すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【アジア杯決勝展望】カタールは5レーン理論を操るカウンターの使い手だ

2019-01-30 10:35:42 | サッカー戦術論
スペイン人監督がモダンな戦術を注入

 準決勝でカタールがUAEに4-0で勝ち、アジアカップ2019の決勝は日本とカタールの組み合わせになった。ではカタールとはどんなチームなのか? 決勝の展望も併せて見て行こう。

 カタールの監督は、スペイン・カタルーニャ出身のフェリックス・サンチェス氏だ。元スペイン代表のシャビがコーチング・スタッフ入りしている点も見逃せない。つまりカタールの戦術には、ヨーロッパサッカー最先端のエッセンスが盛り込まれているのだ。

 カタールは対戦相手や相手の戦術に応じて4バックや3バックを使い分ける。例えばフォーメーションが4-2-3-1の場合のビルドアップでは、SBが偽SB化して1列上がって内側に絞り、2-3-4-1に変化(下図)して5レーンすべてを埋める。これで相手の4バックを攻める。またゲームの流れを読み、試合中にシステムを変えてくることもある。

     〇FW

〇WG 〇MF 〇CMF 〇WG

  〇SB 〇CMF 〇SB

    〇 〇←CB

日本戦は5バックか?

 では肝心の決勝で当たる日本戦は、どんな布陣でくるのだろうか?

 力関係やたがいのスタイルの兼ね合いから行って、おそらくカタールは5-3-2のフォーメーションでくる可能性が高い。ゾーンを低く構えて守備を固め、日本が前がかりになったところを得意のカウンターで仕留めようとするだろう。

 彼らのカウンターはポジティブ・トランジション(守→攻の切り替え)が速く、日本は逆にネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)を速くして守備対応する必要がある。

 必然的に日本がポゼッションし、カタールが受けに回る試合展開が予想される。ただし日本は敵陣に押し込んでいる最中も、敵のカウンターを警戒しておく必要がある。

例えば(森保監督はやらないだろうが)日本も偽SBを取り入れてバイタルを埋め、敵のカウンターに対し予防的なカバーリングをしておくことも一案だ。

 決勝は「引いた相手を崩すには?」という、アジア相手での日本代表の永遠のテーマと直面することになる。日本はサイドを使って敵のSBを釣り出し、空いたニアゾーンを狙って攻めたい。

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【アジア杯決勝T】すがすがしいくらいの完勝だ ~日本3-0イラン

2019-01-29 10:42:58 | サッカー日本代表
日本は放り込みを弾き返し続けた

 拍子抜けするくらいの完勝だった。今大会の日本はずっとデキが悪かったが、この日のために取っておいたのでは? というくらい完璧な試合をした。

 日本の3ゴールはどれもパーフェクトだし、縦へのロングボールとアーリークロスをガンガン放り込んでくるだけの力強いが単調なイランの攻撃に、日本はきっちり正確に対応した。冨安と吉田を中心に、落下地点を読み切ってセーフティにクリアしていた。特に冨安は地上戦のカバーリングとマーキングにも非常に効いていた。

 日本はピッチの至る所で発生したデュエルにも負けず、GK権田がまた2度やらかした以外はまったく危なげない試合ぶりだった。だが、まだまだ攻めに関してはもっとスムーズで速い攻撃ができるはずだ。彼らはこんなもんじゃない。決勝ではしっかり見せてもらいたい。

イランは大味でアバウトなフィジカル勝負だ

  日本のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKが権田。最終ラインは右から酒井、冨安、吉田、長友。セントラルMFは柴崎と遠藤航のコンビ。2列目は右から堂安、南野、原口。ワントップには大迫が帰ってきた。

 対するイランのフォーメーションは4-1-2-3。守備時は4-5-1になる。攻撃は中盤を省略し、放り込みに頼りきった競り合いからのフィジカル勝負。大味で実にアバウトだ。思ったほど大したことはない。2015年に対戦した親善試合のときのほうが怖さと激しさがあった。

 だがひと昔前の日本なら、あれだけロングボールを入れ続けられればバタバタして失点していたものだ。オーストラリアのパワープレイに8分間で3失点した2006年ドイツW杯のジーコジャパンのように。そう考えれば日本も進歩したものだ。

 とはいえ絶えずロングボールを入れてくるイランの「圧」はそれなりに高かったが、日本はラインを下げすぎずミドルプレスで冷静に対応。前線と中盤でプレッシングを効かせ、前半はピリピリした緊張感のなか0-0で折り返した。

帰ってきた大迫が大きな仕事をした

 さて日本の1点目は後半11分だ。大迫が左サイドのライン裏にスルーパスを出し、走り込んだ南野がボックス直前でイランDFと交錯して倒れる。

 これにイランの選手が「いまのはファウルじゃない!」と(何もジャッジしてない)審判に詰め寄る間に、南野がすぐ起き上がりゴールラインを割りかけるボールに追いつき、ゴール前にクロスを入れる。中で待つ大迫はボールの角度を変えるだけのきれいなヘディングシュートを叩き込んだ。

 ボールのゆくえでなくジャッジに気を取られ失点したイランと、一度倒れたがすぐに切り替えボールを追った南野は対照的だった。イランの集中力を失ったあのさまは、ロシアW杯のベルギー戦でトランジションを失しぶざまにカウンターを食らった日本の姿を思わせた。やはり現代フットボールでは切り替えの速さが重要だ。

 続く日本の2点目は後半22分だ。南野がイランのボールホルダーに果敢にプレスをかけ、こぼれたボールをすかさず大迫が拾いドリブルに入りかける。そこでマーカーが寄せてきたのを見て大迫は機敏にボールを後ろへ流して南野にパス。その南野が入れたクロスがボックス内でイランの選手の手に当たりハンドを取られる。PKは大迫が右スミにしっかり決めた。

 この1、2点目は、前線でタメを作る大迫の存在の大きさを感じさせる得点だった。だがよろこんでばかりもいられない。日本は1日も早く「戦術=大迫」状態を脱し、プランBを構築しなければ層に厚みが出ない。喫緊の課題だろう。

