すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【W杯アジア2次予選】海外組の完全固定が定番化する危険な予兆

2015-09-11 10:00:28 | サッカー戦術論
「いつか来た道」をひた走るハリルジャパン

 まるでザックジャパンの海外組完全固定を見るかのようだった。屈辱のスコアレスドローに終わったシンガポール戦を受け、カンボジア戦とアフガニスタン戦では「取りこぼすまい」とスクランブル態勢でスタメンに海外組をずらり揃えた。

 高校サッカー部レベルの相手に、必死すぎるハリルジャパン。「たかが」アジア2次予選など新戦力発掘のテストに使いたいのに、最弱相手にこれでは「ただ勝つ」だけで強化にならない。ナンセンスだ。

 おそらくハリルは、もう頭の中でレギュラーを固めているのだろう。

 楽勝のはずのアジア2次予選で海外組をこれだけ完全固定しているのだから、ロシアの本番では当然、固定するに決まってる。するとブラジル大会とほとんど同じメンバーで臨むことになる。ザックジャパンの二の舞である。

 それは選手起用の仕方でわかる。新しい選手を使うのは、決まって後半35分あたり。完全な定食コースであり、判で押したように同じパターンだ。

 現に先日のアフガニスタン戦でも、終了間際に武藤嘉紀と遠藤航を交代出場させた。だがあんな少ない残り時間で、いったい何ができるというのか? 時間稼ぎにしかならない。そう思うのは私だけだろうか?

原口はスタメン起用されたからこそ爆発した

 たとえば同じアフガニスタン戦でスタメン起用されて爆発した原口の台頭を見てほしい。

 いままで控えでしか使われなかった選手をスタメン登板させると、「よーし、やってやるぞ!」とモチベーションが炸裂する。結果、代表でいまひとつの成績だった選手も覚醒する可能性がある。

 新しい選手のスタメン起用は、新戦力発掘の起爆剤なのだ。

 もちろんそんな原口の抜擢はハリルのファインプレイである(私は原口のスタメン起用を事前に知って大ガッツポーズをした)。だがもうひと声、アフガニスタン戦では遠藤航はスタメンで使ってほしかった。

 また、すでに実力がわかっている宇佐美をこの試合で途中出場させる意味がわからない。宇佐美を入れるために原口を右SBに回してゲームに残すくらいなら、正ポジションで原口を最後までやらせるべきだ。

 以前にも指摘したが、こういうあたり、ハリルは自分の采配に「自分で酔う」ようなところがある。

 もし私が原口だったら、こう思うだろう。

「俺はいままでずっと残り7分や8分しか時間を与えられず、今日やっとスタメンが取れた。しかもその試合で2アシストと活躍した。なのにその俺が、まだ結果の出ない宇佐美投入の犠牲になるのか? 俺が右SB? ケッ。ベンチがアホやから野球ができへん」

相手が弱いアジア2次予選は「練習試合」としてチーム強化に役立てないと意味がない

 すでに実力が把握できている宇佐美をあそこで出すなら、まだ今代表で1試合しか出場してない米倉に経験を積ませるべきではないか?

 もちろんハリルは宇佐美(の調子が上向けば)レギュラーと考えているのだろうし、途中交代は全体のバランスとの兼ね合いもあるからいちがいにいえないが、「えっ? また宇佐美にチャンスをやるの? 新戦力の発掘はもうしなくていいの?」と強く感じた。

 選手起用は選手のモチベーションを高める特効薬だが、使い方をまちがえると諸刃の剣になる。

 くどいようだが、繰り返し何度でも書く。相手が弱いアジア2次予選は、「練習試合」としてチーム強化に役立てなければ意味がない(ただし死命を制するシリア戦は別)。この段階での海外組のスタメン完全固定はやめてほしい。滅びの道だ。

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【サッカー日本代表】逆にますます香川が不安に感じるのは私だけか?

2015-09-10 13:29:44 | サッカー日本代表
ひ弱な王子様のメンタルに賭ける大ギャンブル

 ぶっちゃけ、アフガニスタンは高校のサッカー部レベルだった。そのアフガニスタン戦での6-0の勝利に、世間はお祭り騒ぎだ。「日本、大圧勝!」、「香川バンザイ!」の大合唱だが、アフガニスタン戦でのあの「ものすごくデキのいい香川」を見て、逆にますます彼に対する不安がつのったのは私だけだろうか?

