Noosphere<精神圏>

進化の途上にある人間、これからどう発展するのか。

意識の次元

2021-03-29 01:20:08 | 生命と意識

意識の次元

生物はじっと動かないように見えても、生きるという自律的な活動を続けています。外部から必要な物質を取り入れて、内部で様々な化学反応を継続して、常に活動を維持しています。生命の個体はタンパク質などの物質が絡み合って組織を構成していて、しかも生きようとするエネルギーで満たされて活性化しています。生物はどんなに小さなものであってもかなり多数の物質からなるので、生物は個体を1つにまとめて生きることに集中させているものがあるはずです。私はそれを生きる意識と言っていますが、これは個体の全体に作用して、多様な反応を1つにまとめるように活性化を継続させているものです。この作用は1つの生命個体が活性化を続けようと常に意識する状態と同質であり、全体を物質的に制御する力ではなく、その奥に潜在して物質をまとめる力であると思えます。つまり、個々の生物は生きようとするエネルギーによって全体が活性化していて、全体をまとめているのは物質的な力によるものではないということになります。

生きるという絶え間ない活動を個体の全体に継続させているエネルギーは、生きることを持続しようとする意識から生じています。ただし、意識という言葉は、一般に私たちが何かを意識するというような使い方ではなく、生命個体として多くの物質をまとめて塊にして、1つの個体として生きる活性化のエネルギーを維持するものと捉えます。生物には生き続けるという意識があるからこそ、自律活動を維持するエネルギーがあると考えます。そして、生きようとする意識は、単に生きる状態を維持するだけでなく、長い時間で徐々に複雑になっています。生物が徐々に複雑な組織になってきた経過があるなら、その経過とともに意識にはそれぞれの段階があって、向かうべき方向があると考えます。

地球にある多様な生物には、それぞれの生きようとする意識において位置と方向を持つと考えます。そうすると、この生きる意識は広がりを持つ次元を構成していると捉えることができます。その軸として、ここでは時間の軸、空間の軸、知性の軸の3つを考えます。私たちを含めた生命物質は、この次元の軸において配置されています。生きる意識の1つ目の次元は時間です。生物の個体全体を包み込む意識があるとすると、この意識が内部物質の反応などの変化を起こすためには時間の経過が必要です。動きの基本にあるのは時間の経過です。時間の経過において生物は成長し発展します。生きる意識の2つ目の次元は空間です。生物は物質で組織された塊であり、物質は空間において始めて物体としての形をなすものです。物質としての生命はそれが存在する空間において発展します。生きる意識は生命の継続と発展を維持するために、時間と空間における物質を制御していることになります。

生物が活性化する基本は、代謝という複雑な反応系に支えられています。足らなかったり余ったりしてバランスが崩れ、それを補う方向に力に生じて、そこにバランスに向かうことを常に繰り返しています。そして、必要なものを取り入れ、不要なものを排除する循環をしています。この因果関係はタンパク質の組み合わせとして、決められた遺伝子に当てはめて記憶されています。生物は同じ遺伝子を持った細胞の集合体であり、個体ごとに特徴のある形態や機能を確保する仕組みを持ちます。そして、地球上に多種多様な生物が存在していて、それぞれの個体では決められた組織の活性化を継続しています。生命の巧妙な仕組みは遺伝子に内包された情報だけではありません。多種多様な広がりの生物を作り上げるにはどんな仕組みがあったのでしょうか。初期の生物はどうやって生体の情報を遺伝子に残す仕組みを完成できたのでしょうか。生物が自律的なバランスの動きにおいて活性化を持続する仕組みはどうしてなされたのでしょうか。私は生命の仕組みを操る知性が、生きる意識に内包されていると考えます。

