ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

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第178臨時国会はきょう平成23年9月30日閉会 

2011年09月30日 19時08分04秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

 第178回国会は、当初会期の4日間を14日間延長したうえで、きょう平成23年(2011年)9月30日(金)閉会しました。

 この国会で通った案件は1つ(法律上は2本)でした。このほか、野田内閣発足にともなう民主党の人事異動による委員長らの配置がえがありました。自民党は次期国会で配置がえになります。

 衆参両院議員の経験がある自民党の塩崎恭久さんらが第177通常国会に提出していた「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法案」(177衆法24号)と「(両院合同特別調査会を設ける)国会法改正案」(177衆法25号)。これが与野党の修正協議のすえ、衆議院議院運営委員長提出法案の「(両院合同特別協議会を設ける)国会法(改正案)」(177衆法1号)と「東京電力福島原子力事故調査委員会法(案)」に衣替えし、衆参で全会一致で可決、成立しました。

 調査委員会は民間人で構成します。そしてその上部組織で、衆参10議員(議運委理事)の20議員で構成する「両院合同特別協議会」を設けます。この協議会は「国政調査権」を持ちますので、民間人調査委員会が欲しい資料や呼んで欲しい人物を呼ぶことができます。

 これは国政調査権があるからです。国政調査権とは、「国会は国政(国の行政、政治)に関することは、何でも調べることができる権利」です。現行憲法の62条で定められ、帝国議会にはなく、国会になって初めて持った権限です。ですから、今週の衆参の予算委員会は、具体的な議案(予算案)がないのに、「(平成23年度)予算の実施状況に関する調査」のための委員会だったわけです。まあ、もちろん、29日の「調査」での、公明党参院議員の松あきらさんの「第3次補正予算案を早く出してくれていればこの委員会で審議できたのに」という指摘は尊重されるべきです。それはさておき、「国政調査権」に関しては国会議員でも勘違いしている人がいて、これは議員一人一人の権利ではありません。憲法62条は「両議院は、各々、国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭および証言ならびに記録の提出を要求することができる」となっています。ですから、衆議院の権利であり、参議院の権利です。この条文から、「証人喚問は全会一致が原則だ」という政局報道でよく目にするフレーズがでてきます。もちろん、首班指名や予算の採決が全会一致でないので、院として証人喚問をすることが全会一致である必要はありません。ただ、国会にとって生命線なので、大事に扱うべきだ、ということです。

 このため、両院合同特別協議会が国政調査権にもとづき、資料の提出を要求できるわけです。ただ、上の条文にあるように、衆院と参院では別々です。ところで、塩崎法案では、衆参15人ずつの30人となっていました。私は両院協議会改革に興味があったので、てっきり30人になると思い、以下のエントリーをいったんブログにあげました。ただ、与野党協議の修正内容がだいぶ変わって10人ずつ20人となりそうだ、という情報があり、いったんブログから閉じました。まずは両院合同特別協議会で実績を積み重ねていくことになりますが、私の「先走った」意見が入ったエントリーを、今回は後ろに付けますので、よろしければご笑覧いただければ、ありがたく思います。

 第179臨時国会は、10月下旬に召集され、冒頭に第3次補正予算(案)が提出される見通しです。この国会から、自民党側の委員も配置転換されます。ちなみに、自民党の谷垣禎一総裁は、3党合意の石原伸晃幹事長を続投させ、政調会長には、日本新党衆院1期生の茂木敏充さん、幹事長代理の一人に同じく遠藤利明さんを昇格させました。遠藤さんの昇格には、山形1区の対抗馬の鹿野道彦農相の存在感が向上していることも関係していると考えます。一方、野田佳彦首相の日本新党の先輩にあたる小池百合子総務会長、新進党から途中で自民党に出戻った石破茂政調会長は、シャドウ内閣に入閣するようです。これは、谷垣総裁が野田首相や前原誠司・政調会長、藤村修・官房長官と同じ日本新党1期生つながりをつかってきたことで、3党合意路線重視といえそうです。ただ、日本新党つながりが厚くなることで、社会党出身で参議院の輿石東幹事長が相対的に孤立する可能性があります。これは日本新党1期生つながりの樽床伸二幹事長代行を3党協議に引き寄せることも、保険としてあり得る、ということを谷垣総裁は考えていると考えます。一方、野田首相の松下政経塾1期生仲間である逢沢一郎・国会対策委員長ははずれて、自民党一筋の三世議員である岸田文雄さん、総務会長にも自民党生え抜きの二世議員である塩谷立さんを起用しました。こうみると、やはり野田さんの、松下政経塾1期生、日本新党(衆院)1期生という二つの1期生というのは大きい。永久に1期生で、抜かれることはありませんから。やはり開拓者が第一人者になるんだという感じがします。ですから、民主党地方議員で、2009年の総選挙に出ればよかったと後悔している人もいるでしょうが、それは地元の自治体でずっとしっかり活動して、議長を務めてから、みんなに支えられて出馬するという考え方しかないんだと感じます。今まで、そういう人、いっぱい見てきましたが、政治というのは歴史をつくる仕事なので、歴史の流れを読めなかった、あるいは行動に踏み出す勇気がなかったということは、それ自体がやはり能力がないんだということなのだと感じます。

 とはいえ、自民党役員などどうでもいい。大事なのはシャドウ内閣です。シャドウ官房長官は石破さんから、茂木長官に代わるでしょう。谷垣第1次改造シャドウ内閣がどのような布陣になるかで、第46回衆院選の趨勢が決まります。

 一方、野田リアル内閣のメンバーはあまり馴染みがない、という読者の方も多いようです。衆参4日間の予算委員会の振り返りを兼ねて、前田国交相の答弁や、与野党委員の質問などから切り出して、いくつか感想を閉会中に書いていこうと、今は考えております。

 月曜日に「国会傍聴取材援基金」を開設しましたが、きょう通帳記入をしましたが、まだご協力はいただけないようです。なかなか世の中上手く行かないものだなという複数の思いが去来した今週でしたが、これからもなんとかやっていきたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いします。

[以下は、2011年9月28日の午後10時に更新したエントリーですが、前提が変わりましたので、ご参考までご笑覧いただければありがたいです]

 延長国会は、再延長はなく、2011年9月30日(金)で閉会することが決まりました。政府・与党の要請に、野党7党が国会議事堂内の中央部3階にある「常任委員長室」で国対委員長会談を開き、閉会に応じ、次期国会の早い召集を求めることにしました。

 また、あす9月29日(木)の午後12時40分から、衆院本会議が開かれることになりました。

 これは衆参両院の議員経験がある自民党の塩崎恭久さん(現在は衆院愛媛1区)が提出していた「国会法改正案」(177衆法25号)を審議し、採決することになりました。すでに自民党、民主党、公明党、日本共産党らが賛成しているようですが、何らかの修正があるかもしれないので、本会議では議院運営委員長提出法案ということで報告と採決があるかもしれません。可決後、すぐに参院に送り、会期末である30日(金)の参院本会議で、可決・成立する運びです。

 これは、東京電力福島第一原子力発電所の事故に関する「両院合同特別調査会」を設ける法案です。この「両院合同特別調査会」というのは、日本国憲法でも国会法でも耳慣れない言葉です。基本的には、「フクシマ」に関してもっと知りたいという国民の方がおおいですが、私は、この両院合同特別調査会が、衆参ねじれでの両院協議会をめぐる国会法改正などにつながってほしいと思います。

 衆参不一致の議案がでたときに立ち上がる「両院協議会」は、衆参各10議員の20議員で構成します。一方、この事故調査に関する「両院合同特別調査会」は常設の機関で、衆参各15議員ずつの30議員で構成するというのが塩崎案です。これは、公明党が参院で19議席(定数242)なので、15議員にすることで、参院で確実に1人、公明党のメンバーが入れるよう、自民党の友党に配慮した側面があると思いますが、これはラッキーです。

 両院協議会規程は昭和22年(1947年)に参議院、続いて衆議院で可決・成立し、その後、一度も改正されていません。この規程で「両院協議会は両院協議会室で開く」となっていますが、実際には、「両院協議会室」という部屋は国会議事堂になく、上の方でも書いた「常任委員長室」(3党合意でもおなじみの金屏風の部屋)で開いています。おそらく運用上の読みかえというものでしょう。ただ、常任委員長室には、インターネット中継の設備がありません。また、両院合同調査会が30議員のほかに、参考人を呼んだり、公聴会を開いたりすることができるので、常任委員長室では人が溢れます。

 国会議事堂のおなじみ中央部。ここは裏側(議員会館側)は、1階が中央部食堂、2階が閣議室(アタマ撮りで総理の後ろに天然光がさしている部屋が国会内、完全にインドアは官邸内です)、大臣室、総理大臣室があります。3階には、自民党に割り当てられた控室で「自民党総裁室」の看板が立ちます。常任委員長室は、皇居側にあります。皇居側の2階や1階は、正面玄関や陛下や皇族のスペースです。

 原発事故に関する両院合同特別調査会は、やはりインターネット中継は当然されるでしょう。そうなると、例えば、会長が属する院とは反対の院の「第1委員会室」(予算委員会でおなじみ)で開き、ネット中継する。あるいは、衆院と参院の第1委員会室を交代で使うということもあり得ます。議事録をつくる記録者(旧速記者)は衆参合併されましたので、問題ありません。ネット中継は衆参で業者が違うようなので、交代方式がいいかもしれません。

 この際、中央部に「両院協議会室」をつくるのはどうでしょうか。

 そこで、腰の低い野田佳彦さんに、例えば、衆院側3階にある民主党代表室を譲るかわりに、中央部3階にある自民党総裁室を両院協議会室にして、ネット中継の設備をつける。ちなみに、この1年間の首相動静で、菅直人総理大臣(民主党代表)が、「国会内の民主党代表室」に入ったのは、国会内の審議を終えて、都内ホテルでの元連合会長の偲ぶ会に直行したときの1回限り十数分でした。これは総理としてでなく、民主党代表として着替えたと言うことでしょう。ことほどさように、国会においてに「体裁」というのは大事です。ですから、このチャンスに「インターネット中継設備のある両院協議会室」を国会議事堂内につくってしまいましょう。場合によっては、国会内閣議室を両院協議会室に開放したらどうでしょうか。

 とにかく、両院協議会をインターネット中継すると、両院協議会改革に向けた機運は嫌が応にも高まり、両院協議会に関する条文の国会法改正が可能になると期待します。

 野田内閣の支持率は上がっていますが、はたして国会支持率はどうなんでしょうか。昨年秋の臨時国会では、参院インターネット審議中継の視聴回数が衆院のそれを上回り話題になりましたが、大震災後、はたして参議院支持率はどうなっているのでしょうか。マスコミも調査してください。参議院のみなさん、ホントウに危機感を持たないといけないですよ。

 ピンチはチャンス。

 両院合同特別調査会をきっかけにして、衆参ねじれ両院協議会もインターネット中継する。私は参議院が好きです。参議院廃止は日本国憲法改正が必要で現実的ではありません。またGHQが日本に「押しつけた」英文の憲法草案は衆議院の一院制で、日本が「さすがに貴族院の存続はあきらめるけれど、参議院というのはどうでしょうか」とお願いしてつくった数少ないわが国の「自主憲法」条文です。

 原発事故の調査委員会をきっかけに、両院協議会を改革しちゃおう、という私の論は、俗に言えば「スケベ心」とも言うのかもしれませんが、とにかく日本には余裕がありません。草枕をしばしなぐさみながら、秋の空と雲を眺めて、さまざまな思いをめぐらせていたら、息が詰まりそうです。とにもかくにも、立ち上がって、各人のペースで前に進むしかありません。その一歩になればいいと考えます。


民主党と公明党が蜜月新時代か? 野田首相と富田理事が散会後に長話 衆・予算委

2011年09月26日 23時32分03秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

[画像]衆院予算委散会後に、親しく会話する民主党代表の野田佳彦首相=赤丸の左側と、公明党・予算理事の富田茂之さん=衆議院インターネット審議中継から

【衆院予算委員会 2011年9月26日(月)】

 延長国会最終週(?)になりますが、午前8時55分から衆・予算委が開会しました。中井洽委員長は理事が4人欠員になっているとして、補欠の選任を行い、岡田克也さんらを新しい理事に指名しました。

 初日と最終日には筆頭理事が質疑に立つケースが多いのですが、きょうは岡田さんが、震災復興をめぐって「野党のみなさんにはよくご協力いただいた」とこの半年間の「熟議」「協議」をお礼した上で、しかし「やはりそろそろしくみということを考えていかなければならない」としました。そして「3・11」前の通常国会前に、新しい国対委員長だった安住淳さんと各会派をあいさつ回りした際に配った「今後の国家運営のあり方に関する提案」について説明しました。

 これは当ブログでも同じ軌を一にして主張していますが、(もちろん私の持論)、国会法92条により、両院協議会が院議(例えば衆院で「賛成」なら賛成の10人、参院で「反対」なら反対の10人)の10人ずつ合計20人が集まりながら、協議案(すりあわせ案)は3分の2以上でないと成案にならない(可決しない)ということ。これを「過半数」にするとともに、メンバーも院議でなく、各院の議席構成、そしてできればある程度、党派の立場を離れて考えられるメンバーを選ぶべきだとしました。

 野田代表は「尊重したい」としながらも、「ぜひ岡田筆頭理事には予算委員会の現場でも実践して欲しい」として、衆予算委での各派の話し合いをするよう注文をつけました。野田内閣は、財務相、外相、文科相、経産相(辞任)の4人について、岡田色の強い組閣がされているとの見方がありますが、総理・代表は、岡田議員に現場を守るよう釘を刺したように感じました。

 岡田さんは質問のなかで、衆院定数に関する「最高裁判決は2つのことを言っている」とする岡田さんは「各県に1議席ずつ配分する(1人別枠方式)」と「1票の格差を2倍以内にすること」の両方を解決しなければいけないとしました。そうなると「21増21減になるが、激変緩和的な考え方が必要だ」として、政治改革本部長として「党としては猶予を置くべきだという考えを示した」として、平岡秀夫議員が提出した「5増9減」案なども参考にしたいとしました。これに対して、野田さんは「各党は真摯な議論を踏まえて成案をつくっていくよう(民主)党でもご議論をいただきたい」としました。また、野田首相が所信表明で「選挙制度改革」という言葉を使ったのは、定数是正の意味だけではないことを確認しましたが、首相の答弁は必ずしも明確な意味合いで「選挙制度」と言ったわけではないというものでした。岡田さんは「党によっては選挙制度を大きく変えるべきだとする党もある」とし、「私は小選挙区・比例代表並立制を20年前につくった張本人だが、新しい選挙制度は、次の(第46回)総選挙は難しいのではないかと思うが、各党と胸襟を開いて議論をすべきではないか」としました。これは具体的には、山口那津男・公明党代表が出している3案のうち、「小選挙区比例代表連用制」と「小選挙区比例代表併用制」を念頭に置いているんだろうと私は思いました。また、自民党の石原伸晃幹事長も「郵政選挙なら自民党が300議席、政権交代選挙なら民主党が300議席とる(極端な)選挙制度はいかがなものか」という考えをテレビで話しています。そうなると、「連用制」ならば、二大政党が小選挙区で議席を大量に確保しても、公明党、みんなの党が比例ブロックの政党名投票で得票を得ていれば、ブロックの議席は優先的に小政党に与える格好になりますので、泰山鳴動しやすいわが国ですが、300議席越えの極端な選挙結果により、巨大与党がかえって足元がふらついて政権運営に失敗することはなくなります。

 さて、野田首相から「筆頭理事として衆院予算委をしっかりまとめて」と釘を刺されたこともあったのか、次のようなシーンが散会後の衆議院インターネット審議中継にうつっていました。

 

 赤丸の左は公明党の富田茂之理事、右は民主党の岡田筆頭です。おつかれさんとねぎらったり、あるいはあすも予算委があるのでその話もしているのかもしれませんが、富田理事は、野田総理の方を見ています。



この後、富田さんが野田総理に歩み寄ると、総理は腕組みしてリラックスした表情で富田さんと話し合います。岡田筆頭は武正公一理事と話し合いながら、その姿を見ています。

しかし、野田総理と富田さんの話が長くなったので、岡田さんは「なんだ俺にはもう話はないのか」という風情でカバンを持って引きあげました。野田さんと富田さんは「千葉つながり」もあります。「公明新聞読んでますよ!」の野田総理もテレビカメラに写っていることは承知でリラックスして富田さんと話していたのでしょう。

 これは別段不思議な光景ではなく、野田さんと富田さんは元新進党千葉県連の同僚で、第41回衆院選では同じ新進党公認候補として、野田さんは千葉4区で落選、富田さんはブロックで当選したという仲です。岡田さんは三重3区で当選し、富田さんとは現職議員として小沢一郎(氏)による新進党解党に抵抗しました。また、野田さんと同様に、第41回衆院選の東京17区で落選した山口那津男さんは、同日、小沢一郎(氏)の証人喚問を要求しました。いうまでもなく、野田さん、富田さん、山口さん、岡田さんともジェントルマンですが、衆参ねじれと震災という国難のなかで、3党合意にもとづく政治を進めようとしています。頼もしい限り。