 あのシンガポール戦での香川と、アフガニスタン戦での彼。同一人物だと当てられる人は1人もいないだろう。つまり裏を返せば、彼は「そのときどき」のメンタル状態にあれだけ左右されるのだ。

 とすれば逆に言えば、いつまたメンタルが下降線をたどるか、まったくわからない。いつ爆発するかわからない爆弾を抱えているようなものだ。いざロシア・ワールドカップ本大会のド本番でメンタルをやられ、またぞろシンガポール戦みたいな絶不調クオリティに陥ったらどうするのか? 「いや大丈夫だ」という保証など、どこにもない。

 とすれば今後は「トップ下=本田」というプランBもしっかり持っておくべきだ。そして大事なド本番で香川に変調が見られたら、すぐにハズして本田をトップ下にする。「スポンサーが」などといってる場合じゃない。

 そうしたスクランブル発進に備え、いつ出番が来てもいいよう、本田にはハリルジャパンでトップ下でも十分にプレイさせておくべきだ。「トップ下はミランでやってるからいいじゃないか」などという問題じゃない。「日本代表で」トップ下として機能させておくことが必要なのだ。ハリルは真剣に検討しておいてほしい。

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【W杯アジア2次予選】やっと日本のW杯予選が開幕した 〜アフガニスタン0-6日本

2015-09-09 07:56:39 | サッカー日本代表
10点以上は取れた拙攻のオンパレード

 前半10分、香川はファーストタッチでゴールの方へ鋭く反転し、低い弾道の美しいミドルシュートを決めた。ワールドクラスだった。この日が「香川の日」になった瞬間だ。チームも開始早々の香川のあのゴールでぐっと上昇気流をつかめた。シンガポール戦で最初のシュートが決まらず気持ちが腐って行ったのとは対照的だった。ハリルジャパンの命運は、良くも悪くも香川のメンタルにかかっているーー。そんな象徴的なゲームだった。

 ただしこの試合、決めるところをしっかり決めていれば前半だけで5〜6点取れた。後半も合わせれば10点以上は入っていたはずだ。にもかかわらず、あれだけ力のちがう相手にカウンターを食らい致命的なピンチを招くなど、決して手放しでは喜べない。

 マスコミは「大勝だ!」と浮かれ騒ぐのだろうが、もともと高校のサッカー部とセリエAのチームくらい力の差があるのだ。むしろ前半でしっかり6点取り、後半の頭から控え選手のテストに使えなかったことを反省すべきだ。現に武藤と遠藤航の途中投入は後半も残り10分、15分だった。あれでは遅過ぎてテストにならない。

カウンターのチャンスに「遅攻」してしまう悪いクセ

 アフガニスタンは日本ボールになると全員が自陣に引き、カウンター狙いのサッカーをした。ただしマイボールになると前に人数をかけて攻めてきたため、日本は自陣でボールを取れれば相手陣内にできたスペースを逆用できた。

 にもかかわらず日本は自陣でボールを取ると、意味もなくタメてボールを後ろに下げ、遅攻にしてしまった。せっかく相手が前に残ってくれているのに、ずいぶん控えめな遠慮深さだ。このところ引いて守る相手ばかりですっかり遅攻モードになっているのだろうが、攻守の切り替えが致命的に遅い。ボールを奪ったら(どんな状況であろうが)いったんひと休み。この悪いクセは直さないとダメだ。ポジティブ・トランジション(守→攻)がなってない。ポジトラの質が高ければ、カウンターからの速攻でもっとゴールを取れた。この点は肝に銘ずべきだろう。

 ただし日本はボールを奪われると、その場で激しくプレスをかけるゲーゲンプレッシングをあちこちで展開していた。ネガティヴ・トランジション(ボールを奪われたあとの守備への切り替え)の意識は高くなってきた。これは大きな収穫だ。

日本は「ふつうにやれば」これくらいはできる

 だがそもそも舞台は「たかが」アジア2次予選だ。日本は「ふつうにやれば」このくらいの試合はやれる。むしろシンガポール戦とカンボジア戦が異常だったのだ。その点は強く留意すべきである。

