マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

かつお節

2009年03月21日 | カ行
 「やさしいかつお節を作りたいねえ」。鹿児島県指宿市山川(旧山川町)。5年に1度開かれる全国品評会で昨年、最高賞のかつお節を作った坂井商店の坂井良深(よしみ)社長(67)はそう話す。

 「見た目も香りもやさしく、削った時、花のようになるふんわりした感じも含めて、やさしくないと」。

 かつお節には、カビが付いた「枯れ節」と、カビのない「荒節」がある。枯れ節はカビが何度もついて、木が枯れたような渋い色合い。完成まで約6ヵ月、熟成させた「本枯れ節」と呼ばれる高級品になると1年かかることもある。坂井さんはこのカビ付けにこだわる。

 身をおろし、徐々に温度を上げて煮る。骨を抜いて、カシなど地元の広葉樹の煙でいぶす。温度と湿度を管理した部屋でカビをつけ、日に干す。日干しと交互に3回以上カビを生えさせる。ほとんどが手作業だ。

 なぜ、カビをつけるとやさしくなるのか。

 江戸時代、船で運ぶ途中や蔵で保存しているうちにカビがついてしまうことがあった。ところが、それがかえって長持ち、香りもよくなった。由来は諸説あるが、そんな偶然から生まれたのは確からしい。今は研究室で分離された優良カビを人工的につける。

 元禄時代から続く老舗「にんべん」の荻野目望・研究開発部長は「香りをまろやかにし、水分を減らし、脂肪分も少なくする。かつお節のダシが透明で脂が浮かないのは、カビが脂を分解しているからです」と言う。カビはいぶしでついた香りを芳香にするとともに、脂肪や水分を吸い、うまみを凝縮。節を酸化しにくくもしている。

 また、カビは魚本来の脂肪酸の代表格であるドコサヘキサエン酸を残す効果もる。東京海洋大海洋科学部の和田俊教授によると、カビはDHAとは違う飽和脂肪酸などを吸収し育つため、壊れやすいDHAを残す働きをするという。「かつお節の技はバイオテクノロジーでも近づけない技。まだまだ科学的解明が必要です」。

 01月07日、東京・晴海であった東京鰹節類卸商業協同組合の初セリ。「枯れてるよ、枯れてるよ」。威勢のいいかけ声とともに、落札されていく。枯れ節は関東で好まれ、カビがない節は関西などで好まれる。

 かつお節は技術や品質が色や形に如実に表れる。よく枯れた節どうしたたくと「カーン」と乾いた音がして、割ると、ルビーのような深紅の輝きがある。

 今、かつお節は「節」ではなく、削って売られている。節を知らない世代が増えるのと軌を一にするように、本物の枯れ節の存在が脅かされている。

  (朝日、2009年02月08日。桑山敏成)

     感想

 本当に広めたいのなら、業者の組合とかで、けずり器の刃を研いだり、調整するサービスを、ホームセンターなどで、適当な値段で、することを考えたらどうでしょうか。これが素人には出来ないのです。又、どこかに頼むと高いのです。

 毎週でなくても、月に1度、日を決めてやる程度でいいと思います。