 ただ、富田さんがこうやって総理と長く話して、岡田さんがてもちぶさたっぽくしていたので、岡田さんもいつまでものんびりしていないで、「よし俺も」という気になってほしいのですが、それは政権交代ある政治を完成させてそれからの話です。私は両院協議会などの国会法改革の3党協議や、衆院選挙制度(定数是正のみ含む)と参院の新選挙制度案を盛り込んだ公職選挙法改正案、これは当然にして議員立法でなければいけないわけですが、これの特別委員長だとか、そういった「議会の子」「政治改革の鬼」としてしっかりとルールづくりをやってほしいと期待しています。ぜひ輿石東・幹事長は国会法改正、選挙制度改革の役職に岡田さんを起用して欲しいです。

 さる9月23日付の公明新聞3面の投書欄に、今まで見かけなかった論旨の投稿がありました。これは世田谷区の76歳の女性。タイトルは「民主党よ、公明党の声をきけ」。「民主党さん、本当に日本の国を背負って立てますか?本当に心配です」「今月、私は喜寿を迎えますが、約50年間、公明党を応援してきました。公明党の主張で実現した『児童手当』のお世話にもなりました。参院公明(当時は公明会)の提案でできた『義務教育教科書の無償配布』の恩恵にも預かりました」「民主党の議員さん、一人一人の国民の幸せのために働く心を抱いてください!一人の人の苦しみを受け止めて一緒に悩み、応援してくれる公明党議員の声を聞いて、大切なことに本気で取り組んで具体的に結果を出してください」。

 これまで民主党に対して「しっかりしろ」という叱咤激励ととれる投稿は、公明新聞で見かけたことは、私は記憶にありません。

 そういえば、1月18日のあいさつ回りでいきなりペーパーを渡す岡田さんのことを「KY(ケーワイ)だ」と称した国会議員がいたかのように聞きました。しかし、それは1997年12月に新進党議員総会で、「解党反対」のビラを配る岡田克也さん(あるいは中田宏・衆院議員)を「もう解党は決まっているんだよ(笑)」と岡田さんを嘲った先輩議員を彷彿とさせました。あの人たち、一人もいなくなりましたよ。あのころの、新進党神崎グループ(創価学会系)のみなさんには、ひょっとして「天の声」があったかもしれません。これはもちろん、「大衆とともに」立党者である池田大作・創価学会第3代会長のことです。しかし、現在の公明党(New Komeito)のみなさんは、3000人に地方議員と、それを上回る支持者(10年間の国政与党で非学会員の中小企業者、農業者もだいぶ増えたようですが)に突き上げられる「民の声」にときに迷い、6月1日のように、内閣不信任案を出さざるを得ないという状況に党本部執行部が追い込まれることもあるようです。

 山口さん、富田さん、野田さんや岡田さんは十分に信頼して大丈夫です。場合によっては「3党合意」が「2党合意」になっても、衆参とも過半数があります。あの、ムリヤリ離縁を迫った乱暴亭主である悪の代表=小沢一郎(氏)のことは徐々に徐々に忘れて、新しい仲間(竹谷とし子さん、石川博崇さんのほか、枝野幸男さん、馬淵澄夫さんら民主党オリジナルメンバー)で、連立(同居)とはいかなくても、民公連携(お互いの家を行き交う)で、日本のためにやってみませんか。

 あの乱暴亭主の口癖は自分一人で決めて「決まったことを守るのが民主主義だ!」。しかし、決まったことを守るのは法治主義であり、決まるまでのプロセスをしっかり見せて正統性を持つのが民主主義です。だから小沢さんは司法試験に落ちたんです。その点、山口さんと富田さんは弁護士です。岡田さんも司法試験を1回受けて落ちていますから、3党協議のなかでも、いろいろと教えてもらうことも増えそうです。

 「国民の生活が第一。」から「庶民の生活が第一。」へ。

 まずは国会法改正案と公職選挙法改正案。しくみづくり。これを来年の通常国会でプロセスをしっかり明確化して、ていねいにみっちりやりましょう。

 野田総理のおかげで、少しずつ国会の底力がニョキニョキと空に向けて芽が伸びてきているような感じがします。

  ◇

今後の国会運営のあり方に関する提案
~ 政策を実現し国民の期待に応える「熟議の国会」のために ~

平成23 年1月18 日 民 主 党

4年前の参議院選挙以降、国会は衆参のねじれがほぼ常態化し、この間、残念ながら、立法府として国民の期待に十分に応えられているとはいいがたい。しかし、このまま現在の状況が続けば、国会は国民から完全に見放され、国の将来を誤ることにもなりかねない。我々は、そういった強い危機感を抱いている。
我々も与党を経験し、野党時代の国会対応において、政策実現のための国会運営あるいは国政の円滑な推進といった観点から、適切とはいえない場面が少なからずあったと認識している。そのことは率直に認め、真摯に反省しなければならない。

その上で、我々は、政策を実現し国民の期待に応える「熟議の国会」のため、過去の与野党合意や申合せ、提言・答申等も踏まえ、以下3点を提案したい。どの政党が与党であれ、衆参のねじれは現在も、そして今後も起こり得る。そういう前提で、各党各会派で速やかに議論を行うことを切に求めたい。

1. 充実した国会審議と国益の両立

国益および外交上の観点から、総理や閣僚の国会出席義務を緩和し、海外出張を理由とする国会欠席について、弾力的に運用する。同時に、閣僚が国会に出席できない場合に、副大臣・政務官のもとで審議を行うことについて、柔軟に対応する。
また、政治家同士による充実した国会審議を実現するとともに、国家公務員の過剰な残業を是正するため、質問通告ルールの原則(前々日の正午)を徹底する。

2. 両院協議会のあり方の見直し

ねじれ国会のもとにあっても、国会の機能が十全に発揮されるためには、新たな意思決定の仕組みが必要である。このため、両院協議会のあり方を見直す。
例えば、「協議案が出席協議委員の3分の2以上の多数で議決されたときに成案となる」と規定されている国会法92 条を改正し、「過半数による議決」に緩和することや、衆参両院から10 名ずつ選出される協議委員の構成について、各院議決の多数派で占められている現在の構成を見直し、各院の議席配分に応じた構成とすることを検討する。

3. 参議院の問責決議の位置付け

参議院の問責決議には法的効力はなく、また、内閣と国会の関係を定めた憲法の趣旨からいっても、総理が解散権を行使できない参議院によって、実質的に内閣の総辞職や閣僚の辞任が決せられることは妥当とはいえない。
しかしながら、参議院の意思として、問責決議が持つ政治的意味は極めて重く、問責を受けた内閣あるいは閣僚が、これを真摯かつ謙虚に受け止めなければならないことは当然である。
したがって、憲法の趣旨を踏まえつつ、参議院の意思たる問責決議を最大限尊重する方途について、過去の先例も参考に、各党各会派で検討を行う。

以 上


【用語解説】「沖縄振興一括交付金」は“普天間”とまったく無関係

2011年09月24日 13時09分35秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

 平成24年度予算(案)に、内閣府所管で、「沖縄振興一括交付金」という新しい歳出項目が、3000億円計上される見通しとなっています。この「沖縄振興一括交付金」について、新聞で「普天間移転がどうしたこうした」などと全く誤った記述が見られますので、きょうはこれについて説明します。

 マニフェストの中間検証と、マニフェストの部分的撤回による3党合意を実現した前民主党幹事長の岡田克也さんですが、実は、岡田さんが官僚たちの隙を巧妙に突いて、「骨抜きにされたマニフェストをなんとか原点に戻そう」という動きが、この「沖縄振興一括交付金」であり、基地問題はまったく関係ありません。仮にそうだったら普天間飛行場がある宜野湾市や、辺野古沖がある名護市に直接交付するはずで、県庁に交付するというのはねらいが違うからです。

 その前に、民主党は第1次野党期から、国から自治体への補助金(金も出すが、口も出す、さらに天下りも強要する)を削減し、地方一括交付金を創設しようとしていました。これは、県議経験もある玄葉光一郎さんらが「分権調査会長」として、取り組んできました。また、年金王子の異名を取った後、特別会計や天下りなどの問題に取り組んだ長妻昭さんも「HAT-KZ(ハットカズ、紐付き補助金など)」の撤廃を訴えてきました。

 マニフェストでは、行政刷新会議を創設し(実施済み)、紐付き補助金を廃止し、(義務教育と社会保障の国庫負担分は確保)、一括交付金として効率的に財源を活用すると同時に、補助金申請が不要になるので、その経費と人件費を削減できるとしていました。とくに天下り受け入れがなくなれば、相当額なムダづかい削減につながるところでした。

 霞が関では、全府省の省益が重なることは本来ありません。とくに、公共事業官庁である国交省と、査定官庁である財務省主計局の省益が重なるなどということがあるわけがありません。そこで、オール霞が関による骨抜きが行われたようで、平成23年度(今年度、2011年度)の当初予算には、内閣府に次のような予算事項ができました。

 
 このように「地域自主戦略推進費」として、4798億円がついています。次の欄に「0」とあるのは、前年度の予算計上が「0」だったということで、平成23年度のまったく新しい事業であることを意味しています。そして、その説明は、「地域の自由裁量により行う基盤整備等に要する経費に充てるための都道府県に対する交付金(地域自主戦略交付金)」ということで、「地域の自由裁量」だとか、「基盤整備等に要する経費」などと訳の分からないことを書いて、結局は従来の紐付き補助金をそれらしく衣替えしただけのことです。

 このマニフェストの骨抜きですが、実は霞が関は自ら落とし穴に落ちています。というのは、旧北海道開発庁は橋本行革で、国土交通省北海道局になりましたが、沖縄開発庁は1972年の創設以来、総理府ビルの中にあり、現在は内閣府沖縄振興局となっています。そのため、内閣府主管の予算には沖縄関連予算があります。これには確かに本土復帰と基地負担が大きく関連しています。

 ちなみに、私は地方一括交付金は政権交代(政権獲得)後は、総務省の所管になるものだと思い込んでいました。ただ、どこの所管になるかはマニフェストにも記載がなく、その辺が民主党マニフェストの象徴的に甘い所ですが、霞が関は内閣府に持ってくるという手段に出ました。

 そこを、岡田克也さんが「桶狭間」と気付いたようで、内閣府内の沖縄振興予算の紐を解いて、総額3000億円を一括交付金として、沖縄県庁に渡しきりにしなさい、というのが「沖縄振興一括交付金」です。名称にも「一括交付金」がわが国の予算書におそらく初めての単語として登場します。ですから、これは骨抜きにされたマニフェストの原点回帰です。北部振興策や普天間基地移設問題とはまったく意味が違います。

 一つ問題になりうるのは、今までは細かい事項を概算要求で積み上げていたのが、渡しきりの3000億円となると、次年度以降スパッと削られるではないかとという点。これは沖縄県庁が関係者に要望活動していけば、問題はないでしょう。それと野党時代からずっと懸案だった県庁から基礎自治体への配分はどうなるかということですが、この辺は、パイロット自治体としての沖縄県庁、仲井真弘多知事の力が試されるところです。

 とにかく、新聞が1行だけとはいえ、「普天間基地の移転問題もあり」と書くのがどうにも許せない気がします。沖縄問題の根は深いなと感じると同時に、岡田さんもマニフェストをなるべく守る方向性でやっているということを一人でも多くの有権者に知って欲しいし、それ以上に身内である民主党議員も気付いて欲しいと思います。

 官僚出身ということもあり、手の内を知っているということと、やはり攻撃型性格である岡田さんです。座右の銘は「大器晩成」、尊敬する人物は「織田信長」ということで、「大器晩成の織田信長」というのは相当すごいものがあります。この辺も政治はあうんの呼吸で、岡田克也さんが幹事長で、枝野幸男さんが官房長官(兼)沖縄・北方担当大臣、同期当選の大畠章宏・国土交通大臣と、政治改革仲間の鹿野道彦農相という取り合わせで端緒につきました。野田内閣では、川端達夫さんが総務大臣(兼)沖縄・北方担当大臣になりました。おそらく総務大臣と沖縄大臣の兼務は初めてですから、この人事には、岡田さんと野田佳彦首相の間で、なんらかのやりとりがあった可能性があります。官房長官は幹事長代理だった藤村修さん、国土交通大臣には政治改革仲間の前田武志さん、鹿野農相は再任しました。そして、通産省の15年先輩である仲井真弘多知事(昭和36年入省)という人事体制ができています。

 1972年の沖縄の本土復帰以来、国や総理府などの政策は、沖縄を本土並みにしようという姿勢で来ましたが、これからは沖縄が日本を引っ張る、沖縄ファーストの時代になります。他の46都道府県知事も参考にして、一括交付金化をめざしましょう。

 なお、2011年7月11日(月)の岡田さんの記者会見で、私などが次のような質問をしていますので、ご参考までお読み下さい。

http://www.dpj.or.jp/media/kanjicho_kaiken/20110711.html#05

○沖縄振興一括交付金について
 
【琉球新報・仲井間記者】先週末、官邸に沖縄振興の一括交付金について提言を持っていかれたが、沖縄に関しては高率補助制度が維持された形で交付金化されるのか、
それとも補助率は全国と同じような割合になって交付金化されるのか。
 
【幹事長】ちょっと質問のご趣旨がよくわからないのですが、一括交付金になるということは、補助金はありません。ですから補助率という概念もありません。
 
【フリーランス・宮崎記者】枝野官房長官には沖縄の「一括交付金」という言葉を使って提言された。マニフェストの中には「地方一括交付金」という言葉があったが、これが予算では内閣府の「地域自主戦略交付金」という違う名前になっている。沖縄は、交付金が多いからか、地方税の割合が低い。民主党の目指す地方一括交付金改革、最終的には税源移譲も考えておられると思うが、そういったことを沖縄の一括交付金の中に意味合いとして含めているか。
 
【幹事長】一括交付金化というのは、党のマニフェストでもうたった「地方主権」の大きな柱です。そういう中で沖縄を先行的なモデルとして位置づけてやっていこうということです
 沖縄の場合は、他と比べて違うところがいくつかありまして、例えば、既に内閣府に計上されているわけですね。もちろん、その根っこは各省庁にあるわけですが、一応、内閣府にそれをまとめて計上することをやっていると。しかも、それは補助金であるわけですが、今回はそれを交付金の形にして、各省庁の根を断ち切って内閣府だけで計上すると、総理・官房長官への申入書には書いておいたわけであります。これこそが本当の一括交付金であって、基本的にすべての補助金、そして国直轄事業も、基本的にはその一括交付金の中に含めるということでありますので、あとは沖縄県のほうで自由に判断していただいて予算配分していただくことになるわけです。
 他省庁から見ると自らの予算がその分減ってしまうわけで、いろいろな困難もあると思います。したがって、これは内閣の中でよく調整してもらう必要があると考えております。
 官房長官にはずいぶん前からお願いし、調整してまいりましたので、それから総理にも土曜日にお会いをして、あらためてお願いをいたしましたので、総理・官房長官のラインはしっかりとやっていただけると思いますが、今日、明日で農水大臣や国交大臣も、私、お訪ねして、それぞれ覚悟を決めてやってもらうようにお願いしたいと考えております。
 
【琉球新報・仲井間記者】これまで沖縄県で事業をする場合、高率補助ということで国が補助する割合が高かった。これから一括交付金化する際に、どういう基準で算出するのか。高率補助の数字をそのまま保証した形で交付金化の額も算出するのか。
 
【幹事長】あまり、高率補助か高率でないかは関係ないと思います。いずれにしても沖縄県は、今、国が沖縄県に支出している金額よりもさらに上乗せしてと言われているわけで、そういったことをどう考えるべきかということ。これは年末の予算を決める際に議論していくことだと思います。まずは枠組みをきちっと決める。概算のときにできるだけ一括交付金化の枠組みを決めてしまう。これは各省庁の概算要求の形にかかわる話ですので、沖縄に出していた分を各省庁の要求から落とすことにするかどうかという問題ですね。そこまでしっかりできれば、ある意味では道の半ばを超えたことになると思います。そして後は金額をどうするか、こういう問題だと思います。
 
【フリーランス・宮崎記者】あくまで提言ということだが、その先にあるのは税源移譲も考えているか。
 
【幹事長】税源移譲というのはその後の話ですから。もちろんわれわれ、一括交付金化、これは沖縄だけではなくて全体で一括交付金化し、やがては税源移譲ということですが、これはすぐにできるわけではありませんので、何段階かステップを踏みながら進めていくことになると思います。


岡田克也さん、予算委筆頭理事に2年9月ぶりに復帰 「ガソリン値下げ隊」の原点に戻れ 

2011年09月23日 22時44分55秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

[写真]民主党の衆院予算委員になった左上から時計回りに岡田克也さん(党最高顧問、筆頭理事)、渡部恒三さん(党最高顧問)、中野寛成さん、馬淵澄夫さん、逢坂誠二さん、村越祐民さん、川内博史さん、西村智奈美さん(理事)、中井洽さん(委員長)=岡田さんの画像はBS朝日、恒三さんの画像はNHKから。

