すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【W杯アジア2次予選】来年3月24日アフガニスタン戦・希望スタメン

2015-11-28 08:59:41 | サッカー日本代表
            ◯金崎

 ◯武藤                    ◯南野

            ◯清武


       ◯遠藤航      ◯柴崎岳


 ◯米倉恒貴                  ◯内田

        ◯森重     ◯吉田

            ◯川島


柴崎、米倉、遠藤にチャンスを

 来年3月24日のアフガニスタン戦は重要なテストの場だ。テーマはズバリ、柴崎岳と米倉恒貴、遠藤航の再テストである。まだ出場実績の少ない金崎、南野もスタメンで見たい。右SBの内田、GK川島は3月復帰のウワサなので入れておいた。

 相手のアフガニスタンはグループE最弱を争うチームだ。日本がどんなメンバーで臨もうと負けることはない。それなら大幅にスタメンを入れ替え、テストに使う一手だ。

 ボランチのポジションは長谷部と山口螢、柏木がハリルの中では当確なのだろう。柴崎と遠藤はハリル的にはすでにメンバー外かもしれないが、まだ切り捨ててしまうにはあまりにも惜しい逸材だ。年齢的にも、本来ならロシアW杯は彼らのような若い世代が「中軸」になるべき大会である。

 ザックジャパン時代のレギュラーが相変わらず主力でいる日本代表は、世代交代がほとんど進んでいない。かなり異常な状態だ。柴崎と遠藤には、チーム若返りへの望みを託したい。

 同じ意味でまだまとまった時間プレイしてない南野も、ぜひ見ておく必要がある。テストもせずに彼を外してしまうなら、何のために選んだかわからない。金崎もシンガポール戦では結果を出したが、1試合では何ともいえない。再テストすべきだろう。

 さて米倉に関しては、個人的には藤春よりも期待している。ハリル的には米倉はすでに選外かもしれないが、あのオーバーラップ時の思い切りのよさは捨てがたい。デュエルの強さも魅力だ

 一方、清武はいうまでもなく香川とポジションを争う選手。個人的には香川がレギュラー確定とはまったく考えていないので、清武にはぜひがんばってほしい。

 最後に、「新しい選手は核になる主力と組み合わせなければテストにならない」という人もいる。つまり本記事のように新戦力ばかりでスタメンを組んでもテストにならない、という意味だ。

 確かに一理あるが、主力との組み合わせでやっていては一向にテストが進まない。また、そもそもザックジャパン時代のレギュラーが依然として主力で居座る現代表には非常に問題があると私は考えている。大幅な世代交代が必要だ。そのためにも、あえて新戦力ばかりでスタメンを組んでみた。

 このメンバーから新たな「主力」が出てこなければロシアでの勝利はない。私はそう考えている。

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【サッカー日本代表】2016年に直したい8つの悪いクセ

2015-11-27 07:20:07 | サッカー戦術論
(1)強くて速いパスを身につける

 Jリーグが始まったころと比べれば、日本人選手のトラップの精度は格段に高まった。だが、なかなか改善してないのがパススピードの遅さだ。

 日本人選手のパスは「ポーン、ポーン」とピッチを弾みながら進む弱いパスが多い。これでは速い攻撃はできないし、相手にパスカットされてしまう確率も高い。日本人選手はもう何十年も前から、この悪いクセを直せてない。おそらく育成年代から意識づけられてないからだ。

 例えばヨーロッパの選手は数十メートルもの長い距離を、平気でインサイドキックを使い強くて速いグラウンダーのパスを「ズドン」と出す。だから速い展開ができるし、相手選手が密集した中をカットされずにパスを通せる。この日本との差はとてつもなく大きい。

(2)クロス上手になる

 日本には良いクロッサーがいない。だから「あいつ(SB)にパスを出しても宇宙開発のクロスで終わるから」などと、同サイドのSHは上がったSBを使ってやらない。で、サイド攻撃が機能せず、SHがボールを持つとドリブルで自らカットインしてシュートか、あるいは中央突破を狙うケースが多い。すべてはクロスの質が悪いゆえの悪循環だ。

 一方、クロスの受け手の側の動きも悪い。クロスが上がる瞬間に、ゴール前で3~4人の選手が一直線に並んで棒立ちになっていたり、ポジショニングが重なることが多い。そうではなく、ニアに詰める、ファーに回り込む、ゴール前から降りる動きでシュートのリバウンドを狙うなど、中の選手が動きながらボールを迎えたい。

 また同じクロスを入れるのでも、山なりの大きなボールでファーを狙う、あるいは相手GKとバックラインの間に強くて速いグラウンダーのボールを入れるなど、ゴール前の状況に合わせてクロスにバリエーションをつけたい。

(3)SBをうまく上がらせろ

 CBがボールを保持したとき、2人のCBの距離が近すぎる。両CBはもっと距離を取り、SBを自然に前へ押し出すようなポジショニングをしたい。場合によってはボランチの1枚が最終ラインに降り、ビルドアップに加わることもありうべし。

(4)上がったSBを使うコンビネーションを磨け

 オーバーラップしたSBに、同サイドのSHがタイミングよくパスを出す連動性を身に付けたい。ボールをキープしたSHと、上がったSBの連携を自動化したい。「この形になれば必ずボールがそこに出る」オートマチズムをカラダに覚えさせろ。

