の夜、オランダのロッテルダムに滞在中のことである。~ 彼女が繊細なボサノヴァ・ナンバーを歌うとき、スタンはたいていバックで静かに演奏する。だけどその夜に限り、スタンはステージ上を歩き回るようにプレイした。 ~ そして一番の聞かせどころにさしかかったとき、アストラッドの後ろに回り込んだかと思うと彼女の尻にサックスの朝顔をぴったりくっつけ、低いBフラットを思い切り吹いたではないか。 ~ アストラッドは飛び上がってすっかり度を失い、次の小節は悲鳴のような歌声になった。目を見開いて振り向くと、そこにはスタンの気取った笑み。してやったりという表情だ。
 スタンの悪戯は次の曲になるとますますひどくなった。ソロパートに挿しかかった彼はだし抜けに僕の法を向き、違うキーを指示してきた。すぐさま4音程ほど転調する。あとはいわずもがな。ソロパートが終わりに近づき、最後のコーラスを歌うアストラッドのキーにもどさなければならない。だけど彼女のように経験の少ない歌い手が、曲そのもののキーが変わるのT同時に最初の音程を見つけ出すなんて、どだい無理な話だ。
 ~ 予想どおり、彼女はすっかり戸惑っている。すると、どれかは当たるだろうといろいろな音程を試しだした。正しい音程にたどり着くまで四小節ほどかかったようだ。 ~ アストラッドはもう歌うどころでなく、目に涙を浮かべてステージからおりていった。

 こんなに面白い話がジョージ・シアリングのところでもあるから、みなさん是非本を買って読んでください。
 この本6部構成でこのスタン・グループまでがまでが1部"青年時代”と2部"修行時代”このあと3部があのカルテット時代で独り立ち、もちろんここが一番気になるところで、長い間知りたかったスティーブ・スワローのエレベへの切り替えの経緯や、コリエルとの別れなんかも書かれていて私的には本当にうれしい。

 この3部の最後がキース・ジャレットの共演のころでキースのアメリカ・カルテットとバートンのカルテットが同じステージコンサートに立つこと度々あったようだ。
 
 両グループは等しく名を知られていたので、コンサートのオープニングとクロージングを代わる代わる担当した。僕らがオープニングを担当する夜はメンバー全員が会場に残り、向うの最新曲をチェックするためだけに、キースのバンドが出演するセカンドセットを聴いたものだ。僕らはその世界で頂点に立つ、二つのバンドだったのである。

 何ともエキサイト、そして4部"さらなる飛翔”でECM時代に入っていく。
 その後6部の少し前までいくのだけれど、たくさん抜き書きしたからこれ以上はまずい。
 チック・コリア、パット・メセニー、アストロ・ピアソラなんかの話が盛りだくさん、最後はジュリアン・レイジっていうのもうなずけます。

とにかく私的にはいくつもの空白が埋まった素晴らしい本で、私ぐらい楽しめる人は少ないかもしれませんが、永くジャズを聴いている人にはとても凄い本です。

 

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