マキペディア(発行人・牧野紀之)

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義務教育にも留年を?

2012年05月14日 | カ行
 01、朝日の記事

 「義務教育にも留年を」という橋下徹・大阪市長の提言を子どもたちはどう考えるのか。東京都内の中学校が、そんな題材を授業で採り上げた。8割近くの生徒が反対したが、「留年でなく、補習をすればいい」、「できない子を落とすのでなく、できる子を飛び級で上げたら」といった提案も相次いだ。

 東京都杉並区立和田中学校が2月29日と3月l日、1~2年生の総合学習の時間に採り上げた。
           
 2月29日、1年E組。代田(しろた)昭久校長が新聞記事のコピーを配った。橋下市長が「義務教育で本当に必要なのは、きちんと目標のレベルに達するまで面倒を見ること」として、市教委に留年を検討するよう求めた内容だ。

 生徒らはまず、記事を読んで留年導入の長所と短所を考えた。

 メリットは──「わからない授業を聞く苦痛からの解放」、「学力の底上げ」。デメリットは──「劣等感を生む」、「機械的に留年させると個性がダメになる」。

 続いて自分の意見を200字以内で書いた。そのうえで代田校長が尋ねた。「賛成の人は?」。挙手は6人。「アタマいいやつはやっば余裕あるなあ」。「オレ留年しそうだから、ハンターイ」。クラスがどっとわいた。残り25人は反対だ。

 賛成、反対それぞれの生徒が意見を発表した。

 賛成派の意見。「勉強ができないで仕事に就けない人がいる。留年させて学力を一定にした方が平等になる」、「強制的なら子どもの権利が尊重されないので賛成できない。でも自分の意思で決められるなら選択肢が増えるのでいいと思う」。一方の反対派。「子どもの目線で見たら、下の学年に行くのは絶対嫌。橋下市長は子どものためと言っているが、そうは思いません」、「意欲を低下させて勉強が苦痛になり、負の連鎖につながってしまう」。

 こうしたらという提言も出た。「補習なら同じ学年の人と勉強できる」、「全体の学力向上を目指すなら飛び級がいい。上の学年の人も下に負けないぞと思う」。

 最後に代田校長が現行の制度を説明した。「今も校長が出席日数などで留年させるかどうか判断しているんだよ」。そして「政策にはいい点も悪い点もある。両方をふまえて自分で考えるのが大事」とまとめた。

 授業を振り返って、代田校長は言う。「中学生はすごい。留年問題の論点がほぼ出そろった。反対するだけでなく、こうしたらという提案も出た」。生徒291人の書いた意見をまとめて橋下市長に郵送し、「和田中に来て生徒と討論してほしい」と伝える考えだ。

 政府審議会でも過去に議論

 義務教育の留年をめぐっては、中曽根康弘首相の下で設置された臨時教育審議会や、安倍晋三内閣での教育再生会議、文科相の諮問機関の中央教育審議会などで議論になってきた。6・3制を弾力化させたり、子どもの学力を保障したりする観点から、留年の拡大が検討されてきたが、「子どもが劣等感を抱く」「障害のある子はどうするのか」などの意見が出て、制度を変えるには至っていない。

 小中学生を留年させるのは、現行制度でも可能だ。学校教育法施行規則は、校長が子どもの「平素の成績」を評価して各学年の修了や卒業を認定すると規定している。だが実際は、山席日数がわずかでも進級させる場合がほとんどだ。

 経済協力開発機構(OECD)は2月発表した「教育の公平性と質」の報告書で、少なくとも1年留年した15歳の比率を39カ国で比較した。留年経験者はOECD平均で13%に上り、フランスなど7カ国は30%を超えていた。そのうえ、で「留年はコストがかかるうえ非効率」と廃止を提言している。
 (朝日、2012年03月03日。編集委員・氏岡真弓)


 02、感想

 代田校長のした事が「現行の制度の説明」ではダメです。自分の学校ではどういう考えに基づいてどう言う風にしているか、を言わなければなりません。橋下市長に「和田中に来て生徒と討論してほしい、と伝える」前に、校長が生徒と討論しなければなりません。

 思うに、「意見の言える人間」というスローガンを聞く事はよくありますが、それが実行されないのは、「校長のリーダーシップについて議論する」という大前提が欠けているからです。「中学生になったら、何よりもまず、校長の学校運営について自分で考え、意見を言うように」と指導し、校長の方から意見を聞くようにしなければなりません。

 この学校の代田校長は藤原和博さんの後を継いだ2代目の「民間人校長」のようです。出身もリクルートで、藤原氏を継いでいます。しかし、模範的なホームページを作り、模範的な校則を定め、校長通信を出して、学校運営について皆で議論をするという一番重要な事は知らないようです。

 校長が総合的な学習の時間を担当するのは評価しますが、それなら、まず、「卒業式での国旗国歌問題」を取り上げるべきでしょう。これを避けている点をみても、「不十分な民間人校長」だと思います。

 この記事の事はホームページに発表していないらしいです。なぜでしょうか。

     関連項目

 品川女子学院の生徒心得