【延長国会第1週は審議なしで、来週はラストウィークに】

 延長国会となった今週ですが、野田佳彦首相らの国連などニューヨーク出張があり、審議は一切ありませんでした。また、自民党が谷垣禎一・総裁(シャドウ首相)と中曽根弘文参議院議員会長をのぞく、すべての役員が9月30日あたりに改選となるので、他の役員が動きづらかったようです。公明党役員は来年10月(?)の第9回党大会まで続投です。ぜひ、自民党におかれては3党協議を担当した役員(石原伸晃幹事長、石破茂政調会長、実務者の鴨下一郎さん)のうち1人ないし2人は留任してほしいと考えます。

【「民主党の青春・ガソリン値下げ国会」の予算委筆頭理事だった岡田克也さんが2年9ヶ月ぶりに復帰】

 「民主党の青春」といわれる「ガソリン値下げ国会」で衆・予算委筆頭理事を務めた岡田克也さんが、8会期ぶり2年9月ぶりに復帰しました。もちろん、今度は与党側筆頭理事としてで、野党側筆頭理事の武部勤さんと「与党幹事長経験者」同士で火花をちらします。予算委筆頭理事は岡田さんが民主党代表で首相の野田佳彦さんに自ら申し出たとされます。

 さて、すでに報道が出ていますが、岡田さんはすでに委員名簿には入っていますが、正式には今国会初の委員会開催となる、26日(月)の衆・予算委の冒頭で、中井洽委員長が入閣した理事(通常国会の筆頭理事で、野田内閣で文部科学大臣になった中川正春さんら)の補欠を選任する際に、岡田さんらが理事になりことになります。ただ、すでに今国会召集前から与党側筆頭理事として、武部勤・野党側筆頭理事塩崎恭久理事公明党の富田茂之理事らと話し合いをしてきました。


[写真]武部勤・野党側筆頭理事

【与党としては重厚長大な布陣に】

 ただ、岡田筆頭理事だけ注目されているようですが、今回の予算委員、基本的には来年の通常国会での本予算(案)をめぐる攻防まで続投するものと思われますが、民主党は与党としては異例の重厚長大な布陣、スター揃いとなっています。

 まず、ことしの通常国会で「30数年ぶり」だという「審議ストップ無し」の本予算年度内通過をなしとげた中井洽さんが続投。そして、岡田筆頭理事を続投の武正公一次席理事と、新任の西村智奈美理事らが支えます。ちなみに岡田・武正・西村トリオは、外務省で大臣・副大臣・政務官としてトリオを組んで仲で、岡田さんはこういう人事をよくやります。

 そして、渡部恒三・最高顧問が政権交代前から引き続き、予算委員として最後列から腕組みをしてにらみをきかせます。そして国務大臣を退任したばかりの中野寛成さんが久しぶりに予算委員に。この2人は第60代・61代、第62代の副議長で、2人の在任期間は平成8年(1996年)秋の臨時国会から平成17年(2005年)の8月8日(郵政解散当日)までのおよそ10年弱になります。寛成さんは幹事長時代に岡田幹事長補佐とコンビを組んだ仲です。

 このほか、国交大臣をやった馬淵澄夫さん、地方財政のプロで首相補佐官・総務政務官をやった逢坂誠二さん、民主党を代表するスター議員になった元ガソリン値下げ隊長、川内博史さんが新しく加わりました。この3人は民主党が野党としては最後(第1次野党期としては最後)となった第171通常国会(菅直人筆頭理事、麻生政権交代解散で会期終了)以来の登板になります。内閣府政務官として金融庁をみていた和田隆志さん、野党時代は予算委員の常連で文科副大臣を経験した笹木竜三さんも理事を兼ねて入りました。政権交代後の「脱小沢」路線でハッキリ物を言い、予算委員会の質疑でも菅直人首相にハッキリと「脱小沢」を進言した村越祐民さんも続投します。とはいえ、ちょうど半分が1期生となり、その比率は上がりましたが、具体名は挙げませんが、いろいろな委員会で評価が高いとされる1期生が揃っています。

 長老に、私が「閣僚を退任して、委員会は懲罰委員とかですかね?」と聞いたところ、「どうだろう、たぶんその辺だろうと思うよ」とのことでしたが、予算委員として最前線に送られて驚いているでしょう。


[写真]武正公一、笹木竜三与党側理事。

 岡田さんは典型的な「何を考えているか分からない人」で、小沢一郎さんも岡田さんのこういう点を怖がっているようです。もともと岡田さんは、菅さん同様に、攻撃型の政治家です。あとで書きますが、平成9年の第140回国会では厚生委員会の「健康保険法改正案、閣法、衆院案、参院案鼎立(ていりつ)の150時間審議」という伝説の国会を野党側筆頭理事(次席理事は今は亡き山本孝史さん)として仕切っています。そして、私が国会傍聴記をはじめた第168臨時国会から~第170臨時国会では華の予算委員会で筆頭理事(次席理事は前原誠司さんの代表経験者コンビ)を務めていますが、この第169通常国会は、憲政史上に残り、民主党の政権交代の決定打となった「ガソリン値下げ国会」です。ガソリン値下げ法案(租税特別措置法案)の主戦場は、財金委、総務委となりますが、TV中継のある予算委ですでに2月の本予算審議からターゲットを絞って、道路特会など国交省を徹底的に攻撃し、2008年4月1日午前0時の「ガソリン値下げ」を実現しました。まさに「民主党の青春」です。

 このときは、「ガソリン値下げ隊長」の川内博史さんをさしかえで、TV入りの審議に起用し、国交省をめぐる丹念な調査を披露させました。ご存じのように、川内さんは幹事長時代に岡田克也さんと対立することになりますが、この第169国会の抜擢は「たいへん感謝している。さはさりながら小沢先生の問題は(以下略)と振り返っています。川内さんは第1次野党期最後の第171通常国会では初めから予算委員に起用されました。またガソリン値下げ国会のもう一つの主戦場、総務委員会では、「軽油取引税(地方税)の暫定税率撤廃」という闘いが繰り広げられましたが、その当時の1回生議員、逢坂さんの総務委での審議のようすが次の写真です。

 
[画像]ガソリン値下げ国会の衆・総務委で「つなぎ法案」に反対する逢坂誠二委員。

 いったい、これは誰なんだという感じですが、まぎれもなく逢坂さんです。逢坂さんも第171国会で、民主党1期生で唯一予算委員になり、さらに総括質疑に立ち、本会議で麻生内閣が組んだ本予算(案)の討論(反対)に立ちました。1期生議員が本予算案の討論に立ったのは、民主党史上、逢坂さんだけです。



【岡田1000本ノックのターゲットは?】

 このようなガソリン値下げ隊のことを思えば、民主党はどんな苦難でも乗り越えられます。私はマニフェストと言うよりも、あのときの民主党の姿こそが美しかったし、「政権交代の原点」「政権交代の魂」だと考えます。

 あの2008年冬から初夏を取り戻すために、攻撃型政治家・岡田克也が1000本ノックを浴びせます。
 

 まず、岡田さんの1000本ノックは野田内閣に向けられます。衆院の場合はどの委員会でも、民主党→国民新党(新党日本)→自民党→公明党→日本共産党→その他各党の順で質問が続きます。ですから、委員会の冒頭から、身内である民主党が閣僚に厳しい政策質問をすれば、後から出てくる自民党がスキャンダル攻めできないという戦術があるでしょう。なんでも、TV入り衆参予算委はすごくて、質問に立ったその瞬間から、議員事務所は電話が鳴りっぱなしになるそうですね。そして、民主党は2年間「身内に甘くだらしない政党」というイメージがこびりついてしまいました。岡田さんはこれも伝説の金融国会(第143秋の臨時国会、1998年)で、枝野幸男さんら政策新人類が出した法案で質問に立ち、「質問をする以上、同じ党とはいえ、聞くべきことはきちんと聞く、そういう姿勢で聞かせていただきたいと思います」として質問をしました。34歳の枝野・青年代議士は答弁で、「そういったことから公的管理等に入っていくというケースが、むしろ場合によっては、特に初期の段階は、金融再生委員会が立ち上がっても、そのしっかりとしたルールに基づいての検査というのが終わるまでの間というのは、もしかするとそういったケースの方が多いのかもしれないというふうに思っています」と、今の枝野大臣からは想像もできないフラフラの答弁となり、あとで、「岡田さんの質問は自民党より厳しかったですよ」と言われたそうです。(「枝野幸男さんは私が育てた」法案提出者としての答弁「チャンスどんどんいかして」岡田幹事長)。

 そして、3党合意の履行をチェックする。これに関しては、「岡田さんは自らを人質として予算委員会に差し出した」と言ってもいいでしょう。これは衆議院が現行憲法下の国会・衆議院となったときから、審議だけでなく、新しく「調査」をすることができるようになりました(日本国憲法第62条)。ですから、議案がないのに、委員会が開けるわけです。この調査をいかして、野田内閣が、①10月の第3次補正(子ども手当などの減額補正)→②10月上旬に明らかになる来年度予算の概算要求(高速無料化を国交省が要求していないかどうか)、③12月の本予算閣議決定、④来年4月(?)以降の高校無償化や農業者戸別所得補償の「政策検証」をステップ毎にチェックしていく。このことを「3党合意の誠実な履行」と呼ぶわけですが、これをやっていけば、野田内閣は衆参ねじれでも来年の通常国会末までは少なくとも政権を維持できます。もちろん、自民党は3党合意を「反故にしちゃうぞ」とゆさぶりをかけてきますが、ここは正確な理解がないとそのかけひきも厳しい。だから、岡田さんは自ら人質になったのです。また代表選で、小沢グループ候補が「3党合意白紙」を公約にして、第1回投票で1位になったことで、自民党と公明党に不信感が広がっています。自民党は役員改選です。その不安定さのなかで、安定を保つのは岡田さんにしかできません。まさに岡田さんがミッドフィルダーとして、3党協議のボールを、輿石東幹事長や前原誠司政調会長、そして、実務者、私は城島光力さんが最適だと思いますが、パスを回していって欲しいと思います。私が何を言っているのか分からない方は国会議員にもいると思いますが、これは「衆議院を解散してもどうにもならない憲政の重大危機」だという結論だけは、ぜひ共有して欲しいと思います。


 岡田1000本ノックは自民党にも向けられます。まっすぐにひたむきに、議員生活21年のうち16年間を「政権交代ある政治」に傾けてきた岡田さん。それはあるときには、狂気ともいえる信念でした。そこで、民主党がさきに役員改選を迎えたことから、重厚長大な布陣を引いたことで、自民党が9月30日から10月上旬に決定する、シャドウキャビネットの衆院側メンバーを大量に予算委員に引きずり出すという狙いもあるでしょう。英国のQT(党首討論)では、政局にもよりますが、シャドウ首相は国際情勢についてちょっと質問して、後は、日本でもお決まりの「早く解散したらどうか」と首相に迫って、あとは若手に譲っています。しかし、日本のQTは党首だけです。その辺は、以前から花形の予算委員会に自民党のシャドウキャビネットを前列にそろえて、競い合う。第46回衆院選まで通常国会はあと2回しかありません。その一方、自民党のシャドウ大臣は6月2日に2人辞めていますが、シャドウ防衛大臣もどういうわけか数日後に補充され、自民党の危機管理意識にがっかりする場面がありました。しかし、3ヶ月経っても、シャドウ行革・公務員制度改革担当大臣は不在なんですね。これではいけません。もちろん、政府も自民党シャドウ閣僚に月5万円でいいから法律にもとづく手当をだす制度改正をしたらいいと思うのですが、これは公明党さんらが怒るかも知れませんから、現時点では無理。だったら、私も言いたい。「自民党シャドウキャビネット、(第179?臨時国会から)予算委員に出てこいや~~」



 第169通常国会(2008年1月召集、福田康夫内閣)といえば、「ガソリン値下げ国会」あるいは道路国会、特別会計国会です。長年、誰も知らなかった「道路特定財源」の実態が野党・民主党のこつこつとていねいな調べと、自民党が得意とした「時限立法」であるガソリン暫定税率法案(租税特別措置法案)の延長に自ら脚を絡めて転倒した、まさに民主党黎明期(第1次野党期)の最大の名場面です。このとき、川内さんは国交委員として、またガソリン値下げ隊長として、国会内外で八面六臂の大活躍をしましたが、その川内さんはこの国会で岡田筆頭理事に2回、TV入り審議でさしかえで質問者に抜擢されています。

 2月12日のデビュー戦では「川内でございます。総理、初めて総理とは議論をさせていただきます。よろしくお願いを申し上げます。各閣僚の皆様方もどうぞよろしくお願いを申し上げます。道路のことについて聞かせていただくわけでございますけれども、まずその前に、総理、総理大臣としてではなく個人として、今十万円お小遣いがあるとすれば、総理は何に使おうかなというふうにお考えになられますか、持っているとすれば。(福田内閣総理大臣「きょうじゅうにですか」と呼ぶ)いや、きょうじゅうじゃなくてもいいです。何に使おうか」とのかわいらしい質問から切り出しています。しかし、「私、昭和二十八年当時の、田中角栄先生が当時のガソリン税に関して、特定財源にしていくべきであるということを議員立法されたときの議事録なども全部読ませていただきました」とも述べています。



 このときは、テレビ桟敷では「川内Who?」というのが実感だったでしょうが、今では民主党を代表するスター政治家になっています。またよく調べるということでは、衆院科学技術・イノベーション特別委員会として、東京電力の「シビアアクシデントの手順書」を取り寄せる上で、すっぽんのような調査能力を発揮しており、予算委員としても期待できます。

 しかし、政権交代後、なぜか川内さんは、小沢グループ入りし、実力があるので、あっという間に「代貸し」(専務クラス)になってしまいました。



 岡田さんは幹事長時代、常任幹事を務める川内さんのことを気にして、幹事長室に呼び出し、「李下に冠を正さずという言葉があるんだよ」と注意し、その後の行動が変わったことがありました。しかし、それでも小沢グループとしての行動を止めない川内(氏)には、ついに岡田幹事長も堪忍袋の緒が切れて、「あいつはばかだ」と周囲に語ったとされています。このことを聞いた、川内さんは気にしていて、「予算委員になっても、おそらく(本予算審議が佳境を迎え、委員の披露がピークを迎える)来年2月中旬に30分くらい(TV入りのない一般的質疑で)質問するだけじゃないかな」としていますが、岡田さんは川内さんに1000本ノックを浴びせる方針です。一方、これも意外でしょうが岡田さんにはよくあることですが、前回の筆頭理事当時は、小沢グループの当時2回生だった小宮山泰子さん、松木謙公さんらにも一般的質疑でさしかえで登場させています。ときに松木さんは岡田代表時代の国対副委員長でありながら、本会議で2回造反して役職を解かれた経緯がありましたが、2人とも第45回衆院選で小選挙区で議席をとれそうだという情勢分析が出ていたことから、起用したんだと考えます。ですから、1期生もチャンスがあります。

【岡田筆頭理事は伝説の国会になる】

 上の方に書きましたが、平成9年の第140回通常国会の厚生委員会では、健康保険法改正案150時間審議という伝説の国会となりました。このときのメンバーですが、委員長は町村信孝さん、厚相は小泉純一郎さん、与党側筆頭理事が津島雄二・元厚相、野党側が岡田理事、山本孝史理事でした。ご存じのように、町村さんは通産省時代の直属の上司ですし、小泉厚相はこの7年後の郵政解散で首相の座を争って対決します。

 ただ、この6月13日のしめくくり質疑ですが、岡田さんは「新進党の岡田克也でございます。まず大臣、大変お疲れさまでございます。百五十時間という極めて長い時間の審議に、我々も大変勉強させていただきましたが、大臣の方も、一つ参議院もありますし、さぞかしお疲れのことだと思います(略)まず、大臣にお伺いしたいと思います。(略)政府案と衆議院の改正案と今回の参議院の案と三つあるわけですが」として長々と経緯を説明します。もちろん後世、議事録を読む身としてはありがたい。ただ、岡田さんは経緯の説明の後、小泉厚相に対して、「大臣、この三つの中でどれが一番いいというふうにお思いでしょうか」と聞き、小泉厚相から「政府案が一番よかったのじゃないかなと思っております」とワンフレーズで返答されます。政府案(閣法原案)、衆院修正案、参院修正案があれば、大臣が政府案と答えるのはある意味当たり前のようにも思えますが、この「政府案が一番よかったのじゃないかなと思っております」のワンフレーズというのは、この7年後の第44回総選挙でおとずれる「9・11」の地獄を暗示しています。

 とはいえ、この厚生委員会のメンバーには、坂口力さん、鴨下一郎さんと、今回の3党合意の実務者協議のメンバー3人のうち2人が入っていますし、山本孝史さん、枝野幸男さん、さらに安倍晋三さんらも委員に名を連ねています。今の厚生労働委員会も勤務時間が長い委員会ですが、今は法案だらけで、一つの法案に150時間というのは、少し意味合いが違います。また、津島雄二・与党側筆頭理事は、岡田さんが青年代議士として社会労働委員会(畑英次郎委員長)で、最初に質問したときの大臣です。こういう風に、岡田さんはグループには入っていませんが、委員会で仲間をつくってきたんですね。こういう仲間は、日常の国会活動でできてくるから、だから私は日ごろから、赤坂で飲んでいても意味がない、と強調しているのです。もちろん、委員会の第2ラウンドならいいですが。

 これまで「下町の太陽」ブログをやっていると、予算委員会よりも、他の常任委員会を優先するような玄人っぽいことを、自分の気の向くままにやってきましたが、今回はご紹介した以外にも面識のある議員が予算委員になっており、これから来年にかけては予算委員会が第一、ということになりそうです。私と仲が良い議員は出世する法則発動です。私は2月の(月)~(金)までの朝9時~夕方5時半までみっちりと衆院予算委を聞いた後の、国会議事堂の夕暮れのさみしい暗さと風の冷たさが好きです。第171通常国会のしめくくり総括質疑の前日かに、「あすで野党としては最後の質問になりそうですね?」と言った議員が、ちょっとだけ考えて、言葉を言わずにこっと笑顔で返してくれました。選挙の鉄則ですから、総選挙前に「野党で最後=与党になる=選挙に勝つ」などということは禁句です。民主党が失ったのは初心もあるけど、あのにこっとした笑顔の心の余裕だと思います。そう言う意味では、藤村さんもいいですが、例えば北橋健治さんという官房長官候補もいたわけだし、河村たかしさんが「KY」に緊張をほぐす発言をしてくれたり、松沢成文さんがパフォーマンスでぐいぐいひっぱってくれたかもしれません。こういったお坊ちゃん議員を民主党は異物のように排除して、首長に転出していってしまいました。その点、川内さんは、鹿児島1区で「二世議員マーク」をつけられていますが、これは奥さんのおじいさんが静岡県・熱海選出の元自民党代議士で、全国旅館業組合の理事長を務めた元運輸政務次官ということで、二世議員マーク外してもらえばいいと思うのですが、本人は意に介さず。こういうお坊ちゃん議員のKYぶりが必要なんですよ。岡田さんだって、けっこう抜けています。ただし志は鉄より固い。

 私も、これからの1年間は、しっかりと衆・予算委を抑えないといけません。自分自身、これからの1年間、どうやって時間と金銭的な自由度をしっかりと確保するか、いろいろと考えるお彼岸です。


野田内閣への各党代表質問がおもしろくなかったのはなぜか?

