10の4『自然と人間の歴史・世界篇』太陽風と地球磁気圏、そしてオーロラ
いつの頃からだろうか、太陽からは、光や熱だけでなく、太陽風も地球に降り注がれている。太陽風は、太陽の表面の爆発によって放出される、プラズマ状の電気を帯びた小さな粒でできている、いわば「流れ」だ。太陽風はプラズマといって、電子を手放した原子(プラスの電荷)と自由になった電子(マイナスの電荷)の集まりだ。
この太陽風の源が、摂氏100万~1000万度もの高温のコロナ、それは太陽の外縁大気である。金環日食の時、直近の日本では、2015年年5月21日に起こったおりには、地球からゆらゆら揺れて見えるそのコロナから噴き出されている。この風だが、地球の辺りには、その間ほぼ遮られることなく到達するという。
ところが、太陽風は、地球には直接ぶつからない。それというのも、この太陽風は、地球の磁場を横切ることができないという特性を持っている。だから、側面からは入ってこれない。一方、地球の北極や南極地方辺りには、光の粒となったプラズマが入っていくことができるという。
あわせて、地球の磁場の影響を受けて、地球の裏側(夜側)に回り込む。すると、そこには、それまでに回りこんだプラズマがたまり続けている場所(プラズマだまり)があり、磁場が急激に変化する。そこのところについては、学者による論争があるようで、例えば、一般向けにこう説明されている。
「筆者は、磁気圏はある量のエネルギーが貯えられると不安定になり、そのエネルギーを放出して安定になろうとすることがわかった。せれはゴムひもを引っ張るには限界があることに相当する(逆平行の磁場が消滅する必要はない)。磁場圏がそのエネルギーを放出することは、ゴムひもが元に跳ね返ることに相当する。」(赤祖父俊一「オーロラの新理論」、「天文ガイド」2013年8月号)
この現象が起きると、爆発的にエネルギーを得たプラズマが地球に流れ込む。その場合、プラズマは磁場の方向(方位磁針が指し示す方向)にそって運動するので、地球の磁極(N極とS極)の周辺に流れ込む。このプラズマが地球の大気にぶつかると、大気中の窒素分子や酸素が刺激されて光を放つ、これがオーロラだ。
なので、このプラズマを引き寄せる磁気の強い場所のうち、その時々の天候が安定しているカナダや北欧などでは、一年を通じてオーロラが観察できる場所が幾つかあるという。
それというのも、「24時間オーロラが出続ける不思議な場所が世界で2所ある。北極のノルウェー領スバールパル諸島と南極点だ。この2カ所では、地磁気の軸と地球の自転軸とが微妙にずれていることでオーロラが見え続ける」(朝日新聞、2018年6月14日付け、BSプレミアム「コズミックフロント、NEXT」)との放映があったところだ。
さて、太陽風に乗って地球にやってきた高エネルギーの電子が、この空気分子の電子と衝突し、空気分子の電子にエネルギーを与えることによって、空気分子に含まれる電子は、これまでの軌道より外側をまわるようになる、これを、「励起状態」という。とはいえ、この状態は空気分子にとって不安定なので、時間がたつと自然に元の軌道に戻る。このとき、2つの軌道のエネルギーの差の分だけ、光を放つ。
では、オーロラはどうしていろいろな色で見えるのだろうか。もう一度いうと、電子の励起状態と戻った状態の2つの軌道のエネルギー差の分だけ、光が出る、このエネルギー差は出てくる光の強さではなく色に対応していて、エネルギー差が大きいと青色、中くらいだと緑色、エネルギー差が小さいと赤色に偏る。
量子力学によると、電子がとることができる軌道のエネルギーは「飛び飛び」の値に決まっていて、どのエネルギーでもとりうる訳ではない。そういうことであるから、オーロラは、数多くの決まった色(輝線という)の組み合わせで光っている、それを観察者は眺めていることになる。
そんな私たちの好奇心を駆り立てるオーロラなのだが、人類を含めこの地球上の生命にとっては、それ以上の意味があるという。それをわかり易くいうには、例えば、地球の約半分の直径の火星の岩石は、地球のに比べて軽く、地場は元々弱かったことなどから、磁気圏が弱まっており、太陽風に晒され、大気を繋ぎ留めることができず、現在のような荒涼たる環境となってしまったとされる。
(続く)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