読書ノート  

主に都市、地域、交通、経済、地理、防災などに関する本を読んでいます。

次の震災について本当のことを話してみよう 福和伸夫2017

2018年02月04日 | 防災・復興(内閣府防災、復興庁、気象庁)

 読者が「見たくないもの」を見て、備えようとする気にさせるため、面白い実験、怖いお話、歴史の逸話など、手を変え品を変えて打ち込んで来る本。
 第1章では、たらいの水、プリンとお菓子などを題材にして地震と建物被害の関係を理解。第2章では阪神淡路と東日本大震災を合わせたような次の南海トラフ地震の地獄絵を描く。第3章では地震の歴史を振り返り、関東大震災を警告した今村明恒らの教えを知る。第4章と終章では防災対策を訴える。

 著者福和教授の専門は建築耐震工学であるので、その分野でこの本に書かれている重要ポイントをリストアップ。
・耐震性は建物の強さだけでなく、地盤との関係で決まる周期も考えなければいけない。
・基礎杭は耐震が主目的ではなくビルの重さを支えるためのもの。上下の力には変形しないが、横方向の地震の揺れを減らすことはできない。
・免震装置を入れても長周期の地震には相当に揺れ、免震装置が変形して建物が擁壁にぶつかり損傷してしまうかも知れない。
・東日本大震災や南海トラフの巨大地震は長周期の揺れをたっぷり放出する。大きな沖積平野は長周期の揺れを増幅しやすい。
・熊本地震では、新しい木造住宅の方が、マンションやラーメン構造(柱と梁)の役場庁舎より被害が少なかった。
・構造計算をしてぎりぎりの安全性で建てたマンションや公共建築は、余裕がなく、想定を超える揺れには予定どおり壊れた。

 ところで、福和先生が「災害危険度の高い感じだけをあえて組み合わせた先人の知恵を感じる」地名(P57)とおっしゃる津田沼(習志野市)は、実際には大部分が台地の上(沼地だったところも一部あるが)にあり、液状化の危険度は高くないし、水害の危険度は低い。先人は、合併前の谷津、久々田、鷺沼の3つの村の名前から1文字ずつつとって津田沼と命名したそうだ。


コメントを投稿