すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【ラ・リーガ 23/24 第13節】なぜ久保は輝けなかったのか? ~アルメリア 1-3 レアル・ソシエダ

2023-11-13 05:12:05 | その他の欧州サッカー
レギュラー陣と控え組の力の差がモロに出た

 現地時間11月11日にラ・リーガ第13節が行われ、アウェイのレアル・ソシエダはアルメリアに3対1で勝利した。この試合、久保健英はターンオーバーで後半からの出場になった。

 というのも、レアル・ソシエダは欧州チャンピオンズリーグのグループD・第4節のベンフィカ戦を終えて中2日しか経ってなかったからだ。

 ゆえにこの日のスタメンはミケル・メリーノやブライス・メンデスらが並ぶいつものメンバーとは違い、ベニャト・トゥリエンテスやアルセン・ザハリャン、ウマル・サディクらがスタートから出場していた。

 そのためラ・レアルは例によってレギュラー陣と控え組の力の差が大きくあらわになり、控えメンバーが出た前半はまるでいいところがなくノーゴールでハーフタイムを迎えていた。

久保のいる右サイドが犠牲になった

 そして後半になって、久保は左インサイドハーフのミケル・メリーノとともに頭から途中出場した。だが久保はわずかにセットプレイで得点に絡んだだけで、ほとんど輝けなかった。

 それはなぜか?

 いつもは久保と右サイドでコンビを組む右インサイドハーフのブライス・メンデスがこの日は欠場し、ベンチ入りさえしてなかったからだ。代わりに右インサイドハーフはトゥリエンテスが務めていた。

 だがそのトゥリエンテスは、レギュラー組のブライス・メンデスとは段違いに力が劣る。で、必然的にボールは久保のいる右サイドではなく、左インサイドハーフのミケル・メリーノを軸に左サイドで回ることになった。

 そのため右サイドの久保はボールタッチ自体が非常に少なく、ほとんど試合に入れなかった。これは久保がダメだったのではなく、組み合わせの問題だ。

 ラ・レアル名物の、スタメン組と控え組の力の差が如実に出る現象のおかげで、久保のいる右サイドが犠牲になったのである。

果たして彼らは今季を無事に終えられるのか?

 この試合は3ゴールを奪ってひとまず勝ったものの、ソシエダの選手層の薄さは本当に深刻だ。ラ・リーガとチャンピオンズリーグを掛け持ちする地獄の今シーズン、果たして彼らは良い成績を収められるのだろうか?

 いまのところはなんとか健闘しているが、これが長く続くとはとても思えない。

 過密日程で今後もローテーションを組むことが必至になるだけに、この試合で起こったような変調はまた何度も起こる可能性がある。彼らの行く末が心配される。

 とりあえずは現ラインナップで凌いだとしても、しかるべき時期にしかるべき新戦力を補強しない限り、同じことは必ずまた起こるだろう。

 しかもただでさえ、ブライス・メンデスやミケル・メリーノら主力組には移籍のウワサが絶えないのだ。もし彼らがビッグクラブに引き抜かれでもすれば、ラ・レアルはまさに一巻の終わり。泥船化して万事休すだ。

久保はプレミアリーグ上位へ行くべきだ

 とすれば久保は早晩、もっと選手層の厚い上位クラブに移籍せざるを得なくなるだろう。ならば個人的には、ウワサされているレアル・マドリーなどではなく、プレミアリーグの上位クラブへ行くことをおすすめしておく。

 スペイン語が通じる居心地のいいマドリーへ行ってナアナアで「井の中の蛙」になるのではなく、世界中から「化け物たち」が集まりしのぎを削る世界一のプレミアリーグで切磋琢磨したほうが若い久保のためになる。

 これだけはまちがいない。

 要は「スペイン一」をめざすのか? それとも「世界一」をめざすのか? の違いだ。

 ややもすればストイックさに欠け慢心してしまいがちな久保は、環境を厳しくして自分であえてハードルを上げたほうが努力するようになる。

 マドリーへ行きそれで満足してしまうのではなく、後者を選んで難関に挑み「自分にはまだまだ足りないところがある」と自覚して自己改革を続けたほうが、まだまだ伸びしろのある久保にはふさわしい。後者を選べば、彼はまだグンと成長する。うけあいだ。

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【分析コラム】なぜ鎌田大地はスタメン起用されないのか?

2023-11-07 09:16:15 | その他の欧州サッカー
フィジカルと選手の組み合わせの問題だ

 ラツィオの鎌田大地は、なぜリーグ戦でスタメン起用されないのか? 断片的に現地報道が伝わってくるが、どうもその理由がハッキリしない。そこで多少の推測も交えて考察してみよう。

 現地報道から漏れ聞こえてくるところでは、マウリツィオ・サッリ監督自身は鎌田のことを「大好きな選手だ」と言って気に入っているらしい。これは事実のようだ。とすればスタメン起用されないのは、選手として認められてないからではない。

 とすれば使われないのは、同時に起用する選手との兼ね合い、つまりバランスの問題だろう、と想像はつく。

 さて、まずサッリはしきりに「フィジカル」を重視し、取り沙汰している。

 そして現地報道によれば、向こうでは鎌田は「フィジカルが強くない」とされているようだ。で、サッリが左インサイドハーフとしてレギュラーだと考えているルイス・アルベルトも、同様にフィジカルは強くない。

 ゆえに鎌田とルイス・アルベルトを両インサイドハーフとして同時に使うと、フィジカルが弱い同士でバランスが悪い。サッリはそう考えている。

 で、鉄板のルイス・アルベルトを左IHに使い、右IHにはフィジカルが強いゲンドゥージを組み合わせている。

 つまり第一に「フィジカル問題」で、鎌田はゲンドゥージに負けているわけだ。

鉄板のルイス・アルベルトともかぶる

 もうひとつ、難しい問題がある。

 どうやら現地では、「鎌田は右IHより、左IHのほうがデキがいい」とされているようだ。ところがその左IHは、鉄板であるルイス・アルベルトの不動のポジションである。

 これにより第二には、この「ポジション問題」で鎌田はルイス・アルベルトに負けているのだ。つまり左IHとしては、鎌田はルイス・アルベルトの控えになる。

 結果、鎌田の出場機会はめっきり少なくなっているわけだ。

 さらにもうひとつ問題がある。

 実はそれでもサッリは鎌田を使いたいために、試合途中で先発した左IHのルイス・アルベルトを下げ、代わりに鎌田を途中出場させることがある。

 ところがルイス・アルベルトは自分が途中交代させられることをひどく嫌い、ベンチに下がるたびサッリに激しく毒づくのだ。

 そんな問題もあり、サッリは鎌田をますます起用しにくくなって行くーー。

 まとめると、こういうことだ。

 このテの問題は、選手間や監督との間で必ず大きな軋轢を生む。チームとしていい状態だとはいえない。

 ちなみに鎌田の契約は単年だ。2年の延長オプションが付いているが、来夏にまたフリートランスファーで移籍することもできる。もしこのポジション問題がこじれるようなら、いっそのこと鎌田は移籍するのもテかもしれない。

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【久保健英】バルサ戦でのフィジカルが凄かった

2023-11-06 09:28:16 | その他の欧州サッカー
当たり負けしない力強さ

 久保健英は、現地時間11月4日に行われたラ・リーガ第12節・バルセロナ戦でフル出場した。

 久保といえば、後半になるとガス欠でバテで交代になるのが定番だったが、この日は違った。試合終了まで力強く戦い続けた。

 例によって得意のドリブルで局面を切り裂くシーンも多く見られたが、なかでも特に目を見張らされたのがフィジカルの強さだった。

 久保といえばどちらかといえばひ弱な印象があったが、このゲームではボールとマーカーの間にカラダを入れて頑強に粘ったり、敵を背負いながらパワフルにボールキープする場面が多く見られた。

 もちろんフィジカルトレーニングの成果なのだろうが、技術が進歩しているだけでなくカラダもその進化に合わせてスケールアップしているのだ。

 この若者はいったいどこまで伸びるのか?

