キングスマン/マシュー・ヴォーン監督
高いスーツに身を包んだ英国紳士が、民間の諜報機関のメンバーとして、超人的なアクションでもって活躍をするという物語。その地下組織である諜報機関であるが、要するに新人を発掘しようとしている。優れた若者を集めて訓練を施し、一名だけキングスマンの後継者を選ぼうというものだ。
一方で地球温暖化などの地球規模での異常事態をいかに解決するか、という事を考えている世界的な組織がある。代表は映画監督などをやっており超有名人かつ大金持ちだ。しかしながらどうも怪しいところが多くて、携帯電話のシム・カードを全世界に無料配布などしたり、大衆には絶大な人気がありながら、地下では資金を集め、何やら悪だくみをしているらしい。そこにキングスマンが絡んで事件の解明に奔走することになるのだが…。
もとはコミック作品という事で、内容は荒唐無稽なアクション・コメディになっている。そのアクションもキック・アスの監督さんがやっているので、カッコいいながらも少しやりすぎているという感じだ。最初は斬新だったが、ひどく残酷も続くので、多少食傷気味にはなる。コリン・ファースが頑張って活躍するのが見もので、とにかくたくさんの人を殺すことになってしまう。
ワクワクするようなアクション映画として間違いはないが、いろいろやるためにお話が大きくなりすぎている。ここまで来るとちょっとな、ということか。地球のためにやらなくてはならないことは、確かに人類の課題としてはあるだろう。しかしながらそのために人類を減らさなければならないというのは、もう少し別のやり方があるんじゃなかろうか。まあ、彼らの考えた方法なんで、それはそれでいいですけど。
さまざまなスパイ映画のオマージュ的な場面も多い。そういうものを見つけるのも楽しい見方であろう。日本人や香港あたりの人間からすると、このような能力を身に着けるまで、もう少し厳しい訓練があった方が面白いと思うものであるが、そういうものはある程度の才能という事ですっ飛ばしてある。そうして能力的に必ずしも最高とは思えない二人が、結果的には一番いい位置についてしまう展開を見ていると、彼らの考える能力の高さというものは、僕らの考えている能力の高さとは、また別のものがあるという事なんだろう。文化比較的にも考えさせられる不思議なコメディかもしれない。