(5)足元にもらうのでなく、走り込んでスペースでもらえ

 日本人選手はオフ・ザ・ボールの動きが絶対的に足りない。ラクをし、その場に棒立ちで足元にばかりパスを欲しがる。そうではなく、もっとボールを引き出す動きが絶対に必要だ。

 フリーになる動きやスペースを作る動き、具体的にはダイアゴナル・ランやボールに対して引いてくる動きなど、パスをもらうための動きをするクセをつけたい。

(6)ビルドアップ不全症を直せ

 上の(5)とも関係するが、顔を出す動きがないため最終ラインからのビルドアップに苦しむ。たとえDFからボランチにボールが出ても、またバックパスでボールが返ってくることも多い。前の選手がフリーになる動きをしなければビルドアップはできない。

(7)遅攻オンリーから抜け出す

 ボールを奪ったら、いったんバックパスや短い横パスをしてひと休み。時間を置きスローダウンして相手の守備の体勢が整うのをわざわざ待ってやってから、遅攻にしてしまう悪いクセを直したい。ボールを奪ったら周りの選手が素早く動き出し、1本目のパスをできればタテに通したい。

 守備とは、いかに自分たちの「バランスを保つ」かがキモ。逆に攻撃は、自分たちから「バランスを崩す」ことで行うものだ。つまり敵がボールを失った瞬間は、相手のバランスが崩れているとき。日本にとってはカウンターのチャンスだ。そこで速く攻めたい。

 にもかかわらず今の日本は攻守の切り替えが遅く、何でもかんでも遅攻にしてしまっている。「守」から「攻」への切り替え、すなわちポジティブ・トランジションを改善したい。

(8)ピッチをワイドに使う

 ショートパスを主体に攻めたザックジャパンからの流れで、日本の選手は大きな展開ができずにいた。だがここへきて変化の兆しがある。そのひとつがSBから、逆サイドに開いたウイングへ斜めのボールで大きくサイドチェンジするプレーである。アジア2次予選最大の収穫のひとつがこれだ。

 ボランチの位置から放射状にダイアゴナルなパスを出せる柏木の登場と同時に、それに感化されるかのようにSBやCBも逆サイドのウイングへ意欲的にサイドチェンジのロングボールを入れるようになった。

 いままでの日本はショートパスをつなぐだけの「小さいサッカー」だった。だがこのところダイアゴナルな浮き球を使った「大きなサッカー」ができるようになりつつある。これをぜひ定着させたい。あとは状況に応じて、ショートパスとロングパスをうまく織り交ぜていくことが大事だ。

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【サッカー日本代表】W杯最終予選で日本を待ち受ける「永遠のテーマ」とは?

2015-11-25 23:59:15 | サッカー戦術論
どこからプレスをかけるのか?

 相手がベタ引きしてくるW杯アジア2次予選では話題にもならないが、最終予選になれば必ず問題化するだろう永遠のテーマがある。歴代の代表チームは、いつもこの問いに頭を悩ませてきた。

 それは相手ボールのとき、守備ブロックをどこに置くのか? どこからプレスをかけるのか? である。

 例えば相手ボールになったら、(1)自陣に引き込み、リトリートからのロングカウンターを狙うのか? それとも(2)ブロックをずっと前に置き、相手のバックラインがボールを持つとハイプレスをかけてショートカウンターを狙うのか? あるいは中間を取って(3)ミドルプレスでプレスのスイッチを入れるのか?

 そしてW杯本大会で相手が自分たちより強いとき、(1)の戦い方を選択するのか? それとも(2)や(3)を選んで積極的に前から行くのか?

 また本大会で逆に相手が自分たちより弱いとき、(2)を選ぶような思い切った戦術を取るのか? それだけではない。点差や時間帯との兼ね合いもある。例えば1点リードして後半15分のとき、(1)のやり方に変えて安全策を取るのか?

 これらの問いに対する答えは、相手との力関係や戦況にもよる。そして確実にいえるのは、このシミュレーションはアジア2次予選ではできないということだ。

 では、いつやるのか? いまから考えておく必要がある。

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「日本はどんなサッカーを目指すのか?」を考えるときのコツ

2015-11-24 17:08:17 | サッカー戦術論
サッカーには相手がいる

 前に何度か書いたことがあるが、日本のサッカー界はとかく単純な二元論でモノを考えようとする傾向がある。トルシエのときの「個か? 組織か?」論争もそうだし、ザックのときの「アクション・サッカーか? リアクション・サッカーか?」もそうだ。常に極端な二択でものごとを考えようとする。

 サッカーには「相手がいる」ことを忘れているのだ。

 例えばボールをキープしてポッゼッション率を高め、主導権を握って能動的に仕掛けるポッゼッション・サッカーを目指すのか? それとも相手にあえてボールを持たせ、まず攻めさせて自陣のバランスを崩させ、そこを突いて仕留めるカウンター・サッカーを目指すのか?

 こう考えると、またもや二元論になる。

 だがここに、(1)相手との力関係はどうか? (2)相手はどんなやり方をしてくるのか? という2つの要素を加味すればどうなるか?