ダイレクトプレーをからめた日本らしい3点目

 最後、日本の3点目は後半47分だった。イランのパスミスからのルーズボールを原口がよく拾い、柴崎に落とす。受けた柴崎は縦にくさびのボールを入れ、これを南野がダイレクトで左にいた原口にはたく。原口はそのままドリブルで加速し、ゴールのファーサイドに叩き込んだ。

 この3点目は、日本人選手の最大の特徴であるアジリティ(俊敏性)と技術力がいかんなく発揮された得点だった。

 森保ジャパンは立ち上げからこれまで、親善試合でこの3点目のようなダイレクトプレーをからめたコレクティブな得点を量産してきた。それが今大会、やっとここにきて花開いた感じだ。いざ本番、である。

インテンシティが高く集中していた

 日本は全体にインテンシティが高く、よく戦った。デュエルを挑んでくるイランの選手にまったく競り負けていなかった。ロングボールに対する集中力も高い。特に1点目にからんだ南野のようにトランジション(切り替え)も速かった。

 前半はイランにお付き合いしてロングボールを蹴り合ってしまったが、試合序盤はセーフティ・ファーストということでいいだろう。後半には組織力の日本らしい、くさびをからめた3点目を決められたのはデカい。

 それにしても日本はこのアジアカップで、絵にかいたような右肩上がりの曲線を描いている。まるでブラジルのようなサッカー大国が、W杯でグループリーグは軽く肩慣らしして決勝トーナメントにピークをもってくるかのようだ。日本が計算してそれをできているなら驚きだし、もし意図的でなくても自然にそうなっているなら、なおさらいい。

 さあ決勝の相手はカタールとUAEの勝者だ。最後の試合はGKをミスの多い権田からシュミット・ダニエルに代え、2タッチ以内で素早くパスが回る切り替えの速いプレッシング・フットボールで相手を圧倒してほしい。

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【イラン攻略のツボ】オフザボールの動きとトランジション

2019-01-28 06:00:00 | サッカー日本代表
日本は最大の武器を失っている

 日本がイランに勝つための最大のポイントは、オフザボールの動きとトランジションだ。この2つは森保ジャパン最大の武器だったはずだが、アジアカップではめっきり影を潜めてしまっている。なんとか復活させたい。

 まず日本は突っ立って足元にばかりボールを欲しがっている。だから簡単にパスをカットされる。ゾーンのギャップで間受けを狙っているわけじゃなく、マーカーに張り付かれたまま棒立ちになっている。

 ならば、もっとスペースやライン裏でもらうオフザボールの動きが必要だ。コンディションが悪いせいかもしれないが、イラン戦は正念場だ。ここはしっかり動いてほしい。

 2つめは、日本人の特徴であるアジリティを生かしたトランジションである。

 まずボールを失ったら、守備への切り替えを速く。逆にボールを奪ったら、攻撃への切り替えを速くする。素早く守りに入り、素早く攻めに移る。これができればイランが得意な「デュエルの戦い」に巻き込まれないですむ。

 逆に日本が遅攻一辺倒になってしまうと寄せてくるイランの選手とデュエルの争いになり、イランの強靭なフィジカルが生きる展開になる。日本は俊敏性を生かし、極端にいえばカラダが接触する「競り合いすら起こらない速い展開」に持ち込みたい。

 最後に重要なことはミスをしないことだ。これまでイランは敵のミスに乗じてキッチリ点を取っている。中国戦などは典型だ。逆にアジアカップでの日本は非常にミスが多い。このままでは両者の武器と欠点がきれいに噛み合ってしまう。逆にミスさえしなければ、イランの攻撃力の何割かは確実に削り取ることができる。

 基本に忠実に。クリアするところはハッキリさせる。必要な時にはセーフティ・ファーストを心がけ、敵に付け入るスキを与えないようにしたい。

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【アジア杯】ロングボールの質を問う

2019-01-27 09:31:09 | サッカー戦術論
放り込みでなく「狙った長いパス」を

 今回のアジア杯で、日本は最終ラインからふんわりしたロングボールを入れることが多い。いわゆるアバウトな放り込みだ。

 だがどうせ深さを取るなら、前線の選手の足元かライン裏を正確に狙い、ビシッと強くて速い正確なロングパスを出してみてはどうだろう。ハリルジャパンの頃のように。

 ハリルの指導で当時、長谷部と吉田、森重、井手口はすばらしいロングボールを蹴れるようになっていた。彼らはフィールドを斜めに横切るサイドチェンジの正確なボールを出せたし、また前線にいる味方選手の足元に長いパスをぴったりつけることができた。

 日本代表はもうずっと、「監督が代わればすべてチャラにしてゼロから始める」というパターンを繰り返している。まるでこわい先生がいるうちはそれに従う子供のように。これじゃあ一向に進歩しない。

 監督が「タテに速く」と言ってるうちは、その通りやる。だが監督が代われば元の木阿弥になる。これでは何をやっているのかわからない。

 前監督の教えといえど、いいものは生かす。そういう前向きでポジティブな態度が必要なのではないだろうか?

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【アジア杯・究極の二択】いいサッカーか? 勝つサッカーか?

2019-01-26 09:45:46 | サッカー日本代表
勝って得られるものはデカい

 勝てないが美しいサッカーがいいか? 内容は別にして勝つサッカーがいいか? 究極の二択だが、日本人は伝統的に前者を支持してきたような気がする。

 いいサッカーをした。でも届かなかった。だけど内容がよく美しかったから満足だーー。どうも日本では「滅びの美学」の人気が高い。

 だがアジア杯での森保ジャパンは、日本人が出してきたこの究極の二択の答えに強い異議を唱えている。強烈な問題提起だ。今回彼らが演じているのは、たとえ内容は悪くてもしぶとく勝つサッカーである。

よかったのはウズベ戦とサウジ戦の「守備」だけ

 ここまでのアジア杯、森保ジャパンの内容がよかったのはサブ組が先発した1次リーグ3戦目のウズベキスタン戦と、決勝トーナメント1回戦・サウジ戦での「守備」だけだ。

 トルクメニスタン戦とベトナム戦では敵の「引いて守ってカウンター」に手を焼き、オマーン戦ではPKをもらったあとにPKを見逃されるジャッジで勝った。結果的に日本が堅守速攻になったサウジ戦では、守備はよかったがカウンターを決められなかった。