 大柄なスペイン人相手に決して当たり負けしない小柄な久保の姿を見て、思わず頬がゆるんでしまった。

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【ラ・リーガ 23/24 第12節】ラ・レアルが勝てた試合だった 〜レアル・ソシエダ 0-1 バルセロナ

2023-11-05 10:06:06 | その他の欧州サッカー
2回の絶好機を決めていれば……

 スタメン出場したバルサのロベルト・レバンドフスキは終始、消えていたし、ジョアン・フェリックスの魔法も効力を発揮しなかった。もしサッカーに「判定勝ち」があったとすれば、この日の試合は明らかにラ・レアルのものだったーー。

 レアル・ソシエダがあのバルセロナを敵に回して堂々と押し込み、圧倒的に攻め立てた。彼らは今や鉄板のスタメン陣さえ揃っていれば、バルサとも互角の勝負ができるチームになっている。

 バルサは左SBのアレハンドロ・バルデを高く上げ、残りの3人が左へスライドして3バックでビルドアップしてくる。この3バックに対し、ソシエダは3トップがマンツーマンでプレスをかけた。特にオヤルサバルは二度追い、三度追いで奮闘した。

 勝負は後半49分にアラウホのゴールでバルサに軍配が上がったが、前半2分に敵のバックパスをカットしたオヤルサバルがあのシュートを決めていればどうなっていたかわからなかった。あれは絶対に決めなければいけない好機だった。

久保は絶対的な決定機を数度作った

 久保健英も組み立てとチャンスメイクでいい働きをしていた。決定機で言えば、オフサイドにはなったが後半10分にライン裏へ飛び出して放ったハーフボレーが決まっていればこの日のヒーローになっていただろう。そのほかにも数度、彼は絶対的な決定機を作っていた。

 久保は後半になるとバテて足が止まり試合から消える悪いクセがあるが、この日の試合ではフル出場し健闘していた。

 ただチームとしては、後半18分に右SBトラオレに代えてエルストンドを、また同34分にバレネチェアに代えてモハメド・アリ・チョ、同39分にオヤルサバルに代えてカルロス・フェルナンデスを投入する、というふうに鉄板のスタメン陣が1人2人と引っ込むとテキメンにチーム力が落ちる。レギュラーと控えの間に無視できない力の差がある。これは深刻な問題だ。

 スタメンの11人が売り切れたら終わり、というのでは長いシーズンを戦えない。この点はラ・レアルの大きな課題だ。然るべきタイミングで新戦力の補強が必要だろう。

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【移籍のウワサ】久保健英のマドリー移籍には絶対反対だ

2023-10-30 08:59:01 | その他の欧州サッカー
成長が止まるのではないか?

 レアル・ソシエダの久保健英と切っても切れないのが、古巣レアル・マドリードへの復帰の噂だ。おそらくこのテのネタはメディアなるものが存在する限り、絶え間なく続くのだろう。

 だがマドリーへ行かせたいメディアのみなさんには誠に申し訳ないが、個人的には久保のマドリー行きには絶対反対だ。

 レアル・マドリードという巨大クラブは、ラ・リーガでプレイする選手にとっては双六の上がりだ。そこへ行ってしまったら最後、満足し「ひと息ついて」しまうのではないか? 

「やり切ったぞ」という達成感とともに、久保はマドリーの選手という地位に安住するのでは? そして選手としての成長が止まってしまうのではないか? 久保は22歳。まだまだ伸びるはずの選手だ。そんなことになってはもったいない、と感じる。

ストイックさに欠けて見える久保

 特に久保という選手は外から見ていると、自己肯定感が非常に強いタイプのように感じる。裏を返せば、ややもすると自分を厳しく律するストイックさに欠けて見える。いかにも大らかなスペイン風味だ。

 例えば彼の属するレアル・ソシエダは、10月24日に行われた欧州チャンピオンズリーグのグループD第3節でベンフィカ・リスボンに圧勝した。彼は良いプレイをしたがゴールだけがなかった。惜しいシュートがバーを叩いた。で、試合後に彼は、「もしあのゴールを決めていれば僕が王様だった」と言い放った。

 あの発言には、違和感を覚えた。

 試合に勝ちメディアに持て囃され、ちょっといい気になってしまっている感じがした。もしストイックな選手なら、そんなセリフはぜったい口にしないだろう。逆に「なぜ自分はあの場面でシュートを決められなかったのか?」を自己分析し、黙ってさらなる努力を続けるはずだ。

 もっとも、あの発言は久保なりのメディアに向けたリップサービスだったのかもしれないが。

 この件と同じで、彼がマドリーへ行けばある意味「いい気」になり、そこで満足してしまうのではないか? マドリーへ移籍し、ある種の強い自己肯定感を味わってしまうと「それなりの選手」で終わってしまうのではないか? と杞憂する。

 まだまだ果てしなく伸びるはずの選手だけに、そうなってしまうのはとても惜しい。

プレミアリーグなら伸びる余地はある

 で、もし彼が移籍するとしたら、個人的にはイングランド・プレミアリーグの上位クラブあたりがいいのではないかと感じる。具体的には、今季のデキでいえばマンチェスターシティかアーセナル、スパーズの3択だ。

 とにかくプレミアリーグは世界中から選りすぐりの「化け物たち」が集まる巣窟であり、上を見ればキリがない世界である。

 久保はそんな世界の化け物たちと切磋琢磨し、「まだまだ自分には足りないところがある」と自覚すれば、努力を続けて成長するだろう。彼がこれまでやってきた自己研鑽を振り返ればそう想像はつく。

 例えばあえて言うが、久保がまだローンでマジョルカやヘタフェなどのクラブを渡り歩いていた時代、彼は高い技術はあってもハンパな選手だった。

 ちょっと接触プレイがあると両手を広げて大げさに倒れプレイをやめてしまう。で、ファウルをアピールする。だがゲームはまだ進行中なのだ。倒れた彼はそのぶん試合から取り残されてしまう。久保のチームは10人で戦っているのと同じだ。そこがわかってない。トランジションが悪い。

 また彼はボールさえ持てば鬼に金棒だが逆にいえばオフ・ザ・ボールが悪く、ボールのないところでは「どこ吹く風」で足を止めてゲームに関与しないケースがあった。守備の意識も高くなかった。

 そんな「技術だけはある」がハンパだった選手がその後、それらの自分の欠点を見事に修正し、いまや世界のトップ・オブ・ザ・トップに手の届くところにいる。彼は大きく成長した。

 そのせっかくの成長を止めないためにも、マドリーへ行くのだけはやめたほうがいいと感じる。

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【ラ・リーガ 23/24 第8節】久保が今季5G目で3連勝を飾る 〜レアル・ソシエダ 3-0 アスレティック・ビルバオ

2023-10-02 05:00:13 | その他の欧州サッカー
バスク・ダービーを圧勝で終える

 ラ・リーガは現地時間9月30日に第8節が行われ、レアル・ソシエダがアスレティック・ビルバオを3-0で破った。バスク・ダービーはラ・レアルの完勝に終わった。

 久保建英はいつもの右WGで2試合ぶりに先発し、48分に左足で鮮やかにワンタッチ・ゴールを決めた。今季5点目だ。

 この日も相手チームは、左SBユーリとCMFガルシアがダブルチームを組んで久保対策をしてきた。だが、それでも久保はゴールを獲った。ラ・レアルは後半にも2点を奪い突き放した。