 すなわち自分たちより強い相手がポゼッションでくればカウンターを狙い、逆に相手がカウンター・サッカーならばじっくりポゼッションし、相手のほころびを見つけて仕掛けるサッカーをするーー。

 こんな考え方もできる。

 つまり相手の出方によるのだ。

「オレたちはどんなサッカーをするのか?」でなく、シチュエーションに応じてやり方を変えられる試合巧者なサッカーを目指す。

 日本がひと皮むけるには、そんな発想が必要だろう。

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【サッカー日本代表】アジリティで勝負する日本人らしいサッカーを目指せ

2015-11-23 09:27:46 | サッカー戦術論
忍者のようにひらりひらりと敵をかわす

 今年の代表チームの活動は終わった。さて年末だし、ということで「2015年、いちばん印象に残った試合は?」と考えてみると10月に行われたあのイラン戦だった。

 この試合、われらがハリルジャパンは寄せの速い相手にボールロストの山を築いた。彼らの激しいプレスは強烈だった。小柄で身体的な強さのない日本人が、まずカラダをぶつけて勝とうとする彼らの流儀に乗って戦えば勝ち目はない。

 とすればそんな世界の強豪とW杯本大会で当たるとき、日本はどんなサッカーを目指せばいいのか? 

 日本人選手の最大の武器であり特徴は、アジリティ(動きや判断の敏捷性)だ。相手チームと苦手なフィジカルでまともにぶつかり合うのでなく、忍者のようにひらりひらりと敵のプレッシャーを素早くかい潜りながらゴールに迫るーー。そんなサッカーができると理想だ。

 ただしくれぐれも肝に銘じておくべきなのは、これは接触プレイから逃げるという意味ではない。当然、球際で強く戦うべきところは戦う。そのための準備もする。だが、それ以外の「意味のない接触」をしないという意味だ。

 しかしイラン戦を見る限り、レベルの高い相手はそうやすやすと日本のペースにはさせてくれない。イランはフィジカルやインテンシティという自分たちの土俵に日本を引きずり込み、まともに相撲を取らせてくれなかった。

 では日本人のアジリティを活かすにはどうすればいいのか?

 まず運動量で相手をはるかに上回ることだ。そして質の高い動き(特にオフ・ザ・ボール)や、パススピードの速さと強さ、ワンタッチコントロールのよさを身につけることだ。そうすれば接触プレイすら起こらない速い展開に持ち込むことができる。

 相手の守備者に寄せられる前に少ないタッチ数でボールを離し、速いダイレクトプレイがさざ波のように連鎖して行く。こうしてめまぐるしい第3の動きがフィールドのあちこちで展開されるようになれば、相手が息つく暇さえ与えない忍者のような日本のサッカーができるようになるだろう。

 そうすれば香川のようなアジリティに優れた選手も生きる。

 日本が世界で勝つにはこれしかない。

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【サッカー日本代表】続・ものの見方を変えれば解釈は変わる

2015-11-22 01:01:58 | サッカー日本代表
 カンボジアの選手はイケメンが多く将来性がある。

 それに彼らは日本に友好的だ。

 日本と戦って2-0の試合をし、また決定機さえ作ったのは彼らにとって将来につながるだろう。

 カンボジアには、ちょっと早いがいいボーナスになったんじゃないか?

(人間、こういう余裕のあるものの見方でありたいものだ)

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【サッカー日本代表】ものの見方を変えれば解釈は変わる

2015-11-21 00:13:18 | サッカー日本代表
カンボジア戦にだってよさはあった

 2-0に終わったカンボジア戦の映像を、例によって暗記するほど繰り返し見ている。この試合、ハリルは新戦力のテストという重要なチャレンジをした。ゆえに私はこのゲームの表面的な結果をあげつらい、どうこう言うつもりは全くない。

 むしろ逆に試合映像を何度も見ているうちに「おお、山口蛍はよく機能しているな」とか、「こんなにデキのいい長友は久しぶりに見れた」などと、だんだん余裕が出てくるようになった。ものの見方次第で解釈なんてどうにでも変わるのだ。

「藤春が代表初アシスト。やっと結果を出せてよかった」

「南野は3回くらいしかボールに触ってないが風格がある。スタメンで使えばやりそうだ」

「原口はミスはあるがインテンシティがいい」

「遠藤航は4回ミスをしたが、来年3月24日のアフガニスタン戦にスタメン起用すれば、意気に感じて結果を出すんじゃないか?」

 などと考えたりしている。

 そう、ハリルがアジア2次予選を新戦力のテストに使う限り、私は上記のようなものの見方をすることにした。ゆえに来年は長期的視野に立ち、うわべの結果に一喜一憂することなく余裕をもって観戦できそうだ。

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【サッカー日本代表】カンボジア戦「新人のテストは失敗した」発言の意味不明

2015-11-20 15:12:01 | サッカー日本代表
テストで課題を見つけ修正することに意義がある

 カンボジア戦で、ハリルが遠藤航ら新戦力をテスト登板させたことについて、「テストは失敗だった」という物言いをする人がいる。

 とんでもないカンちがいである。

 問題点はどこにあり、それを修正するには何をすべきか?

