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みどりの一期一会

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「女性学/ジェンダー学」および「ジェンダー」概念バッシングに関する日本女性学会の声明

2005-07-23 13:50:03 | ジェンダー/上野千鶴子
みなさま

「日本女性学会」「が、7月16日に、
「ジェンダー」「女性学」「性教育」「男女共同参画社会法」批判の動きに対し、
「『女性学/ジェンダー学』および『ジェンダー』概念バッシングに関する声明」
を発表しました。
わたしは研究者ではありませんが、
日本女性学会の会員ですので、以下に声明を転載します。

なお、「日本学術会議」も、6月23日に、
「男女共同参画社会の実現に向けて
-ジェンダー学の役割と重要性」
を発表しました。
あわせて、お読みください。


「女性学/ジェンダー学」および「ジェンダー」概念バッシングに関する日本女性学会の声明

最近、一部のメディアや政治活動において、ジェンダー概念や男女共同参画の理念を曲解した「ジェンダーフリー」批判が強まっている。この動きが、「ジェンダー学(ジェンダー論、ジェンダー研究)」、「女性学」、「性教育」等の教育実践や「男女共同参画社会」、「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」等の行政施策への揺り戻しにまで拡大している事態に鑑み、日本女性学会はここに声明を行うものである。

人間の平等の重要な構成部分をなす男女平等の理念は、長い歴史の中で多くの先人たちの努力によって追求されてきた崇高なものである。20世紀後半に展開した「女性学」、「男性学」、「ジェンダー学(ジェンダー論、ジェンダー研究)」、「セクシュアリティ研究」、「レズビアン/ゲイ・スタディーズ」、「クィア研究」等の学問は、いずれもこの理念を具現化したものとしてある。そして、これらの学問の中で中心的な役割を果たした概念が「ジェンダー」であり、この概念は現在、国際的な学術用語として確立し、学問領域を超えて分析に使用されている必要不可欠な概念の一つとなっている。
すなわち、今日では、階級や民族といった従来の分析概念とならんで「ジェンダー」に敏感な視点なしには、人間存在の多様性に配慮した豊かな分析・認識はありえない。これが国際的・領域横断的な学界の常識であることは、これまで「ジェンダー」に関連する文献が、世界中のどれだけ多くの分野にまたがって生み出されてきたかを見れば一目瞭然であろう。この蓄積を消滅させることは誰にもできない。

国連が1975年を「国際女性年」とし、続く10年を「国連・女性の10年」と定めて以降、国際的にも女性の地位向上、男女平等の施策が積み重ねられてきた。例えば、わが国も批准している女性差別撤廃条約やILO156号家族的責任条約は男女平等を推進する重要な思想に立脚したものであり、これらにおいては、男女の役割・生き方を従来のように本質主義的・固定的にとらえることが批判され、ジェンダー不平等を解消する上で、男女個々人がそれぞれ対等な権利で自立、エンパワメント、自己決定していくことの重要性がうたわれている。こうしたジェンダー平等の視点はもはや国際標準となっており、わが国の男女雇用機会均等法や育児・介護休業法、男女共同参画社会基本法、DV防止法等もその流れの中で策定されたものである。そして、男女共同参画社会基本法は、このような流れの中で、「ジェンダー」概念を包含しつつ打ち立てられた、日本社会の民主化と進展の重要な一里塚であった。

しかしながら、今、この国際的努力の成果が、拙速な議論のもとに反故にされようとしている。「ジェンダー」という用語の使用制限の要求は学問的に見れば非常識と言わざるを得ず、もしこのような要求をもとに、関連教育や男女平等政策への介入、男女共同参画社会基本法の骨抜き(内容の後退)、ジェンダー関係の書籍の排斥などが行われるのであれば、それは、「学問の自由」に対する侵害であり、国際的・国内的に積み重ねられてきた人々の英知に対する裏切りである。「男女共同参画」の英訳が“Gender Equality” であるように、両性の平等
について発言・思考するにあたって「ジェンダー」概念を用いないことなどおよそ不可能である。すでに国際標準となった「ジェンダー」概念を使用しないなどと決めれば、日本は世界に向けて有意味な学問的発信ができなくなるばかりか、侮蔑と嘲笑の対象となるであろう。