 アンカーのスビメンディは10番のトップ下・ムニアインにマークされた。だが一方、ソシエダの2CBは比較的ボールを持ち上がれた。そこも勝因のひとつだった。

DFノルマンがボレーで先制点を取る

 序盤は浮き球を蹴り合うような落ち着かない展開だ。バタバタとボールを弾き合っている。そして26分頃からゲームは落ち着いてきた。30分にはソシエダが敵陣左サイドでFKを得る。キッカーはブライス・メンデスだ。ボールを入れるとゴール前で混戦になり、最後はDFロビン・ル・ノルマンがボレーシュートを叩き込んだ。1-0。先制点だ。

 CFのサディクは降りてきて、しきりにボールに絡もうとしている。33分にはビルバオが左サイドからクロスを入れるが、ゴール前で合わない。彼らは35分にも左サイドからアーリークロスを入れたが、決まらなかった。

 ここからしばらくビルバオがボールを保持する展開になる。その後、ラ・レアルのボールになり、久保が右CKを蹴った流れで右サイドからクロスを入れたが合わなかった。

 ソシエダのフォーメーションは4-1-2-3だ。スタメンはGKがアレックス・レミロ。最終ラインは右からトラオレ、スベルディア、ル・ノルマン、ティアニーが構える。アンカーはスビメンディ、右IHはブライス・メンデス、左IHはミケル・メリーノ。3トップは右から久保建英、サディク、バレネチェアだ。

久保がファーから走り込みワンタッチでゴールする

 ゲームは後半に入った。ソシエダは48分に左サイドで長い縦パスを入れ、これをブライス・メンデスが中に折り返す。そして中央でサディクがボールに触って半ばスルー。右サイドに抜けたボールにファーからボックス内に走り込んできた久保が、余裕の左足ワンタッチでゴール右に流し込んだ。2-0だ。彼はお尻を振るお茶目なパフォーマンスを見せた。

 一方、54分には2点リードされたビルバオがゴール前に侵入し、シュートまで行くが果たせず。彼らは56分にもカウンターからゴール前まで攻撃したが、やはりシュートまで行かない。さらには丁寧なビルドアップを省略してGKからロングボールも試みたが形にならなかった。

 続く66分、敵陣でボールを持ったスビメンディが左足で前のスペースにスルーパスを出す。これに走り込んだ途中出場のオヤルサバルが右足でゴールに突き刺した。3-0だ。76分には久保が右サイドを長駆ドリブルし、中へ折り返したがシュートまでは行かなかった。

 そしてゲームセット。ラ・レアルはクリーンシートで試合を終え、今季3連勝を飾った。フル出場した久保はこの試合のマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。スタジアムはすごい歓声だ。やはり彼らは中盤でアンカーのスビメンディを頂点に両IHのブライス・メンデス、ミケル・メリーノらと逆三角形を作る形になると安定する。この3人は代えが利かない。

 このあと彼らは10月3日にチャンピオンズリーグGL第2節でザルツブルクと戦う。過密日程が続くが、選手をやりくりしながらソシエダの快進撃は続く。選手層の薄さは相変わらず気になるが、このまま勢いで行くのだろうか。

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【セリエA 23/24 第5節】ノーガードの壮絶な殴り合い 〜ラツィオ 1-1 モンツァ

2023-09-27 05:16:49 | その他の欧州サッカー
ラツィオが早々に先制するが簡単じゃない

 セリエAでは現地時間9月23日に、スタディオ・オリンピコで第5節が行われた。ホームのラツィオがモンツァと1対1で引き分けた。モンツァは21/22シーズンにセリエAへ初昇格し、昨季は11位で終えている。今季も中位にいるチームだ。

 サッリ大将は鎌田大地の代わりにマテオ・ゲンドゥージをスタメン起用してきた。彼らは試合開始12分にPKをもらい、きっちり決めて1点リード。この時点では楽勝かと思われた。だがハイプレスをかけては陣内になだれ込んでくる敵の攻撃に手を焼き、30分台から早くもノーガードの殴り合いになった。

 36分にモンツァが虎の子の1点を取る。たがいに中盤のプレスが消失し、ボールは一方のボックスから他方のボックスへと速達で往復する。後半も目が離せないそんな展開が続き、かくてタイムアップ。あの試合内容でよく1対1で終わったなぁ、というゲームだった。

 ラツィオのフォーメーションは今日も4-1-2-3だ。守備時4-1-4-1に可変する。立ち上がりから彼らはハイプレスで前への圧をかける。5人でガンガン行く。外切りのプレッシングをしている。対するモンツァは3-4-2-1だ。

 ラツィオのスタメンは、まずGKが先日チャンピオンズリーグで奇跡のヘッドを決めた英雄イバン・プロベデル。最終ラインは右からアダム・マルシッチ、パトリック、アレッシオ・ロマニョーリ、エルセイド・ヒサイが構える。

 中盤はアンカーをダニーロ・カタルディが務め、右IHはマテオ・ゲンドゥージ、左IHにルイス・アルベルトが入った。3トップは右からグスタフ・イサクセン、チーロ・インモービレ、マッティア・ザッカーニが並ぶ。

ガリアルディーニのゴールでモンツァが同点に追いつく

 まず12分。ラツィオはザッカーニがボックス内で倒されてPKをもらう。これをキッカーのチーロ・インモービレが落ち着いて決めた。先制だ。だがこのときローマのチームは今日が「大変な日になる」とは想像もしなかっただろう。

 彼らの先制点に対しモンツァも黙っちゃいない。ハイプレスで攻勢をかける。彼らはきっちりビルドアップして3-2-5で敵陣へ嵐のように飛び込んで行く。前半はむしろラツィオよりボールを保持している。そして攻撃に出ると常に4〜5人が敵ボックス内に侵入する。激しいチームだ。

 ラツィオは高い位置でボールを失うと、局面によってはリトリートせずにカウンタープレスをかけている。それ以外はミドルサードで4-1-4-1の組織守備だ。さらに押し込まれるとディフェンディングサードまで下がり、最後はボックス内まで降りて守備をする。かつてのサッリ・ボールなる優雅なパスワークは見られない。今日も単なるフィジカルなサッカーだ。

 36分、モンツァが7人で敵ボックス内へ殺到した。右サイドからクロスを入れ、CMFロベルト・ガリアルディーニが左でゴールした。同点だ。さあおもしろくなってきた。

 追いつかれたラツィオは自陣に2バックを残し、敵陣へ押し込む。そしてボールを失うと、今度はモンツァがロングカウンターをかける。めまぐるしい展開だ。攻撃時、ゲンドゥージは積極的に敵ボックス内まで入り込んでいる。

 いまや両軍、中盤のプレスが消失し、一方のゴールから片方のゴールへとボールが盛んに行き来する状態だ。すっかり台所に火がついている。忙しいことになってきた。そんな47分、モンツァが一気に押し込みダイビングヘッドも決まらず。

インモービレの一発がポストに当たる

 後半に入っても、両者の中盤のプレスは消えたままだ。モンツァはサイドチェンジも交えてパスを繋いで攻め込んで行く。お次はラツィオが完全に敵陣を占領した。ハーフウェイラインの敵陣側に2人の最終ラインを置き、ハーフコートマッチ化して攻め立てている。

 そして逆にボールを失うと、相変わらずハイプレスをかけまくる。これを嫌ってモンツァがボックス内からロングボールでクリアした。

 55分。サッリ親分はゲンドゥージに代えてマティアス・ベシーノ、グスタフ・イサクセンに代えてフェリペ・アンデルソンを投入する。続く57分には、ピッチにボールを叩きつけたCFインモービレのシュートがポストに当たる。惜しい。

