マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

御礼

2013年06月03日 | 読者へ
 post 8voについて、にわか調べさんと浦さんから丁寧なご教示をいただきました。ありがとうございます。インターネット時代の良さを十分に享受した感じです。

 そこで分かった事を手がかりにして、『ジーニアス英和辞典』を見直してみましたら、octavoの所に「8つ折り判(の本)(全紙の8分の1の大きさ)。〔略〕8vo, 8°, oct.」とありました。そこにはまた、「folio, quarto」を参照するようにとの指示もありましたので、それを見てみますと、folioは「2つ折りの判」、quartoは「4つ折り判(約24×30cm)」とありました。浦さんの教えてくださった一覧表を見ますと、4toという表示がありますが、これはquartoの事なのですね。

 考えた事を書きます。

 ① これは本の判型のことだろうという推測は正しかった。

 ② octavoをなぜ8voと略する方法があるのでしょうか。「この8.はeighthと読まない」と注意するためでしょうか。4toも同じでしょうか。ヘーゲルの引用には「8.」とありましたが、「ジーニアス」にはそういう略はなく、「8°」となっています。両方あるのでしょうか。

 ③ それにしても、数字を順番にしないで、わざと(?)分かりにくく表現するとはイギリスらしいですね(folio, quarto, octavoではなく、postとかいった表示の事)。こういうのはテニスの得点の数え方だけかと思っていましたが、ほかにもあるのでしょうか。伝統を重んずると言っても、ドイツ人はこういうことはしないと思いますが。

 もっとも、本の判型では日本にも「四六判」とか「文庫判」とか「新書判」とか、はては「全書判」などというものもあります。外国語に訳すときはどうするのでしょうか。日本の文庫は岩波がドイツのレクラム文庫に範を取ったことで有名ですが、実際のサイズは日本の文庫の方が大きいように思います。

 今、少し見てみただけですが、外国の本の判型はどうなっているのでしょうか。国際的統一は必要ないとも思えますし。何か、訳が分からなくなってきました。

 ④ postの説明の中に元々octavoやfolioやquartoへの言及があればよかったと思います。限られたスペースの中に多くのことを詰め込まなければならないので、辞書作りは大変でしょうが、最低の事は書いてほしいと思います。

 先日、「銘仙」を新明解で引いてみましたら、「和服地・布団地に使う絹織物。染色した玉糸などを平織にしたもの」とありました。この説明ではなぜ分からないかと言いますと、これ以外の用途の絹織物にはどういう物があるのかが示されていないからだと思います。「当該の物の全体の中での位置づけ」が分からないのです。

 そこに出てくる「平織」についても同じ事が言えます。平織については、「縦糸と横糸とを一本ずつ交差させて織る最も基本的な織り方(で織ったもの)」とあります。この説明でも、「その他にどういう織り方があるのか、それは何と呼ばれているのか」といった隣接する事項との異同や、一段高いあるいは大きい概念は何か、といった事の説明が欠けていると思います。

 最近、『舟を編む』とかいう辞書編集者の喜怒哀楽を描いた小説がベストセラーに成っているようです。結構な事だと思います。まだ読んでいませんが、そこに描かれている「辞書編集者の苦労」とは、人間関係とかの苦労を除いて辞書そのものに関する苦労としては、多分、「語釈に関係する苦労」だろうと推測します。ここで述べたような問題に気づいているのでしょうか。
コメント
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