100年インタビュー:宮崎 駿
放送局 :NHK総合
放送日 :2009年2月14日(土)
放送時間 :午後3時45分~午後4時時45分(放送終了)
*この番組は、NHK-BSハイビジョンで、2008年12月28日、2008年11月28日、 同11月20日に放送された番組の再放送です。
BSでの放送は90分番組でしたが、地上波での放送は60分のダイジェスト版のようです。
<mimifukuから、一言。(2008年11月記入)>
今年の夏休みに公開された映画「崖の上のポニョ」は、総入場者数が1300万人に迫り、興行収入は150億円を超える今年最大のヒット映画として歴史に刻まれそうです。
過去に興行収益が150億円を超えた映画は、「崖の上のポニョ」を含め8本(邦画5、洋画3)を数えるのみで、その内の半分にあたる4本が宮崎駿監督の作品。
まさに日本を代表する映画監督であり、
手塚治虫さんがマンガの神様なら、
宮崎駿さんはアニメ映画の神様として、
後世まで語りつながれることでしょう。
宮崎アニメの特徴は、まず人間ドラマが主題であること。
そして、テーマは平和と愛の追求。
今回放送される<100年インタビュー>は、聞き手の下調べも万全の90分:ロングトーク番組。
生い立ちから青春時代、成功と失敗、宮崎アニメに込められた思想も網羅し、宮崎駿監督の半生に迫る啓蒙度の高い貴重な番組になるでしょう。
「崖の上のポニョ」の映画公開に合わせ放送された、一連の宮崎監督のテレビ出演も、暫くは御預けとなると考えられるのでお見逃しのないように…。
<番組を見た感想。(2008年11月記入)>
この番組を一番熱心にご覧になられたのは、30代の女性の方かな?
中高大問わず、学生の方も多くご覧になられたことと思います。
でも、番組の感想を一言で言える人は少ないだろうと感じます。
宮崎駿(はやお)監督の口からマシンガンのように放たれた情報量の多い言葉の数々は、多くの矛盾を含んでいるように感じられたのではないでしょうか。
宮崎監督は、
「本当は、映画なんかは一度見ればいい。その方がイメージとして強く心の中に残るんだよ。」
と語られていましたが、この番組は録画して、10年後、20年後に見直せば、番組への感じ方、宮崎監督の言わんとしている言葉の意味の捉え方が変わってくると感じます。
宮崎監督の言葉の矛盾は、
<映画制作者としての責任>と、
<個人としての思い>の格差(ギャップ)。
宮崎ブランドの責任者としての立場は、後退する事が許されません。
成功(ヒット)させることが、次の映画制作につながりますし、
ジブリ・スタッフの生活に対しての責任もあります。
つまり、
ビジネス的な立場からの、
<制作者としての責任>と、
個の立場からの、
<絵芝居(動く紙芝居)画家としての宮崎駿個人の希望>
を、同時進行でインタビュー中に答えているため、名司会で知られる才女:渡邊あゆみアナウンサーですら、欲しい言葉が返ってこず言葉に窮する場面が数箇所見られ、監督の持つ言葉の深さに、只者ではない(当たり前なのですが)存在の大きさを感じました。
また、職人としての立場と、創作者としての対場を行き来する宮崎監督の心の動きも正直に語られ、絵を動かすことへの徹底したこだわりは、まさに求道者であり、スカートに例を挙げたリアリティの追求と現実の持つ意味。
*枚数とリアリティの関係。
*予算とリアリティの妥協。
*目指すリアリティとヒットの宿命。
宮崎監督の人生は、
<アニメーション製作の理想と現実の狭間>で、
もがき続けてきた歴史であり、
より良いものを伝えたいと言う強いメッセージが伝わりました。
<トトロのメルヘン>と、
<もののけの現実。>
曖昧な社会正義と現実の世界の中で、
答えを出せないでいる宮崎哲学(自身の考え)の嘘偽りのない独白は、
テレビ鑑賞者によって捉え方がまるで違うでしょう。
おそらくは、<宮崎駿の誠実>は、
見方によって偏屈や戸惑いに映ったのではないかとも感じます。