 かたやモンツァは押し込まれると、もはや5〜6人がボックスに入って守備している。かと思うとチャンスになれば最前線に5人、中盤に2人の計7人を敵陣へ送迎する。壮絶なサッカーだ。60分頃から彼らは前線でボールを失うと、ディフェンディングサードまでリトリートして組織的守備をするようになった。

 71分、モンツァは敵陣に7人を送り込み、強烈なシュートを放つがGKプロベデルが辛うじてセーブする。さらにオープンな展開になってきた。

モンツァの攻撃は暴力的だ

 74分。モンツァは自陣に3人の守備者だけを残し、全員が敵陣へ殺到する。フィニッシュしたが得点ならず。その1分後にも、彼らは敵ボックス内になんと7人を送り込んでシュートを放つがオフサイドに終わる。

 モンツァの攻撃が暴力的なパワーを持つのに対し、ラツィオの攻めはお上品だ。迫力がない。パスを繋ごうとするが思うように前進できない。80分、サッリの配下たちは8人を敵陣に送り込んで攻めたが、効果をあげられなかった。むしろモンツァのカウンターを誘発していた。

 82分以降、ラツィオはハーフウェイラインの敵陣側に2バックを置いて全員が敵陣へ詰めかけた。だが相手チームはボックス内に人垣を作って押し戻す。続く第2波も防がれ、今度はモンツァの攻撃になる。息もつかせない。

 後半アディショナルタイムに入った。ラツィオは完全に敵陣を包み込みあとはゴールするだけなのに、なんと敵陣内で2度もバックパスしている。なんだか状況を把握してない。もはやモンツァは「引き分けでよし」な感じで跳ね返す。かくてタイムアップ。息詰まるせめぎ合いは勝者なしに終わった。

 これでラツィオは5試合を終え、1勝1分け3敗の勝ち点4。なんと16位だ。なかなかラツィオは地獄の底から抜け出せない。

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【ラ・リーガ 23/24 第6節】久保が止まらない、開始2分に先制弾 〜レアル・ソシエダ 4-3 ヘタフェ

2023-09-26 05:03:33 | その他の欧州サッカー
今季4ゴール1アシストの実力

 ラ・リーガでは9月24日に第6節が行われ、ホームのレアル・ソシエダとヘタフェが対戦した。試合は二転三転の末、ラ・レアル(ソシエダの愛称)が4点を取り勝利した。

 驚いたのは、この日も4-3-3の右WGで先発した久保建英だ。なんと試合開始2分だった。

 ドリブルする同僚の右IHブライス・メンデスの右側に久保が併走し、右から回り込みスルーパスを受けた。そして瞬時にワンタッチで左足を一閃する。ボールは弾けるように跳び、ゴール左のサイドネットに突き刺さった。敵GKはまったくのノーチャンス。先制ゴールである。

 たった開始2分で、この日ヘタフェのボルダラス監督が仕込んできたシナリオは見事に吹っ飛ばされた。これで久保は今季のラ・リーガ6試合で4ゴール1アシストだ。開幕から6試合連続でスタメン出場しており、チームの信頼も厚い。

 ただし後半に入ると時間の経過とともに、例によってバテて試合から消えるのは大きな課題だ。久保は以前に書いた「4つの欠点」をせっかくクリアしたのだから、スタミナ(運動量の維持)という新たなテーマに取り組んでほしい。

今日も2人がかりのマークがつく

 久保にはこの日も2枚のマークがついた。今日もダブルチームの御一行様がお出迎えだ。

 9月19日(日本時間20日)に行われた第5節のレアル・マドリー戦、そして20日の欧州チャンピオンズリーグ第1節のインテル・ミラノ戦でもそうだった。試合のたびに、屈強なマーカーが2人がかりで久保をつぶしに来る。

 それでも平気で力を発揮するのが彼の凄さだ。マドリー戦では開始5分に先制点に関与した。続くインテル戦でも、久保はチャンスを作り続けた。だがこの日のヘタフェ戦では先制ゴールを獲ったあと、前半に2点を取られて逆転された。

 そこで先発メンバーをローテーションしていたラ・レアルのイマノル・アルグアシル監督は、後半13分に主力を3人出してきた。FWオヤルサバル、左IHメリーノ、そしてアンカーのスビメンディだ。

 すると後半16分にブライス・メンデスが、ミトロビッチに足を引っ掛けられるファウルを受けてPKになる。キッカーはオヤルサバルだ。落ち着いて冷静に右スミへきっちり決めた。2-2。同点だ。

メンデスの逆転弾、オヤルサバルのチーム4G目で止めを差す

 このあと後半21分には逆転弾が生まれる。ボックス内にロングスローを投げ込み、敵GKソリアが中途半端に飛び出して空っぽのゴールにブライス・メンデスがヘディングシュートを見舞った。3-2、逆転弾だ。カラのゴールにボールが吸い込まれるあの光景。痛快だった。

 ヘタフェはあんまりパスが繋がらない。ヘンにボールを浮かしてはヘディングしたりしている。そしてファウルを連発して時間を使う。お得意の、のらりくらり戦法だ。おかげで試合は始終ストップし、ラ・レアルの面々はイライラさせられた。試合を観ているこっちがイラつくのだから無理もない。

 だが後半43分。試合を決める美しいゴールが生まれる。スルーパスに抜け出した途中出場のメリーノがワンタッチでオヤルサバルにパスする。受けたオヤルサバルはこの日のチーム4ゴール目を叩き込む。

 このあと後半47分に、ヘタフェが左からのアーリークロスに途中出場のFWラタサがヘディングシュートを決めて1点取ったが、追い上げもそこまで。ソシエダは4-3で逃げ切った。久保はフル出場した。

 これで彼らは、2勝3分け1敗の勝ち点9で8位に上がった。久保の次節の活躍が待たれる。

課題を残した今節の戦いーーインテル戦で見えた選手層の薄さ

 さて「勝っためでたし」では進歩がない。目についた課題にも触れよう。今節はラ・レアルが抱える重大なアキレス腱が露呈したゲームでもあった。

 アルグアシル監督は、今季戦っている欧州チャンピオンズリーグ(CL)との兼ね合いも考え、この日のスタメンを大幅に入れ替えていた。

 例えば彼らが9月20日に戦ったCL第1節のインテル・ミラノ戦では、インテルのシモーネ・インザーギ監督は大幅なターンオーバーを行なっていた。16日にACミランとのミラノダービーで大勝したメンバーから、スタメンを5人も変えてきたのだ。しかも、そのうちFWマルコ・アルナウトビッチや左WBカルロス・アウグストら4人はなんと初スタメンだった。

 だが一方、そのインテルと戦ったソシエダは、17日に行われたラ・リーガ第5節のレアル・マドリー戦とまったく同じメンバーで臨んだ。つまりラ・レアルの選手層の薄さがアリアリと見えてしまったのだ。

 おそらくアルグアシル監督は「これではマズい」と考えたのだろう。で、ラ・リーガの今節はローテーションした。主力のオヤルサバルやメリーノ、スビメンディらをベンチに置いたのだ。

 だが、結果は散々だった。

主力と控えの力が大きくちがう

 久保のナイスゴールで試合の滑り出しはよかったが、ゲームが進むとともにいつものレギュラー陣に代えて起用された面々の力不足が明らかになった。

 最前線のウマル・サディクは、敵を背負ってポストプレイしようとするのだがハマらない。ボールを弾いてしまい、展開することができない。味方と連係した守備もダメで、「網」に穴を開けてしまう。

 またアンカーのウルコ・ゴンサレスは最終ラインからうまくボールを引き出せず、四苦八苦していた。加えてボールを保持した際、タッチ数が多すぎる。で、敵に寄せられ詰まってしまう。いつも途中から出て来るモハメド・アリ・チョも、トリッキーな動きはいいが確実性に欠ける。