 あの少年サッカー団なみのレベルのカンボジア相手に、まるでドイツと戦っているみたいにガチガチに肩の力が入る。緩急もへちまもなく、バタバタ焦ってプレイしてしまう。で、実力を発揮できない。こんなメンタルの弱さでは先が思いやられる。

 その象徴は先制の美しいミドルシュートを叩き込んだ香川だ。彼は早めに点が取れてプレッシャーから解放され、やっと本来のプレイができた。ファーストタッチで鋭く反転しシュートに行くなど、持ち前のアジリティが炸裂していた。香川がふつうに機能すれば、ごく当たり前にあれくらいはやれる。逆に言えば、彼はどれだけメンタルの弱さで自分に足カセをハメているか? という話だ。今後の課題だろう。

芝が長くロングボールが止まった。なぜ活用しないのか?

 さらにいえばこの試合、選手めいめいが注意深く観察すれば重要なポイントが2つあった。まず1点目はフィールドの芝が長いため、ロングボールが地面で弾むとすぐボールが止まった点だ。つまり前のスペースめがけてロングボールを入れてもラインを割らない。そういう攻めが通用した。

 にもかかわらずこの点にだれも気づかず、スペースへ落とすロングボールを有効に使うシーンがほとんどなかった。(ただし人に当てるロングボールに関しては、森重が何本も精度の高いロングパスを出していた)

 もう1点は審判のジャッジの傾向だ。この日の審判は、人が倒れると自動的に必ず笛を吹いた。逆にいえば「倒れさえすれば」ファウルがもらえた。レベルの低い審判だ。だがそんな審判の特徴を見抜き、ファウルを誘う頭脳プレイをしていたのは原口ただ1人だけだった。

 2アシストの原口は思い切りがよく、ダイナミックに左サイドを切り裂いた。ギラギラと燃えたぎる野獣だった。またドリブルで突っかけては相手の足が引っかかると、審判からファウルを「誘った」。そんな原口を思い切ってスタメンに抜擢したのは、ハリルのファインプレイだった。

 一方、後半20分、GKの西川は相手のコーナーキックをキャッチするや、素早く前の味方へナイスフィードし、カウンターのきっかけを作った。ビッグプレイだった。相手CKのときには当然、敵の選手は日本陣内にいる。自陣はお留守だ。そんなときGKが1人目のビルドアッパーになり、カウンターを仕掛けられると理想的だ。GKがビルドアップの起点になるプレイは、カウンター攻撃を標榜しているハリルジャパンのカギになる。西川はあの好フィードを今後も忘れないでほしい。

2次予選を「練習試合」としてチームの強化に使え

 そのほか選手別に見て行こう。

 本田はゴールラインにアウトしかけたボールを倒れながら残し、2点目のアシストにつなげた。また自身でゴールした6点目も倒れながらカラダごと押し込んだ。彼は決して本調子とは言えなかったが、「気持ち」でカラダが動いていた。自分やチームが苦しいときにきっちり結果を残す。非常にプロらしい仕事をした。

 一方、宇佐美も鋭い突破とセンタリングで6点目をアシストするなどデキがよかった。だがあくまで後半25分からの途中出場であり、控え目に見る必要がある。彼の課題はスタメンでバテずに働けるかどうか? このままでは「代打」専門のジョーカーにしかなれない。

 また後半34分に長谷部と交代でボランチを務めた遠藤航は、短い時間だったが対人プレイにめっぽう強いところを見せた。相変わらず「大器」の片鱗を漂わせていた。この日、本当ならスタメンは長谷部でなく遠藤を頭から使ってほしかった。

 このほか岡崎はデキが悪いながらも、しっかり2点取るあたりはさすが。一方、長谷部は前半6分にゴール前へ侵入し、右サイドからのクロスを胸トラからシュートするなど攻撃的に前へ上がるプレイをしていた。彼が攻めると形になる。ベテランの力の大きさを感じた。

 さて、やっとW杯予選が「開幕」した日本。この日の結果に後押しされ、あとはすんなり行くのかどうか。繰り返しになるが、最終予選まではもう1年しかない。ゆえに2次予選は「練習試合」としてチームの強化に使いたい。相手が弱い2次予選ではなるべく早い時間帯に大量得点し、後半は控え選手のテストに使う。そんな「付加価値」のついた形で勝たない限り、「ただ勝つ」だけでは意味がない。「大勝だ!」などと浮かれることなく、2次予選は有効な使い方をしたい。

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【W杯アジア2次予選】カンボジア戦で見せた2トップへの模索

2015-09-05 09:48:42 | サッカー日本代表
宇佐美と武藤嘉紀の共存を図る狙いか?