生物は生きている限り活性化を維持し、成長し世代交代することが一般に事実として知られています。生物は生きることに特化した組織構造を持ち、環境に応じた感覚器官を備え、その置かれた空間と時間における活性化を強制されていて、その関わりから抜け出ることができません。つまり、生きる意識の基に活動を始めると死を迎えるまで、身体組織や環境の範囲内での活性化を継続することに束縛されます。しかし、生物の発展を考えると、その初期の段階では生命活性化の継続だけに集中しますが、神経系と脳の発達に従って多様な適応をする種が現れます。その多様な種の複雑さを縦軸に、時間の経過を横軸にとると、それは生物の組織が徐々に機能を増やし知性的行動になっていく上昇の軌跡を表します。個体の組織構造は固有の遺伝子に関与するものですが、個々に生じた因果関係は、すぐに遺伝子には反映されません。生体が複雑化する仕組みは、生きる意識の知性の軸における方向に関与しています。

生物という塊を構成する物質は空間の軸にあり、それは時間の軸において複雑へと発展するという方向性を持っています。その成果として、大脳を発達させた生物において知的行動をするまで発展したということです。人間においては、自己を明確に自覚することで、そこに内省が生じ行動への欲求が多様化しました。知性を得た人間は、その行動において様々な方向への広がりを持ちます。人間への発展は知性の軸上にあるのは明確であり、これが生きる意識の3つ目の次元となります。生命にある意識の次元を考えると。複雑になっていく軌跡は、時間の経過とともに空間における変化は多様な広がりとなって現れます。人間は、その知性によって意識の次元にある時間と空間を自覚して、今や生物の複雑な仕組みを対象として追及する段階になっています。人間の意識は生物として新たな次元を開拓していて、そこに知性の軸における未来の位置と方向があると考えます。

生命を維持するタンパク質の代謝や反応系、それを応用している遺伝子の機能などの組織構造は、生命の活性化を継続するには必須であり、生命をなす段階の初期に完成されたはずです。これらの機能はタンパク質の性質を巧みにつかんでいることから、知性の軸上で出来上がってきた仕組みです。生命組織は、その当初から代謝などの機能を備え、潜在的に時間や空間を知覚して感覚器官や神経系などの機能を複雑化してきました。そうなると、生きる意識には元々知性の軸に沿って複雑になる傾向があるといえます。言い換えると、生命が複雑な方向へと変化したことは、生きる意識が知性の軸において上昇してきたということです。そして、そこには物質的ではない力が働いています。これを精神的なエネルギーとして考えると、このエネルギーは時間、空間、知性の軸においての位置と方向を持ちます。この複雑になる方向に向かわせる力は、知性の軸において常に高い方に押し上げている精神的なエネルギーとなります。この精神的エネルギーは生きる意識が持つ生命のエネルギーを基にして発展しています。大脳が発達した人間は、単に生きる欲求の範囲を超えて知性を高めるようになっています。そして、様々な個性に分かれ広がりを持って、知性の軸上の位置と方向を拡張します。人間の位置と方向の将来は知性の軸での延長として考えることになります。

人の頭脳は様々な事象を内省して因果関係を究め、先にある未来を考えます。人間として生きているという状態を維持するために、生命維持に必要な物質的欲求のエネルギーだけでなく、知性を高めるという精神的な動きを持ちます。そして、それが精神的欲求へのエネルギーを生じさせています。複雑に向かわせる力は、知性の軸にある人間の位置をより高く押し上げようとしています。つまり、意識の次元から考えると、生きる意識にある生命を維持するエネルギーを基にする発展から、精神のエネルギーへと飛躍した段階です。知性の軸に沿って人間に様々な個性が現れ、多様な価値判断が生じて、そこから知性の軸上の方向が定められます。当然のこととして、現時点で私たちの感覚器官や脳の認識方法について限界があることに気づきます。そして、既存の生きるための機能や組織だけでなく、新たな精神エネルギーに対応する形へと発展するはずです。私たちの目の前に壁となっているものの1つは、常識とか既成事実として、納得して思い込んでいる固定観念があることです。私たちはまわりの事象の成り行きを常識の枠に嵌めて、疑問を持たずにそれを納得してしまいます。