また、アニメ製作におけるエネルギー消費(膨大な労働量)の真実も感じることができ、実り多き番組でした。
機会があれば、もっと詳細にレポートしたい内容の濃い番組として、私の記憶に残りました。
【 2009年2月10日追記:番組詳細】
<宮崎駿監督が語った印象的な言葉>
「生きている間の自分の持ち時間は、ちゃんと生きよう。」
「職人としての仕事の中で経験していく、技術の追求とともに養われる精神の向上や洞察力が、工業製品で大量消費する世界の中で埋没していく(そのことが社会を薄っぺらなものに変えてしまった)。」
<宮崎駿監督を読み解く、キーワード>
・17万枚の手書き《ポニョ》。
(枚数よりも中身の充実・新しい試み)
・絵画表現《生き物としての波》。
(波のリアリティ:CG⇔波のデフォルメ:手書き)
・身体が弱くコンプレックスのある少年。
(負けず嫌い:手塚治虫との共通点)
・大人に対して、いい子を装う高校時代。
(子供時代の思い出を封印)
・18歳で漫画家になろうと決意。
(人真似の否定)
・漫画家になることは自由になることだ。
(漫画家としての手塚治虫・単行本の影響)
・漫画の拘束と絵画芸術の表現技法の違い。
(手塚漫画の影響からの不可避と苦悩)
・東映入社=アニメーターへの転身。
(責任回避の時代を経験・無記名の肯定)
・アニメーターとしてのモノの見方。
(自然の研究とリアルの追求)
・ファンタジーと自己投影。
(自分の無力さの忘却志向)
・映画は1回見るだけでよい。
(出会いの瞬間を記憶する)
・その主人公に入れ替わる。
(妄想と現実⇔理想の追求)
・一期一会《映画・音楽・経験》。
(劇的経験とノスタルジー)
・SFのストック。
(構想のヒント)
・散歩と身の周りの風景。
(素晴らしいと感ずる心=観察者)
・幼児期の1日。
(大人の1年=未知への挑戦と達成)
・不条理《人の目》。
(人間と自然との関係・矛盾・曖昧)
・冷や汗。
(もののけ姫の思い出と感謝)
・堀田善衛。
(さすらう旅人・考える職業)
・絵草紙。
(アニメーション)
・ストック。
(制作3年・映像2時間→ゼロスタート)
・アニメーター志望者へ。
(職人としての技術向上=視点の変化)
・追求・求道《創作と没頭》。
(常識的価値観の忙殺=社会生活との隔離)
・イメージ。
(記憶との対話=自己の経験・意識・学習)
・子供。
(無垢=価値判断がニュートラルな状態)
・子供の個性をのばす。
(時代にあった大人の価値基準の押し付け)
・維持《スタジオ・美術館》。
(希望と実現・維持することへの苦悩と責任)
・時代。
(過去・現代・未来=社会変動と心情変化)
・幸せ。
(出会いの瞬間=日常生活と観察)
・アニメーション《映画》。
(社会に対して公的なもの=作品・誇り)
・67歳《年齢》。
(若造・ひよこ・何でもできる世代)
*手塚治虫・宮崎駿・安藤忠雄
~クリエーター達のメッセージへのリンク~
http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/d/20090212
~以下、NKHホームページより記事転載。
今回のゲストは、日本を代表する映画監督の宮崎駿さん(67歳)。
これまで一貫して「子どもたちがこの世に生まれてよかったと感じられる」という思いをもって、アニメ作品を作り続けてきた。
1984年、「風の谷のナウシカ」が高く評価され、
その後、「となりのトトロ」「紅の豚」「もののけ姫」など数々のアニメ映画を世に送り出してきた。
2001年発表の「千と千尋の神隠し」は、ベルリン国際映画祭最高賞・金熊賞を受賞。
また、2004年「ハウルの動く城」では、ベネチア国際映画祭オゼッラ賞受賞。
最新作の「崖の上のポニョ」も、観客動員1000万人を超えるなど大きな注目を集めている。
アニメ映画の世界で、常にヒット作を生み出し続ける宮崎監督。
彼を創作に駆り立てるエネルギーは何か。