 カンボジア戦直後に書いた記事ではまたもや頭に血が上り、狼藉を働いてしまったので懲りずに反省し、もう一度カンボジア戦の映像をじっくり見直してみた。すると前の記事では見えてなかったことがいろいろわかったのでレポートしよう。

 まず前半の日本は「勝ちたい気持ち」に急き立てられるかのようにバタバタと試合をした。リズムにまったく緩急がなく、やたら直線的にクロスを立て続けに入れる攻撃に終始した。前半は右サイドからの攻めがメインだった。

 もちろん引いた相手にクロスを入れるのはいい。だが問題はやり方だ。ゴール前には「クロス待ち」の日本選手が4〜5人も完全な棒立ちで待っており、クロスを呼び込む動きがない。ファーに流れる、ニアに詰める、少し下りてゴールから遠ざかる動きをするなど、動きながらクロスを受ける迎撃パターンが少なかった。また中央でクサビをもらうときも足が止まりがちで、張り付いたマーカーに前に出てカットされたりしていた。入ってくるクサビに対し迎え入れる動きがなかった。

 相手ペナルティエリア内は、またも東京の朝の山手線並みの混雑ぶり。シンガポール戦の後半とまったく同じ展開だった。

左サイドに起点ができバランスが取れた後半

 これらの問題点が後半には修正された。香川が左に張り出したこともあり、前半とは逆に左サイドに起点ができるようになった。全体にバランスがいい。カンボジアの疲労が蓄積するのと相対的に、日本は点を取ってリードでき、精神的な余裕ができたのが大きかった。逆に言えばこのチームは追い詰められて余裕のない状態のとき、きっちりサッカーができるかどうかが問われている。

 また後半、ハリルは2トップを模索していた。東アジアカップの中国戦でも試す予定だったテストだ。この試合に先立ち、ハリルはクロアチア紙『インデックス』の取材に応え、「システム変更を検討している」ことを明かしている。具体的には香川を左SHに回し、武藤と岡崎を2トップとする4-4-2を試した。その後、途中投入した興梠と宇佐美の2トップのような形にもトライした。

 武藤はたまたま機能しなかったが重要なトライだ。ブンデスリーガで台頭してきた武藤と、宇佐美は左SHでポジションがかぶる。で、ハリルはおそらく彼らを共存させるため、どちらかのFW採用を目論んでいるのだろう。(個人的には運動量のある武藤をSHのほうがいいと思うが)

クロスで魅せた酒井、本田とのコンビネーションもよくなった

 さて次は選手別に見て行こう。

 まず目を引いたのは右SBの酒井宏樹だ。彼は精力的にオーバーラップしていた。この日のようにアグレッシブなプレイをしてくれれば文句ない。同サイドの本田とのコンビネーションも、ほとんど連携がなかったシンガポール戦とくらべ見違えるようによくなった。あとはクロスの受け手の工夫と意思の疎通だろう。

 酒井はカラダが非常に切れており、クロスの精度も7割方よかった。特に立ち上がり、一発のロングボールでサイドを変えるすごい精度のサイドチェンジのボールを入れていて驚いた。あのボールはまちがいなくワールドクラスだ。

 その酒井とからんだ本田は、まったくノーステップでも強いシュートが打てていた。やはりモノが違う。インテンシティの塊のような選手だ。またこの日は同サイドの酒井をうまく使っていた。シンガポール戦とは打って変わって2人はリスペクトしあい、本田は機会さえあればオーバーラップする酒井にボールを出した。おそらく2人の連携がまるでなかったシンガポール戦後、ハリルに指導されたのではないか?