2011年09月19日 12時47分07秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

[画像]答弁に立つ中川正春・文部科学大臣、2011年9月16日、参院本会議。

 9月13日(火)召集の第178臨時国会は、野田佳彦首相の所信表明演説に対する各党代表質問が行われました。このほかの審議としては、衆参本会議で、入閣により欠けたり、横滑りなどのために辞表を出して空席となった委員長ポストの補充の選挙(全会一致により議長が指名)が行われました。特別委員長は委員会を開き、委員の互選で委員長を選びました。このほかは、災害対策特別委員会が開かれたほか、QT(党首討論)をやる衆参の国会基本政策委員会が理事を交代する手続きをしました。法案の審議はありませんでした。なお、「3党合意を白紙にする」という発言をした海江田万里(氏)があろうことか、衆・財務金融委員長になったのは、民主党国対の相変わらずの危機管理意識の低さにあぜんとします。3党合意に関係してくる、財金、厚労、文科、国交、農水の5つの委員会では、「海江田委員長」はあり得ないと考えます。

 さて質問通告日をおかずに、所信表明から各党代表質問まで4日間に圧縮して行いましたが、それによるトラブルは特段なかったように思えます。もちろん野田首相の答弁が安全運転だったこともあります。今回の異例の日程で初めて気付きましたが、衆院と違って、参院はいずれにしろ、1日以上空くわけですから、参院からみれば質問通告日はあまり関係ない。この辺が、与党第1党幹事長に初めて参議院議員の輿石東さんが就き、野党・参院自民党も含めて参議院が力を持つ時代になっていることの象徴の一つだといえるかもしれません。

 見出しにつけたように、私はこれほど各党代表質問を「つまらなかった」と感じたのは初めてです。それは「新味がない」ということです。新聞記者時代の“見出しが立たない話”という意味合いでつまらなかったという面もありますが、同じように感じた方も多かったと考えます。

 衆・自民党は2年前の秋の臨時国会(173)での鳩山由紀夫首相に対して谷垣禎一総裁・シャドウ首相と当選3回・40歳代(2年前は西村康稔(にしむら・やすとし)さん=兵庫8区、今回は古川禎久(ふるかわ・よしひさ)さん=宮崎3区)を起用しました。新首相の所信表明に対しては、総裁を立てないといけないということがあるのでしょう。2年前の西村さんは、翌日のラジオ・テレビで「緊張してガチガチでしたねえ」とずいぶん話題になりましたが、今回の古川さんもガチガチでしたが、そのことが話題になることはなかったようです。これは自民党がNHK中継入りの本会議に「ガチガチ」の若手を演壇に上げても、違和感を感じない、野党らしさ(当ブログにおいては良い意味合いの言葉)が出てきたからだと思います。自民党は政権交代に近づいています。2年前は、西村さんの「あの過酷な夏(第45回衆院選)の悔しさをバネに責任ある野党として自民党の再生を図っていきます」というシメの言葉に、私の半生をかけた政権交代ある二大政党デモクラシーが到来したんだ、と一般傍聴席で身震いしました。その後、多くの方が「事業仕分け」「日航倒産」「原発爆発」などで政権交代ある政治の必要性を理解していただいたと自負しております。ただ、今回の古川さんはタカ派色が強かったですね。政権交代に向けた自民党による民主党との差別化ということでしょうが、多少行きすぎている気がします。政権交代後に日本外交にさざ波が立たないかと懸念します。また古川さんが演説したような国家ビジョンのことを、最近の自民党は「保守」と呼んでいます。わが国では保守合同以来の半世紀、「保守」とは革新の対義語で、「自由主義」を意味し、「共産・社会主義」を敵対する機能を持った言葉だったと認識しています。ですからわが国において、「保守」とは「自由主義・反共」であって、言ってみれば、「自民党は日本を守ります」という当たり前の意味です。自民党お得意の言葉のマジックではなく、なにか言い換え語を見つけてくれることを希望したいと考えます。今月末には新しいシャドウ・キャビネットも誕生します。

 衆参とも自民党の質問は、すべて総理に答弁を求めており、再質問、再々質問がありませんでした。これは自民党が質問に立った時点では「4日間で閉会」ということになっていましたから、わざと「一問一答の退屈な質問」を演出したのだと考えます。所信表明演説原稿と違って、質問はその場のアドリブでやってもいいわけで、幹事長の石原伸晃さんが各大臣に質問させ、再質問で、嫌みたっぷりにやれば、再答弁はかなり苦しいものになったかもしれません。このほか、民主党の輿石さんが3党合意に反するようなことを言うハプニングを野田首相(民主党代表)が答弁で修正したり、公明党の井上義久幹事長が衆院では東北復興を中心に質問しながら、山口那津男代表が和歌山・奈良など紀伊半島豪雨の現地視察にもとづく質問・提案を主題にするなどの「各党らしさ」を見せる場面がありました。

 さて表題の各党代表質問がつまらなかった最大の理由は、やはり「野田内閣はあくまでも菅内閣の後継政権だ」という、いったん忘れかけていた事実に戻らざるを得ません。社会保障と税の一体改革、復興債の償還財源などすべては菅内閣の踏襲です。野田さんが野党時代から練ってきた「内閣府宇宙庁創設で日本の中小企業の技術力を底上げする」という趣旨の構想は、所信表明にはありましたが、各党代表質問では突っ込んでもらえませんでした。

 また、野田経済理論の「分厚い中間層の復活」ですが、これはよく聞くとおかしい。私は野田さんは経済オンチだと考えています。この「分厚い中間層の復活」ですが、日本社会(経済)の特徴であった「1億総中流」から小泉構造改革に前後して、ワーキングプアなど低所得層に転落してしまった人に向けたメッセージだと考えられます、現在高所得層に向かって「中間層になれ」と言うとは考えられないからです。しかし、消費税の重税感は低所得層の方が強いわけです。安定した年金、子ども手当などの現金の直接投入で、低所得層を中間層に引き上げるわけですが、その財源は消費増税というのが、税と社会保障の一体改革です。しかし、ミクロとしては、「分厚い中間層の復活」=「低所得層を中間層に戻す、引き上げる」ために、消費税を増税するというのは矛盾した財政・経済理論です。ちなみに、野田さんは、代表選(両院議員総会)の演説ではこれを「中産階級」と言い間違えていました。階層間の移動については、世界どこの国でも課題となっています。階層間の移動のある社会・経済にしなければいけません。ただ、低所得層が起業して高所得層になるということは、必ずしも難しいことでなく、例えば、地域においてオンリーワンの介護に関する会社を立ち上げれば、とくに目新しい技術を打ち出さなくても、制度融資を活用して、社長は一気に高所得層になることは、わが国ではさほど難しくありません。低所得層から高所得層になるような人材は全員が海外に流出してしまう、というようなことはありません。ただ、経済発展の理論から言って、中間層が壊れて、低所得層になったものをどうやって中間層に戻すのか? その財政理論は分からなくもないですが、成長(経済)理論は分からない。そうなると、菅直人さんが首相就任直後に「第3の道」という“遅れてきたケインジアン”小野善康さんの理論を振りかざして、参院選に負けるとヒトコトも言わなったのを思い出します。「分厚い中間層の復活」と「第3の道」は似ている面があるように感じられます。

 総理の答弁は多岐にわたるので、誰が書いているかというのはまったく問題ではなく、それをいかにして「政治家・野田佳彦」としてもっともらしく言えるかが、「代議士」であり、その頂点である総理です。ただ、早くもちょっと分かっていないのかなあという面が出てきました。これはいまさらどうにもなりません。ただ、経済失政で政権を追われた首相はいますが、経済オンチで政権を追われた首相はいないように思いますので大丈夫だと思います。いずれにしろ、社会保障と税の一体改革は待ったなし、次期通常国会に法案を提出し、審議すべきです。ただ、復興基本法に基づく復興債の償還財源に関する議論を新聞や政府外議員が「復興増税」と表現することや、第3次補正の財源確保の議論がごっちゃごちゃになっていることを危惧しています。民主党はいつもこうです。資料を読む前に、流れを読んで欲しい。それと、「民主党には綱領がある」との初めての解釈に気付いたのが誰なのか? 民主党関係者ならいいのですが、ひょっとした財務事務官がホームページを見ていて気付いた、なんてこともあるかもしれません。知りたいところですが、正直、こういうのは取材してもかなり真実は見えてきません。

 で、野田内閣が菅内閣の後継政権だという当たり前の現実に気付いたときに、なんで菅内閣は総辞職しなければいけなかったのか、いまだに納得できません。「政治は不条理なもの」。それは私は十分に分かっているつもりです。しかし、2月17日の会派離脱騒動による日本国憲法59条の3分の2ルールの空文化、6月1日の内閣不信任案提出時に小沢グループ71議員が集まってしまったこと、6月2日の代議士会をNHKが生中継した、おそらく民主党結党以来代議会がテレビ生中継になったのはあれが初めてでしょうが、代議士会や本会議をすべてNHKが生中継したこと。6月2日夕方の記者会見で菅さんが調子に乗ってはしゃいだ振る舞いを見せたことは、この人らしいし、岡田克也さんが8月になってから幹事長会見で「その後の振るまいがまずかった」と指摘していますし、私もそう思います。菅さんは野党経験が長くて、朝日新聞夕刊に「首相、辞任表明」と横見出しが立ってしまったら、内閣不信任案が否決されたり、首相続投を表明しても、官邸を訪れる人が減りレームダックになるという権力の要諦を知らなかったようです。

 総理がある一定期間辞められないルールづくりが必要です。まずは二大政党が党首の任期を「次の総選挙の結果が出るまで」に延長することが必要です。

 屋外は残暑です。でも、国会の中を見ていると、当初予算案や日切れ法案がない秋の臨時国会らしいクールで精緻な議論があり、また、傍聴する側も、来年の通常国会や当初予算、次の選挙、この国のかたちといった未来にも思いを馳せる。国会歳時記はすっかり秋めいてきました。


第178臨時国会は2011年9月30日まで(?)延長へ、きょう議決 「両院合同調査会法」の成立も

2011年09月16日 04時47分40秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

[画像]安住淳・財務大臣、2011年9月15日のみんなの党・渡辺喜美代表への答弁、衆議院本会議

 やれやれホッとしました。

 第178臨時国会は会期末のきょう(2011年9月16日)、与野党幹事長会談が開かれ、会期を9月30日(金)ごろまでの14日間程度延長することを議決する見通しです。延長は会期末前日に決まることが多いのですが、第177通常国会と同じく最終日に延長が決まるという慌ただしい展開が続きます。国会法12条では、臨時国会は「再延長」も可能です。

 来週は月曜日と金曜日が祝日で、その間に野田佳彦首相の米国出張(国連年次総会出席とバラク・オバマ米大統領との会談)があり、再来週に衆参予算委員会が2日間ずつ開かれる運びになると思われます。

 国会会期については、第177国会の会期末前日の8月30日に首班指名をうけた野田佳彦首相が内閣の陣立てをしっかり整えた上で、所信表明と代表演説にのぞむため、2週間あけて召集する、という「守り」をしっかりと固めたものですが、党執行部が「4日間」という極端に短い会期を決定したことで、「守り」が「逃げ」になってしまい、見直しが必要となっていました。

 法案ですが、復興財源にあがっている日本郵政株式会社の政府保有株(現在は100%保有)の売却を可能にする「郵政改革関連法案(分社再統合法案)」(第176国会閣法1~3号)が審議される可能性があります。ただ、日程は厳しいのではないでしょうか。私のこのブログで以前に、郵政株売却には「日本郵政株売却一時凍結法」の廃止が必要だとの趣旨のことを書きましたが、郵政改革法が成立すれば売却は可能になるようです。

 自民党が民主党の安住淳・(前)国対委員長と次期臨時国会での結論を約束している、「二重ローン対策法案(株式会社東日本大震災事業者事業者再生支援機構法案)」(参院自民党・片山さつきさんら提出、第177国会参法12号、参院で可決、衆・復興特委で継続審査)、「震災による私学の建物などの復旧に対する特別措置法案」(参院自民党・橋本聖子さんら提出、177参法21、参院で可決、衆院文科委で継続審査)の審議を自民党が要求してくるのは当然です。二重ローン法案は東北でシンポジウムを開催し、私学の建物復旧の特別措置法案」はお盆休みの国会で審議するなど参院自民党は力を入れています。

 そして、もう一つ、衆院自民党の塩崎恭久さんらが提出した「(両院合同特別調査会による)東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法案」(177衆法24)を衆院議運委、本会議で速やかに可決すべきではないでしょうか。

 というのは、ご存じの通り、日本の国会は、参院で野党が過半数を持ちながら、衆院で与党が3分の2を下回るという日本国憲法第60条(前者)、同第59条(後者)が想定していない事態になっています。これは、憲法が「空白状態」になっているともいえ、行政府(自衛隊、警察含む)、裁判所は動いているからいいのですが、国権の最高機関である国会については、「さながらクーデターで憲法停止」とさほど変わらない事態に追い込まれています。

 これに関して、民主党衆院議員の岡田克也さんは、両院協議会に関する国会法の改正などを考えていましたが、民主党幹事長として国会運営の最高責任者だった1年間で、前半は小沢問題、後半は2・17ショック(小沢グループ16人の会派離脱による憲法59条空文化)による3党合意の忙殺されてしまいました。もちろん3党合意で、自民党(富樫)、公明党(番卒)の情けで安宅の関を乗り越えられたので、なかなか水くさい話もできません。そこで執行部が変わったのはチャンスですから、1947年(昭和22年)の制定以来一度も改正していない両院協議会規程や、国会法の関連部分の改正に向けた話し合いの場をつくるべきです。そうでないと、何度も言及しているように「解散しても事態はどうにもならない」異常事態は、任期満了で第46回総選挙を2013年夏に迎えても、参院の非改選議席があるので、2016年夏まで「国会における憲法の空白」が続く可能性があります。それでは国が死にます。

 そのための手段として、両院合同特別調査会というのは、与野党衆参とも「国会支持率」をあげる上での良い訓練になりますから、まず手始めにやってほしいと考えます。3党合意の誠実な履行の「枠組み補強」の一助にもなるでしょう。

 正式な会期の延長幅は、きょうの衆院本会議で決まります。

 


野田佳彦さんと輿石東さんがけん制しあう事態に 野田首相、まずは寝技で押さえ込む

2011年09月15日 11時56分25秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

【参院本会議 2011年9月15日(木)】

 参院本会議でも代表質問が行われましたが、この中で、輿石東さんと野田佳彦さんがけん制しあう異例の質疑応答となり、「挙党一致」「ノーサイド」への懸念がいきなり浮上しました。とりあえず野田総理・代表が、柔道の寝技でねばり強く押さえ込んだ格好となりましたが、衆参民主党議員は、しっかりと党代表だけでなく、日本国政府・行政府の代表である野田首相をしっかりと声を出しながら支えなければいけません。

 まず、輿石さんは、「会派を代表して質問します」と述べました。これは、第一会派ながら過半数に及ばない「民主党・新緑風会」をまとめ上げていることが、本人の権力源・政治的資源であることを意識した発言です。ところが、野田首相は、のっけから、「民主党を代表した輿石議員のご質問にお答えします」と述べ、両者のけん制から始まりました。