 テストとは、その処方箋を見つけるためにやるものだ。テストの結果を見て、ダメなところを直して行く。そうやってチームは進化して行く。

「テストしてみたら活躍した。成功だ」、「不出来だったから失敗だ」

 そんな単細胞の発想をしているから、日本はいつまでたってもW杯の本大会で勝てないのだ。

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【サッカー日本代表】11月シリーズで名をあげた選手、ヘコんだ選手

2015-11-19 07:25:15 | サッカー日本代表
柏木と金崎のインパクトは事件だった

【金崎夢生】

 FWの金崎はシンガポール戦、しっかりした胸トラから振り抜いたシュートがインパクト満点だった。彼はボールの収まりがよくポストにもなれ身長もある。最前線のデュエルで戦えるフィジカルもある。動きもシャープで鋭かった。もちろん1試合だけで判断するわけにはいかないが、新戦力がなかなか出てこない現代表にあって、最大の衝撃をもたらしたことだけはまちがいない。

【柏木陽介】

 11月シリーズで最も売り出した選手はボランチの柏木だ。ただしW杯アジア2次予選では対戦相手がリトリートして低く構えるため、柏木にはほとんどプレスがかからずフリーでプレーできている。ゆえに手放しで賞賛するわけにはいかない。例えばドイツやブラジルが激しくプレスをかけてきたとき柏木がどこまでやれるか? それが問題だ。

【長谷部誠】

 あまり声高にいわれなかったが、シンガポール戦での長谷部の守備とパス出し、攻め上がり、運動量は特筆モノだった。陰のMVPといってもいい。むろんシンガポール戦に限らず、平均的にハイレベルな結果を残すタイプである。派手さはなく目立たないが、代表チームへの貢献度は果てしなく高い。「この選手のあとを誰が継ぐのか?」と考えると気が重くなる。アンカー的なキャラの遠藤航には早く海外へ行き、良い経験を積んでほしい。

【山口蛍】

 カンボジア戦、ボランチの山口は低い位置から、サイドに開いたSHにダイアゴナルの大きな展開をするなど機能していた。シンガポール戦での柏木のプレイを意識したかのような、フィールドを横切る斜めのパスを何度もきれいに決めていた。ガッツのあるプレスと運動量も大きな武器だ。あとはプレイの精度を高めたい。

【遠藤航】

 カンボジア戦、スタメンに抜擢されたが、預けるだけのパスや逃げのパスが目立ち、大きく展開する「作るパス」が出せなかった。ミスも目立ち、パスカットされカウンターを食らいそうになるシーンもあった。ただし同時スタメン出場した山口と守備的なキャラがかぶり、バランスの取り方に苦心した結果でもある。その意味では起用した監督の責任も大きい。未来の大器だけに、1回の失敗でヘコむわけにはいかない。がんばれ、航。

【武藤嘉紀】

 武藤はファイトする選手で思い切りがよく、スピードとフィジカルの強さで敵を圧倒する。ゴールの匂いのする男である。その破壊力はシンガポール戦でもいかんなく発揮されていた。技術レベルも一定水準をクリアしている。ただ持ち前の強い気持ちがはやる分、プレイ精度にブレが出るケースも見られる。8分の気持ちでミスをなくし、冷静に決めるところは決めたい。

【原口元気】

 原口は「戦う素質」があり、スケールの大きな選手である。競り合いで粘る姿勢と強いメンタル、インテンシティが頼もしい。だが11月シリーズでは、最後にボールを離すとき(ラストパスやシュート)の精度が課題として残った。もうひと声、ボールコントロールに磨きをかければ一段高い選手になれる。今後に期待だ。

【宇佐美貴史】

 宇佐美はシュートのうまさでは代表チームで文句なく1、2だ。それだけでなくドリブルからの突破やワンツーなど、他の選手にない飛び道具を持っている。能力の高いスペシャルな選手だ。だが運動量が少なくデュエルが苦手。また本田のように調子が悪いときは悪いなりに、それでも一定水準の仕事をすることができない。いかにも天才らしく120点の試合と50点のデキの試合が同居してしまう。課題は香川と同様、アベレージでの活躍率だ。

【香川真司】

 香川はおそらく本質的に「闘うこと」が苦手で、メンタルの強さがない。だが持って生まれたアジリティと後天的な努力で技術レベルを極限まで高め、通用している選手だろう。最大の課題はデキ不出来の差をなくし、アベレージで活躍できるようになること。シーズンを通してもそうだし、1試合を通じてもそうだ。このまま消える試合が多くなれば代表チームでは厳しくなるかもしれない。

【本田圭佑】

 本田はフィジカルとメンタルが強く、プロ意識も高い。たとえ調子が悪くても、悪いなりに身を投げ出してでも一定の結果を出す。ここは香川や宇佐美に強く見習ってほしい点だ。スピードはなく11月シリーズではキレもよくなかったが、自分の勝負ポイントをわかっており、うまく自分の土俵に持ち込み必ず勝負に勝ち残る。今後も年齢なり、自分なりのプレイ像を自分で描いて行けるだろう。

【岡崎慎司】

 岡崎は11月シリーズでは疲労の蓄積とバイオリズムが底にきている感じだった。本田と同様、惜しみなくファイトする熱い選手で泥臭くチームに貢献する。彼の八方破れなゴールがチームを鼓舞し、全員の士気を高める。意識も高く心配ないが、来年は彼らしく元気なところを見せてほしい。

【吉田麻也 & 槙野智章】

 FIFAランキング183位でグループE最下位のカンボジア相手に、守備の不安を残した吉田&槙野の両CBにはさらなる研鑽が求められる。エアポケットに入ったかのようなポカを今後はなくしてほしい。またスピードに対する対応と敏捷性のなさを補う互いのカバーリング、裏のスペースのケア、ポジション・バランスの取り方を研究したい。W杯本大会でセンターラインの守備があれでは戦えない。