山口と武藤はそれぞれ課題が見えた

 一方、山口蛍は中央で起点になるいい働きをしていたが、ミドルシュートに関してはデキが悪かった。5本くらいを月に向かってハデに打ち上げていた。代表選手としては、あんな精度のフィニッシュはいただけない。もっと低い弾道でボールを抑えて打ち、絶対にワクへ飛ばしてほしい。そうすればシュートのリバウンドを拾ってまた攻めが続く。

 また彼は気持ちがあまりにも入りすぎ(そこが彼のよさでもあるのだが)肩に力が入りすぎた。もっと(いい意味で)「抜いて」プレーすることも覚えてほしい。彼のことだ。もっと経験を積めばこなして行くだろう。

 スタメン出場し宇佐美への「挑戦権」を得た武藤は気持ちがはやり、どうも終始バタバタしていた。カラダはすごく切れているが、気持ちが前へ行きすぎてチャンスを活かせなかった。せっかくのスタメンをもらえたのにモノにできなかったのは痛い。あれでは宇佐美にすぐポジションを奪われてしまう。将来有望で力のある選手だけに、ぜひ捲土重来を期待したい。

途中出場の宇佐美は「異次元空間」を作った

 その対抗馬である宇佐美は途中出場した。彼のシュートはことごとくワクへ行っていた。シュートの精度はやはりチーム1、2だ。またゴール前で精力的にパス&ゴーし、突破する動き、ワンツーなどの仕掛けもよかった。彼がボールをハタいて走ると、必ずボールがまた自分に返ってくる。周りが宇佐美の意図をよく理解しており、香川などとのコンビネーションがよかった。

 宇佐美は周りの選手を巻き込み、彼の周囲にはものの見事にそれまでの試合展開とはまったく異質なフットボールのスタイル展開が醸造された。1人の選手がこれだけチームを変えられるのか? と感心した。道理でハリルは宇佐美と心中したくなるはずだ。彼はこの日、もっと時間をもらえていたら「何か」を起こせていたかもしれない。

 このほか吉田のミドルシュートは見事のひとこと。岡崎はコンディションが悪く、かたや長友は監督にアピールしようとやや空回りしている感じがした。運動量はすごかったがクロスの質は悪かった。香川はボールコントロールとセンスは文句なし。あとはメンタルだけだ。また思い切りのいい原口は、ぜひもっと長時間見てみたい気持ちにさせられた。

長谷部は漬物石、こういう機能の選手も必要だ

 攻撃面で機能しなかったとの声もある長谷部は、あくまで漬物石の役目だ。無難にバランスを取っていた。チームにはこういう機能の選手も必要なのだ。ただボランチの組み合わせ的には、山口蛍とでなく攻撃的な柴崎あたりとのほうがバランスはいいような感じはする。

 森重は2本ほどあった長いシュートがワクへ行っていれば。球質は非常によかった。最後に西川はプレイ時間が少なく参考外だ。次の試合では持ち前のフィードからの質の高いビルドアップを見せてほしい。

 以上、試合直後に書いた記事では例によって頭に血が上り、「本田以外、まったく見るべきものがなかった」などと書いたが潔く前言撤回したい。いつものことだが申し訳ない。

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【W杯アジア2次予選】ハリルは「アジア軽視」だったのではないか?

2015-09-04 17:33:30 | サッカー日本代表
ハリルの言動にはヨーロッパへの憧憬が見て取れる

「アジアの予選なんてクソだ。問題じゃない。私が目指すのは、あくまでW杯本大会でヨーロッパ列強に煮え湯を飲ませての勝利だ」

 想像だが、ハリルホジッチ監督は、そんなアジア軽視の一種の「白豪主義」に陥っていたのではないか? 

「アジア予選など特別な対策を施さなくても勝てる。問題は本大会だ」

 そう考えて監督に就任した。だから就任当初から、ヨーロッパや南米の強豪国と戦うときに有効な(逆にアジア予選には向かない)「タテに速いサッカー」を標榜した。そう考えれば合点が行く。だがアジア2次予選の初戦でシンガポールに思わぬ苦戦をし、大きく風向きが変わった。

「これはアジア用の対策をしないとまずいぞ」

使う戦術(クロス攻撃)と選んだ選手が矛盾している

 で、続くカンボジア戦ではクロスやミドルシュートの多用など、引いた相手に対する準備をした。だがそれでも頑固なハリルが今回選んでいる代表メンバーは、あくまで「W杯本大会用」である。ゆえにアジア予選で相手のベタ引きに対応したサイドからのクロス攻撃に適する大型の選手(例えばFW豊田)などは選ばれてない。

 こういうことではないだろうか?