 内容がよかったか? と問われれば「NO!」と言わざるをえない。

 だが重要なのは、ここまでの5試合を苦しみながらすべて1点差で競り勝っている点だ。粘り強く勝つサッカーである。

勝つための経験と強者のメンタリティ

 おそらく森保監督は別にこういうサッカーを志向しているわけじゃない。試合の流れや得点差、今大会の戦力、自分たちのコンディションなどを秤にかけ、状況に応じたベストを選んで行ったら結果的にこうなっているのだろう。

 チームにとって、この経験は非常に貴重だ。なにより状況に合わせた応用力がつく。また勝てば次も勝つことが前提になり、自然と強者のメンタリティが備わって行く。どう勝てばいいか、ノウハウも蓄積される。ワールドカップの決勝トーナメントの常連国たちは、こうして自国のサッカーを積み上げて行ったのだろう。

 いや初戦のトルクメニスタン戦はひどい内容だったし、ベトナム戦前半の拙攻は見ていられなかった。ミスも多い。だがそれでも彼らはすべて1点差で試合をモノにしている。これが大きい。プロゆえにまず勝つこと。そのあとで細部は微調整して行けばいい。

 次なる準決勝の相手はアジア最強のイランだ。彼らはフィジカルが強くデュエルに勝り技術レベルが高い。ハンパない相手だ。そんなチームに森保ジャパンはどんなサッカーをするのだろうか? カギはハードワークだ。泥のようなハードワークでイランに競り合いを挑み、粘り強く今大会ピカイチの突き抜けた勝ち方をしてほしい。

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【アジア杯決勝T】苦しみながらも勝ったのがすべて ~日本1-0ベトナム

2019-01-25 09:26:04 | サッカー日本代表
ミスが多くピンチを自作自演

 相手は背の低いベトナムだ。ならばサイドからクロスの雨を降らせばいいのに、相手にお付き合いして日本は中央からのグラウンダーのボールにこだわり、ひっかけられてはボールロストの山を築いた。失点につながらなかったのは幸運でしかない。あのロシアW杯アジア2次予選・シンガポール戦での痛恨の引き分けを彷彿とさせた。

 日本はパスワークがぎこちなく、この大会で繰り返している「いつもの光景」を再演した。オフザボールの動きがなく、パスが通らない。全体にコンディションか連係に問題があり、ボールを止める、蹴るという基本動作がスムーズにできてない感じだ。唯一、堂安と南野が絡むと可能性を感じさせたが……この調子で最後まで行くのだろうか?

 シュートに向かう積極性もなく、すぐパスに逃げてしまう。ボックス外からでも大胆にゴールを狙う意欲がない。森保ジャパン最大の武器はシュートへの積極性だったが、それがいまではすっかり失われている。

 ミスも多く、特に前半38分にはGK権田がビルドアップのパスをミスし、相手にボールを奪われあわや失点という場面を作った。GKからのビルドアップを考えればシュミットのほうが明らかにいい。もっと柔軟な選手起用を考えてほしい。

 格下のベトナムでターンオーバーの絶好のチャンスだというのに、スタメンの選択は北川を除けばいつもの「レギュラー組」だった。これでスタミナはもつのだろうか? 選手を替えたがらず、選手起用の大胆さに欠ける日本人監督ならではの問題点を露呈した。

 この試合は苦しみながらも勝ったのがすべて。内容を問うようなレベルの試合じゃない。薄氷を何度踏めば終わりがくるのか? ジーコジャパンがぐだぐだな内容ながら優勝した2004年アジアカップのような様相を呈してきた。

敵ボールホルダーへの寄せが甘い

 日本のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKが権田。最終ラインは右から酒井、冨安、吉田、長友。セントラルMFは柴崎と遠藤航のコンビ。2列目は右から堂安、南野、原口。ワントップは北川だ。

 対するベトナムは、ボールを失うと5-4-1で小柄ながら球際に強くしぶとく寄せてくる。このデュエルに日本は苦しめられた。彼らはボールを奪うと速いグラウンダーのパスをつなぎ、ワントップに当ててカウンターを狙ってくる。

 日本は特に自ゴール前で敵ボールホルダーに対する寄せが甘く、ベトナムの選手の敏捷な動きで切り返されては簡単にシュートコースを空けていた。VARを意識したのかもしれないが、あれではシュートのうまい相手ならやられてしまう。ベトナムはアジリティが高く、プレイの細かい精度さえ上がれば今後躍進しそうな印象だった。

デキが悪いながらもしぶとく勝つ

 前半、VARで左CKからの吉田のゴールがハンドを取られて取り消され、後半には同じくVARで敵ボックス内での堂安へのファウルが認められ堂安がPKを決めた。てんやわんやの試合だった。

 先制後、日本は縦パスがよく通るようにはなったが、縦パスをしてはバックパス、というリズムで攻めが前へ行かない。15メートル進んでは10メートル後退する、というバルセロナ・メソッドにはもううんざりだ。

 速い縦パスを通し、受け手がファーストタッチで鋭く前を向いてシュートやパスに行くサッカーが見たい。だがこのアジアカップでは望むべくもない。今大会は、デキが悪いながらもしぶとく勝つことがすべて。次の準決勝でイランにもし勝てれば本物だろう。

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【ベトナム必勝法】サイドからクロスを入れろ

2019-01-24 20:58:33 | サッカー日本代表
ベトナムはハイボールに弱い

 ベトナムは横からのハイボールに弱い。ゆえにサイドからがんがんクロスを入れまくれば崩壊するはずだ(だから一昨日の「希望スタメン」では右SBにクロスが得意な室屋を推した)。

 逆に日本はグラウンダーのパスにこだわると、足元をすくわれる可能性がある。ベトナムの密集守備でグラウンダーのボールをひっかけられ、何度攻め込んでもはじき返される、みたいなことになりかねない。