【森重真人】

 森重は高いパスセンスを売り物に、最終ラインからのビルドアップで貢献する。彼の特徴は近距離だけでなく、正確なロングボールを生かし遠くの選手にもパスを配給できる点だ。CBのレギュラー取りレースでは吉田のパートナーを槙野と争っており、現状では横一線か。クレバーな守備とあわせ、日本代表の後ろ半分のレベルを競争原理でアップさせていってほしい。

【長友佑都】

 シンガポール戦での長友は、同サイドの武藤とのバランスを取り攻撃は抑えめだった。だが右SBに入ったカンボジア戦の特に後半には、積極的なオーバーラップから質のいいクロスを配給した。「やっぱりこんなにすごい選手だったんだ」と、久しぶりに彼の真骨頂を見た思いがした。カンボジア戦の後半は途中出場の本田が前のスペースを空けたことも一因だが、ひょっとしたら右サイドのほうがいいのでは? などと思わされた。

【酒井宏樹】

 酒井は逆サイドに開いたウイングに対しダイアゴナルなピンポイントの神サイドチェンジを決めたかと思えば、ゴール前へ入れるクロスがはるか銀河系を探索に行ったりする。フィジカルが強く戦闘能力もあるため、あとはクロスの質さえ上がれば問題ない。ただし出し手の質ばかりでなく、11月シリーズでは受け手の動きのクオリティも問題化した。クロスによる攻めは今後、チーム単位で取り組んでいく必要がある。

【藤春廣輝】

 スピードのある左SBの藤春は、カンボジア戦で代表初アシストの結果を残した。また前半の終わりに電光石火の早業で左前へ抜け出し、決定的なシュートも放っている。いままで存在感が薄かったが、「ハリルがなぜ選んでいるか?」をプレイで証明し説得力を持たせた。この調子で今後、一皮も二皮もむけてほしい。

【西川周作】

 対戦相手が専守防衛でくるアジア2次予選ではあまり守備機会はないが、ビルドアップの第一歩になるパスを出せる貴重なGKだ。正確なフィードとパス出しのタイミングで勝負する。ライバルの川島がいない11月シリーズでは着実に実績を積み上げたといえるだろう。

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【W杯アジア2次予選】途中出場の柏木が救った瀕死の日本 ~カンボジア0-2日本

2015-11-18 11:23:58 | サッカー日本代表
狙いのサイド攻撃が当たらず前半は苦戦した

 日本はボランチに山口蛍と遠藤航を使うテストモードにトライした。左SBに藤春を入れて長友を右SBに回し、ワントップに岡崎、トップ下に香川、左に宇佐美、右に原口と、先日のシンガポール戦から大幅にスタメンを入れ替えた。

 日本の狙いはサイド攻撃だった。だがカンボジアの人数をかけた手厚いサイド対策に阻まれ、なかなか崩し切れない。こうして無得点のまま、5バックで引いて守る相手の「やらせておく」ゲームプランに雪崩れ込んで行った。

 日本は両SBを積極的にオーバーラップさせ、そのかわり守備的なボランチ2枚とCBの4人が自陣に居残り守るゲームプランだった。だがサイド攻撃が機能しないと見るや、後半スタートからゲームを作るタイプのボランチである柏木を投入し、チームは激変。後半に2点を取って格下に辛勝した。

サイドにスペースを作らないカンボジアの5バックに手こずる

 ボランチの山口は低い位置から、サイドに開いた宇佐美にダイアゴナルの大きな展開をするなど機能していた。彼は先日のシンガポール戦での柏木を意識したかのような、フィールドを横切る斜めのパスを何度もきれいに決めていた。

 だが前線にいるパスの受け手が、カンボジアの5バックの厚い守りに阻まれた。フィニッシュやラストパスの精度にも欠け、前半は点が取れないままズルズル進んだ。日本は次第に焦りも出て、そのうちに運動量も落ちた。もっと早めに1点取れれば展開は大きく変わっていたかもしれない。

 日本は両SBが高い位置を取り、チームとしてサイド攻撃を狙っていた。ボランチやCBからサイドに開いたSHへ斜めのパスを出し、そのSHの背後をSBがオーバーラップする。この形を入念にパターン練習していたようだ。

 だがカンボジアは5バックなのでシンガポールと同じく引いて守ってはいても、シンガポールのようにサイドにスペースができるわけではない。前半20分くらいまでの日本は悪くなかったが、カンボジアは日本のサイドアタックに対し同サイドに3人が集中的に詰めてくるなどサイドのケアに抜かりがなかった。こうして日本は次第に相手のゲームプランにハマって行った。
 
 日本はしきりに攻めて最終ラインを押し上げるが、逆にパスカットされた後にプレスがかからず高いラインの裏を突かれてカウンターを食らう。ネガティヴ・トランジションが悪かった。その流れで相手に与えた前半30分のFKはあやうく1点もの。カンボジアに何度も危ない場面を作られ、前半は守備面でも大きな課題を残した。

柏木がもたらした「長い槍」が光った

 そして後半立ち上がり。スタートから投入された柏木のロングパスが起点になり、ゴール前の交錯からPKを取れた(キッカーの岡崎が外して得点ならず)。だがこのシーンが象徴するように、後半は「柏木の時間」になる。