生命維持の欲求と格闘してきた歴史において、私たちは人として、集団のなかで滞りなく生活できる環境に置かれて、その中で生きていくための慣習や通念において育ちます。私たちが様々な因果の経験から出来上がった固定観念によって納得してしまうと、それが私たちの内省の広がりに対して圧力となります。その元を考えてみると、平穏な生活環境を継続してそこで快適に生きていくことに束縛している力を感じます。人はまわりの環境に合わせなければ生きられない状況にあって、その固定観念に埋もれて、感情を抑え忍耐のなかで毎日を過ごしています。生命の活性化が常にバランスの崩れからバランスを取る循環を繰り返しているのと同様に、人が生活する上で常に精神的な葛藤と忍耐という場面を繰り返しています。私たちはこの閉塞する感覚をどのように克服すべきなのでしょうか。

知性の軸の発展では、物質的な成果を伴っていても、基になるエネルギーは物質的なものではありません。やる気を起こして何かに夢中になるとき、他のすべてを忘れて没頭します。そこでは、自分の意識がその対象に集中して他のことを抑えています。また、身体から生じる欲望をおだやかな感情で耐え忍ぶことで、その因果から逃れられる経験もあります。物質的でない欲求が心に起こったとき、それが活力となって意識が集中して成果を得られます。人間同士が競い合い集団のなかで個性を磨くという過程では、自己の意識において常に葛藤と忍耐が繰り返されます。そういった人間としての行動における意識の位置と方向において、上昇する未来が明確になっていきます。とりあえず、意識の次元において、知性の軸の軌跡が上昇する方向を模索することにしましょう。

人間の個性に様々な知的分化を生じるのは、生物の適応放散と同じ仕組みがあって、知性の軸における発達の段階です。生物が複雑になるに従い神経系や脳が発達した経過に、その鍵となる仕組みがあるはすです。生きる意識が生物の初期の状態から発展してきたなかで、複雑になっていくという方向があったからこそ、生きる欲求からの目的を効率的に達成する働きかけがあり、感覚器官や神経系などの発達になっていると考えます。知性の方向において、様々な欲求をいかに叶えるか、そこに知性の軸によって機能を充実させるエネルギーがあります。環境との関わり合いの積み重ねが遺伝子の固定において継続を支えているように、知的な経験が先に進める精神のエネルギーを育てます。感覚器官でフィルターされた情報を既成のパターンによって脳で解釈するだけでなく、知性によって新たなパターンを増やしていくことになります。つまり、自分で自分を制限していることや、自己の納得する範囲に閉じて生活していることに気づいて拡張することです。精神エネルギーによって制限に気づいたとき、どのように拡張するかという内省の範囲が広がります。ここに知性の軸の方向があります。この方向によって生きる欲求からの制限から徐々に解放されていくことになります。

神経系や脳の進化は生きる意識の上昇そのものであり、生きる意識の上昇は精神の発展における基礎となります。その精神の発展の奥に潜むものは、知性を上昇させる力であり、それは単に生きることを継続する欲求とは対極にあります。私たちの未来脳へと舵をとる方向は知性の軸において意識が上昇する方向に見えるはずです。なぜなら、生きる意識の作用によって知性の上昇ということがあり、その方向を決めるのは私たち自身の中にあるからです。未来に導くべき知性とは何かを考えることです。知性の軸において複雑になる方向に、自己の内部にある精神エネルギーを起こす必要があります。固定観念に囚らわれず現実をありのままに捉え、見えないところで作用しているものを理解することです。感覚による情報の限界を理解して、正しい因果関係を知的に検証できることが必要です。常に内部に起こる生命維持の欲求を抑え、穏やかなる忍耐のもとで柔軟に対象を追求することが、精神エネルギーを昇華する道へ導きます。生きる意識において知性の軸があり、知性を高める方向性があるということは、将来に現時点の脳を超える発達が期待できるはずです。

Written by Ichiro, 03/28/2021, 

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