 そんなわけで主力が欠けたソシエダは、いったんは久保の個人技でリードしたもののチーム力で劣った。あのヘタフェに前半で早くも2点を取られて逆転された。それを見たアルグアシル監督は、後半13分に温存していたオヤルサバルやメリーノ、スビメンディらを投入せざるを得なかった。

 するとメリーノによって左サイドが生き返り、スビメンディ、ブライス・メンデスとともに中盤の構成力が完全に蘇った。結局、途中から起用された彼らレギュラー陣の力が大きく、同点、また逆転を可能にしたのだ。今節はこれで勝ったからいいようなものの、ラ・レアルの選手層の薄さという問題は今後もつきまとう。

 さて、この問題をいったいどう解決するのか? 長いシーズンだ。ラ・リーガとチャンピオンズリーグを今後もまったく同じメンツで戦うわけには行かない。いつかは「売り切れ」になる。

 ではローテーションした場合、選手に合わせて戦術を変えるのか? それとも何かほかの方法があるのか? ここはアルグアシル監督の手腕が問われるところだろう。

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【セリエA 23/24 第4節】ブラホビッチ&キエーザの2トップが3Gで仕上げる 〜ユベントス 3-1 ラツィオ

2023-09-21 09:43:28 | その他の欧州サッカー
鎌田がセリエA初アシストを決めた

 セリエAは9月16日に第4節を行ない、ユベントスがホームのアリアンツ・スタジアムでラツィオと対戦した。ユーベが先に点を取って常に試合をリードし、守っては鉄壁の城塞をゴール前に築いた。

 ユベントスはブラホビッチとキエーザの強力2トップが豪快に計3点取り、あとは5-3-2で手堅く守って一丁上がり。これがイタリアのサッカーだ、と言わんばかりだ。絵に描いたような試合運びだった。

 ラツィオの鎌田大地はスタメン出場して1アシスト。サッリ監督はこの試合で5人を交代させたが、鎌田をいちばん長く引っ張った。期待の現れだろう。だがチームがサッリの描く精密機械のような戦術を実現するには、まだ時間がかかりそうだ。

 ラツィオのフォーメーションは4-3-3だ。GKはイバン・プロベデル。最終ラインは右からアダム・マルシッチ、ニコロ・カサーレ、アレッシオ・ロマニョーリ、エルセイド・ヒサイが構える。

 中盤は右から鎌田大地、ダニーロ・カタルディ、ルイス・アルベルト。3トップは右からフェリペ・アンデルソン、チーロ・インモービレ、マッティア・ザッカーニだ。

キエーザが今季3ゴール目を叩き込む

 ラツィオのフォーメーションは4-3-3。一方。ユベントスは3-5-2だ。サッリのチームは例えばサイドにある相手ボール時、そのボールに対し横方向を極端に絞る。逆サイドの選手がピッチの中央くらいまでボールサイドに寄せている。

 試合開始からほんの10分だった。ユベントスは右サイドからプラスのクロスが入り、ブラホビッチがワンタッチで決めて見せた。早くも先制だ。また14分のユーベの右方からのデザインされたFKは、受け手が完全にフリーになっていた。

 ラツィオは「可能ならワンタッチ縛り」みたいなサッカーだ。少ないタッチ数でパスを繋ごうとするが、ユーベの守備が堅くなかなかうまく行かない。そして24分。ゴール前で鎌田がワンタッチで左足のボレーシュートを見せるが、わずかにボールはバーの上へ。あれを決めていれば、また称賛の嵐だったが…………。

 そして26分だ。ユーベのキエーザが今季3ゴール目を叩き込む。右サイドから流れてきたボールを、左足アウトサイドでゴール左スミぎりぎりにワンタッチで決めた。ボールは唸りを上げながらスッ飛んで行った。すごいシュートだ。2-0になる。

サッリのチームは思案投首だ

 ラツィオはペナルティアーク辺りで縦にクサビのボールを入れるが、パスは繋がっても2本まで。落としたボールが連鎖して行かない。あの落としたボールを受けるとき「あそこで3人目の動きを入れたいんだろうな」などと、やりたいことはよくわかるが…………という感じだ。

 要はパスの受け手に動きが足りない。複数の選手による連動性がなく、なんだか壊れた時計のようだ。サッリの考えるサッカーを実現するには、かなり高度な技術と運動量が必要になる。時間もかかる。

 一方、ユーベはラツィオがゴール前で超ショートパスをワンタッチでパン、パン、パン、と繋いでくるのを読んでおり、ゴール正面のペナルティアーク辺りに密集した頑強な人垣を作ってはね返す。確かにあのゾーンを固めておけば失点しないだろう。彼らの守備はロジカルだ。何しろ2点の先行は大きい。

 かたやラツィオはサッリに与えられた教科書と局面とを照らし合わせながら、思案投首でボールを繋いでいる感じだ。スムーズさがない。それに横パスやバックパスでなく、縦方向への有効なパスが少ない。なんだか「ポゼッションサッカーの成れの果て」という印象だ。

 ラツィオの前半のポゼッション率は66%ある。だが有効なパスが決定的に足りない。

ルイス・アルベルトのゴールでラツィオが追撃

 後半の立ち上がりからラツィオはダニーロ・カタルディを外し、アンカーをニコロ・ロベラに代えた。一方のユーベは金持ちケンカせず。相変わらず守備時5-3-2で手堅い。

 それにしても鎌田はサッリに本当に認められている。この試合でサッリは5人の選手を代えたが、鎌田をいちばん長く引っ張り残り10分まで使っている。

 確かにゴールへ直結する際どい動きをしているのは彼なのだ。その証拠に51分、鎌田が敵ゴール脇のハーフスペースでドリブルを使ってチームを動かした。見応えのある際どいシーンだった。

 ユベントスは相手ボール時、人への寄せ方に強い圧迫感がある。ギリギリまでボールホルダーとの距離を詰める。で、行けると踏んだら、相手のカラダを突き抜けて敵を通り過ぎるような勢いでデュエルを挑む。こんな強度の高い密着守備をされたら、蛇に睨まれたカエルのようになってしまいそうだ。

 そんな64分だった。ラツィオが1点を奪う。ペナルティアークの手前で、鎌田がカンビアーゾに強く寄せてボールを奪った。そのこぼれ球をひろった10番のルイス・アルベルトが、右足インステップでゴール右上スミへ豪快に決めた。鎌田はセリエA初アシストだ。

ブラホビッチがドッピエッタを達成する

 だが続く67分にユーベがとどめを差す。マッケニーが右サイドのハーフウェイライン辺りからブラホビッチのいるゴール前に向け、「ここしかない」という素晴らしいピンポイントのアーリークロスを入れる。

 かたやブラホビッチはゴール前で3対1と不利だったが、胸トラップから左足でひとつ触って余裕をもって右足で決めた。まるで精密機械のような2人の凄まじいゴールだった。ブラホビッチはドッピエッタ(1人で2ゴール)達成だ。そして試合終了である。

 ユベントスは、ブラホビッチとキエーザの2トップが実に素晴らしかった。また残り15分くらいで、途中から入ってきたティモシー・ウェアの守備も見応えがあった。彼はあのジョージ・ウェアの息子。まだ23才だし、伸びそうだ。

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【ラ・リーガ 23/24 第5節】マドリーが「久保劇場」を止めるにはファウルしかなかった 〜レアル・マドリー 2-1 レアル・ソシエダ

2023-09-19 05:00:00 | その他の欧州サッカー
時空を歪めた久保のチャンスメイク

 ラ・リーガ第5節が9月17日(日本時間18日)に行われ、レアル・マドリードとレアル・ソシエダが対戦した。ソシエダが開始早々の前半5分に先制したが、後半にマドリーが2点を取って辛くも逆転勝ちした。特に前半は、4-3-3の右ウィングでスタメン出場した久保建英の「ワザのデパート」が鋭意開店した。

