マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

古材リサイクル

2009年02月26日 | カ行
 黒光りする大黒柱や梁、長年の風雨で年輪が浮き出した板。独特の味わいがある古材がぎっしりと並べられている。

 東京都江東区にある「ひでしな商店」の古材ストックヤード。「これは木目がきれい」「この風合いは華道の先生が好む」。

 社長の小林秀樹さんは、古材や戸や障子など建具の良さをうれしそうに説明する。

 古材を探しに訪れるのは、建築士、自宅や別荘用に使おうとする一般の人、建築やデザインを学ぶ学生ら。女性が多い。マンションに梁を一本取り付けたり、戸建ての大黒柱や壁に使ったり。飲食店の机やカウンターにも変身する。人気は格子戸だそうだ。

 ひでしな商店は、民家の保存や再生、古材利用の普及に全国的ネットワークで活動するNPO法人「日本民家再生リサイクル協会」(JMRA)の登録事業者。協会に賛同する工務店や設計事務所など約110社が登録、うち9杜は「JMRA古材ネットワーク」として古材を備蓄する。

 「築40年程度、平屋、茅葺き、延べ床面積66坪。大規模な入り母屋農家 - 」

 協会の「民家バンク」には、提供を希望する物件が約60件登録されている。太い材が使われていた戦前の建物が対象。所有者が再生できず提供を希望すると、近くの事業者が調べて登録する仕組み。無償提供が条件で解体と運送料は引き取り手の負担だ。1997年の設立から約80件を仲立ちした。

 事務局長の金井透さんは「まだまだ壊される民家が圧倒的。普及の啓発や制度改正に地道な精勤を続けていく」と話す。通算の登録件数は540件で、移築に至らない物件が多い。解体される場合は古材の備蓄・再利用で資源の有効活用を目指す。

 集まる古材が増え、小林さんは、千葉県内にも保管場所を設け、計4ヵ所に古材約2000本、戸や障子などの古建具約500枚を備蓄している。

 「よい物が燃やされたり、捨てられたりするのはもったいなくて見ていられない」と小林さんは話した。

   (朝日、2008年09月24日。黒沢大陸)