 後半6分にその柏木のFKがカンボジアのオウンゴールを呼び、まずは1点先制。半分は彼のゴールだった。これ以後、相手バックラインの裏のスペースへ柏木が何度も浮き球の中長距離パスを落とした。彼のもたらした「長い槍」が日本のリズムを変えた。後半35分には、GKがかろうじて弾く惜しいミドルシュートも放った。

 後半の日本は(アバウトでなく)狙いの正確な裏を狙うロングボールを増やし、「大きなサッカー」をするようになる。

 後半13分には原口がドリブルからワンツーでリターンをもらい、最後は逆サイドに詰めた長友にドンピシャの長いラストパス。長友のヘッドは決まらなかったが、完全に日本ペースになった。長友は精力的に攻め上がり、何度もいいクロスを入れていた。

 2点目の起点になったのは、右サイドから長友が左の原口へ出したサイドチェンジ。前のスペースに走り込んだ藤春が原口から縦パスを受けてセンタリングし、途中投入された本田がヘッドで決めた。この日何度も上がった藤春はなかなか結実しなかったが、最後に大きな仕事をした。本田はこれでW杯予選5試合連続ゴールとなり、日本新記録を達成した。やっぱりこの男は持っている。

 残り5分で交代出場した南野も短時間ながら手応えあり。余裕と風格があり、長い時間プレイさせれば結果を出しそうな予感がする。格下相手に2点しか取れなかったのは大いに不満だが、新しい選手を使うトライをしたことは評価したい。

むしろ宇佐美と香川をスタメンで使ったのが疑問だ

 選手別では、個人的に期待していた遠藤航は預けるだけのパスや逃げのパスが目立ち、大きく展開したり「作るパス」が出せなかった。ミスも目立ち、パスカットされカウンターを食らいそうになるシーンもあった。

 CBの槙野は長めの縦パスを何度も狙っていた。だが前半21分に両SBがどちらも上がっているにもかかわらず自分でドリブルし持ち上がってボールを奪われ、薄い守備を突かれて一気にカウンターを食らう「やらかし」もあった。

 原口は絞り気味でSBが上がるためのスペースを作った。彼はいつものようにアグレッシブだったが、ややプレイに精度を欠く場面もあった。ボールを離すまでのインテンシティは非常にいいが、最後のパス出しやシュートの正確性が課題だ。ミスを減らしたい。

 最後に繰り返しになるが、新顔の選手を大胆に試すチャレンジには拍手を送りたい。むしろすでに力のわかっている宇佐美や香川をスタメンで使ったことのほうが疑問だった。特に宇佐美はもうレギュラー脱落ではないだろうか?

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【W杯アジア2次予選】やっとハリルが実戦で選手のテストを始めた

2015-11-17 01:30:43 | サッカー日本代表
今さらだが2次予選のテーマは新人の発掘だ

 思えば悪夢の始まりは、あのアジア2次予選・初戦のシンガポール戦だった。相手はド格下の上に日本のホームである。当然、大量得点での圧勝が予想された。

 だが結果はなんと屈辱のスコアレスドローだった。「これはやばいんじゃないか?」。怖気付いたハリルはこの初戦ですっかりチキンなモードに陥り、ザックよろしく海外組完全固定の鉄板スタメンで2次予選を戦ってきた。

 だが、それでは意味ないのだ。

 ロシアに向けた旅はまだ2次予選である。相手ははるか格下で、勝って当たり前の試合が続く。

 とすればただ勝つだけじゃなく、新しい選手を実戦でテストしながら新戦力を発掘し、かつ勝ち点を積み上げていかなきゃ意味がない。そんな付加価値のついた勝ち方でなければ、相手が弱すぎて強化にならないからだ。

 ところがハリルは初戦のシンガポール戦で痛いヒジ鉄を食らい、完全に慎重モードに入ってしまった。で、スタメン完全固定の意味のない勝ち方を続けてきた。

 だが先日行われた2回目のシンガポール戦でやっと、金崎や柏木など新戦力をスタメンで使いながらの試合運びに変わった。いや、あの1回目のシンガポール戦で勝ってさえいれば、こんな遠回りはしなくてすんだのだろう。金崎や柏木はとっくにスタメン出場していたにちがいない。

 だが今さらそんなことをいっても始まらない。

 さて、やっと慎重モードから脱したハリルは今夜のカンボジア戦でも、アッと驚くような新鮮なスタメンと選手交代を用意してくれているにちがいない。

 でなければロシアの本番で勝てるチームは作れない。

 日本の目標はもはやW杯本大会に「出る」ことではなく、本大会で「勝つ」ことなのだから。

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【W杯アジア2次予選】スタメンを入れ替え新顔が躍動 ~シンガポール0-3日本

2015-11-14 09:17:18 | サッカー日本代表
遅攻偏重など課題は相変わらず

 大幅にスタメンを変えて前回引き分けの雪辱を果たした一戦だった。日本はチームとして、ダイアゴナルな浮き球の中距離パスを意識して使ったのが効果的だった。ワントップに起用され1ゴールを上げた金崎やボランチの柏木、トップ下の清武、左SHの武藤など新戦力が躍動した。

 だが攻め込まれ自陣でボールを奪った際、敵はまだ日本陣内に居残りカウンターのチャンス(敵を引きずり出している)にもかかわらずいったん横パスやバックパスをし、遅攻にしてしまう悪いクセが直ってない。ボール奪取後の動き出しの遅さと運動量の少なさも致命的で、ポジティブ・トランシジョンが非常に悪い。