 もはや久保を止めるには通常の手段ではムリなようだ。マドリーの例に習えば、わざわざマーカーを2人つけるか、あとはファウルくらいしかない。どちらも正々堂々なる日本人的な価値観とは縁遠いが。

 だが白い巨人はそのすべを知っていた。いい見本を、久保に股抜きされて辱めを受けた元ドイツ代表MFトニ・クロースが見せた。抜かれて肘ブロックしたクロースのファウルには黄色いカードが出た。久保とマッチアップしていた彼はさんざんやられてイラ立っていたのだ。

 前半終了間際。このとき久保はたったワンモーションで、左足の裏でボールを一度引き、すぐ前に押し出す必殺ワザを繰り出して簡単に股抜きした。当該シーンが象徴的だが、それだけこの日の久保は危険な香りを漂わせていた。

ソシエダの先制ゴールを演出した

 久保のショーは試合開始5分にすぐ開演した。このときボールはソシエダの最終ラインを右から左へと経由していた。そして左サイドの中盤からアンデル・バレネチェアが横方向に持ち出す。で、右にいたブライス・メンデスにボールを渡す。

 右サイドに開いた久保に彼から斜めのボールが出た。久保はまず右足でトラップし、動きながら1つ、2つ、ボールを小突いて中の状況を観察する。で、ゴールに向けてカットイン。そして力まずほんの軽い感じで、左足を小さく後ろに振り上げ鋭く前へ振った。

 インフロントで瞬時に低いクロスが入る。強くて速いボールがゴール方向へ飛んだ。これにバレネチェアがワンタッチで合わせたが、GKケパ・アリサバラガがストップした。

 だがボールはこぼれ、バレネチェアが2〜3度プッシュしてゴールへ押し込んだ。マドリーの出鼻を挫く先制弾だ。彼は今シーズン3点目。2試合連続である。

取り消された幻のゴラッソ

 続く11分。世界は衝撃的なシーンを目の当たりにする。

 中盤の中央でブライス・メンデスから交差する形でボールを受けたミケル・オヤルサバルが、右サイドへボールを振る。これを敵ボックス右角で受けた久保は右足でトラップし、ドリブルでカットインする。

 いったんわずかにエリア内へ入った。だが敵DFが寄せてきたため、細かい複数のボールタッチでゴールから小さく遠ざかる。で、マーカーをかわす。その一瞬後だ。ゴールから逃げ、まさかシュートするなんて周囲に認知させない絶妙なタイミングだった。ペナルティアーク右手前から強く左足を振り抜いたのだ。

 ダイアゴナルな美しい軌道を描く弾丸シュートが、ゴール左スミのサイドネットに突き刺さった。凄まじいゴールだった。と、だがオフサイドの位置にいたオヤルサバルの背中に、なんとシュートしたボールがわずかにかすっていたというのだ。

 なんてことだろう。さっきのあのゴラッソはオフサイドで取り消されてしまった。幻のミドル弾。ありえない損失だ。これは文化財保護法に違反しているのではないか?

ボックスからボックスへと長駆ドリブル

 29分のプレイも鳥肌モノだった。マドリーの攻撃を弾き返したあと、右サイドの低い位置でSBトラオレが保持したボールを右前にいた久保が受けたシーンだ。

 このとき久保は一度ボールをもらいに下がる動きでマーカーとの距離を空け、一瞬で前方へ急ターン。今度はサイドに開いてトラオレからの角度を作って球出しを誘う。危険を察知したマーカーが久保との距離を詰めようとしたその瞬間だった。

 久保はトラオレから引き出した縦パスに左足でワンタッチして前へと角度をつけ、マーカーが絶対に触れない前方のコースにボールを弾いて転がした。ボールは勢いよく無人の前方スペースへ抜けて行く。そのあとを走る久保は、2人のマーカーを完璧に振り切ってボールを支配下に置いた。

 そして60メートル近くをドリブルしてカットイン。敵ボックス内へ侵入し、左に切り返して左足を強振した。このシュートはGKケパが倒れながら辛うじて弾いたが、もし決まっていたら歴史に残るだろう。

最初のワンタッチでマーカー2人を置き去りに

 それにしてもすごい攻撃だった。このときボールは自陣のボックス近くから、敵陣のボックス内までえんえん動いた。久保ひとりでこのカウンターを実現したのだ。

 しかもSBトラオレからパスを受けたときの久保は、たった一度しかボールに触ってない。なのにそのワンモーションでマーカー2人を完全に置き去りにした。あのワンタッチ・コントロールだけで、ご飯がおいしく3杯食べられる。

 そして直後の31分には敵陣でまたトラオレからパスを受け、彼は右からボックス内へ侵入した。敵DFと正対し、左足で低い浮き球のピンポイントなクロスを入れる。マーカーなんていないも同然だ。

 そこへジャストのタイミングでゴール前に飛び込んできたミケル・メリーノが、倒れながら痛烈なヘディングシュートを見舞った。GKケパが横っ飛びでセーブしたが、これも決定的なシーンだった。

久保の前に立ちはだかる新たな課題とは?

 ただし久保は後半になるとガス欠で運動量が落ち、残念ながら消えてしまった。先日スタメン出場した日本代表のトルコ戦と同じ展開だ。

 守備もするようになった日本のメッシは、そのぶん新たなテーマとしてスタミナ(運動量の維持)が課題になる。挑んでほしい。

 後半は久保の運動量が低下するにつれ、相対的にマドリーのポゼッションする力が増して行った。攻撃こそ最大の防御なり。つまり彼の攻撃力が敵を自陣に張り付けにし、裏を返せばそのままソシエダの防御力にもなっているわけだ。

 かくて後半、アンチェロッティのチームが2点を取って逆転勝ちした。ただし本題はそこではなく、あくまで久保という「文化財保護」の観点から記憶に残るゲームだった。

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【国際親善試合】立ち上がりから彼らは「別人」に変身した ~ドイツ 2-1 フランス

2023-09-16 17:15:00 | その他の欧州サッカー
緊張感みなぎるドイツ

 ある種の「こわいもの見たさ」で、ドイツがフランスと一戦交えたゲームを観てみた。9月12日にドルトムントのジグナル・イドゥナ・パルクで行われた親善試合だ。

 ドイツは解任されたハンジ・フリック監督の後を受け、ルディ・フェラー暫定監督が指揮を執る。彼らは日本戦からスタメンを3人替えてきた。新たに先発したのはヘンリクスとター、ミュラーだ。

 試合開始と同時に、あのドイツが躍動した。「もう失敗は許されないぞ」ということだろう。プレースピードと強度が日本戦とはまったく違って見えた。「ビンビン」だ。

 逆にいえば親善試合で「勝った」「負けた」などといっても、その程度の尺度にしかならないわけだ。

 さて、そのドイツが早くも先制したのが開始4分だった。ニャブリとのパス交換でボックス左に侵入したヘンリクスが、左のポケットからマイナスの折り返しを入れる。これにゴール前のミュラーが、上体を前に倒したうまい胸トラップからボレーを叩き込んだ。

 その後もドイツはハイプレスをかけ、一方的に試合の主導権を握る。彼らのフォーメーションは左が高い4-2-3-1。フランスは4-4-2だ。

フランスの意気は上がらない

 一方のフランスはなんだか意気が上がらない。たまに彼らのボールになると、動きがスローで「鈍いなぁ」という感じだ。

 最終ラインで、かったるそうにボールを回す。明日のデートでどこへ行こうか考えてでもいるのだろうか?