 要はシンガポール戦の引き分けで尻に火がつき、カンボジア戦ではそれなりの準備をした。だがメンバーは当然「本大会用」のまま。で、使う戦術(クロス攻撃)と、実際に選んでいる選手が噛み合わない。矛盾しているーー。

海外組の完全固定でも点が取れず
しかも控え組のテストもできなかった


 本ブログではすでに何度も、ハリルのこの種の選手起用における矛盾を指摘している。カンボジア戦で採用した戦術と、選んだメンバーとの食い違いもそのひとつかもしれない。

 だが終わったことを蒸し返すのは生産的ではない。であれば次は9月8日のアフガニスタン戦に向け、万全の準備をしてほしい。そこでひとつ提案がある。それは大胆な選手起用だ。

 絶対に負けられないハリルはカンボジア戦で、海外組をフル登板させた。目先の1勝に囚われ、その時点での「最強」にこだわり海外組を完全固定したザックと同じだ。だがハリルは結局、(1)3得点という中途半端な結果しか残せず、かつ(2)先日の記事で提案したような大量得点を早めに取った上での若手・控え組の途中テスト起用ーーも果たせなかった。

 海外組をフル登板させたあげく、だが(1)も(2)も達成できないのでは、まったく何をやっているんだかわからない。

最弱相手に「ただ勝つだけ」じゃ意味がない
アフガニスタン戦では大胆な若手の登用を


 そこで次の(グループ最弱と目される)アフガニスタン戦では、経験を積ませるため若手と控え組の大抜擢を願いたい。具体的には永井や原口、遠藤航、米倉らの起用である。この案はあながち突飛な話ではない。

 カンボジア戦を見る限り、疲労がたまった海外組のコンディションはあまりよくない。特に岡崎はいつものキレがなく、長友も身体能力がウリの彼にしては緩慢だった。香川にいたっては完全なブレーキ役だ。ただし本田とCB2人は外せないだろうが、その他のメンバーに関しては大手術をしてもいいのではないか? コンディションがよくフレッシュなメンバーで。「W杯本大会」を睨み、選手に経験を積ませるために。

 もちろんアフガニスタン戦は勝って当たり前の試合だ。だがそのゲームにまたも海外組を完全固定し、ふたたびカンボジア戦のように「ただ勝つだけ」では意味がない。控え組を大胆に登用しチームへのフィットを図るなどの「付加価値」をつけた上での勝利でない限り、本大会に向けた積み上げにならない。

 ぜひハリルには深謀遠慮な選手起用を願いたい。

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【W杯アジア2次予選】「少年サッカー団」を相手に控えめな日本人たち 〜日本3 - 0カンボジア

2015-09-03 22:50:08 | サッカー日本代表
本田の1点目がなかったら引き分けだった

 予想通り、カンボジアはまったく攻める気なしのベタ引きだった。GKの西川はヒマを持て余し、家に帰ってひと風呂浴びてくる余裕さえあっただろう。

 それでも欲のない控えめな日本人たちは相手ペナルティエリアの外側に並び、行儀よく1人づつ延々とシュート練習を繰り広げた。だが、これが入らない。

 予選グループ「最弱」のカンボジアに対し、日本のシュート数は34本対1本、ボール支配率は73.9%。だが、もし前半28分の邪気を振り払うかのような本田の1点目がなかったら、後半もズルズルあのまま行ったろう。シンガポール戦に続き冗談抜きで、また引き分けに終わっていただろう。3年後の闇を予言するような1戦だった。

シンガポール戦の引き分けは「まぐれ」じゃなかった


 試合前日の記者会見で、ハリルホジッチ監督は「あのシンガポール戦のドローがアクシデントだったと思わせたい」と意欲を語っていた。だがこの日の日本は、見事に「あれはフロックではなかった」ことをハッキリ証明して見せた。