 また、輿石さんは、「国民の生活が第一。は民主党の基本理念」「マニフェストは必ず実現するというのが政権交代の原点であり、優先順位を変えてもマニフェストの理念は変わらない」として、3党合意に反する発言をしました。また、「国民の生活が第一。」という小沢一郎さんらの勢力に近いことを自ら表明するキーワードを使いました。

 これに対して、野田さんは「マニフェストの実現は国民との約束、現下の厳しい情勢の元でも、その理念は守っていかなければならない」としながら、8月26日に岡田克也幹事長が退任直前に出した「マニフェストの中間検証」に言及し、「輿石議員も民主党マニフェスト検証委員会の副委員長をされた」として、あたかも首に鈴をつけるかのような念押しをしました。

 そのうえで、「マニフェストについても、自民党、公明党の3党合意」に沿った政権運営ができるよう「輿石議員にもご協力いただきたい」としました。

 野田さんは代表選で「学生時代の柔道部でも、政治家になった今でも寝技は苦手です」と語っていましたが、とりあえず寝技でねじ伏せた格好です。

 自民党時代も、福田赳夫内閣以降は、「総・幹分離」といって、総理とは別の派閥の実力者が党幹事長についていましたから、衆院本会議などで党幹事長が総理に厳しい代表質問をすることはよくありました。しかし、その内容は「最近の総理を見ていると、いささか苦言を呈さざるを得ない面がある」といった感じで、そうやって軌道修正しながら、総理、そして自民党政権を守っていた感じがします。

 それに対して、きょうの輿石さんの発言は、たんによく3党合意を理解していないのではないかと思われる面があります。そもそも輿石さんは政務三役の経験がありません。また、参院議員会長としても、その日の本会議にかかる法案名がいえず、「なんだっけ?」と会派の副会長・幹事長らに聞く姿が散見されました。おそらく半分以上、法案の名前は言えないことが多いと思います。

 これを見ていると、野田さんは代表選のときに、何らかの協力条件として「輿石幹事長」を提示されたり、提示したりしていたのではないかと推測されます。そのような報道はすでにあります。

 平成になって最初の宇野内閣の参院選以来、参議院では過半数を持つ会派はありません。自公政権時代も、自民党と公明党は統一会派を組んだことはありません。例えば、平成9年(1997年)ごろに「参議院の天皇」と呼ばれていた村上正邦・自民党参議院議員会長なんかは、ふらりとひとりで首相官邸にきて、総理と数分話して帰ることがしばしばありました。どのような内容かというと、例えば「ペルー公邸人質事件が解決していないのに、首相主催の桜を見る会をやっている場合じゃないだろ」と、前日の橋本龍太郎首相の日程に、悪態をついて、それで帰る。橋本首相は自民党総裁でも、村上さんの機嫌を損ねると、参院自民党どころか、他の参院会派もそっぽを向いて法案が通らなくなるので、首相秘書官も村上さんのアポイントは必ず入れなければならなかったようです。例えば、与党参院議員会長には以前からずっと、SPが1人以上ついていますが、そのことも衆院議員だと知らない人も多いようです。そういった参議院特有の閉鎖性を、民主党幹事長として、党全体に広げることで、幹事長である自分への権力集中をはかろうと、輿石さんがしているように、私には思えます。

 もう決まったのですからしかたないですが、とにかく、情報管理の徹底がされても、「見て見ぬふりをする」与党議員は、衆議院だろうが、参議院だろうが、バッジを外して欲しいと思います。

 とにもかくにも、3党合意への正しい理解が必要です。くどくても、こうやって幹事長が分かっていないようすが散見されるのですから、何度でもしつこく書きます。


野党7党、会期28日間延長を議長にきょう申し入れ 拒否なら「3党合意」白紙の危機も

2011年09月15日 09時49分50秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

 輿石東幹事長、平野博文国対委員長ら野田民主党執行部が「3党合意」を白紙に戻されかねない重大危機をむかえつつあります。日本国憲法59条は「衆院の3分の2ルール」、60条は「予算の衆院優越ルール」を定めています。しかし、衆院で与党が過半数でありながら3分の2に届かず、参院では野党(衆院少数派)が過半数を持っている場合についての規定は日本国憲法にはなく、わが国は、内閣が提出した予算案をのぞく、すべての法案(予算関連法案、改正案、新法法案、条約承認案、国会同意人事案など)が決まらないという憲政史上最大の空白、すきまを迎えています。これを補う、事実上憲法に次ぐルールが「3党合意」になりますが、これが白紙になると、日本国憲法第7条により衆議院を解散しても、民主党政権になろうと自民党政権になろうと引き続き何も決まらないという極めて重大な局面にあります。

 さて、野田佳彦さんが2011年8月30日(火)に国会に指名されてから、臨時国会の召集までには若干の時間をおくべきだと私も主張して、実際には、9月13日(火)召集ということで時間がとれました。与党は守りですからそれで良いのですが、「会期が4日間」では「守り」ではなく「逃げ」になります。

 これに反発した公明党、自民党など野党7党は14日午前に国対委員長らが話し合い、きょうにも「会期を10月14日(金)までの28日間延長する」ことを横路孝弘・衆議院議長に申し入れることを決めました。臨時国会は2回延長が可能で、国会法により衆議院の院議が優先されます。

 この「10月14日まで」というのは何ともいやらしい提案ですので、交渉の余地がありますが、少なくとも民主党は延長の提案にのり、妥協案で折り合うべきではないでしょうか。なぜいらやしい提案かというと、政府は10月中旬~下旬に第3次補正予算案を国会に提出する方針ですので、10月14日に会期末が来れば、野党は「補正を早く出せ」と言いながら閉会するか、ないしは、与党が「第3次補正の審議をお願いしたい」として1週間~2週間程度の会期再延長をお願いすることになり、国会が10月末までは開かれていることになり、野党としては露出が高まる上、前国会から積み残しの3つの議員立法の審議も可能です。

 公明党の漆原良夫・国対委員長は、会期を4日間としたことについて、「野田内閣の逃げ回る姿勢はよくない」としました。3党合意により部分的に金額が浮いた「子ども手当及び児童手当勘定」の浮いた額の第3次補正予算案での減額補正などについて3党協議が必要となりつつある時期を迎えますが、記者団の「(会期の問題が)3党協議に影響が及ぶか」との質問に漆原さんは「当然そうなる」と述べました。公明新聞が伝えています。

 一方、日経新聞によると、平野国対委員長は「国対の話(会期幅)と3党合意がリンクするとは思わなかった」と述べたそうですが、漆原さんは「もう遅い」と答え、公明党は輿石執行部について「お願いは口だけで、姿勢が伴っていない」としているそうです。これに先立つ、平野さんと、自民党の逢沢一郎国対委員長、漆原さんとの会談では、平野さんは「3党合意のキックオフをしたい。まずは幹事長レベルで会談したい」と語ったそうで、ノーサイドだか、キックオフだか知りませんが、ヒジョーに高飛車な態度に感じられます。ただ、公明党は「予算委員会の日程を含め、今月末までの延長に応じれば状況は変わる」との認識がある、と日経新聞は書いています。

 政権交代後、民主党は毎回、秋の臨時国会・特別国会で失敗しています。昨年は衆参予算委員会の集中審議をくり返したうえで、補正予算を組む作戦に出ましたが、野党の露出が高まるばかり。そして、補正予算の閣議決定前に公明党に対して、要望の予算への実現度合についてのペーパーを出したところ、就任直後で張り切っていた石井啓一政調会長に「実現したという項目を予算書で見たら、5000万円しかついていない」と見抜かれ、公明党が反対に回ってしまい、参院で否決、憲法60条で衆院の院議が優先されるという事態になり、結局、西田昌司さんの知名度が上がっただけの臨時国会になってしまい、会期終了とともに、鉢呂吉雄・国会対策委員長が更迭されました。それを第177通常国会で、驚異的に粘りで安住淳国対委員長が建て直したのですから、虚心坦懐に、「輿石」とか「平野」ではなく、「民主党幹事長」「民主党国会対策委員長」という官職として働かなくてはなりません。虚心坦懐さが足りません。民主党は一事が万事、腰が高い。なんでこれで当選してきたのか不思議でなりません。

 映画『小説吉田学校』を見ていたら、まあたびたび繰り返してみているのですが、衆院に初当選した池田勇人と佐藤栄作が「また吉田学校で一緒だな。まあ、万事、阿吽の呼吸でやろうや」と握手するシーンがありました。こういう阿吽の呼吸があまりにもできない民主党。それは、3党合意の文書を正確に理解できていないからです。自民党や公明党も責任野党として、3党合意をあえて反故にしようとはしないはずです。小泉政権時代の社会保障3党合意とは意味が違います。憲法が空白になっているのです。しかし、それを使ってゆさぶってくることは当然に予想されることです。そのゆさぶりに対して、文書に対する理解不足で、政権を壊したら、どんなにもったないことでしょうか。ちなみに「大連立」の話がありましたが、あれも与野党当事者同士の「阿吽の呼吸」であって、本人たちだってホントウに大連立をしようなんて考えていなかったでしょう。大連立をすると言っておいて、3党合意をしっかり固めるのが狙いだったのです。

 9月26日週に衆参予算委員会による今年度予算の執行調査を2日間ずつやり、9月29日(木)か、9月30日(金)を会期末とする会期延長をすべきです。


野田首相(民主党代表)「民主党綱領はある」との新解釈 すべて一人で答弁のスタート 各党代表質問

2011年09月14日 15時53分47秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

[画像]野田佳彦首相の所信表明演説に対する各党代表質問に立った谷垣禎一シャドウ首相(自民党総裁)、衆議院インターネット審議中継から。

【衆院本会議 2011年9月14日(水) 各党代表質問】

 野田佳彦首相の所信表明演説に対する各党代表質問の1日目として、自民党総裁でシャドウ首相の谷垣禎一さんと3期生の古川禎久(ふるかわ・よしひさ)さん=宮崎3区=らが質問しました。これに対して、野田佳彦首相はすべての質問をひとりで答弁しました。関係閣僚が一切答弁せず、首相ひとりがすべて答えるのは極めて異例のことです。答弁者を首相ひとりに絞ることで、答弁ミスなどがないよう、慎重運転する姿勢が見えました。

 野田首相は、谷垣さんから「東アジア共同体構想」について質された部分への答弁で、「私の政権では大きな構想よりも、震災対応などの当面の懸案を解決していく」として、構想そのものは維持しながらも、諸課題を処理する内閣であることを強調しました。

 谷垣さんは「代表選で3党合意を白紙に戻すかのような候補がいた」と海江田万里候補を擁立した小沢グループを暗に批判したうえで、「その候補者は相当数の得票を得て、投票した人が政権(政務三役・党幹部)入りしている」と指摘し、「いくら野田総理が誠実そうに見えても疑わざるを得ない」と不信感を強調しました。また「日教組のドンでである輿石東氏を幹事長に起用した」として、「民主党には構造的な隠蔽体質がある」と指摘し、民主党内への不信を強調しました。これについては、民主党から質問に立った樽床伸二・幹事長代行も「民主党のガバナンスを確立させなければならない」として、党内の統治・被統治能力に懸念があることで谷垣さんと認識が一致する場面もありました。

 谷垣さんは質問演説の最後に、これまでは小沢問題などを念頭に置いて使っていた「信無くば立たず」という言葉を引き合いに出しながら、これを「信無き、正統性なき政権だ」として、総選挙から党内の代表交代に伴う3つめの内閣だとして、解散(「信を問う」)を求めました。

 野田さんは、政党の結成届けには綱領が必要とされているとし、1998年4月の結党時に、綱領にかわる物として、「私たちの基本理念」を届け出ているとしました。これは今までの民主党代表としては初めて示した解釈だと思われます。これについて、私が手元で、調べてみましたら、「政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律」の第5条で、「政党は(略)届け出る場合には、次に掲げる文書を併せて提出しなければならない」「綱領その他の当該政党の目的、基本政策などを記載した文書」と定められてあり、この手続きで、「私たちの基本理念」を中央選挙管理会(事務局は総務省)に出していることになります。また条文を読むと、ほぼ毎年提出していることになります。野田さんは新しい政党として綱領という言葉を使わず「私たちの基本理念」としたと答弁しており、実は結党時には野田さんは落選していましたが、あくまでも法人としての政党党首ですから、この新解釈は今後、定着していく可能性が高いと考えられます。

 議場内交渉の結果、2つの答弁漏れがあり、野田首相が「谷垣総裁、ご無礼いたしました」として、答弁を追加する場面もありました。

 自民党は、第177通常国会で積み残しになった3つの東日本大震災対策の議員立法(二重ローン対策法案、私立学校の建物の復旧のための特別措置法案、国会への原子力事故調査委員会設置法案)の審議をするためにも、今国会を延長すべきだとしました。

 自民党が総理以外の閣僚に答弁を求めなかったことや、会派の持ち時間内で可能な再質問・再々質問をしなかったことは、自民党が各党代表質問に「不完全燃焼感」を醸し出して、早期の予算委員会開催への世論を高めたいねらいが見え隠れしているようにも感じました。

 [民主党綱領である私たちの基本理念]

私たちの基本理念

~自由で安心な社会の実現をめざして~

1998年4月27日民主党統一(第1回)大会決定より

●私たちの現状認識

日本は、いま、官主導の保護主義・画一主義と、もたれあい・癒着の構造が行き詰まり、時代の変化に対応できていません。旧来の思考と権利構造から抜け出せない旧体制を打ち破り、当面する諸課題を解決することによって、本格的な少子・高齢社会を迎える21世紀初頭までに、「ゆとりと豊かさ」の中で人々の個性と活力が生きる新しい社会を創造しなければなりません。

●私たちの立場

私たちは、これまで既得権益の構造から排除されてきた人々、まじめに働き税金を納めている人々、困難な状況にありながら自立をめざす人々の立場に立ちます。すなわち、「生活者」「納税者」「消費者」の立場を代表します。「市場万能主義」と「福祉至上主義」の対立概念を乗り越え、自立した個人が共生する社会をめざし、政府の役割をそのためのシステムづくりに限定する、「民主中道」の新しい道を創造します。

●私たちのめざすもの

第1に、透明・公平・公正なルールにもとづく社会をめざします。
 
第2に、経済社会においては市場原理を徹底する一方で、あらゆる人々に安心・安全を保障し、公平な機会の均等を保障する、共生社会の実現をめざします。
 
第3に、中央集権的な政府を「市民へ・市場へ・地方へ」との視点で分権社会へ再構築し、共同参画社会をめざします。
 
第4に、「国民主権・基本的人権の尊重・平和主義」という憲法の基本精神をさらに具現化します。
 
第5に、地球社会の一員として、自立と共生の友愛精神に基づいた国際関係を確立し、信頼される国をめざします。

●理念の実現に向けて

私たちは、政権交代可能な政治勢力の結集をその中心となって進め、国民に政権選択を求めることにより、この理念を実現する政府を樹立します。(了)


どんどん申し込もう 石川知裕・衆院議員が有料メルマガ創刊 9月26日、第1審判決を前に

2011年09月14日 08時04分51秒 | その他

[写真]地元回りで陸別町を訪れた石川知裕衆院議員、後援会事務所のある帯広市からはナント100キロの距離だが、選挙区(北海道11区)内

 民主党系無所属で、北海道11区(帯広市など十勝支庁)の衆議院議員、石川知裕さんが有料メールマガジン、題して「無所属議員・石川ともひろの汚名返上!」をまぐまぐで創刊する、とメールをもらいましたので、お知らせします。

 ご存じの通り、石川さんは、来る26日(月)午後1時半、東京地方裁判所刑事第17部で、登石郁朗裁判長から、「平成21年特(わ)第517号等政治資金規正法違反事件」、いわゆる陸山会事件で小沢一郎衆院議員の秘書で政治団体「陸山会」の事務担当者だったころの起訴事件について判決を受けます。

 その2週間前に有料メルマガを創刊する理由について、石川さんは「刑事被告人である私は立法事務費がもらえない。(月額65万円)。無所属議員なので政党助成金もない、企業団体献金も法的にもらえない、ないない尽くしなのです。政治活動をしていく上では費用がかかります」として、「そのかわり、政界で起きている出来事の深層や、小沢一郎秘書として、若手議員として雑巾がけする日々から学んだことを共有しつつ、裁判の状況などをリアルタイムで発信しようと考えています」としています。

 これに関して、26日に一審判決を迎える石川さんが「裁判の状況などをリアルタイムで発信しよう」と書いていることなどの意味合い。ぜひ、“小沢信者”の方も、政治資金規正法の第28条をお読みいただければ、この2年間の彼、あるいは私の「逆算における苦悩」の参考になると思います。この規正法28条を理解していただかないことには、この裁判の本質ではないけれども、「肝の部分」は分からない。ぜひ、26日まで目を通してください。

 石川さんはメルマガ第1号で、「「世界一理不尽な職場」である小沢事務所で会得した処世術や、刑事被告人なる「汚れ役」になった体験を通して垣間見えた人間社会の機微を、「炎上覚悟!」でみなさまと共有させていただきます」とし、「メルマガだからこそ書けることなのかもしれないが(以下略)」とことわったうえで、様々な思いをつづっています。