 一方、ベトナム戦のスタメンについてひとこと。

 森保監督は口では「総力戦だ」などと言いながら、スタメンをガラっと大幅に変えることができない。選手を替えることができない典型的な日本人監督だ。日本人の監督はいつもそう。だから選手交代も遅い。ベトナム戦のスタメンを見てそう感じた。

 なんだかなぁ。

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【ベトナム戦のコツ】カウンターを食わずに確実に勝つ

2019-01-24 08:04:10 | サッカー戦術論
予防的カバーリングが重要だ

 さあ、今夜はアジア杯準々決勝、ベトナム戦である。昨日の記事でも書いたが、ベトナムはおそらく5-4-1か5-3-2で引いて守ってくる。となれば、サウジ戦の攻守をひっくり返したような戦いになる。つまり日本が前がかりになって攻め、ベトナムが守る展開だ。

 とすれば日本はボールを失ったあとのカウンターに備え、バイタルエリアを予防的にカバーリングしておくことが重要になる。例えば4-2-3-1から攻めにかかるとき、以下の図のように変化する。2-2-4-1-1だ。

   〇大迫
    〇北川
〇SB 〇 〇柴崎 〇伊東

  〇遠藤〇SB

  〇 〇←CB

 ベトナムは5バックで引いてくるので、日本の後ろ半分は2-2でいい。ただし柴崎が攻撃時に1列上がる分、片方のSBが1列上がって中に絞り、偽SB化して中央をあらかじめカバーしておく。もし右SBに酒井が入るなら、守備の固い彼が適任だろう。

コンビネーションでサイドを崩す

 ベトナムの5-4、または5-3の守備ブロックを攻略するには、(昨日も書いたが)サイド攻撃が重要になる。もし左SBに長友が入れば、彼と左WG(乾とか)との連携で外から攻めることになる。

 この左サイド2枚のコンビネーションで外を攻め、敵の守備ブロックを横に引き伸ばして中央に「穴」を作る。また右サイドは伊東の香車のようなタテへの突破がカギだ。

 また中央では大迫のポストワークの落としから、北川がからんでフィニッシュへ行く。ダイレクトプレイで持ち味を出す北川は、大迫がサポートしてくれればやりやすいだろう。北川にはこれで結果を出してほしい。

 一方、柴崎はよりゴールに近い位置でラストパスやサイドに振るボールを出し、攻撃を活性化させる。彼はどう考えても守備より攻撃のほうが得意だから、バイタルエリアは偽SBに見させて柴崎が上がるほうが合理的だろう。

 これでベトナム戦の日本は攻めダルマになる。今大会、攻撃がいまいちピリッとしない日本にとっては、今夜はターニングポイントになるかもしれない。

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【ベトナム戦プレビュー】引いた相手を崩すには?

2019-01-23 17:44:57 | サッカー日本代表
アジアカップ2019・準々決勝

【希望スタメン】

   〇大迫
 〇乾〇北川〇伊東
  〇遠藤航〇柴崎
〇長友〇吉田〇冨安〇室屋
〇シュミット・ダニエル

大迫の復帰で攻めの活性化を

 日本はアジア杯で24日、ベトナムと準々決勝を戦う。上図は予想というより希望のフォーメーションだ。準々決勝のベトナム戦は相手が敵というより、レギュレーションとの戦いになる。

 すでにイエローカードを1枚もらっている堂安と南野、塩谷、酒井、権田はもう1枚もらうと次戦出場停止になるのでベトナム戦は休んでもらう。準々決勝が終わった時点で累積1枚なら準決勝には持ち越さないレギュレーションなので、このベトナム戦がヤマなのだ。

 練習レポートによれば大迫はもういけるようだ。大迫をベトナム戦で使うのは惜しいが、大迫がボールを収めてくれれば北川はやりやすいはず。大迫を「北川再生工場」として使う。

 乾にはもう一度チャンスをやって再起を促したい。彼が本調子になれば百人力だ。一方、ウズベキスタン戦で活躍した室屋もどこまでやるか楽しみである。

 ベトナムは5-4-1か5-3-2で引いて守ってくる。引いた相手を崩すには? が次戦のテーマだ。サイドを使い、敵陣を横に引き伸ばして中央にスペースを作りたい。乾、伊東のサイド攻撃がキモだ。室屋にもオーバーラップからの精度の高いクロスに期待している。

 敵がベタ引きで点が取れないことも予想されるので、セットプレイもカギになる。冨安や吉田の高さを頼りにしたい。なお日本は前がかりになったところをかわされ、カウンターを食う可能性もある。ゆえに攻撃時、長友は予防的なカバーリングのため1列上がって中に絞り、CBの前を守る「偽SB」のポジションを取ってカウンターに備えたい。

 さあ、次も勝って宿敵イラン戦だ。

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【サウジ戦の是非】日本はデキが悪いながらも勝ち抜かなきゃならない

2019-01-23 00:40:22 | サッカー日本代表
割り切った戦い方に非難の声が

 想定内だったが、サウジアラビア戦の内容に一部で不満の声が出ている。ひとことでいえば「パスをつないで勝てなかった」という話だ。

 だが日本は大迫と中島を欠く上に、メンバー全体にコンディションが悪い。今回のアジア杯では1次リーグ初戦からそうだった。だが日本はそれでも勝たなきゃならないのだ。「勝ち方」にこだわっている場合じゃない。

 いまの状態の森保ジャパンなら、たとえどんな内容であれ(私なら)勝てばもろ手を挙げて拍手を送る。そんなスクランブル状態である。しかもサウジ戦はこと守備に限っていえば、今大会で最高のデキだった。どこにも非難されるいわれなんてない。

優勝できるようなコンディションじゃない

 ぶっちゃけて言おう。いまの森保ジャパンは、とてもアジア杯で優勝できるようなコンディションじゃない。フィジカル的にもそうだし、戦力的にもそうだ。だがそれでもわれわれは勝ち抜かなければならない。ゆえに、いまは内容にこだわっている場合じゃない。

 ではなぜ森保ジャパンは状態が悪いのか? 理由は大きく2つある。ひとつは大迫と中島という大きなボールの収め所を2つも欠いていること。もうひとつは、選手全体にコンディションが上がらないことだ。

