【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【重大】やはり日米ガイドラインから「周辺事態」を削除し、地球の裏側まで集団的自衛権行使 毎日新聞報道

2014年10月01日 09時02分41秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

 2014年10月1日(水)付毎日新聞は1面トップの御嶽山噴火被害者の救出情報のワキに隠れながらも、大変なスクープを報じました。

 goo ニュースは、毎日は共有できない仕様のようですので、要約すると、毎日は、

 ・日米防衛協力の指針(ガイドライン)」について、役割分担の一つである「周辺事態」を削除し、自衛隊が地理的制約を受けずに米軍への後方支援を可能にする改定を行う方針を固めた

 ・ 複数の政府関係者が明らかにした。

 ・朝鮮半島有事など地理的概念に制約されずに、自衛隊の活動範囲を広げるのが狙い。政府は周辺事態法を廃止し、対米支援新法を制定する検討も進めている。

 ・ だが、周辺の概念を外せば、時の政権の判断で対米支援が飛躍的に拡大しかねない。自衛隊幹部は「日本から遠く離れた国での対米支援で、もし命を落としたら妻や子供に説明がつくのか。自衛隊の活動に大義が確保される法制であってほしい」と語る。

 ・来週にもガイドラインの中間報告をまとめる

 ・武器弾薬の提供も解禁される見通し。

 などと報じています。

 日米同盟においては、旧安保条約の60年条約の改定を上回る重大な変質であり、戦後日本は極めて大きな歴史的局面を迎えました。

 日米同盟はもともと、「極東有事」を対象にしていましたが、17年前に橋本内閣が改定した1997現行ガイドラインから「周辺事態」に代わっています。現行ガイドラインは、わざわざ「周辺事態の概念は、地理的なものではなく、事態の性質に着目したものである」として、地理的制約を取り払っており「地球の裏側」も日米同盟の対象になっています。これを国内法制化した、周辺事態に際して我が国の平和および安全を確保するための措置に関する法律(平成11年=1999年=法律60号)では、周辺事態において日本自衛隊が米軍を支援するために「後方地域支援」「後方地域」などの言葉が初めて登場しています。

 一方、1997ガイドラインでは、「周辺事態における協力の対象となる機能および分野ならびに協力項目例(別表)」の中で、「米軍の活動に対する日本の支援」→「後方地域支援」→「補給」→「自衛隊施設および民間空港・港湾における米航空機・船舶に対する物資(武器・弾薬を除く。)および燃料・油脂・潤滑油の提供(略)」と書かれています。わざわざ「武器・弾薬を除く。」と明記されています。これは周辺事態法の別表第一の備考にも「一 物品の提供には、武器(弾薬を含む。)の提供を含まないとする。」と明記してあります。

 ですから、新しいガイドラインで「周辺事態」が削除され、「武器・弾薬を除く。」も削除されると、米軍が世界中で活動するために、我が国は、際限なく武器・弾薬を提供しなければならなくなる可能性が高まります。

 例えば、まさにこの時間、きわめて優秀な鍛え抜かれた陸上自衛隊の諸君が、CH47J(あるいはCh47JA)輸送ヘリで御嶽山で活動してくれていますが、場合によっては、川崎重工業の工場から、陸送して、本州・山口県の米軍岩国基地に駐留するKC130空中給油機に「提供」する事態もありえるでしょう。沖縄本島の普天間飛行場にいたKC130空中給油機15機は、すでに、本州・山口県の岩国基地に移っています。燃料タンクを外せば、「C130輸送機15機」です。無人偵察システムなど付加価値の高い防衛装備品を積み込んで、米軍が、友好国(例えばタイ・バンコク)を経由して、地球の裏側の、イラク、アフガニスタンに向かってもいいことになります。

 ですから、際限なく、武器弾薬の提供ができますから、年間1兆円を米軍に提供する事態もありえます。戦争は、泥沼化、長期化してくれた方がお金儲けできる人が、米国のみならず世界の政治の発言権を独占しています。

 1997年ガイドラインでは、非戦闘員退避行動について、日米が協力することになっていますが、これは、1999年周辺事態法では、自民党議員の発案で落ちています。これが、安倍晋三首相(自民党総裁)が記者会見(5月15日と7月1日)に持っていた赤ちゃんを抱くお母さんのパネルにほかなりません。なぜこれが、1997年ガイドラインから1999年周辺事態法の間に落ちたのかは長年謎でしたが、これは、米国側から「あれは無しにしてほしい」と中谷元・自民党衆議院議員に伝えてきたから、という説が有力になっています。つまり、アメリカは担当者の力が強いので、担当者が代われば意見も変わることがありうるのです。

 実際に、日米同盟の当事者を経験した、岡田克也さんは、週刊金曜日2014年6月13日(通巻995)号の29ページで、私(宮崎信行)のインタビューに答えるなかで、「外相時代に、米国から言われたことを一度もありません。日本がやると言えば、米国はどうぞ、どうぞと言うでしょうが」と断言し、 外相時代(2009年9月16日から翌年9月17日までの1年2日間)に、アメリカ政府関係者から集団的自衛権の行使を求められたことは一度もないと断言しています。

 ですから、官房副長官として、9・11テロによるアフガニスタン侵攻の特措法を担当した安倍さんが、そのときの経験から、まず憲法改正をしようとしたものの、ガイドラインの再改定があるので、それを踏まえて、防衛装備移転3原則の閣議決定、第2次安保法制懇の報告書受領、国の存立を全うし国民を守るための安全保障法制の整備についての閣議決定、2014年再改定ガイドラインの締結、そして、来年5月とみられる、安全保障法制の再整備の関連法案提出というスケジュール感を持っていることは間違いないと考えられます。そしてそれは、1996年橋本・モンデール会談からは始まった「普天間基地の使用停止・返還」という甘い飴との抱き合わせでもあります。

 そして、なによりも、武器弾薬にとどまらず、自衛官が地球の裏側の戦争に送り込まれることになります。

 なにがなんでも阻止せねばなりません。

 平和主義、民主日本の重大局面を迎えています。

 当ブログ内関連エントリー

(2014年9月17日付 

防衛省、防衛審議官(防審)が2014年9月17日から訪米し「米国国防関係者と意見交換」と発表



(2014年9月4日付

安倍首相「KC130輸送機の岩国移転」を強調、やはり、ガイドラインで「武器弾薬提供」解禁の布石か

 )

(2014年9月2日付

◎海江田内閣での日米ガイドラインやり直し「マニフェストに入れるのは難しい」集団的自衛権【追記有】

 )

(2014年8月25日付

岸田外相留任へ、の報道、2014年9月20日前後のガイドライン中間報告で「武器弾薬の提供」解禁布石か

 )

(2014年8月20日付

◎米軍に「武器と弾薬」日米同盟ガイドライン再改定、自公閣議決定道開く 第188通常国会で周辺事態法改正


(2014年7月15日付

集団的自衛権を参議院で初審議「2回目の解釈変更」「集団的自衛権に自国と他国なし」

 )

(2014年7月14日付

◎運命の人岡田克也、「日米同盟毀損や石油高騰で集団的自衛権」、最高裁「沖縄密約文書不存在」確定

 )
(2014年2月22日付

岡田克也さん「閣議決定した後の国会論戦、議会人として納得できない」ーー「集団的自衛権特別委」も念頭か





) 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