 所属する衆議院農林水産委員会では、昨年の秋の臨時国会(第176回国会)の2010年11月16日には、20分間だけ「民主党・無所属クラブ」から質問時間を割いてもらえましたが、第177通常国会では、質問に立つ機会はありませんでした。

 明治憲法から続く国民の権利に「請願権」がありますが、第177通常国会で石川議員は、16本の請願の紹介議員になり、そのうちの1本「難病、長期慢性疾患、小児慢性疾患の総合対策を求めることに関する請願」は採択されました。16本中1本とは言え、この国会で採択された請願は全部で246本だから、請願紹介議員としてはなかなかの好成績なのではないでしょうか。

 石川さんは「7月に『悪党―小沢一郎に仕えて』という単著を上梓しました。発売2カ月で8刷、4万6000部とおかげさまで、多様な読者にお買い求めていただいています。特に驚いたのは、選挙運動の現場や講演の会場では出会えない20代、30代の購入者が多いこと」として、「就職活動で悩む学生や理不尽な上司と向き合うサラリーマンが共感できるような記述を心掛けていたのは確か」「世界一理不尽な上司に仕え、政界一の汚れ役にもなった私が唱えるから聞いてもらえるアドバイスもある」「そこで若い世代にアプローチしやすく、一緒に中長期的に成長していけるような「シナリオ」を提供し続けるためにメルマガを発行しよう」と決意しています。

 日曜日配信とのこと。私も社員記者時代は日曜日の夜は辛かったですね。今はまったくないです。石川さんは、規則正しさ、継続することは、国会議員の中でも人一倍優れているので、定期的にあなたのパソコンにメールで届く、というのは、あすへの活力になるかもしれません。アントニオ猪木さんの「闘魂注入」みたいになるといいですね。

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野田佳彦首相が所信表明で「分厚い中間層」復活を表明

2011年09月13日 15時08分24秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

 野田佳彦新首相は、2011年9月13日(火)の午後2時から衆院本会議で、午後3時から参院本会議で所信表明演説をしました。ちなみに通常国会冒頭(本予算提出時)の政府4演説で首相がするのが「施政方針演説」で、新総理任命後、あるいは臨時国会冒頭でするのが、「所信表明演説」となります。所信表明演説の原稿は閣議で全閣僚が決定していますので、原稿を読み上げるのが基本です。仮に本会議場で、総理が原稿通りでなくしゃべった場合はどうなるかというと、やはり「綸言汗の如し」ということでしょうが、総理がしゃべった通り議事録に残るようです。ミスがひどければ、議運委員会で与党側議員が議事録の訂正を申し入れることもあるようです。

 国政選挙に伴わない新政権ということで、基本的に目新しいことはなく、菅直人・前首相からの踏襲といえます。野田さんが野党時代から力を入れてきた宇宙開発に関して盛り込まれたこともありますが、党の代表選挙などでも触れていた「分厚い中間層の復活」というのが印象に残りました。これは野田内閣の基本方針にもなると思います。また、「野田内閣は財務省主導だ」と警戒している人も、「分厚い中間層復活」には、要警戒ということになるかもしれません。

 長年日本では、他の先進国、途上国含めて、相対的に、貧富の格差が少ない、「1億総中流」と言われる時代が続きました。それが、1997年の北海道拓殖銀行の破たんや、その後の平成不況、小泉内閣での新自由主義的な規制緩和などの構造改革により、中間層から貧困層に転落する人が続出し、少子高齢化も含めて、日本経済全体もそうですが、国民生活はものすごい勢いで落ち込んでいます。

 野田首相は、「かつて我が国は「一億総中流」の国と呼ばれ、世界に冠たる社会保障制度にも支えられながら、分厚い中間層の存在が経済発展と社会の安定の基礎となってきました。しかしながら、少子高齢化が急速に進み、これまでの雇用や家族の在り方が大きく変わり、「人生の安全網」であるべき社会保障制度にも綻びが見られるようになりました。かつて中間層にあって、今は生活に困窮している人たちも増加しています。諦めはやがて、失望に、そして怒りへと変わり、日本社会の安定が根底から崩れかねません。「失望や怒り」ではなく、「温もり」ある日本を取り戻さなければ、「希望」と「誇り」は生まれません」と述べました。

 このため、

 社会保障制度については、「全世代対応型」へと転換し、世代間の公平性を実感できるものにしなければなりません。

 とし、1 民主党、自由民主党、公明党の三党が合意した子どもに対する手当の支給や、
    2幼保一体化の仕組みづくりなど、総合的な子ども・子育て支援を進め、若者世代への支援策の強化を図る。
    3医療や介護の制度面での不安を解消し、地域の実情に応じた、質の高いサービスを効率的に提供する。
    4労働力人口の減少が見込まれる中で、若者、女性、高齢者、障害者の就業率の向上を図り、意欲ある全ての人が働くことができる「全員参加型社会」の実現を進めるとともに、貧困の連鎖に陥る者が生まれないよう確かな安全網を張らなければなりません。

 「本年六月に政府・与党の「社会保障・税一体改革成案」が熟議の末にまとめられました。これを土台とし、真摯に与野党での協議を積み重ね、次期通常国会への関連法案の提出を目指します。与野党が胸襟を開いて話し合い、法案成立に向け合意形成できるよう、社会保障・税一体改革に関する政策協議に各党・各会派の皆様にも御参加いただきますよう、心よりお願いいたします」としました。

 分厚い中間層の復活は結論から言うと、2010年代半ばまでの消費税10%への増税ということになります。このオカネで、社会保障(年金、医療、福祉、子育て)を充実させる。これで世代間の不公平感を和らげる。また別の財源となりますが、「子どもに対する手当」を3党合意に基づき、子育て世代に直接注入する。

 このように、「分厚い中間層」の復活には、広く薄く負担する消費税が不可欠であり、野田内閣の最大の狙いは、「社会保障と税の一体改革の成案」、すなわち消費税引き上げになります。「一内閣一仕事」といいますから、これに注力すべきでしょう。

 復興債の償還財源としての復興増税に関する議論がでてきており、混線気味ですが、これは、与党の政府外議員はぐっと腹に飲み込んで、国民世論が混乱しないよう、あまりウロチョロしない方がいいと私は考えます。

 ところで、子ども手当→子どもに対する手当と言い換えましたが、
 地域主権改革は第177通常国会で、民主党マニフェストにもとづくいわゆる「地域主権3法案」が総務委員会での自民党や公明党らとの修正協議で、「地域主権」という言葉が削られているので、「地方主権」という言い方に変えた方がいいのではないかと思います。

 それから、毎年思うのですが、広島や長崎での、平和記念(祈念)式典では「唯一の戦闘被爆国」と首相が演説するのに、国会ではいつも「唯一の被爆国」という言い方が定着しており、きょうの総理の演説にもありました。コピー&ペーストでもしているんでしょうか。例えばビキニ環礁での核実験などマーシャル諸島共和国も「被爆国」だと私は思います。これは、前々からずっと気になってきたので、きょうのタイミングで指摘させていただきますが、ぜひ改善して欲しいと考えます。

第百七十八回国会における野田内閣総理大臣所信表明演説 -首相官邸ホームページ-

第百七十八回国会における野田内閣総理大臣所信表明演説


平成23年9月13日

 

一 はじめに

 第百七十八回国会の開会に当たり、東日本大震災、そしてその後も相次いだ集中豪雨や台風の災害によって亡くなられた方々の御冥福をお祈りします。また、被害に遭われ、不自由な暮らしを余儀なくされている被災者の方々に、改めてお見舞いを申し上げます。

 この度、私は、内閣総理大臣に任命されました。政治に求められるのは、いつの世も、「正心誠意」の四文字があるのみです。意を誠にして、心を正す。私は、国民の皆様の声に耳を傾けながら、自らの心を正し、政治家としての良心に忠実に、大震災がもたらした国難に立ち向かう重責を全力で果たしていく決意です。まずは、連立与党である国民新党始め、各党、各会派、そして国民の皆様の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。

 あの三月十一日から、はや半年の歳月を経ました。多くの命と穏やかな故郷での暮らしを奪った大震災の爪跡は、いまだ深く被災地に刻まれたままです。そして、大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故は、被災地のみならず、日本全国に甚大な影響を与えています。日本の経済社会が長年抱えてきた課題は残されたまま、大震災により新たに解決が迫られる課題が重くのしかかっています。

 この国難のただ中を生きる私たちが、決して、忘れてはならないものがあります。それは、大震災の絶望の中で示された日本人の気高き精神です。南三陸町の防災職員として、住民に高台への避難を呼び掛け続けた遠藤未希さん。防災庁舎の無線機から流れる彼女の声に、勇気づけられ、救われた命が数多くありました。恐怖に声を震わせながらも、最後まで呼び掛けをやめなかった彼女は、津波に飲まれ、帰らぬ人となりました。生きておられれば、今月、結婚式を迎えるはずでした。被災地の至るところで、自らの命さえ顧みず、使命感を貫き、他者をいたわる人間同士の深い絆がありました。彼女たちが身をもって示した、危機の中で「公」に尽くす覚悟。そして、互いに助け合いながら、寡黙に困難を耐えた数多くの被災者の方々。日本人として生きていく「誇り」と明日への「希望」が、ここに見出せるのではないでしょうか。

 忘れてはならないものがあります。それは、原発事故や被災者支援の最前線で格闘する人々の姿です。先週、私は、原子力災害対策本部長として、福島第一原発の敷地内に入りました。二千人を超える方々が、マスクと防護服に身を包み、被曝と熱中症の危険にさらされながら、事故収束のために黙々と作業を続けています。そして大震災や豪雨の被災地では、自らが被災者の立場にありながらも、人命救助や復旧、除染活動の先頭に立ち、住民に向き合い続ける自治体職員の方々がいます。御家族を亡くされた痛みを抱きながら、豪雨対策の陣頭指揮を執り続ける那智勝浦町の寺本真一町長も、その一人です。
 今この瞬間にも、原発事故や災害との戦いは、続いています。様々な現場での献身的な作業の積み重ねによって、日本の「今」と「未来」は支えられています。私たちは、激励と感謝の念とともに、こうした人々にもっと思いを致す必要があるのではないでしょうか。

 忘れてはならないものがあります。それは、被災者、とりわけ福島の方々の抱く故郷への思いです。多くの被災地が復興に向けた歩みを始める中、依然として先行きが見えず、見えない放射線の不安と格闘している原発周辺地域の方々の思いを、福島の高校生たちが教えてくれています。
 「福島に生まれて、福島で育って、福島で働く。福島で結婚して、福島で子どもを産んで、福島で子どもを育てる。福島で孫を見て、福島でひ孫を見て、福島で最期を過ごす。それが私の夢なのです。」
 これは、先月、福島で開催された全国高校総合文化祭で、福島の高校生たちが演じた創作劇の中の言葉です。悲しみや怒り、不安やいらだち、諦めや無力感といった感情を乗り越えて、明日に向かって一歩を踏み出す力強さがあふれています。こうした若い情熱の中に、被災地と福島の復興を確信できるのではないでしょうか。

 今般、被災者の心情に配慮を欠いた不適切な言動によって辞任した閣僚が出たことは、誠に残念でなりません。失われた信頼を取り戻すためにも、内閣が一丸となって、原発事故の収束と被災者支援に邁進することを改めてお誓いいたします。

 大震災後も、世界は歩みを止めていません。そして、日本への視線も日に日に厳しく変化しています。日本人の気高い精神を賞賛する声は、この国の「政治」に向けられる厳しい見方にかき消されつつあります。「政治が指導力を発揮せず、物事を先送りする」ことを「日本化する」と表現して、やゆする海外の論調があります。これまで積み上げてきた「国家の信用」が今、危機にひんしています。

 私たちは、厳しい現実を受け止めなければなりません。そして、克服しなければなりません。目の前の危機を乗り越え、国民の生活を守り、希望と誇りある日本を再生するために、今こそ、行政府も、立法府も、それぞれの役割を果たすべき時です。

 

二 東日本大震災からの復旧・復興

(復旧・復興の加速)
 言うまでもなく、東日本大震災からの復旧・復興は、この内閣が取り組むべき最大、かつ最優先の課題です。これまでにも政府は、地元自治体とも協力して、仮設住宅の建設、がれき撤去、被災者の生活支援などの復旧作業に全力を挙げてきました。発災当初から比べれば、かなり進展してきていることも事実ですが、迅速さに欠け、必要な方々に支援の手が行き届いていないという御指摘もいただいています。

 この内閣がなすべきことは明らかです。「復興基本方針」に基づき、一つひとつの具体策を、着実に、確実に実行していくことです。そのために、第三次補正予算の準備作業を速やかに進めます。自治体にとって使い勝手のよい交付金や、復興特区制度なども早急に具体化してまいります。

 復旧・復興のための財源は、次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し、負担を分かち合うことが基本です。まずは、歳出の削減、国有財産の売却、公務員人件費の見直しなどで財源を捻出する努力を行います。その上で、時限的な税制措置について、現下の経済状況を十分に見極めつつ、具体的な税目や期間、年度ごとの規模などについての複数の選択肢を多角的に検討します。

 省庁の枠組みを超えて被災自治体の要望にワンストップで対応する「復興庁」を設置するための法案を早急に国会に提出します。被災地の復興を加速するため、与野党が一致協力して対処いただくようお願いいたします。

(原発事故の収束と福島再生に向けた取組)
 原発事故の収束は、「国家の挑戦」です。福島の再生なくして、日本の信頼回復はありません。大気や土壌、海水への放射性物質の放出を確実に食い止めることに全力を注ぎ、作業員の方々の安全確保に最大限努めつつ、事故収束に向けた工程表の着実な実現を図ります。世界の英知を集め、技術的な課題も乗り越えます。原発事故が再発することのないよう、国際的な視点に立って事故原因を究明し、情報公開と予防策を徹底します。

 被害者の方々への賠償と仮払いも急務です。長期にわたって不自由な避難生活を余儀なくされている住民の方々。家畜を断腸の思いで処分された畜産業者の方々。農作物を廃棄しなければならなかった農家の方々。風評被害によって、故なく廃業に追い込まれた中小企業の方々。厳しい状況に置かれた被害者の方々に対して、迅速、公平かつ適切な賠償や仮払いを進めます。

 住民の方々の不安を取り除くとともに、復興の取組を加速するためにも、既に飛散してしまった放射性物質の除去や周辺住民の方々の健康管理の徹底が欠かせません。特に、子どもや妊婦の方を対象とした健康管理に優先的に取り組みます。毎日の暮らしで口にする食品の安全・安心を確立するため、農作物や牛肉等の検査体制の更なる充実を図ります。

 福島第一原発の周辺地域を中心に、依然として放射線量の大変高い地域があります。先祖代々の土地を離れざるを得ない無念さと悲しみをしっかりと胸に刻み、生活空間にある放射性物質を取り除く大規模な除染を、自治体の協力も仰ぎつつ、国の責任として全力で取り組みます。

 また、大規模な自然災害や事件・事故など国民の生命・身体を脅かす危機への対応に万全を期すとともに、大震災の教訓も踏まえて、防災に関する政府の取組を再点検し、災害に強い持続可能な国土づくりを目指します。

 

三 世界的な経済危機への対応

 大震災からの復旧・復興に加え、この内閣が取り組むべき、もう一つの最優先課題は、日本経済の建て直しです。大震災以降、急激な円高、電力需給のひっ迫、国際金融市場の不安定化などが複合的に生じています。産業の空洞化と財政の悪化によって、「国家の信用」が大きく損なわれる瀬戸際にあります。

(エネルギー政策の再構築)
 日本経済の建て直しの第一歩となるのは、エネルギー政策の再構築です。原発事故を受けて、電力の需給がひっ迫する状況が続いています。経済社会の「血液」とも言うべき電気の安定的な供給がなければ、豊かな国民生活の基盤が揺るぎ、国内での産業活動を支えることができません。

 今年の夏は、国民の皆様による節電のお陰で、計画停電を行う事態には至りませんでした。多大な御理解と御協力、ありがとうございました。「我慢の節電」を強いられる状況から脱却できるよう、ここ一、二年にかけての需給対策を実行します。同時に、二〇三〇年までをにらんだエネルギー基本計画を白紙から見直し、来年の夏を目途に、新しい戦略と計画を打ち出します。その際、エネルギー安全保障の観点や、費用分析などを踏まえ、国民が安心できる中長期的なエネルギー構成の在り方を、幅広く国民各層の御意見を伺いながら、冷静に検討してまいります。

 原子力発電について、「脱原発」と「推進」という二項対立で捉えるのは不毛です。中長期的には、原発への依存度を可能な限り引き下げていく、という方向性を目指すべきです。同時に、安全性を徹底的に検証・確認された原発については、地元自治体との信頼関係を構築することを大前提として、定期検査後の再稼働を進めます。原子力安全規制の組織体制については、環境省の外局として、「原子力安全庁」を創設して規制体系の一元化を断行します。