 いままでの森保ジャパンは、とにかく大迫か中島にボールを預ければ、大迫はポストプレイで、中島はドリブルでタメを作ってくれた。だがいまはそれらを両方失った状態だ。

 前でボールを収めた大迫がポストワークをしてボールを落とすことで、南野と堂安は前を向いてボールを持てる。だが大迫がいないため彼ら2人はこれまでのスタイルでプレイできず、調子を落としている。

中島は時間を作ってくれた

 また中島にボールを預ければ、彼はドリブルで時間を作ってくれる。その間に周囲の選手は動き直しをすることができる。

 例えばライン裏のスペースを見つけてダイアゴナルランしたり、逆サイドの選手はサイドチェンジに備えてパスコースを作れる。またシュートチャンスを見つけてマーカーの視野から消える動きをする時間をくれる。

 そんな大迫と中島の不在が、いかに大きいか? いや、むろん彼らに代わる選手がおらず、選手層が薄いためにこうなっているわけだが、「本番真っ最中」のいまそれを言っても始まらない。

 一方、コンディション面についていえば、柴崎は依然として調子が上がらないままだ。また大会前には期待の若手MF守田英正(川崎フロンターレ)が負傷離脱し、サウジ戦後には青山がケガで大会をリタイアした。大迫はいつ戻るかわからない。いわば日本代表は片翼をもがれた状態である。

 ゆえに私はいまの森保ジャパンが、例えば最終ラインからグラウンダーのボールを何本も丁寧につないでビルドアップする姿を想像することができない。だが、それでもわれわれは耐えて勝ち抜かなければならないのだ。

サウジ戦の試合運びはあれでOKか?

 サウジ戦では立ち上がりから、日本はボールが足につかず不安定だった。短時間でボールロストの山を築いた。あのままならひょっとしたら負けていたかもしれない。

 だが、なんと前半20分という速い時間帯に先制点を取れたのだ。ならば、上記したような難しい自分たちのコンディション面に配慮し、無理なパスワークを控えてセーフティ・ファーストで守備的に「負けないプレイ」をして何が悪いのか? むろん勝つために、である。

 もう一度繰り返そう。

 いまの森保ジャパンの状態を考えれば、たとえどんな勝ち方をしようが(私なら)もろ手を挙げて拍手を送る。

 さて、あなたはどう思いますか?

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【サウジ戦/収穫と課題】日本は「守備の文化」を備えつつある

2019-01-22 08:44:41 | サッカー日本代表
ボックス内ではやらせない

 1-0で完封したアジアカップの決勝トーナメント1回戦、サウジアラビア戦。1点リードしていたこともあり、日本は徹底した堅守速攻スタイルに徹した。ではこの試合で見えた収穫と課題は何だろうか? まず収穫から見て行こう。

 第一に、日本は選手をバランスよく配置した守備ブロックを組み、スペースを殺して無失点に抑えた点だ。選手間の距離感がよく、チャレンジ&カバーの関係もできていた。守備面では今大会のベストマッチだった。

 1次リーグでの日本は攻撃的とはいえないが、かといって格下の相手を無失点に抑えることもできなかった。必ず致命的なミスを犯し、ひどい失点のしかたをしていた。

 サウジ戦ではこの点が修正され、意図的に守り切るつもりで戦い守り切った。守ろうとして守備をやり切るのは言うほどたやすいことじゃない。だが日本は課題だったバイタルエリアを空けてしまわず、最終ラインもつまらないミスなく高い集中力で守り抜いた。この自信は大きい。

戦い方にバリエーションができた

 もうひとつ、1点リードという試合の流れに応じた柔軟な戦い方ができた点も評価してしかるべきだ。

 過去の日本は「自分たちのサッカー」しかできなかった。スタイルを「こう」と決めたら、それ一辺倒になる。試合の流れや時間帯、得点状況に応じた柔軟なやり方ができなかった。これでは世界で戦えない。

 ワールドカップになれば、多くの国が格上になる。であれば、対戦相手によっては日本はゾーンを低く構えてカウンター狙いで行く必要もある。そう考えれば、サウジ戦のようなしっかりした守備ができたのは大きな収穫だ。

だんだんよくなる「尻上がりモード」

 1次リーグの第2戦まで、日本は本当にひどい内容だった。だが苦しみながらも競り勝ち、第3戦でベストマッチができた。それでも守備は依然課題だったが、決勝トーナメントに入りサウジ戦でその答えを出せた。

 ギリギリの接戦をしながら課題ができれば修正しつつ戦う。これは言うほどたやすいことではないが、日本はそれができている。非常に勝負強い。これで尻上がりに調子を上げ、選手のコンディションも徐々に戻ってきている。

 こういう右肩上がりの戦い方ができているチームは強い。あとは上昇曲線を描くだけだからだ。いちばん直近の試合がベストマッチになる戦いーー。おそらく日本の本当のベストマッチは決勝戦になるだろう。

試合ごとにラッキーボーイが登場する

 デキがよかった1次リーグの最終戦では、初先発したワントップの武藤が力強いヘディングシュートを決めた。また決勝点は、ボックス外から目の覚めるようなミドルシュートを叩き込んだ同じく初先発の塩谷だった。

 続く昨日の決勝トーナメント1回戦では、左コーナーキックから冨安がヘッドで代表初ゴールを決めた。しかもあの得点はいったんニアへ行くと見せ、動き直して手前に引いてフリーになっている。20歳の若い選手が非常に老練なポジショニングを見せたものだ。

 こんなふうに日本は尻上がりのなか初先発の2人が点を取り、続くサウジ戦では売り出し中の若武者が代表初ゴールした。日替わりでラッキーボーイが生まれている。これでツキの波がどんどん日本に押し寄せ、勝負の流れが上向いて行く。いい展開である。

課題はカウンターの完遂だ

 相手が前がかりになり攻め続けたサウジ戦では、敵の最終ラインのウラにはたっぷりスペースができていた。だが日本はこのスペースを充分に生かせず、速いカウンター攻撃を完遂できなかった。ここが課題だ。

