ごっとさんのブログ

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アニサキスとがん

2015-03-17 10:46:57 | 健康・医療
最近、新聞やネット、テレビで線虫の一種であるアニサキスを用いたがん診断が話題になっています。アニサキスは、長さ1mm程度の寄生虫で、通常魚などに寄生していますが、生で食べることによって食中毒を起こすことが知られています。報道によりますと、食中毒を起こした患者さんから、アニサキスを除去しようとしたところ、早期の胃癌に食いつていたということから、診断できるのではということで、研究が始まったようです。
現在のところ、がん患者の尿と健常者の尿にアニサキスを加えると、健常者の尿からは逃げるような行動をとり、がん患者の尿に集まってくるということです。がん患者20数人を調べたところ、95%の有効率で尿に集まったと報道されています。これが実用化できれば、安価ながんの早期発見法になるのではないかと話題になっています。

がんの診断法として、がんマーカー試験が行われています。これはがん細胞表面に特異的な抗原が発現し、血液中に出てきたこの抗原を抗体を用いて検出するというものです。しかしこのがんマーカーは、まだすべてのお医者さんが認知しているわけではないようです。ある病院では十数年前から、がんマーカーを指標としてがん治療を行っているところもあれば、この数値を信用せず、全く測定しない病院もあります。また抗体法ですのでかなり高価な測定となります。

そこでアニサキス法の可能性についてです。私の隣の研究室が、臨床検査法の開発をしていただけの情報ですので、しょせん素人ですが、生物を用いた検定法はかなり難しいと思います。たぶんアニサキスという生物の品質管理ができないでしょう。
私の専門からいえば、がん患者の尿にアニサキスが集まるというのであれば、何か誘引物質があるはずです。尿からこの誘引物質を、アニサキスを指標として見つけ出すことは可能と思われます。現在はこういった微量物質の精製や同定技術は、非常に進んでいますので、たとえ混合物であっても同定できそうな気がします。
それが決まれば、科学的に測定するのは、既存の方法になりますので、新しいがん検査法となるかもしれません。

がんの早期診断は、特に若い人にとっては非常に重要な問題です。今回のアニサキスを用いた方法が開発されるかどうかはわかりませんが、こういった新しい発見から新たな診断法や、場合によっては治療法につながると期待しています。