学問は真理の探究を通じて、広く人類の福祉の向上のために行われるものであり、「ジェンダー」概念は、そのための不可欠なキー概念である。今や学会においてジェンダー部会の見られないところは少数であり、どの学問分野でも従来の学問体系に対するジェンダー視点での批判的見直し(再構築)が進められている。多くの大学では、ジェンダー学あるいは女性学関連の教育プログラムが設置され、ジェンダーに関する共同研究が進められている。行政や女性センター、男女共同参画センターなどにおいても、男女平等・男女共同参画に対する啓発や教育プログラムが実施されている。豊かで公平で活力ある社会を築くこのような営みを破壊することは決して許されない。

日本女性学会は、他学会・研究機関、市民とともに、今後とも「学問の自由の擁護」と「人間解放に資する研究」への努力を惜しまぬ決意をもって、昨今の「ジェンダー」批判、「男女共同参画社会」揺り戻しの動向に抗議するものである。関連諸機関の適切な対応を期待する。

                      日本女性学会 第13期 幹事会
                      2005年7月16日


インフォメーション「日本女性学会が抗議声明」
(7/25毎日新聞夕刊)


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読みました。 (るな)
2005-07-23 22:03:26
●きちんと読みました。

このメッセージが、伝わらないと、

とんでもないことになりますね。



一般のマスコミではほとんどとりあげれらていないので、これからも情報発信してくださるようお願いします。

返信する
声明文 (むく)
2005-07-24 00:42:20
日本女性学会の声明文を読ませていただきました。

一般的なメディアから情報として入手できないので感謝します。

返信する
多くの女性に届けたい。 (みどり)
2005-07-24 09:09:13
るなさん

ほんとに、このメッセージは、多くの女性に読んでもらいたいです。バックラッシュ派の言ってることは、デマや嘘が多いのですが、声が大きいと信じてしまうから。

男女共同参画が後退すれば、女性の地位は確実に低くなります。かれらの本音は、女性を家に閉じ込めて、柔順に家事や子育てだけをさせておきたい、ということですから。

研究者は研究者で、ひろく各学会に声明をだすように働きかけているそうです。

わたしにできること、まずは情報発信。

あとは、受け手が、デマをうのみにしないで、自分で考えはじめてほしいですね。



むくさん

「日本学術会議」のほうは抗議文や声明ではありませんが、バックラッシュに対抗してだされたのは明らかです。30頁以上の報告ですが、基本的な考え方が整理されています。議会の立論や反論にも使えると思いますから、ぜひお読みください。

GSMLには参加していらっしゃいますか?

こちらから入る情報は、タイムリーで重要なものが多いです。

返信する
声明文 (むく)
2005-07-25 02:16:21
身近な有る方がもう「男女共同参画はもう遅い」とコメントしてました。本当にもう遅くて、もっと新しいことに取り組むべきなのか疑問に思っていました。

 この声明文から、さらに、男女共同参画を進めて活動します。転載させていただきます。
返信する
声明文 (ふみ)
2005-07-26 03:58:47
みどりさん、こんばんは。

声明文は毎日新聞のインフォメーションでとりあげていただいたようです。

大学で男女共同参画社会に資する人材育成のための教育プログラムづくりを目指して活動することになりました。

今やれることを、それぞれがそれぞれの場所で。頑張りましょう!
返信する
さっそく載せました。 (みどり)
2005-07-26 07:13:53
ふみさん

貴重な情報をありがとう。

さっそく記事に載せました。

お互い、いまここで、できることをしようね。



ところで、大学ってどこ?
返信する
男女共同参画はこれからが正念場。 (みどり)
2005-07-26 07:19:41
むくさん

「男女共同参画」はまだまだこれから、ですよ。

この政策が進むと困る人たちが、いまバックラッシュをしている。それだけ社会的にインパクトがあり、実効性もある改革だということです。

たからそれぞれの人が、腰をすえて、足元で闘うことが必要でしょうね。
返信する

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