福田の雑記帖

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映画『ルートヴィヒ』 4時間画面を見つめ,満足した

2011年09月24日 09時17分26秒 | 映画評
 映画『ルートヴィヒ』は、ヴィスコンティ監督による1972年作の映画。バイエルン国王ルートヴィヒ2世の生涯を史実に沿って描いた作品である。
 4時間もの作品になったが、上演の都合から3時間版、約140分版の短縮版もあるとされる。私が観たのはオリジナル版なのだろう、途中の休憩を入れて、約4時間。

 筋書きはいろいろ語り継がれている通り。
 19歳の若さで国王となったルードヴィヒ2世は、作曲家ワグナーに心酔し国費をつぎこむ。その庇護のもと、歴史に残る大作「ニューベリングの指輪」が完成した。王は徐々に国政に興味を失い,城の建立と音楽等の夢想・空想の世界にのめり込む。ワーグナーの音楽,城の建立は、ヨーロッパの覇権争いに巻き込まれたルートヴィヒの現実逃避の姿だった。ほろびゆく権力者は、何故か巨大な構造物をつくりたがる。これは何処の国にもあることで、人間に共通の心理の一つなのかもしれない。
 王は 歴史に残る名城ノイシュヴァンシュタイン城を始めとする3つの城を作る。1866年にオーストリアとの戦いに敗れ、ワグナーにも裏切られたルードヴィヒは、失意のどん底に突き落とされ,次第に判断力も失っていく。王はノイシュヴァンシュタイン城が完成してからは、首都のミュンヘンには戻らず、この城で生活をするようになる。思い余った家臣たちは摂政を立て王をシュタルンベルク城に幽閉するが、その翌日、王は主治医と湖畔を散歩中に謎の死を遂げる。この映画では主治医を殺害し自死したと扱われている。

 主人公役はヘルムート・バーガーと言う俳優。勿論私は初耳。17才の凛々しく、気高く若々しい表情から、精神に破綻を来した後の肥満の雰囲気、黒く汚れた歯、既に凛々しかった王の面影はみられない。 この空虚な表情の40才代までの変化を見事に演じきっている。
 共演する美しい男女とその衣装、当時の貴族生活の生活の一端を観ることが出来た。実際に撮影が行われたノイシュヴァンシュタイン城の調度品、美術品等が重厚に撮影されており,美術的な意義も素晴らしかった。
 私はまだ評価できないが、記録映画として見てもレベル・価値・存在感はとても高いし、凄い。映画史に残る名作なのであろう。

 私にとってのこの映画の魅力は、19世紀後半のヨーロッパの歴史 絵画や文化に触れられたことにもあった。それと王とワーグナーがどのように描かれているのか、バックにはどのように音楽がつかわれているのか,と言う点であった。楽劇「タンホイザー」から「夕星の歌」などが使われていた。

 ミュンヘンはドナウ川の支流イザール川沿いに開けたドイツ第3の都市である。私は今から27年前に訪れた。ミュンヘン国立歌劇場は19世紀に国王によって造られ、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の初演が行われたところである。ミュンヘンは音楽好き、ワーグナーを好むものにとって特別の街である。ミュンヘン国立歌劇場では2晩オペラを聴くことが出来た。
 その時のことを思い出しながら4時間画面を見つめ,満足した。
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