 すべては前半42分の、香川の「あのシーン」に象徴されている。相手GKの目の前で、しかも、どフリー。あとはダイレクトでただシュートを打つだけだった。だが香川はなんとあの位置で「パス」を選択したように見えた。そしてチャンスをフイにした。彼をああさせたのはまぎれもなくメンタルの弱さだ。いまでも忘れられない、いつかのW杯での柳沢のあの「ゴール前でのパス」にそっくりだった。

 絶対的なシュートチャンスにパスしてしまうーー。ああいうシーンをこう何度も見せられると、「日本人はサッカーに向いてないのではないか?」と絶望的な気持ちになる。いったい我々はこの難局を、どう打開すればいいのだろうか?

だれかが「悪いもの」を持っている?

 このチームには魔物が住んでいる。香川かハリルが、何か悪いものを「持っている」としか思えないーーそんなオカルトじみた雰囲気さえ、いまの日本代表には漂っている。

 また同サイドの本田の顔色をうかがいながら右サイドを恐る恐る上がる酒井宏樹の姿を見ていると、根本的にメンバー間に信頼関係がないのではないか? このチームは壊れているのではないか? とさえ思える。技術的なもの以前に、チーム全体が何か目に見えないダークな皮膜にでも覆われているかのようだ。

 香川を切るか、監督を変えるかーー。「魔」を払う何かその手のショック療法でも施さない限り、このチームに立ち直るチャンスはないのではないか? そんな空気が充満している。

クロスの質の悪さが致命的だ

 こんな試合を見せられたあとに戦術やら技術的な話をする気にもなれないが、まず全体にクロスの質があまりにも悪すぎる。とてもプロとは思えない。その意味ではこのチームはもう間に合わない。日本は今後10年〜30年計画で、選手の育成段階から強く意識してクロスの質の向上を図るべきだ。クロスがこれでは、とても世界と戦えない。

 選手別で見ると、チームが苦しい中、「意地のシュート」を叩き込んでメンタルが強いところを見せつけた本田以外、見るべきものはまったくない。相手に攻めてもらえず開店休業だった守備陣以外、及第点の選手はいない。

 途中で出てきた宇佐美もミスしては苦笑いする、いつもの彼だった(なぜ彼は「笑える」のだろうか?)。唯一、同じく途中出場の原口元気が気を吐いていたことだけが、わずかな救いだ。

FKとCKで得点できないことにかけては世界一

 試合後の記者会見でハリルは、「3点しか取れなかったのは不満だ。FKも改良の余地がある。PKもなかった。FKとCKで得点できないことにかけては世界一だ」と皮肉な笑みを浮かべた。私もイギリス流のシニカルなジョークは大好きだが、1年が365日もあるうち「この日」に限ってはまったく笑う気になれない。

 相手がベタ引きしてくるアジア2次予選だからこうなのか? 敵が前がかりで攻めてくるW杯本大会では相手と噛み合い「やれる」のか? そんな保証はどこにもない。そもそもクロスとシュートの精度、またクロスに走りこむ選手のタイミングとポジショニング、そして「状況」に対する即興での対応力がこのレベルのチームが本大会でやれるとは思えない。

 次は8日のアフガニスタン戦。今日に引き続き当然勝つのだろうが、このチームは何か抜本的な対策を講じない限り、ロシアで結果を残せないだろう。

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カンボジア戦はGK、DFからの正確なロングフィードがカギだ

2015-09-03 17:38:25 | サッカー日本代表
引いた相手に低い位置から「長い槍」を突き刺す

 サッカー日本代表は今日、W杯アジア2次予選・第2戦のカンボジア戦を迎える。相手は最弱。勝って当たり前のこの試合のテーマは、前半何分までに十分な大量点を取り、控えの選手のテストに使えるか? と位置付けたい。

 ではどう戦うか? カンボジアは引いて守ってくるだろう。そんな相手を効率的にやっつけるには、前の4人が高いポジショニングをし、そこへGKやDFから正確なロングフィードを入れることだ。