 フランスは中央でポストにボールを当て、再展開する形をよく使っている。そして20分過ぎにギュンドアンが負傷交代したあたりから、徐々にギアを上げてきた。デートの場所が決まったのだろうか?

 この流れは後半に入っても続き、ドイツは押し込まれた。それでなくても彼らは心なしか緩んだ感じだ。もはや前半の「負けたら殺される」みたいな切迫感はない。1-0で進めばよし、というノリなのだろうか。ただし失点しないだけの集中力はある。

 チャンスは作るが、デシャンのチームはなかなか得点できない。

ドイツの追加点が決定打に

 そんなドイツに貯金ができたのは87分だった。敵の縦パスをカットしてショートカウンターに入る。ハヴァーツがライン裏にスルーパスを入れ、サネが走り込んでボックス右からゴール左へ華麗に流し込んだ。2-0だ。

 これに対し、フランスが留飲を下げたのは89分だった。サネがエリア内でカマヴィンガを倒してPKになる。キッカーはグリーズマンだ。彼は冷静にゴール右に決め、フランスは1点差に詰め寄った。

 だが反撃もそこまで。後半アディショナルタイムは3分しかなく、これではデシャンたちは帰り支度もままならない。かくてルディ・フェラ―暫定政権は6試合ぶりの白星をゲットした。

 試合開始から前半中盤にかけての緊張感が持続するなら、ドイツの再建はあり得るだろう。だが次第に沈静化していった様子を見るとどうだろうか。ひょっとしたら次回2026年のワールドカップでは、また「日出ずるところの」日本と当たり煮え湯を飲むハメになるかもしれない。

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【セリエA 23/24 分析】鎌田とゲンドゥージは共存できる

2023-09-07 05:00:41 | その他の欧州サッカー
両者はまったく特徴が違う

 ラツィオにあのMFマテオ・ゲンドゥージがレンタル移籍すると知ったとき、「来たー」と胸が高鳴った。ゲンドゥージといえば彼を認めて引き立てたウナイ・エメリ監督のアーセナル時代、彼が大活躍するのを食い入るように観ていたからだ。あれは2019年。ゲンドゥージはまだ20歳だった。

 その後、彼は後任のミケル・アルテタ監督とモメて構想から外れ、所属クラブが二転三転してオリンピック・マルセイユ経由でラツィオに来た。フランス代表だ。なんでもウナイ・エメリ監督率いるアストン・ヴィラからも、彼は具体的なオファーを提示されていたという。

 ゲンドゥージはセントラルMFとして、攻守両面で精度の高い仕事ができるプレーヤーだ。ボックス・トゥ・ボックスの選手で前へも飛び出せる。

 彼の右足から放たれる強くて速いロングパスは非常に正確だ。アタッカーの足元にすっぽり点で収まる。受け手がどちらの足でトラップするのが有利かまで計算して出せる。

 これを警戒して相手の最終ラインがもし下がれば、今度は敵MFとのライン間にできたスペースにグラウンダーのパスも打てる。穴のないマルチなプレイヤーだ。

鎌田は攻撃的、ゲンドゥージは組み立て役だ

 巷間、「鎌田大地とゲンドゥージは併存できない」などと言われているが、まったくそんなことはない。両者はまるで特徴がちがうからだ。

 鎌田は中盤・前寄りの攻撃的な選手であり、ゲンドゥージは中盤のより低いゾーンで生きる組み立て役の選手である。

 なのに「両者は併存できない」説がなぜ流れるのか? それは4-3-3のフォーメーションを取るマウリツィオ・サッリ政権下では、アンカーのダニーロ・カタルディと左インサイドハーフのルイス・アルベルトの2人は鉄板だと考えられているからだ(少なくともサッリの脳内では)。

 ゆえにMFの鎌田とゲンドゥージは必然的に、残る右インサイドハーフのポジションを奪い合うことになる。で、「同時起用できない」説が乱れ飛ぶのだ。

 だがもしサッリがその認識を改めたとしたら、鎌田は右IH、ゲンドゥージはアンカーでことは丸く収まる。機能的にはまったく何の問題もない。

右IHで時間差起用もアリ

 ゲンドゥージの得意な仕事は最終ラインに落ちてビルドアップを助けるプレイや、全体のバランスを取る動き、ゾーンのギャップを突くポジショニングからの縦横へのドリブルやパス出しなどだ。

 そんなゲンドゥージが中盤の底からのプッシュアップ役なら、鎌田は中盤から前へ飛び出しゴールを取る騎馬武者タイプ。これだけキャラがちがえば同時起用できる。

 ただしサッリが「アンカーのカタルディは絶対に動かさない」とがんばるなら、今季第3節のナポリ戦みたいに鎌田とゲンドゥージを右IHで時間差起用すればいい。

 先発は鎌田だ。彼が点を取り、リードして逃げ切りたい場面になればゲンドゥージと「ご苦労さん交代」する。で、手堅く試合を終わらせる。

 これなら2人ともフル出場せずに済み、インテンシティが落ちることはない。長いシーズンにも耐えられる。あとは2人いっしょに「小さな盾」(スクデット)を高く掲げるだけである。

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【セリエA 23/24 戦術分析】ラツィオの鎌田大地は戦術「トータル・ゾーン」を操る

2023-08-31 06:21:42 | その他の欧州サッカー
チーム作りに時間がかかる

 鎌田大地が移籍したラツィオの試合を、開幕戦から2ゲームとも観た。だがチームの仕上がりがまだまだで、試合になってない。彼らは開幕戦で格下レッチェに1-2と逆転負けすると、第2節の昇格組ジェノアにも0-1と敗れ2連敗した。

 異才マウリツィオ・サッリが監督なので期待していたが、まだ彼らはシーズン前の「キャンプ地の状態」にいるかのようだ。

 サッリのサッカーは、ナポリやチェルシーを指揮していた時代の試合を観ておもしろいと感じた。だがラツィオの現状は、それらの姿とかけ離れている。

 ただしサッリのチームのシーズン始まりはいつもこんなだ。監督の要求が細かいため、チームを完成させるのに時間がかかるのだ。

意味のないバックパスを繰り返したジェノア戦前半

 特にジェノア戦は立ち上がりから、前半が悲惨だった。

 選手がみなパスコースを作る動きをまったくしない。ただ突っ立っているだけだ。で、後ろを向いた選手が足元にボールをもらっては、ワンタッチで元の場所にいる同じ選手にバックパスするだけ。そんなうんざりするようなバックパスの連鎖がえんえんと続く。レイオフになってないのだ。

 レイオフとは、縦パスやクサビのパスを受けた選手が、彼をサポートに来た「3人目の選手」にワンタッチやツータッチでパスを落とすプレーを指す。

 本来、サッリのサッカーでは、このレイオフを多用する。まず低い位置にいるボールホルダーに対し前線の選手が後ろを向き、ショートパスを受ける。ここまではいい。だがここから、ワンタッチで「3人目の選手」にバックパスするのだ。これを繰り返す。

 この循環構造を作り出し、敵の視野をボールに集中させて前線でフリーな選手を生む。で、新たな攻撃を生み出して行く。こうして味方にボールを預けながら動き直すことでマークを剥がす。そしてポジショナルプレーを展開する。これがサッリのサッカーだ。

 だが現状は「仏作って魂入れず」だ。単に同じ場所で同じ相手とバックパスを繰り返すだけで、選手が「動き直し」をまったくしない。「第3の動き」もない。だからマークを剥がせないし、新たなパスコースも生まれない。そんな煮詰まった状況になっている。これはあくまで彼ら本来のサッカーではない。

 ではそんなラツィオの「真の姿」とめざす戦術、今後の見通しはどうだろうか? それを見て行こう。

「サッリ・ボール」、またの名を「トータル・ゾーン」

 そもそもサッリが考えるサッカーとは、どんなスタイルなのか?