 相手を引きつけ裏にスペースを作った状態では、ボールを奪ったら速いトランジションから少ない手数で攻める必要がある。日本はもっと攻守の切り替えを速くすべきだ。

 ポジティブ・トランジションに突入した瞬間に、ライン裏にスルーパスを出す。最前線の選手がダイアゴナルランでオープンスペースに走り込む。こうしたプレイの組み合わせをもっとスムーズにする必要がある。

 ひるがえってサウジ戦の日本は前の選手にボールが出てもワンタッチコントロールをミスしたり、もたつく間にサウジの選手の帰陣を許した。もしボールを奪った同サイドにプレスがかかれば、抜け目ないサイドチェンジからの速攻を決めたい。

死命を制するワントップ問題

 次戦の準々決勝は武藤が出場停止になる。とすれば、にわかに浮上するのが日本のアキレス腱であるワントップ問題だ。大迫をケガで欠く日本の喉元に刺さった棘である。前でボールを収める大迫がいないため、南野も堂安も前を向いてボールを持てず、点が取れてない。

 ただし決勝までの長い道程の中で、「復帰した大迫をどの試合から使うか?」というロードマップは森保監督の中にはすでにあるはずだ。おそらく準決勝のイラン戦と決勝戦の2試合だろう。相手が格下になる次のベトナム戦で、焦って大迫を使う必要はない。

 とすればベトナム戦は北川の緊急発進だろうか? これで出場した北川がラッキーボーイになり点を取って勝てば、文字通り日本の優勝パターンになる。

 あるいは(昨日の記事でも書いたが)堂安を前線に上げてトップ下かワントップにして南野と組ませ、右WGには伊東を配する布陣も見たい。ただし相手が格下のベトナムだけにもっと大幅に選手を入れ替える方法もある。例えば堂安か南野を休ませて北川を投入し、右WGに伊東を使うパターンだ。

 さて、この問題に森保監督がどう結論を出すのか? 見物である。

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【アジア杯決勝T】熟成する日本の堅守速攻スタイル ~日本1-0サウジアラビア

2019-01-21 23:36:30 | サッカー日本代表
相手にボールを持たせて完勝した

 日本は前半20分にCKから冨安がヘッドで先制するまでゲームをコントロールできずに苦しんだが、1-0とリードして以降は相手にボールを持たせて試合を完全に「支配」した。

 日本はサッカーはつまらないがしぶとく勝つ、というまるでイタリアのチームみたいなカウンター・スタイルへと発展的に昇華。全体のコンディションが悪い中でスタートした我慢のアジア杯モードが完成しつつある。

 日本のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKが権田。最終ラインは右から酒井、冨安、吉田、長友。セントラルMFは柴崎と遠藤航のコンビ。2列目は右から堂安、南野、原口。ワントップは武藤である。

 サウジアラビアのフォーメーションは4-1-2-3。彼らは典型的なポゼッション・スタイルで、ていねいにパスをつないでくる。対する日本は立ち上がりにボールが足につかずバタバタしたが、早めにタテへボールを蹴り込み深さを取る。

 日本は最終ラインからグラウンダーのボールでビルドアップすることはほとんどせず、ディフェンスラインから割り切ってロングボールを入れ続けた。首尾よく1-0とリードして以降はこのスタイルがすっかりハマり、ボール「だけ」は支配しているサウジの焦りを誘った。

中を締めてバイタルをしっかり埋めた

 日本はアジアカップで大迫と中島という大きなボールの収め所を失っている。加えてチーム全体にフィジカル・コンディションが悪い。そのため今大会ではポゼッションを捨て、堅守速攻に徹して勝ちを拾うスタイルを志向し始めた。大会の流れを読んだ戦い方だ。

 日本は先制して以降、ミドルサードでブロック守備を敷き、ボールを相手に持たせて敵を待ち受ける。ボール保持率はなんと23・7%だが、1点リードを背中に背負ったうまい試合運びだ。

 中央を締め、柴崎と遠藤航がしっかりバイタルエリアを埋める。ゾーンが非常にコンパクトで隙がない。特に遠藤と堂安、冨安が守備に効いており、武藤も前からタイトにプレスをかける。

 遠藤は前へ出ていく「カンテ・スタイル」を封印し、CBの前のスペースを空けることは決してなかった。バイタルが空くのは今大会の大きな課題だったが、それにきっちり答えを出した形だ。

 日本の守備はこの試合が明らかに大会ベストである。危ない場面はあったが「ここ」という守備の勘所は押さえていた。特に前半20分にリードして以降は、エンエンと70分以上も日本の守備練習が続いた。

裏抜けからのカウンター攻撃が課題だ

 1次リーグを苦しみながら競り勝ち、決勝トーナメント1回戦でたどり着いたこの堅守速攻スタイル。課題は敵のライン裏にたっぷりできたスペースを使うカウンターがすっきり決まらなかった点だ。ここは今後のテーマだろう。

 次の準々決勝は中2日のベトナム戦である。日本がベトナムに負ける姿は想像しにくいが、中2日というスケジュールが大敵だ。スタメンの大幅な入れ替えも含め、総力戦で戦いたい。

 特に武藤がイエローカードをもらい、次戦は出場停止なのが痛い。大迫のケガからの復帰がもし間に合わなければ、北川のスクランブル発進か、あるいは南野ワントップ、堂安トップ下の右WG伊東というのも見てみたい。

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【森保ジャパン】メディアが積極論評しないのは監督に刺激がないからだ

2019-01-20 07:44:02 | サッカー戦術論
監督は積極的に戦術を語れ

 初めにお断りしておくが、今回書くことは悪口ではない。客観的な分析だ。

 なんでも森保監督がメディアに対し、「僕の発言を書くだけじゃなく、もっと積極的にサッカーについてあれこれ論評してほしい。それがその国のサッカーを発展させるのだから」みたいな異例のコメントをした、という記事を読んだ。

 ああ、こりゃ私が常々感じていたことを言語化してくれたな、と思った。

 というのも森保ジャパンについて書かれた記事って、起こった出来事をただ淡々と書いているだけのつまらないものが多いのだ。そこには斬新な発想だとか、斜めから見た個性的な視点のようなものがまったくない。まるでのっぺらぼうだ。で、ちょうどウンザリしていたところだった。