現代の子ども達をどのようなまなざしでみつめているのか。
そして未来へのメッセージは何か、
など90分にわたり深く聞く。
*聞き手は、渡邊あゆみアナウンサー。
<関連番組。>
プロフェッショナル仕事の流儀スペシャル
▽宮崎駿のすべて(再放送)
~『崖の上のポニョ』密着300日~
放送局 :総合/デジタル総合
放送日 :2008年11月24日(月)
放送時間 :午後1:05~午後2:35(放送終了)
*2008年8月5日放送分の再放送でした。
▽映画監督・宮崎駿の4年ぶりの新作が7月末に公開された。
宮崎にとって「最後の長編」。
その創作現場に番組が密着取材した。
宮崎駿の秘密に迫る88分の夏休みSP。
<番組内容>
映画監督・宮崎駿の4年ぶりの新作「崖の上のポニョ」が2008年7月19日に公開された。
番組は、宮崎が「最後の長編」と語る「崖の上のポニョ」の創作現場に300日にわたって密着。
宮崎アニメの秘密を徹底的に解明する。
映画作りが大詰めを迎える中、宮崎が見せた涙。
カメラは、映画誕生のドラマを克明にとらえた。
また、これまでほとんど語られることのなかった宮崎の半生も取材。
知られざる人間・宮崎駿の歩みにも焦点を当てる。
・アニメーターが描いた絵を監督自らすべてチェックする。
宮崎は、イメージボードで構想を膨らませ絵コンテによって脚本化し、アニメーターが描いた原画・動画を自ら手直しする。
そして背景美術・色彩設計・撮影など各過程の細部に至るまで自らの色に染め上げる。
宮崎にとって映画制作は「作る」というより、「作らされる」という感覚だという。
そこにあるのは、自らを「映画の奴隷」として見立て、少しでも良い作品を生み出そうとする全身全霊を捧げてゆくすさまじいまでの気迫だ。
ゆえに宮崎は映画に関わる全スタッフに対して峻烈なまでの気構えを求め、またそれ以上のものを自らにも求めていく。
・宮崎が見聞きしたものが、映画に反映されてゆく。
「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」など数々の作品を世に送り出してきた宮崎。
企画を生み出すとき、宮崎は「半径3メートルで仕事をする」という信念を大切にしてきた。
宮崎は身近なところで出会ったものを梃子(てこ)にして想像力を最大限に膨らませ、イメージを紡ぎ出してゆく。
家の近所で見つけたバス停やスタッフの娘など、意外なほど近いところにアイデアの種はあるという。
宮崎にとって映画とは単なる空想や作り話ではなく、日々の体験や出会ったものから生み出されたものにほかならない。
宮崎は映画作りという過程に自らの人生を刻印しているのだ。
・楽しんでもらえてこそ、自分の存在が許される。
67歳にして宮崎を創作に駆り立てるものは何なのか。
宮崎がこれまであまり語ることのなかった胸の内を明かした。
「人に楽しんでもらいたいという意識なんだよ、動機はね。なぜ楽しんでもらいたいかといったら、楽しんでもらえたら、自分の存在が許されるんではないかっていう、無用なものではなくてというふうな抑圧が自分の中にあるから。」
「それは、幼児期に形成された物が何かあるんだろうと思うんだけど。それを別にほじくりたいとは思わない。僕はとにかく人に楽しんでもらうことが好きですよ」。
【出演】映画監督…宮崎駿
【キャスター】茂木健一郎、住吉美紀
【語り】橋本さとし
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*映画「崖の上のポニョ」と、「ジブリの風景」&「宮崎駿のすべて」
http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/c50f8d46aaa9717ebb6bb63651f29b40
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