 また前回対戦時の反省からSBを使いサイドから攻める意図も感じられたが、相変わらず機能しなかった。ひとことでいえば、フレッシュな新戦力でこのところの沈滞ムードをかろうじて吹き飛ばした試合といえる。

FW金崎が一躍レギュラー候補に

 選手別では、しっかりした胸トラから鋭いシュートを決めたFWの金崎が光った。彼はボールの収まりがよくポストにもなれ身長もある。動きもシャープで鋭かった。後半に入るにつれ徐々に消えたが、前半のクオリティを90分間維持できれば有力だ。

 また長谷部とボランチ・コンビを組んだ柏木もよく機能した。パスの鋭さや急所のエグり方は柴崎の方が上だが、柏木はやわらかいエンジェル・パスが出せる。特に多用した斜めのパスが有効だった。走りながらプレーできるところも強みで、クロスもいい。ウラを狙うスルーパスもある。魅力的な存在だ。

 清武もこのところの香川より明らかにデキがよく、左SHに入った武藤もこのポジションのほうがボールに触る頻度が高くいいチャンスメイクをしていた。

ボールがよく走るピッチも味方に

 シンガポールは前回同様リトリートからのカウンター狙いだったが、完全なベタ引きオンリーではなかった。マイボールになると前回より人数をかけて攻めてきたため自陣にスペースができ、日本にとってはやりやすかった。フィジカルで圧倒された先日のイラン戦と比べれば、日本人選手がカラダを入れれば相手はなにもできなくなった。

 またボールがよく走るピッチで、日本の速いパスワークがハマったのも幸いした。逆にいえば日本人選手のパスはいかに弱くて遅いかだ。芝の長いピッチでも、この日のようなパススピードで繋げないと勝てない。いつまでもピッチを言い訳にしているわけにも行かない。

 このほか修正点としては最終ラインがボールをもったとき、顔を出してやる動きがないこと。前が棒立ちで運動量が少なすぎる。「第3の動き」など夢のまた夢だ。そのため相変わらずバックラインからのビルドアップに手間取るシーンが見られた。また右SBの酒井(宏)はこの日もクロスの質が悪く、サイドからの攻めに課題を残した。

 相手とは力の差があり、5~6点は取れた試合だ。ニューフェイスの活躍で雰囲気こそ変わったが、ビルドアップやサイド攻撃不全、少ない運動量、遅攻への偏りなどいつもと変わらぬ課題を積み残した。とはいえ勝ったのはもちろん大きい。次のカンボジア戦(17日)でもスタメンを大幅に入れ替え、ただ勝つだけでなくテストも兼ねた有意義な勝利に期待したい。

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【サッカー日本代表】今回のメンバー選考で見えたハリルの矛盾と本音

2015-11-06 11:49:28 | サッカー戦術論
香川と宇佐美は絶対に外されない

 目前に迫ったシンガポール戦、カンボジア戦を戦う日本代表メンバーが5日、発表された。選ばれた選手、外された選手の顔ぶれを見ると、ハリルの言行不一致と隠れた本音が透けて見える。

 いや、ハリルは今の日本代表の問題点をわかっている。欠点を修正する処方箋も用意している。彼の言うこと、やることを見ればそれはわかる。トータルでいって良い監督だ。彼に必要なのは何より時間である。だからあまり批判したくないのだが、ただし就任からずっと同じ問題を引きずっているように見える。それは掲げる理想と、やってることのギャップである。

 例えばハリルは盛んにデュエル(決闘)が必要だ、デュエルできる選手を選ぶ、という。球際の粘りがあり、泥臭くカラダを入れて力強く相手と競り合えるーー。そんな選手を理想としている。ちょうど激しいプレスのかけ合いになった、先日のイラン戦のような試合でカラダを張れる選手である。

 だが現実はどうか? 競り合いをイヤがるお上品な香川と宇佐美が相変わらず選ばれている。ハリルは彼らを絶対に外さない。あまりにも能力が高すぎるため、弱点があっても外せないのだ。

 香川は、かつての中村俊輔とまったく同じ致命的な欠点を抱えている。自分には「カラダがない」ため、敵との強い接触プレイを避けるクセだ。身体能力で競うと自分が負けてしまうからである。

 で、相手が強くカラダをぶつけてくると、早めに倒れてしまう。周りから見るといかにも競り合っているように見えるアリバイ・プレイをしている。またプレスをかけるときも相手との距離を詰めないし、「ボールを奪おう」という気迫が見えない。アリバイ的にコースを切っているだけだからだ。

 サッカー経験のある人ならよくわかるだろうが、この種のアリバイ・プレイをするのは決まって技術のある選手に多い。

 ある選手は「自分はうまいんだ。だから競り合いで体力を消耗するなんて損だ。自分が力を発揮すべき場面はほかにある」と考えてアリバイ・プレイをする。香川や宇佐美は、おそらくこのタイプだろう。

 例えば相手が激しくプレスをかけてきたあのイラン戦、宇佐美は接触プレイを避け、攻撃面では完全に消えていた。得意のドリブルもまったく仕掛けようとはしなかった。反面、守備では貢献しているように見えたが、よく観察するとアリバイ守備が随所に見られた。