 サッリ監督は「サッリ・ボール」と呼ばれる戦術を操る。これはチェルシー時代に付けられたネーミングだ。サッリが志向するフットボール・スタイルの呼称である。彼のサッカーはナポリ時代には、「ヨーロッパでいちばん美しい」とまで言われた。

 一方、イタリア在住のサッカージャーナリスト兼スカウト・宮崎隆司氏は、彼の戦術を「トータル・ゾーン」と名づけた。チーム全員が連動して動くスタイルだ。

 ト-タル・ゾーンはゾ-ンでもマンツーマンでもない。敵選手の位置はまったく関係なく、守備者は人ではなくボールの位置だけでポジショニングを決める。なぜならボールが味方ゴールに入らない限り失点しないからだ。

機動的なポゼッションスタイルだ

 攻撃面でいえば、基本はボール保持をめざす機動的なポゼッションスタイルだ。少ないタッチ数(基本はワンタッチ)でテンポよくグラウンダーのボールを回す。例えていえば、日本ではアルビレックス新潟のスタイルに近い(ただし守備戦術はまったく違う)。

 そしていったんボールを失うと、できる限り高い位置での奪還をめざす。そのため4-3-3の陣形を極めてコンパクトにキープする。非常にゾーンが狭い。最終ラインも高い。あえていえば、かつてのゾーンプレスに似ている。

 ボールに対し横方向は極端に絞る。またボールに対し縦方向は極端に押し上げる、またはリトリートする。さらに敵を押し込むと多くの場合、最終ラインは敵陣内に設定される。

 こんなふうにゾーンが常にコンパクトだと必然的に人が密集する。そのぶんネガティブ・トランジション、ポジティブ・トランジションがともに速い。

 つまり攻撃と守備が一連の流れの中で絶え間なく循環する。攻守が常に一体化したサッカーである。実際、負けはしたが第2節・ジェノア戦の後半は、そんな躍動するサッカーを見せていた。

アバンギャルドなスペクタクルが展開される

 だが残念ながら、現状のラツィオではこの戦術は完成されていない。決まりごとが複雑で細かいため、サッリのチームのシーズン初めはいつもこんなふうに未完なのだ。実際、鎌田もまだ手探りの状態である。

 では戦術「トータル・ゾーン」がラツィオで構築されたとき、いったいどんなスペクタクルが展開されるのか?

 そこではかつてサッリが指揮したナポリやチェルシー同様、刺激的でエキサイティング&アバンギャルドな光景がわれわれの眼前に姿を現すにちがいない。

 いまから楽しみでならない。

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【リーグ・アン 23/24 分析】なぜ今季の南野拓実はゴールが取れるのか?

2023-08-24 09:03:30 | その他の欧州サッカー
南野はセンターポジションで生きる選手だ

 今季フランス1部リーグ・アンの開幕から、モナコの南野拓実が第2節を終え早くも2ゴール2アシストと爆発している。

 彼はセンターでのプレイを得意とする選手だ。トップ下やFW、シャドーのようなポジションを務め、ボールを失っても足を止めず、その場で前からプレスをかけてボールを即時奪回し攻撃するカウンタープレスの申し子だ。

 そのプレイスタイルは、レッドブルグループのザルツブルク在籍時に身につけたものだ。

 敵のビルドアップを打ち砕くハイプレスからのショートカウンターと、ボールロスト時における素早いネガティブトランジションでのカウンタープレス。ザルツブルクはこれらを組み合わせた「ストーミング」が特徴だった。そんなチームの中央に位置し、ゾーンのギャップでフィニッシュに絡んで生きるのが南野なのだ。

 実際、第1次森保ジャパンでトップ下として起用された彼は、激しいストーミングでボールを奪って攻めるスタイルにより中島翔哉、堂安律の両サイドハーフとともに「三銃士」と呼ばれて大活躍した。

 そしていま、モナコで再び南野が花咲かせようとしているのが、こうしたセンターでのプレイである。

サイドに幽閉された昨シーズン

 昨季、モナコで指揮を取ったフィリップ・クレマン監督は、南野を4-4-2のサイドMFで使った。だが冒頭で触れた通り彼はセンターポジションの選手であり、サイドでは生きない。

 実際、サイドに幽閉された彼は、昨季はリーグ18試合1ゴール3アシストと冴えなかった。

 だが今季、モナコの指揮官に就任したアディ・ヒュッター監督は、ちょうど南野がザルツブルクに在籍した2014-15シーズンに同クラブの監督だった人物だ。

 当時、南野と同じチームで同じゲームモデルを共有した才人であり、南野がセンターポジションで活性化する選手であることを知っている。

 かくて今季のヒュッター監督は3-4-2-1のフォーメーションを採用し、当然のように南野を中央のシャドーで起用した。これで場を得た南野は、水に帰り泳ぎ回る魚のように躍動している。

 これは決してフロックじゃない。極めてロジカルな現象なのだ。

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【セリエA 23/24 第1節】ラウタロのドッピエッタでインテル開幕戦勝利 ~インテル 2-0 モンツァ

2023-08-23 08:28:22 | その他の欧州サッカー
インテルは攻撃時3-5-2だ

 インテルは8月19日、セリエAの開幕節でホームにモンツァを迎え、2-0で勝ち切った。

 インテルのフォーメーションは攻撃時3-5-2、守備時5-3-2だ。ボールを失うと中盤でプレスしてディレイをかけ、ディフェンディングサードまでリトリートし非常にコンパクトなブロックを作る。これで敵がサイドを攻めてくれば、同サイドのWBが前に出て対応し、残りの4バックがボールサイドにスライドする。

 8分にインテルが先制だ。右WBデンゼル・ダンフリースのサイドからの折り返しに、中央でFWラウタロ・マルティネスがワンタッチで慎重に合わせてゴールした。先制点だ。ダンフリースはかなり攻撃的で、サイドを前線までオーバーラップする。

 次第にモンツァがボールを保持するようになるが、なかなか決定機を作れない。インテルの分厚い守備ブロックを崩せないでいる。ポゼッション率自体はモンツァの方が高いが、これがインテルのペースなのだろう。  

 インテルのビルドアップは右CBのマッテオ・ダルミアンが前に出て、残りの2バックで行われる。また彼らは敵陣に押し込むと、DFがかなり高い位置まで押し上げる。

ラウタロが2ゴール目を奪う

 後半に入り、ボールを握ったモンツァが何度もゴール前に攻め込むが、粘り強い守備にあいゴールは奪えない。彼らは前線に6人をかけて攻め立てるが、インテルの堅陣を破れない。

 途中、ユベントスから移籍したクアドラードが、交代出場でインテルでのデビューを飾った。

 インテルのビルドアップは、3-1-4-2の形で行われることもある。最終ラインからグラウンダーのボールをていねいに繋いで組み上げる。左右のCBがドリブルで持ち上がることもある。フィニッシュは主にサイドからのクロスだ。

 インテルが攻め込むとモンツァは自陣に引き込み、ボールホルダーの背中に張り付いて絶対に前を向かせない守備をする。そのためインテルも追加点を取るのが容易じゃない。

 だが76分だった。中央のムヒタリアンからボックス左でボールをもらった途中出場のマルコ・アルナウトヴィッチが、鋭いフェイントからグラウンダーのクロスをファーサイドに送る。受けたラウタロ・マルティネスが右から滑り込み、倒れながらカラダごとボールを押し込んだ。ドッピエッタ。2-0だ。

 79分にラウタロ・マルティネスは悠々、退く。試合はこのままインテルが押し切り、ホームでの開幕戦を勝利で飾った。

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