 人類の歴史は、新しいエネルギー開発に向けた挑戦の歴史でもあります。化石燃料に乏しい我が国は、世界に率先して、新たなエネルギー社会を築いていかなければなりません。我が国の誇る高い技術力をいかし、規制改革や普及促進策を組み合わせ、省エネルギーや再生可能エネルギーの最先端のモデルを世界に発信します。

(大胆な円高・空洞化対策の実施)
 歴史的な水準の円高は、新興国の追い上げなどもあいまって、空前の産業空洞化の危機を招いています。我が国の産業をけん引してきた輸出企業や中小企業が正に悲鳴を上げています。このままでは、国内産業が衰退し、雇用の場が失われていくおそれがあります。そうなれば、デフレからの脱却も、被災地の復興もままなりません。

 欧米やアジア各国は、国を挙げて自国に企業を誘致する立地競争を展開しています。我が国が産業の空洞化を防ぎ、国内雇用を維持していくためには、金融政策を行う日本銀行と連携し、あらゆる政策手段を講じていく必要があります。まずは、予備費や第三次補正予算を活用し、思い切って立地補助金を拡充するなどの緊急経済対策を実施します。さらに、円高メリットを活用して、日本企業による海外企業の買収や資源権益の獲得を支援します。

(経済成長と財政健全化の両立)
 大震災前から、日本の財政は、国の歳入の半分を国債に依存し、国の総債務残高は一千兆円に迫る危機的な状況にありました。大震災の発生により、こうした財政の危機レベルは更に高まり、主要先進国の中で最悪の水準にあります。「国家の信用」が厳しく問われる今、「雪だるま」のように、債務が債務を呼ぶ財政運営をいつまでも続けることはできません。声なき未来の世代に、これ以上の借金を押し付けてよいのでしょうか。今を生きる政治家の責任が問われています。

 財政再建は決して一直線に実現できるような単純な問題ではありません。政治と行政が襟を正す歳出削減の道。経済活性化と豊かな国民生活がもたらす増収の道。そうした努力を尽くすとともに、将来世代に迷惑をかけないために更なる国民負担をお願いする歳入改革の道。こうした三つの道を同時に展望しながら歩む、厳しい道のりです。

 経済成長と財政健全化は、車の両輪として同時に進めていかなければなりません。そのため、昨年策定された「新成長戦略」の実現を加速するとともに、大震災後の状況を踏まえた戦略の再強化を行い、年内に日本再生の戦略をまとめます。

 こうした戦略の具体化も含め、国家として重要な政策を統括する司令塔の機能を担うため、産官学の英知を集め、既存の会議体を集約して、私が主宰する新たな会議体を創設します。

 経済成長を担うのは、中小企業を始めとする民間企業の活力です。地球温暖化問題の解決にもつながる環境エネルギー分野、長寿社会で求められる医療関連の分野を中心に、新たな産業と雇用が次々と生み出されていく環境を整備します。また、海外の成長市場とのつながりを深めるため、経済連携の戦略的な推進、官民一体となった市場開拓を進めるとともに、海外からの知恵と資金の呼び込みも強化します。

 「農業は国の本なり」との発想は、今も生きています。食は、いのちをつなぎ、いのちを育みます。消費者から高い水準の安全・安心を求められるからこそ、農林漁業は、新たな時代を担う成長産業となりえます。東北の被災地の基幹産業である農業の再生を図ることを突破口として、「食と農林漁業の再生実現会議」の中間提言に沿って、早急に農林漁業の再生のための具体策をまとめます。

 農山漁村の地域社会を支える社会基盤の柱に郵便局があります。地域の絆を結ぶ拠点として、郵便局が三事業の基本的なサービスを一体的に提供できるよう、郵政改革関連法案の早期成立を図ります。
 また、地域主権改革を引き続き推進します。

 

四 希望と誇りある日本に向けて

 東日本大震災と世界経済危機という「二つの危機」を克服することと併せ、将来への希望にあふれ、国民一人ひとりが誇りを持ち、「この国に生まれてよかった」と実感できるよう、この国の未来に向けた投資を進めていかなければなりません。

(分厚い中間層の復活と社会保障改革)
 かつて我が国は「一億総中流」の国と呼ばれ、世界に冠たる社会保障制度にも支えられながら、分厚い中間層の存在が経済発展と社会の安定の基礎となってきました。しかしながら、少子高齢化が急速に進み、これまでの雇用や家族の在り方が大きく変わり、「人生の安全網」であるべき社会保障制度にも綻びが見られるようになりました。かつて中間層にあって、今は生活に困窮している人たちも増加しています。

 諦めはやがて、失望に、そして怒りへと変わり、日本社会の安定が根底から崩れかねません。「失望や怒り」ではなく、「温もり」ある日本を取り戻さなければ、「希望」と「誇り」は生まれません。

 社会保障制度については、「全世代対応型」へと転換し、世代間の公平性を実感できるものにしなければなりません。具体的には、民主党、自由民主党、公明党の三党が合意した子どもに対する手当の支給や、幼保一体化の仕組みづくりなど、総合的な子ども・子育て支援を進め、若者世代への支援策の強化を図ることが必要です。医療や介護の制度面での不安を解消し、地域の実情に応じた、質の高いサービスを効率的に提供することも大きな課題です。さらに、労働力人口の減少が見込まれる中で、若者、女性、高齢者、障害者の就業率の向上を図り、意欲ある全ての人が働くことができる「全員参加型社会」の実現を進めるとともに、貧困の連鎖に陥る者が生まれないよう確かな安全網を張らなければなりません。

 本年六月に政府・与党の「社会保障・税一体改革成案」が熟議の末にまとめられました。これを土台とし、真摯に与野党での協議を積み重ね、次期通常国会への関連法案の提出を目指します。与野党が胸襟を開いて話し合い、法案成立に向け合意形成できるよう、社会保障・税一体改革に関する政策協議に各党・各会派の皆様にも御参加いただきますよう、心よりお願いいたします。

(世界に雄飛し、国際社会と人類全体に貢献する志)
 日本人が「希望」と「誇り」を取り戻すために、もう一つ大事なことがあります。それは、決して「内向き」に陥らず、世界に雄飛する志を抱くことです。明治維新以来、先人たちは、果敢に世界に挑戦することにより、繁栄の道を切り拓いてきました。国際社会の抱える課題を解決し、人類全体の未来に貢献するために、私たち日本人にしかできないことが必ずあるはずです。新たな時代の開拓者たらん、という若者の大きな志を引き出すべく、グローバル人材の育成や自ら学び考える力を育む教育など人材の開発を進めます。また、豊かなふるさとを目指した新たな地域発展モデルの構築や、海洋資源の宝庫と言われる周辺海域の開発、宇宙空間の開発・利用の戦略的な推進体制の構築など、新しい日本のフロンティアを開拓するための方策を検討していきます。

(政治・行政の信頼回復)
 国民の皆様の政治・行政への信頼なくして、国は成り立ちません。行政改革と政治改革の具体的な成果を出すことを通じて、信頼の回復に努めます。既に、終戦直後の昭和二十一年、「国民の信頼を高めるため、行政の運営を徹底的に刷新する」旨の閣議決定がありました。六十年以上を経たにもかかわらず、行政刷新は道半ばです。行政に含まれる無駄や非効率を根絶し、真に必要な行政機能の強化に取り組む。こうした行政刷新は、不断に継続・強化しなければなりません。政権交代後に取り組んできた「仕分け」の手法を深化させ、政府・与党が一体となって「国民の生活が第一」の原点に立ち返り、既得権と戦い、あらゆる行政分野の改革に取り組みます。
 真に国民の奉仕者として能力を発揮し、効率的で質の高い行政サービスを実現できるよう、国家公務員制度改革関連法案の早期成立を図り、国家公務員の人件費削減と併せて、公務員制度改革の具体化を進めます。
 政治改革で最優先すべき課題は、憲法違反の状態となっている一票の較差の是正です。議員定数の問題を含めた選挙制度の在り方について、与野党で真剣な議論が行われることを期待します。

 

五 新たな時代の呼び掛けに応える外交・安全保障

(我が国を取り巻く世界情勢と安全保障環境の変化)
 我が国を取り巻く世界の情勢は、大震災後も、日々、変動し続けています。新興国の存在感が増し、多極化が進行する新たな時代の呼び掛けに対して、我が国の外交もしっかりと応えていかなければなりません。
 我が国を取り巻く安全保障環境も不透明性を増しています。そうした中で、地域の平和や安定を図り、国民の安全を確保すべく、平時からいかなる危機にも迅速に対応する体制をつくることは、国として当然に果たすべき責務です。昨年末に策定した「新防衛大綱」に従い、即応性、機動性等を備えた動的防衛力を構築し、新たな安全保障環境に対応していきます。

(日米同盟の深化・発展)
 日米同盟は、我が国の外交・安全保障の基軸であり、アジア太平洋地域のみならず、世界の安定と繁栄のための公共財であることに変わりはありません。
 半世紀を越える長きにわたり深められてきた日米同盟関係は、大震災での「トモダチ作戦」を始め、改めてその意義を確認することができました。首脳同士の信頼関係を早期に構築するとともに、安全保障、経済、文化、人材交流を中心に、様々なレベルでの協力を強化し、二十一世紀にふさわしい同盟関係に深化・発展させていきます。
 普天間飛行場の移設問題については、日米合意を踏まえつつ、普天間飛行場の固定化を回避し沖縄の負担軽減を図るべく、沖縄の皆様に誠実に説明し理解を求めながら、全力で取り組みます。また、沖縄の振興についても、積極的に取り組みます。

(近隣諸国との二国間関係の強化)
 今後とも世界の成長センターとして期待できるアジア太平洋地域とは、引き続き、政治・経済面での関係を強化することはもちろん、文化面での交流も深め、同じ地域に生きる者同士として信頼を醸成し、関係強化に努めます。
 日中関係では、来年の国交正常化四十周年を見据えて、幅広い分野で具体的な協力を推進し、中国が国際社会の責任ある一員として、より一層の透明性を持って適切な役割を果たすよう求めながら、戦略的互恵関係を深めます。
 日韓関係については、未来志向の新たな百年に向けて、一層の関係強化を図ります。北朝鮮との関係では、関係国と連携しつつ、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決を図り、不幸な過去を清算して、国交正常化を追求します。拉致問題については、我が国の主権に関わる重大な問題であり、国の責任において、全ての拉致被害者の一刻も早い帰国に向けて全力を尽くします。
 日露関係については、最大の懸案である北方領土問題を解決すべく精力的に取り組むとともに、アジア太平洋地域のパートナーとしてふさわしい関係の構築に努めます。

(多極化する世界とのつながり)
 多極化する世界において、各国との確かな絆を育んでいくためには、世界共通の課題の解決に共に挑戦する大きな志が必要です。こうした「志ある絆」の輪を、官民の様々な主体が複層的に広げていかなければなりません。
 大震災からの復旧・復興も、そうした取組の一例です。被災地には、世界各国から温かい支援が数限りなく寄せられました。これは、戦後の我が国による国際社会への貢献と信頼の大きな果実とも言えるものです。我が国は、唯一の「被爆国」であり、未曽有の大震災の「被災国」でもあります。各国の先頭に立って核軍縮・核不拡散を訴え続けるとともに、原子力安全や防災分野における教訓や知見を他国と共有し、世界への「恩返し」をしていかなければなりません。

 国と国との結びつきを経済面で強化する取組が「経済連携」です。これは、世界経済の成長を取り込み、産業空洞化を防止していくためにも欠かせない課題です。「包括的経済連携に関する基本方針」に基づき、高いレベルの経済連携協定の締結を戦略的に追求します。具体的には、日韓・日豪交渉を推進し、日EU、日中韓の早期交渉開始を目指すとともに、TPP、環太平洋パートナーシップ協定への交渉参加について、しっかりと議論し、できるだけ早期に結論を出します。

 資源・エネルギーや食料の安定供給の確保などの面でも、経済外交を積極的に進めます。また、途上国支援、気候変動に関する国際交渉への対応、中東・北アフリカ情勢への対応や、ぜい弱国家対策といった諸課題にも、我が国として積極的に貢献していきます。

 

六 むすびに

 政治とは、相反する利害や価値観を調整しながら、粘り強く現実的な解決策を導き出す営みです。議会制民主主義の要諦は、対話と理解を丁寧に重ねた合意形成にあります。

 私たちは既に前政権の下で、対話の積み重ねによって、解決策を見出してきました。ねじれ国会の制約は、議論を通じて合意を目指すという、立法府が本来あるべき姿に立ち返る好機でもあります。

 ここにお集まりの、国民を代表する国会議員の皆様。そして、国民の皆様。改めて申し上げます。

 この歴史的な国難から日本を再生していくため、この国の持てる力の全てを結集しようではありませんか。閣僚は一丸となって職責を果たす。官僚は専門家として持てる力を最大限に発揮する。与野党は、徹底的な議論と対話によって懸命に一致点を見出す。政府も企業も個人も、全ての国民が心を合わせて、力を合わせて、この危機に立ち向かおうではありませんか。

 私は、この内閣の先頭に立ち、一人ひとりの国民の声に、心の叫びに、真摯に耳を澄まします。「正心誠意」、行動します。ただ国民のためを思い、目の前の危機の克服と宿年の課題の解決のために、愚直に一歩一歩、粘り強く、全力で取り組んでいく覚悟です。

 皆様の御理解と御協力を改めてお願いして、私の所信の表明といたします。
 


第178臨時国会召集 野田内閣スタート、3党合意が道しるべ

2011年09月13日 12時57分36秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

[画像]第178臨時会の開会式でおことばを述べられる陛下、2011年9月13日、参議院インターネット審議中継から。

 さあ、いよいよ、第178臨時会(第178回臨時国会)のスタートです!

 野田内閣として初めての国会です。

 また、国会は1月の通常国会召集日が一部議員が和装で登院するなど華やかですが、実際には、国政選挙などが予定されていない限り、秋の臨時国会で委員長などを入れ替えて、ならしてから、翌年の通常国会の当初予算審議などにのぞむので、ある意味、秋の臨時国会が一年間のスタートとも言えます。ただ、自民党の谷垣禎一総裁・中曽根弘文参院議員会長を除く、すべての役員の任期が例年通り9月末で切れますが、この人事があるので、民主党の陣容をみた上で、自民党が攻撃の陣立てをととのえる第179回臨時国会が本格スタートでしょう。

 なお、この国会から、衆院の議事進行係が、福島2区選出の民主党当選2回生の太田和美(おおた・かずみ)さん(衆院議院運営委員)になりました。


[画像]衆議院議事進行係の太田和美さん、2011年9月13日、衆議院インターネット審議中継から。

 組閣から召集まで一定の時間をおくのは賛成です。しかし、今国会は所信表明と衆院での代表質問1日目の間に質問通告日がないうえ、予算委を閉会中審査にすることにしています。これは内閣にとって余裕がないし、また野党に対して逃げの姿勢をみせています。あまり賛同できません。

 会期は国会法第2章の規定により、衆議院の優越が認められていますので、横路孝弘議長の「4日間としたいと発議します」との発議は、採決となり、民主党の賛成多数で4日間となりました。これに対して、自民党は討論を通告。馳浩さんが、登壇しました。ここで、「内閣が替われば、所信表明と代表質問、予算委員会での一問一答、一般委員会での各大臣の所信あいさつと質疑をするものだ」として「4日間」に反対しました。これに先立ち、「政権交代から2年。民主党はマニフェストの見直しについて、菅直人前首相が謝罪し、岡田克也前幹事長がおわびの文書を提出しました」と演説すると、前列のおそらく小沢グループ議員(マニフェスト原理主義者)から「(菅さん、岡田さんは)辞めたんだもう!」というヤジが飛びました。これは信じられないようなヤジで、前列の若手議員から的外れなヤジが飛ぶことは自民党政権でも民主党政権でもよくあることで次で消えるわけですが、馳さんの討論のしめの文句である「野田総理の道しるべは、3党合意しかありません」という言葉を肝に銘じて欲しいと考えます。

 昨日は、民主党幹事長の輿石東氏の定例記者会見に出席しましたが、「3党合意を理解しているのかな」と疑問(不安)を感じました。

 3党合意は、もう一度後ろに全文付けますが、10月の3次補正予算、来年2月~3月の当初予算、そしてそれ以降の政策検証の3段階で、巧妙なしかけがされています。これを守れば、野田内閣は少なくとも、来年の通常国会の終わりまでは、数段のロケットブースターを利用して安定軌道で政権を担えるはずです。その後、対決モードになっても、残り1年間で総選挙の任期が来ます。そして、3党合意が仮に壊れたら、これは「解散してもどうにもならない」という大混乱、奈落の底に日本が落ちます。もちろん、自民党と公明党もたまに、「3党合意を反故にするぞ」とおどしてきますが、フツーに考えると、政局を大混乱させても、野党としても解散がなければ意味がありません。