 つまり本心から「この局面ではカラダを張って守らなければピンチだ」と判断してやっているのでなく、おそらく監督から守備をやれと言われて仕方なく、守備しているように見せているだけだ。

 いってみれば子供と同じである。「赤信号で渡ってはいけない。ルールは守るべきだ」と考えて道を渡らないのでなく、先生にしかられるから渡らないだけだ。

 一方、香川のようにガタイがなく、フィジカルで勝負すると自分が負けてしまうと自覚している選手も接触プレイをイヤがり、避けてしまう。で、アリバイ・プレイを演じるーー。

 深刻な問題である。

 技術がないだけなら、練習すれば身につけられる。だが香川と宇佐美の場合は心構え=メンタルの問題だけに、解決するのがむずかしい。

 本来なら、イラン戦のような不甲斐ない消え方をした直後の代表選考で、懲罰的にズバッと代表メンバーから外してしまえばいいのだ。その種の非情さを監督が見せれば、本人たちはハッと目が覚め必死にカラダを張るようになるだろう。

 だがハリルは、それをやらない。

 一方、米倉のような外しやすいクラスの選手はカンタンに外し、代わりに藤春を入れて見せる。で、「藤春は厳しいレギュラー争いに勝ったのだ」と胸を張り、まるで歌舞伎役者のように口上を述べる。いかにも自分は監督として適正な競争を促しているぞ、と演技して見せる。

 だがハリルには、香川や宇佐美のような「大物」を外す勇気はない。

 結果、レギュラー完全固定のぬるま湯が今後も続いて行く。結果的に香川と宇佐美は立ち直るチャンスを奪われ、ポジションが保証されたヌルい環境の中、その程度の選手で終わって行くのだ。

 香川と宇佐美は、替えのきかない傑出した能力の持ち主だ。だからこそ彼らが機能するかどうかは、ハリルジャパンのゆくえを大きく左右する。ゆえに彼らの問題点が改善するまで、根気よくそれを指摘し続ける必要がある。もちろん彼らに恨みがあるわけではない。

 日本がW杯決勝トーナメントの常連になるためだ。

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【サッカー日本代表】「イラン戦での柴崎は悪かった」は悪質なデマだ

2015-11-05 17:04:16 | サッカー日本代表
叩きやすい選手だけを叩く腐ったマスコミ

 ロシアW杯アジア二次予選のシンガポール戦、カンボジア戦に向けた日本代表メンバーが発表され、MFの柴崎が代表から外された。

 彼が外れた理由は、おそらく「遠藤航(湘南ベルマーレ)をどうしても入れたい」というのがひとつ。そしてもうひとつは「柏木陽介(浦和レッズ)をもう少し見たい」ということだろう。

 ところが柴崎の落選に勢いづいたマスコミは、「イラン戦での柴崎は相手のプレッシングに押されて何もできなかった」などと試合直後に続き、またもやデマを流しはじめた。

 いったい彼らはどこに目をつけているのか?

 私はあのクソつまらないイラン戦の映像を、暗記するほどくり返し何度も見た。

 だが柴崎はむしろ前にできたスペースに走りこむ武藤にスルーパスを出すなど、きっちり機能していた。それだけでなく他の選手のように短い横パスに終始するのでなく、ロングボールで一発を狙う意図もしっかりもっていた。

 一方、守備面でも彼はイランのボールホルダーに積極的にプレスをかけまくっており、勢いあまってそれらが全部ファウルになってはいたが(笑)、それなら「柴崎はプレスの掛け方が下手だ」とはいえても「相手のプレッシングに押されて何もできなかった」なんてデマもいいところだ。

 彼は決して「デキがよかった」とはいえないが、相手との接触プレイをイヤがって避けていた香川や宇佐美などとは違い、少なくとも柴崎は闘っていた

 しかもマスコミが非常に悪質なのは、イラン戦で完全に消えていたその香川と宇佐美をまったく叩かないことだ。そのかわりに柴崎がスケープゴートにされている。

 要は叩きやすい選手だけを叩くマスコミの卑怯きわまりない悪質な手練手管である。

 香川は日本のエースだ。彼のコメントが取れれば大見出しにでき、飛ぶように売れる。だからヘタに香川を叩いてヘソを曲げられ、「あの媒体には二度とコメントしないぞ」などとなっては商売あがったりだ。

 そこで香川のようなビッグネームの批判は避け、柴崎のようなこれからの若者をバッシングする。いやそれだけでなく、香川を叩けないのはおそらくスポンサーとの絡みもあるのだろう。

 つまり香川は完全にアンタッチャブルな存在になっているわけだ。

 こういう批判できないタブーをいったん作ってしまうと、本人はもう何でもありになる。調子が悪かろうと、試合でデキが良くなかろうと、外部からは何も言われなくなる。本人はラクなものだ。

 これでは健全なサッカー・ジャーナリズムなど日本に根付かない。

 それだけでなく、選手は外部から問題点を指摘されて初めて気づくものだ。批判されてはじめて、自分の欠点を修正できる。それにより進歩していく。加えて批判されるプレッシャーにさらされ、それに打ち勝つことでメンタルが磨かれ大選手になっていく。

 つまり健全な批判なくして日本のサッカーは強くならない。

 にもかかわらず現状はどうか?

 このマスコミの腐ったナアナア体質がなくならない限り、日本がW杯の決勝トーナメントの常連になるなど夢のまた夢だろう。

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