 バックラインからグラウンダーのボールを丁寧につないでビルドアップするのでは、相手ゴールへたどり着くまでにリトリートした敵に引っ掛けられ、余計な体力を使ってしまう。そうではなく、ぶっちゃけ、こんな試合は早く片付けてしまいたい。それなら後方からのロングパスを効率的に使うに限る。

リトリートした相手ブロックをロングボールで飛び越す

「キック&ラッシュなんて、そんな昔のイングランドみたいなことをやるのか?」と訝る向きもあるだろう。だが相手がどんなやり方をしてこようが「自分たちのサッカーをやる」のではザックジャパンになってしまう。それでは勝てない。

 そうではなく、サッカーは常に「相手のやり方」にうまく柔軟に対応するのがカギである。リトリート戦術のように特定のゾーンに選手を固めてくるのなら、その塊を飛び越しゴール前へ向かうロングフィードを入れる一手だ。

 これにより相手選手の「偏り」を回避し、効率的に相手ゴール前へボールを送り込むことができる。たとえばGKがロングフィードするとき日本の両SHに高い位置を取らせ、めいっぱい左右に開かせる。これにそれぞれマーカーがついてくるようなら、敵の守備ブロックを左右に大きく広げることができる。すると真ん中が空く。そこが狙い目だ。

 また技術レベルの低いカンボジアのDFの選手が、向かってくるロングボールをワンタッチで正確にコントロールできるとは思えない。で、トラップミスしてボールを少しでも弾けば(あるいは2~3度ボールを小突いてコントロールしようとすれば)、高い位置取りをした日本のワントップとトップ下、両SHの4人がハイプレスをかけ、サッとボールを「回収」して相手ゴールの中へ片付ける。これで一丁あがりである。

なるべく海外組を休ませ、控え組を実戦に馴染ませる

 おそらくスタメンだろう海外組は、長い移動距離を経て日本に来ている。また彼らは所属チームでは、それぞれ新しい環境下で厳しいレギュラー争いをしている。とすれば早めに大量点を取り、少しでも彼らを休ませたい。

 と同時にこの試合でやりたいことは、実戦で控え組を使ってのテストである。

 具体的には、現代表ではまだ未知数な永井謙佑と原口元気、遠藤航、米倉恒貴の4人を試合に出し、少しでもチームに馴染ませたい。正確に言えば遠藤がある程度やれることはもうわかっているが、その他の3人が実戦でイキイキするところを見たい。

芽が出ない永井を途中起用しチームにフィットさせる

 たとえばハリルは、なかなか代表チームで芽が出ない永井を見切るつもりがない。とすれば永井を少しでも多く試合に出し、なんとかチームにフィットさせなければ選んだ意味がなくなってしまう。そこで大量得点を取ったら香川を交代させ、本田をトップ下へ移動させる。で、空いた右SHに永井を投入する。

 これなら「トップ下の本田」も試せて、一石二鳥だ。あるいはチームのバランスをなるべく崩したくないなら、ふつうに本田を下げてそこに永井を入れるのでもいい。

 または岡崎を下げ、永井をワントップで使ってみるのもおもしろい。(ハリルは絶対やらないだろうけど)

 このほかハリルジャパンでは中盤で使われるだろう原口のドリブルと、前へ飛び込んでのシュートも見てみたい。また右SBの(なかなか成長しない)酒井宏樹を早めに下げ、ハリルは意地を張らずに米倉をぜひ右SBで使ってみてほしい。

 外野からのささやかなお願いだ。

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本物の武藤はやっぱり本物だった

2015-09-01 08:04:59 | その他の欧州サッカー
 ブンデスリーガへ渡った本物の方の武藤(嘉紀)が、3節でいきなり2本のシュートをぶち抜いた。一報をネットで知り、パソコンの前で思わず2度もガッツポーズしてしまった。

 狙っても狙っても決め切れないーーある意味、そんな日本人像を凝縮したようなあのシンガポール戦だった。

 本来、ああいうどうしようもない泥沼でズバンと一発決めて見せ「日本人」を抜け出すところが希望の光・本田だったが、そんな彼の今世解脱は発動されなかった。

 これからはスコンと時代を突き抜けたような次世代の武藤(本物)あたりが、日本人解脱化計画を切り開くのかもしれない。

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