マキペディア(発行人・牧野紀之)

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川勝県政2年目の評価(その1、朝日新聞の評価)

2011年07月17日 | カ行
01、朝日新聞(2011年07月08日。後藤遼太)

 開け放たれた知事室のドア。居並ぶ県幹部の説明に川勝平太知事が耳を傾ける。平日夕方の県庁でよく見られる景色だ。

 当選直後、川勝知事は「知事室のドアは常に開け放ちます」と宣言。会見や報道陣とのやりとりの中でアイデアを披露して政策を推し進め、県職員を引っ張る手法は新鮮だった。「理想を語る学者知事」という未知のキャラクターに、県職員たちは右往左往した。

 空港では成果

 「川勝県政で事態が進展した課題は、『静岡空港の完全開港』と『沼津駅高架化事業』だろうね」。ある県幹部はそう指摘する。

 静岡空港の2500㍍滑走路建設。航空法の高さ制限を超える雑草が見つかった「ササ問題」では、地権者の信頼を失い交渉のテーブルにさえつけない県当局を尻目に、川勝知事が地権者と直接面会。開港期限までに雑草を除去することで地権者と合意し、何とか完全開港までこぎ着けた。

 沼津駅高架化事業を巡っては、事業推進派と反対派を集めて意見交換会を開いた。両派和解とまではいかなかったが、前出の県幹部は「会うことさえままならなかった両派が一堂に会しただけでも前進」と話す。

 現場が停滞すると川勝知事自らが乗り出して事態の打開を図る。これは初期の成功手法と言えそうだ。知事に就任してしばらくすると、もう一つの政治手法が目立ってくる。「けんか戦法」だ。

 「荒茶とてん茶の区別もつかない。この程度の人間が基準を決めている」。6月初旬、川勝知事は乾燥茶葉の放射性物質検査結果を受けて、憤懣やるかたない表情でまくし立てた。

 国に押し切られる形で実施した結果、基準を超える放射性セシウムが検出され茶業界に大打撃を与えた。怒り心頭に発した川勝知事は、会見などで厚生労働省批判を繰り返した。

 しかし、「お茶独自の基準を設けて欲しい」と厚労省に乗り込んでまで求めた新たな放射性物質検査の暫定基準は、県が公開質問状を2度も出して、いまだに木で鼻をくくったような回答しか届かない。

 川勝知事が就任以来、激しい応酬を繰り広げた日本航空。福岡線の搭乗率保証問題に静岡空港からの日航撤退も絡み、保証金約1億5000万円の支払いを求めて県を訴えた。

 川勝知事は「一部の跳ね上がりが無礼な振る舞いをしている」と日航経営陣を厳しく批判してきたが、日航に言わせれば「川勝知事が搭乗率保証廃止を主張したために撤退に至った」。弁論準備手続きでは両者の主張は平行線のままだ。

 「敵」を仕立て

 就任以来、厚労省や日航以外にも、沼津駅高架化問題で「貨物駅不要論」を挑んだJR貨物、静岡空港の看板撤去を要求した伊藤園など、様々な「けんか相手」を仕立て上げて事態の打開を図ってきた。就任2年の折り返しを迎え、その手法に限界を感じている県職員も多い。

 「川勝知事は『敵』を見つけると燃え上がっちゃう。けんかして注目を集めるのはうまいんだけど、局地戦で勝っても、最終的な勝ちにつながるとは限らないんだよ」。ある県幹部はこう、頭を抱えた。

02、朝日新聞(2011年07月09日。大久保泰)

 県庁5階の知事室に7日、県経営者協会の岩崎清悟会長ら役員4人が川勝平太知事を訪ねた。

 「このままだと空洞化が進む。産業が出て行かないように、地域に根づかせるような対策が必要だ」。

 国が地域を指定して規制緩和や財政支援する「総合特区制度」。秋に向かって他県との指定争いが激化する。その前に、県の提案に注文をつけた。

 「震災まではすべて順調だった」。知事室を出た鈴与の早川巌副社長が言った。2008年9月のリーマン・ショックから、ようやく回復の兆しが見えていた矢先だった。

 3月11日の東日本大震災以降、県の雇用情勢は悪化している。求人倍率は4、5月と2ヵ月連続の低下。他県より影響は大きく、全国順位は3月の26位から5月には35位まで下がった。