 だが、ではなぜそうなるのか? と考えると……それって実は監督のコメント自体に戦術的な刺激がなく、つまらないからではないか? これが今回のお題である。

ハリルのおっさんは刺激的だった

 例えばハリルジャパンの時代には、(私が個人的にハリルのサッカーを支持しているかどうかはまったく別にして)ものすごく刺激があった。このおっさんはいったい何を考えているのか? いっぺん頭の中をのぞいてみたい。そんな思いでいっぱいだった。

 ハリルのサッカーはひとことでいえば、『ポゼッション率が勝敗を決めないサッカーで勝て』というものだ。

「え? ポゼッション率の高いチームが勝つのが普通じゃないの? それってコペルニクス的な発想の転換じゃないか?」

 で、そんなハリルの(良くも悪くも)刺激的なコメントを見て、こっちも脳内が激しく活性化させられる。かくて『ポゼッション率が試合の優劣を決めないサッカーで勝つ』というひねった記事タイトルを思いつくや、ハリルをめぐるさまざまな発想が湯水のように頭の中に湧き出してくる。当時はそんな状態だった。

 また「相手のよさを消す」というテーマも同じだ。

 このおっさんは、なぜこんなに相手のストロングポイントを削ることばかり考えているのか? その理由が知りたいーー。

 自分たちのよさを出すのか? それとも相手のよさを消すのか? いったいどっちがサッカーにとっての正解なんだろう?

 てなぐあいで、ハリルのフィロソフィをなぞればなぞるほど、どんどん哲学的な思考に自分が引きずり込まれて行く。そんな知的刺激でいっぱいだった。

監督は「旗印」を鮮明にしてコンセプトを語れ

 だが森保監督のコメントといったら、まったく当りさわりがない。「柔軟なサッカーを」とか何とか、ぜんぜん個性が感じられない。まるでマスコミに揚げ足を取られないよう警戒している政治家の無難なコメントみたいだ。

 で、監督のそういうごく普通のコメントを目の当たりにし続けると、こっちの脳内まで斬新な発想やらアイディアやらが消えてなくなって行く。自然と書く記事にはパンチが失われてしまう。

 つまりメディアの記事がつまらないのは、森保監督の「写し鏡」なのではないか? というお話なのだ。いやたぶん森保監督の脳内には、きっと戦術的なアイディアがぎっしり詰まっているのだろう。だが、だったらなぜ監督はそれを口にしないのか? 

 もしかして日本サッカー協会との軋轢の結果、失脚したハリルの失敗を見て何かを恐れているのか? 例えばサッカー協会会長を外からリモートコントロールしている「あのお方」のこととか? などと余計な余談が湧いてくる。

 いやそれはともかく。

 森保監督はメディアに刺激を求めるなら、もっとメディアの頭の中を活性化させるフックになるような言葉を吐いてほしい。例えば「現代フットボールでいちばん得点確率が高いのはゲーゲンプレッシングからのショートカウンターだ。だから我々はそれをめざす」とかなんとか。「ショートトランジションが命なんだよ」とか。

 いや別に宗旨は何だっていい。逆に森保監督が広島時代にやっていたような、相手にボールを持たせてカウンターを狙うサッカーでもいい。とにかく監督は旗印を鮮明にし、自身の内なるコンセプトについて具体的に語るべきじゃないだろうか? 

「敵にスカウティングされたら困る」みたいな深謀遠慮があるのかもしれないが、私はもっとエキサイティングな監督のコメントが読みたい。

 森保監督へのささやかなるお願いだ。

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【ウズベキ戦の意義】決勝Tモードに脱皮した分厚い陣容へ

2019-01-19 10:39:04 | サッカー日本代表
勝負の流れは日本に来ている

 アジアカップの1次リーグ最終戦。日本がウズベキスタンに2-1で勝ったことの意味は、単に1位通過が決まり次はサウジと当たるよ、ってことだけじゃない。ではほかにいったいどんな意義があったのか? 実はこれが大アリなのである。

 まずは「勝負の流れ」だ。大会に突入した日本は初戦で大苦戦し、第2戦も内容が悪いながらも勝った。この「ギリギリの戦いを経験しながら競り勝って行く」というのはチームの成長にとって途方もなく大きい。こういうチームは必ず強くなる。

 例えばデキが悪いなら「どこをどう修正すべきか?」を、「自分の頭で」考えながらプレイせざるを得ない。これが貴重な応用力のレッスン体験になる。で、ひどかった初戦、それよりマシな第2戦、ときて、第3戦のウズベキスタン戦では今大会最高のベストマッチができた。

 こんなふうに上昇曲線を描いているチームは、ゴールである優勝に向けてあとは昇って行くだけだ。勝負の流れ、ツキ(運気)の流れともに、日本には大きな追い風が吹いている。

激しいレギュラー争いでチームは伸びる

 第二に、ウズベキスタン戦ではスタメンを10人入れ替え、「サブ組」と目されていたメンバーで戦った。しかもその彼らが大会ベストマッチで勝ったのだ。これでチーム全員が「よし、やってやるぜ!」と意気上がる。メンタルがぐっと活性化する。

 また戦力的にも意義はデカい。まずウズベキスタン戦でゴールしたFWの武藤は、スタメンで十分な時間をやればキッチリ結果を出すことを証明した。これは大きい。

 これまでの日本は「戦術=大迫」とも揶揄される状態であり、ワントップの大迫がポストワークでボールを前で収めてくれないと形にならなかった。事実、大迫が欠場するととたんに軸になる攻めの形が失われ、「なんとなくやってるだけ」のサッカーになった。

 そこに武藤が名乗りを上げ、実績を出したことでチームは貴重な「プランB」を得た。こうしたオプションをもつことは、優勝に向けた長い道のりを考えれば一騎当千だ。

バランサーとしての塩谷の「意味」

 またウズベキスタン戦にボランチで先発し、2点目のゴールを挙げた塩谷の存在も大きい。彼はパス出しがよく守備もうまい。全体のバランスを見て自分のポジショニングを決められるタイプの選手だ。