 これについては、きょう発売で松嶋奈々子さんが表紙の「週刊女性」の2011年9月27日号の159ページに、「3党合意って何?」という野田首相の写真の下に、私が解説をさせていただいているので、ぜひご覧いただいて、ミニ集会や演説での説明のしかたに活用していただきたいと思います。この記事は「宮崎信行さんに聞きました」という体裁になっていますが、実際には、300字の原稿の形で納品させていただいたものです。夏休みの読書感想文1600字~2000字はつらいものだけれど、半年間「3党協議・3党合意」を取材してくると、300字にまとめるというのは反対の方向で大変。新聞記者時代に、記事を25行で収めないといけないのに、30行以上書いてしまい、パソコン上でどこを削ろうか、1行どころか1字を削ったり、また戻したりしながら呻吟したときを思い出しながら、書いた魂の傑作なのでぜひお読みいただきたい。週刊女性は主婦と生活社の発行で、他に「SMAP20周年のリスタート」や「二宮和也さん腹筋披露」「マツコ・デラックスら芸能人の本名大公開」など内容てんこ盛りで350円なので、安いと思います。

 9月4日(日)放送のTBS時事放談では、3党政調会長協議を半年やってきた、自民党政調会長の石破茂さんが、新幹事長の輿石氏について「代表選で3党合意を白紙に戻すと言った海江田万里さんを推していたのではないか」と懸念した上で、「もう1度、3党合意に(新幹事長名で)署名して欲しい」としたうえで、「あの文言はかなり精密にていねいにつくったものだ。民主党では、一人一人の議員にいたるまできちんと理解して欲しい」として、いわば民主党政府外1期生も写経、読経のごとく、覚えるべきだとの考えを示しました。なお、週明け、自民党幹事長の石原伸晃さんは「バラバラの民主党内をまとめようとする手段として、3党合意を使われたら困る」とさっそく変化球を民主党に投げています。こういうのも、正しく理解した上でないと、第178臨時国会召集直後の「(3党合意をつくった岡田前幹事長は)もう辞めたよ!」という不用意な発言につながりかねません。


2011年8月9日(火)の民主党、自民党、公明党の3党合意文書。
民主、自民、公明の3党は、以下の点について確認する。
一、歳出の見直しについては、以下の通りとする。
    高速道路無料化については12年度予算概算要求において計上しないこととする。
    高校無償化、農業戸別所得補償の12年度以降の制度のあり方については、政策効果の検証を基に、必要な見直しを検討する。
    なお、これらを含めた歳出の見直しについて、11年度における歳出の削減を前提に、11年度第3次補正予算ならびに12年度予算の編成プロセスなどに当たり、誠実に対処することを確認する。
一、歳出の見直しと併せ、子ども手当等の見直しによる歳出の削減について、11年度補正予算において減額措置することを、特例公債を発行可能とするための法案の付則に明記する。
一、法人税減税等を含む11年度税制改正法案(その内容を一部切り出して6月22日に成立した法律にあるものを除く)については、復興のための第3次補正予算の検討と併せ、各党間で引き続き協議する。
一、東日本大震災復興基本法第8条に規定する復興債の償還財源の具体的内容や償還ルールなど、あらかじめ決めることとされているその償還の道筋については、第3次補正予算の編成までに、各党で検討を進める。
 一、11年度第1次補正予算における財源措置として活用した年金臨時財源については、第3次補正予算の編成の際に、復興債で補填(ほてん)することとし、そのための財源確保策と併せて、各党で検討する。
一、以上を踏まえて、特例公債を発行可能とするための法案について速やかに成立させることとする。
 以上、確認する。


 
















2011年8月9日(火)の民主党、自民党、公明党の3党合意文書。
民主、自民、公明の3党は、以下の点について確認する。
一、歳出の見直しについては、以下の通りとする。
    高速道路無料化については12年度予算概算要求において計上しないこととする。
    高校無償化、農業戸別所得補償の12年度以降の制度のあり方については、政策効果の検証を基に、必要な見直しを検討する。
    なお、これらを含めた歳出の見直しについて、11年度における歳出の削減を前提に、11年度第3次補正予算ならびに12年度予算の編成プロセスなどに当たり、誠実に対処することを確認する。
一、歳出の見直しと併せ、子ども手当等の見直しによる歳出の削減について、11年度補正予算において減額措置することを、特例公債を発行可能とするための法案の付則に明記する。
一、法人税減税等を含む11年度税制改正法案(その内容を一部切り出して6月22日に成立した法律にあるものを除く)については、復興のための第3次補正予算の検討と併せ、各党間で引き続き協議する。
一、東日本大震災復興基本法第8条に規定する復興債の償還財源の具体的内容や償還ルールなど、あらかじめ決めることとされているその償還の道筋については、第3次補正予算の編成までに、各党で検討を進める。
 一、11年度第1次補正予算における財源措置として活用した年金臨時財源については、第3次補正予算の編成の際に、復興債で補填(ほてん)することとし、そのための財源確保策と併せて、各党で検討
する。
一、以上を踏まえて、特例公債を発行可能とするための法案について速やかに成立させることとする。
 以上、確認する。


残念だがやむを得ない、鉢呂吉雄・経済産業大臣の辞任

2011年09月11日 13時58分10秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

[写真]首相の野田佳彦さんとともに東京電力福島第一原子力発電所内を訪れた鉢呂吉雄・経済産業大臣(当時=左端)、2011年9月8日、首相官邸ホームページからトリミング。

 野田内閣で初入閣を果たした、鉢呂吉雄・経済産業大臣が2011年9月10日、辞任しました。野田佳彦首相は翌11日(日曜日)、「鉢呂氏から辞表の提出があり、受理した。福島県民の皆さんには大変心を傷つけることになり、おわび申し上げる。福島の再生なくして、日本の再生なしという方針は変わらず、きちんと一丸となって信頼回復に取り組んでいきたい」として、深々とアタマを下げておわびしました。

 これに先立つ、8日(木)、野田首相らと東京電力福島第一原子力発電所を訪問しました。この翌日である9日(金)の定例閣議後記者会見で、「野田首相と一緒に視察した福島第1原発の現場は、まだ高濃度で汚染され、大変厳しい状態が続いている。残念ながら周辺の市街地は人っ子一人いない死の町という形だった」と述べ、これが問題発言だと報道されました。この後になってから、その前夜である8日(木)に、鉢呂さんが衆院赤坂議員宿舎に帰宅した際に、夜回りの記者10人程度に囲まれた際、「放射能をつけちゃうぞ」ないしは「放射能をうつすぞ」(メディアによって違いがあり、正確な発言は不明)という発言や防災服をこすりつける行動をしたと、後から報道されたと思います。

 ちなみに、ここで私が不可思議に感じるのは、どこの大きいメディアでも、経済産業省は、経済部記者が担当しているはずです。大臣会見も経済部記者が担当していると思います。でも、議員宿舎の夜回りは、政治部記者が恒常的にしており、経済部記者が経産大臣を待つのは何か大きな特ダネの最終確認をのぞけば、あまりないと思います。ということは、この9日の会見の記事と、8日の懇談の記事は別の記者が書いているのではないかと思います。この辺が、新聞報道がスッキリしないものになっている原因だと考えます。言葉狩りの気がします。

 ただ、私はかねてから、大臣は、「辞める、あるいは辞めないという話」になってしまったら、辞めるべきだと考えています。なぜなら、”鎮火”しないと、総理にも延焼するかもしれないからです。そして、13日(火)に国会が召集されますので、その3日前は辞めるべきタイミングであり、野田首相の政治センスは優れていると感じています。

 個人的には、鉢呂さんに頑張ってほしかった。しごく残念です。

 鉢呂さんは野党・与党通じて、国会対策委員長をしていますが、野党時代に、自民党総裁で首相の小泉純一郎さんが2004年9月27日の第2次小泉改造内閣で、南野知恵子(のおの・ちえこ)法相を任命したところ、国会答弁で「専門家でないので」などと答弁し、審議が長時間ストップしたことがありました。予算委理事(故人)が「(専門家でない)あの人が(法相として)死刑執行の命令書にサインするんだよ~~」とおそらく集音マイクの位置を意識したうえで叫んだのをよく覚えています。鉢呂国対委員長も代議士会で、法相の苗字が難読で印象に残ることから、「法相を、のおのおと続けさせるわけにはいかない」とダジャレを交えて述べて、辞任に追い込む構えを示したことがありました。小泉首相の「何でも初めてなんだから、そんなにいじめちゃいけないですよ」という趣旨のぶら下がりインタビューの効果もあり、南野法相は辞任せず、職務をまっとうしました。一方、政権交代後、鉢呂大臣は9日間で辞任ということで、民主党お得意の「ブーメラン」となりました。このブーメラン体験は「政権交代ある政治の完成」へ向けた貴重な体験として、民主党は共有すべきです。

 鉢呂さんは岡田克也代表の下で選挙対策委員長として、第20回参院選で、民主党結党初の改選第1党を勝ち取り、国会対策委員長に昇進しました。国対委員長では前段の「のおのお」発言もありましたが、郵政政局では、自民党の本部(衆院)執行部と参院執行部との現在に続くあつれきを生じさせるなど、「ガチンコ相撲の突破力」(鉢呂さん)を見せて、早期解散につなげました。しかし、解散後に風が変わり、6年前の「9・11」、小泉自民党に地滑り的惨敗を喫してしまいました。

 南野さんは、昨年夏の参院選に立候補せず、引退しました。旭日大授章。南野さんは「専門」の日本看護協会に関係する法案が議題となった衆院本会議では、よく傍聴席(参議院議員傍聴席)の最前列でみかけました。一人、上下真っ赤なスーツ姿で、採決を見守り、可決や成立を見届けると、ぺこりとあいさつをし、階段をのぼってかえっていくところを複数回見たことがあります。

 鉢呂さんも、選挙も強いですし、今後、野党でも与党でも、何度かチャンスがくると思いますので、これからも頑張ってほしいと思います。農相、あるいはシャドウ農相などの「専門家大臣」というチャンスもあるでしょう。選挙強いですからね。残念ですが、やむを得ません。政治とはとかく不条理であり、むなしい物です。 


陛下、第178臨時国会を平成23年9月13日(火)に召集 野田内閣の所信表明と代表質問

2011年09月10日 05時00分00秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

[写真]お稲刈りをなさる陛下(宮内庁ホームページ、過去のもの)

 天皇陛下は詔書を発せられ、日本国憲法第7条「天皇の国事行為」として、第178臨時会(第178回臨時国会)を、平成23年(2011年)9月13日(火曜日)に東京に召集されました。これについては、官報の9日付特別号外第46号に掲載されました。

 
 ごらんのように天皇の国事行為には、内閣の助言と承認が必要ですので、「内閣総理大臣 野田佳彦」の副署が添えられています。野田さんの詔書への副署はこれが初めて。

 なお、会期幅については調整中で、召集日の衆参本会議で決定しますが、国会法では2回まで延期が可能です。衆院の院議が優先します。

 召集日に所信表明演説があり、野田首相が就任後初めて国会で発言するほか、それに対する各党代表質問が衆参本会議で行われます。1日目が衆院本会議、2日目が衆参、3日目が参院となります。ただ、今回は質問通告日をおかずに衆院の代表質問に臨むということで、これは、自民党が項目だけを通告し、本会議場で臨機応変に、持ち時間を使って、再質問、再々質問をやれば、内閣側には不利だと思われます。非常に理解しがたい日程です。また、9月21日ごろの国連総会から帰国後に、衆参予算委員会の集中審議(今年度予算の執行状況に関する調査)がある可能性もあります。財務大臣の安住純さんはNHK日曜討論で、第3次補正予算案の国会への提出について「10月中旬にも」と述べていますので、秋の臨時国会は一回閉会するでしょう。

 国会としては、野田首相の演説を聞いて、代表者が質問をしたら初めて、国会が連帯して内閣に対して責任を持てる、と私は考えます。首班指名で「谷垣禎一」と書いた人も、この国会が終われば、3次補正について官邸に要望書を出したり、震災対応などで国庫からの予算支出を伴う施策を議員立法を準備したりできるようになるものだと考えます。英語のガバメント(Government)には国会・議会も含まれます。その意味では、私はかつて内閣記者会に属する記者だったこともありますが、新閣僚が国会より先に、記者会見で発言するのは、その向こう側に国民がいるとはいえ、少しおかしいなあ、と考えるようになりました。例えば横浜市役所の担当記者だったときは、次期定例市議会に提案する条例案について、取材していても、市議が知るより前に報道されると、市議さんがすねるため、市長部局の人は気を使っていました。議案は、開会の数日前に、会派控室の机上に配布したり、市議の自宅に郵送したりすることで「解禁」となりますが、市長部局からよく「宮崎さん、けさ全議員に郵送しましたから、(記事にして)いいですよ」と電話をもらいました。

 もちろん、総理から前夜に人事を告げられた議員がいきなり国会で演説するのも難しいし、失言がありますからやめたほうがいいでしょう。それよりも、「政権移行チーム」を日本でも根付かせる必要があるでしょう。その前提として国政選挙と関係ない無意味な内閣交代がないようにするルール・オブ・ゲームの構築が必要なのは言うまでもありません。

 このほか、組閣にともなう、衆参常任委員長人事の入れ替えに伴う、本会議での選挙(議長の指名)や、特別委員長の互選も行われる見通しです。自民党の衆参の総裁・会長をのぞく役員の任期も9月末までとなっていますが、これに伴う院の構成は、次の国会に持ち越される可能性があります。

 また、第3次補正予算編成を前に、「郵政株式売却一時凍結法」(参院議員の自見庄三郎さんらが発議して成立)を廃止する法案などが審議される可能性もあります。


野田首相、千鳥ヶ淵の公務員官舎に住めないものか?

2011年09月05日 20時34分53秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

 報道によると、野田佳彦首相は9月下旬に、首相公邸に入居し、敷地内の首相官邸に出勤することになりそうです。これには、当初、首相が港区の衆議院議員宿舎に住み、クルマで10分程度の官邸に出勤することを願っていたところ、入居者の多い議員宿舎のセキュリティに配慮して、首相公邸に引っ越すことになったようです。ここからしてすでに官僚主導の始まりです。

 たとえば、首相官邸の近く、議員会館の裏手には、衆議院議長公邸、参議院議長公邸があります。三権分立の関係や公邸は儀式などにも使われることから、ここを使わせてもらうわけにはいかないでしょう。ただ、あそこの底地は、おそらく衆議院、および参議院が所有していると思いますが、中間地点に賃料を払って借り上げて、工場である程度ユニットが出来ていて、現地で組み立てられる住居を建てるというわけにはいかないのでしょうか。

 あるいは、千鳥ヶ淵の近くに、公務員官舎があります。ここには、今はどうか知りませんが、海上保安庁長官なども住んでいて、非常時に駆け付けられるようになっています。住人の数は港区の議員宿舎より少ないので、ここに住むというわけにはいかないのでしょうか。

 菅直人前首相は、首相公邸に住んでおり、日曜夜の政府・民主首脳会談では、いつも私服姿で参加したそうです。これは6首脳(岡田克也さん、輿石東さん、枝野幸男さん、仙谷由人さん、安住淳さん、玄葉光一郎さん)を信頼したいたからでしょう。ただ、1月の内閣改造以降は、仙谷さんとは一定の距離感があったようなので、仙谷さんに対しては、「ここ(首相公邸)の主は俺だ」という意味での私服姿だったのかもしれません。

 今、首相公邸となっている建物は、首相官邸としては田中義一内閣から使われ~岡田啓介内閣~東条英機内閣~鈴木貫太郎内閣~吉田茂内閣~岸信介内閣~佐藤栄作内閣~田中角栄内閣~中曽根康弘内閣~竹下登内閣~細川護煕内閣~羽田孜内閣~村山富市内閣~小泉純一郎内閣が使った首相官邸の地下1階部分を取り崩したものです。地下1階を取り壊した際に、ワインセラーはなくなったものと推測されます。ここには、「2・26事件」の銃撃の中、報道では「死亡した」とされていた岡田首相が両脇を抱えられて「見舞客のお帰りだ」として脱出したときに出来た銃痕も完全には除去できていないようです。

 そこに、野田さんと奥さん、就学中のお子さん2人が住むというのは、そこからして「どす黒い孤独」の中に総理が放り込まれます。

 それよりも、首相公邸に執務室を置いて、官房長官、2人の政務官房副長官の個室4つと、5人の首相補佐官の大部屋を置き、総理秘書官は政務のみ、5人の事務秘書官は曜日毎の輪番制で総理秘書官室に詰めてもらい、適宜、総理の指示で秘書官が担当者に総理執務室に来てもらう格好のほうがいいのではないでしょうか。会議をする度に首相官邸にでかければいいでしょう。

 阪神大震災から「3・11」にかけての16年間には進化があり、阪神では国土庁防災局で情報が止まってしまうので、小沢貞利・震災担当大臣が置かれましたが、「3・11」では官邸に情報が集約され、そして消化不良で混乱し、「スピーディー」のファックスも届いていたのに、その価値が判断できぬまま、留め置かれたという経緯があるようです。

 今の首相官邸では、政務の官房副長官も自室にいる間に、総理執務室の人の出入りを把握できないそうです。情報公開の大事さは、政権交代以来の2年間で広く知れ渡りましたが、情報の集約、情報の分析、そして、情報の共有化に向けて、野田さんには首相公邸に執務室をおいてもらいたいと思います。公邸の方が道路に近いし、公邸と官邸の間に屋根を掛けた方がいいと思いますが、それこそ、報償費を使うべきものだと考えます。

 総理を孤独にさせない。それが政治主導の一丁目一番地です。