 新宅友穂・静岡労働局長は「製造業中心の本県の産業構造が、全国より深刻な状況を招いている」として、雇用対策の必要性を強調する。藤岡経済研究所の中嶋寿志専務理事は「自動車だけに頼らない、新たな物作りを発展させていく必要がある」と訴える。

 連合静岡には最近、「仕事が見つからない」といった深刻な相談が相次ぐ。若い人も多いという。

 「理想郷」の姿は

 2年前の知事選で、連合静岡は川勝氏を支援した。自民党政権の末期、政治、経済ともに閉塞感が漂っていた。「日本の理想郷を静岡に」という川勝氏の訴えは新鮮だった。

 連合静岡の吉岡秀頼会長は「『ふじのくに』というフレーズで、新しい静岡を県民に発信している」と評価する。一方で、「『3・11』が起きる前と、起きた後に描く絵がどう違うのかを示す必要がある」と感じている。

 浜岡原発の全炉停止、原発周辺の企業移転の動き、お茶の放射能問題。未曽有の災害の影響はいまだ続く。その中で、知事が訴えてきた「理想郷」はどんな姿になるのか。

 震災後、川勝知事は新エネルギー政策に力を入れる。県内の耕作放棄地約1万2000haに太陽光パネルを設置すると訴える。ソフトバンクの孫正義社長が提唱する自然エネルギー協議会へも参加する意向だ。

 吉岡会長は「この静岡をどうしていきたいのか。自然エネルギーは静岡を支える産業になるのか。雇用を創出できるのか。正直、まだわからない」と話す。

「浜岡」次の争点に

 7月1日の県議会一般質問。質問に立った天野進吾県議(自民改革会議)は、川勝知事が進める静岡空港を核に茶産業の活性化を目指す「空港ティ-ガーデンシティー構想」を皮肉った。

 「構想が完成した折、展望デッキ周辺の森に新たな閑古鳥が鳴くことにならないか、はなはだ心配だ」。

 外国客誘致のため、トップセールスを繰り返す川勝知事。しかし、震災の後、空港の利用者は落ち込んだままだ。

 天野県議は、川勝知事の積極性を評価しつつ、「もう一呼吸、胃袋で味わってほしい。のどで消化している」と例えた。素早くのみ込まず、課題を十分に消化して判断してほしい、との思いだ。

 静岡大学の日詰一幸教授(行政学)は、浜岡原発への対応に注目する。

 「運転再開には、周辺住民や自治体、県民、企業など様々な思いがある。輻輳(ふくそう)した問題にはスピード感とともに、意見の調整や議論が必要。それがないと、独りよがりになってしまう。運転再開は次の知事選の争点になる」。

03、感想

 評価は評価者自身をも表す、と言います。上の朝日の2つの評価を読んで思うことは、朝日は相変わらず勉強していないな、ということです。朝日の7月8日の記事に付いていた「川勝知事と県政年表」は以下の通りです。

2009年7月7日、就任
   同、21日、所信表明でJAL搭乗率保証見直し
   同、8月11日、駿河湾沖地震発生
   同、27日、静岡空港が2500㍍滑走路で完全開港
   同、9月、JALが静岡空港からの撤退を検討
   同、10月、JAL撤退巡り、西松JAL社長と会談
   同、12月、「富士山の日(2/23)」条例可決

2010年3月、静岡空港からJAL撤退
   同、4月、県内で新茶の凍霜害
   同、5月、3776訪中団の第一陣出発
   同、11月、JALが搭乗率保証金支払い求めて県を提訴

2011年3月、大震災受け浜岡の津波対策見直し言明
   同、5月、菅首相の浜岡停止要請。川勝知事は「英断」
   同、茶菓の放射能検査問題

 自分の観点でまとめていないから、与えられたものについてだけ、適当な批評を述べることしかできないのです。こういう態度では、「やっていないがやるべきである事」に気づきません。

 なぜ川勝知事はブログで週間活動報告をして、県民と直接対話することをしないのでしょうか。大阪府の橋下知事は毎週のメルマガで熱く語りかけています。朝日はなぜこういう事を問題にしないのでしょうか。自分で県庁のカウンターホームページを作っていないからでしょう。自分で「行政とは何か」を研究していないからでしょう。

 朝日によると、川勝知事の支持率は67パーセントだそうです。随分甘い県民ですね。政治オンチの県民が政治オンチの政治家を生みだし、それが又政治オンチの県民を作り出すという悪循環は、誰がいつ断ち切ってくれるのでしょうか。