 例えば「いまダブルボランチの相方が前へ出たから、自分は後ろに残ってセンターバックの前のスペースを埋めよう」という思考ができ、その通りプレイできる。

 ひるがえって現状、日本のボランチは前へ出るタイプばかりであり、塩谷のようなキャラはいない。ゆえにぽっかり空いたバイタルエリアを突かれてカウンター攻撃を受ける。つまり塩谷的なバランサー・タイプを布陣に加えられるかどうか? が日本の生命線なのだ。

 しかも彼には得点力がある。事実、昨年末に行われたクラブ・ワールドカップでも、開催国(UAE)王者アル・アインの一員として彼は出場し、あの欧州王者レアル・マドリーからゴールを上げている。「ここ一発」がある選手なのだ。

 そんな塩谷の台頭でボランチのレギュラー争いは一気に激化した。守備が不安で調子もイマイチの柴崎に代わり、遠藤航と2人で彼がスタメン出場してもおかしくはない。

 また日本がリードしている局面で、守備固めとして柴崎と途中交代させるカードも切れる。これがウズベキスタン戦でメドが立った日本の「プランC」である。

伊東はスーパーサブ専門じゃない

 一方、同じくウズベキスタン戦でWGの伊東は、持ち前のスピードとドリブル、力強いシュートを見せつけた。で、一気にスタメン争いに躍り出た。しかも彼の場合はスーパーサブとして途中から短時間プレイしても力を出せる。

 例えば相手が疲れてくる後半に投入すれば、彼のスピードの威力は倍化する。ゆえにリードされているときの切り札としても非常に有効だ。

 このほかウズベキスタン戦ではダイレクトプレイで持ち味を出す北川や、スピードと俊敏な突破力のある室屋、絶体絶命のシュートをセーブしたGKのシュミット・ダニエルらが気を吐いた。森保監督の意図通り、ローテーションで2チーム分を担保できるだけの陣容が整いつつある。

 風は我にあり。

 この流れを生かさないテなんて、ない。

 決勝トーナメント1回戦のサウジアラビア戦の先発は機械的にまるごと「レギュラー組」と入れ替えるのではなく、ぜひ武藤や塩谷、伊東、シュミット・ダニエルあたりを先発させて「部分補修」してほしい。

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【アジア杯】アグレッシブなサブ組が吠えた ~日本2ー1ウズベキスタン

2019-01-18 09:45:04 | サッカー日本代表
ガッツを見せたベストゲーム

 スタメンを10人入れ替えた日本は立ち上がりたどたどしかったが、尻上がりに調子を上げて連係を作った。しぶとい戦いをした。全員のシュートへの強い意欲がチームを鼓舞し、ボールに魂を乗せた。「ガッツを見せた」という意味では本大会のベストゲームだった。

 前半40分に1点リードされた日本はその3分後、すかさず追いつく。SB室屋が右サイドを破ってクロスを入れ、FWの武藤が力強くヘッドで叩き込んだ。ゴールの瞬間、片手を振り上げまるで仁王のように顔をゆがめてガッツポーズした武藤の気迫がチームにがっつりギアを入れた。

 後半13分には相手のクリアボールがスペースへ流れたところを、ボランチの塩谷がボックス外から目の覚めるようなミドルシュートをぶち込む。

 これで1点リードした日本は後半20分頃からゾーンを下げて守備的なゲーム運びをし、すっかり試合を殺した。初顔合わせのサブチームが試合の流れを読んだ終わらせ方をした。大人のサッカーである。

 これで日本は1次リーグを8大会連続の1位で突破した。デキが悪かった大会初戦から、日本は尻上がりに調子を上げている。こういうときのチームは強い。さあ次は決勝トーナメントだ。

相手のほうが完成度は高いが……

 この日も日本のフォーメーションはいつも通りの4-2-3-1だ。スタメンはGKがシュミット・ダニエル。最終ラインは右から室屋、三浦、槙野、佐々木。セントラルMFは青山と塩谷のコンビ。2列目は右から伊東、北川、乾。ワントップは武藤だ。

 試合の立ち上がり、明らかにウズベキスタンのほうが完成度が高い。全員が統一されたコンセプトのもとに動いている。球離れが速く2タッチ以内のサッカーをする。ボールを奪ってからのカウンターが非常に速い。

 だがそんな相手を、連携がバラバラな日本の急造サブチームが根性で黙らせるのだからサッカーはおもしろい。「個の力」では日本が上なのだ。

 立ち上がり、我が物顔でプレイしていたウズベキスタンは、日本の力強いファーストシュートで「おや?」と途端に空気が一変。日本が2本、3本とアグレッシブなシュートを重ねるごとに明らかに彼らはビビッて行った。

 前半34分、北川が俊敏なターンからすばらしいシュートを放つ。オマーン戦はデキが悪く消極的だったが、長友の「洗脳」が効いたのか(笑)、彼はすっかり吹っ切れている。まだまだ「死んでいない」ところを見せた。やはり北川はダイレクトプレイがいい。すごい運動量で前線から守備し、よく走る強靭なスタミナがある。

終盤はうまく試合を殺した

 後半になると、日本は相手が仕掛けてくる速いカウンターのリズムに慣れ、トランジションを上げてうまく対応するようになった。たくましい応用力を見せつけた。

 またゲームの終盤、1点リードしている日本は自陣にブロックを敷いてあえて相手にボールを持たせ、原口、遠藤、冨安と守備ができる選手を次々に投入して試合を締めた。機を見るに敏な森保監督の采配が魅せた。

 得点力のある武藤と塩谷が雄々しくレギュラー争いに名乗りを上げ、俊敏な北川とシュート力のある伊東も力を出した。またGKは不安定な権田より、ここ一番に強くメンタルもいいシュミット・ダニエルのほうが明らかに上だと思うがどうか?

 日本は1失点目、簡単に振り切られた槙野と三浦の対応は悪かったし、肝心なときにバイタルを開けるボランチにも課題が残る。だが、この試合はそういう試合じゃない。技術や戦術ではなく、日本が気迫で相手をねじ伏せたゲームだ。決勝トーナメント1回戦の相手はサウジアラビア。この調子でぶちかましてほしい。

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