読書ノート  

主に都市、地域、交通、経済、地理、防災などに関する本を読んでいます。

『中国経済論 高度成長のメカニズムと課題』 周牧之 2007

2010年05月18日 | 国際関係・海外事情(外務省、JICA)
読書録改革開放以来の中国経済の発展の軌跡を、中国人研究者が経済地理的な視点から分析した本だ。
「人民公社解体」「郷鎮企業」「浦東開発」「農村戸籍」「開発区」「11次五計」などの中国経済社会のキーワードが相互にどのような関係にあったかが理解できる。
本書が出版されてから3年になり、最近は本書では描かれていない内陸都市の経済発展も注目されるようになってきたように思う。

第2章 中国メガロポリスの急成長
 広東省の珠江デルタ、上海を中心とする長江デルタの両メガロポリスの急成長。
 珠江デルタは改革解放の実験区である経済特区指定を契機に急成長。はじめは電子部品産業が先進国やNIESの外資に加え地元企業も活躍。次に自動車や素材・エネルギー産業も。広東省はオープン性があり、企業誘致と労働力・人材受け入れ、グローバルサプライチェーンのためのネットワークインフラ整備など。
 一方、上海経済は80年代には停滞し、これを取り巻く江蘇省と浙江省では農民企業家の郷鎮企業が大量に群生し、上海の人材を活用した。90年代以降、浦東新区開発、外資導入、国営企業民営化によって上海は大発展期へ。上海港、浦東新空港、金融・ビジネスセンター化。さらに長江デルタ全域の連携発展、メガロポリス化へ歩む。

第3章 中国経済の構造と課題
 新中国建国後、計画経済は当初威力を発揮したが、人海戦術のみに頼った「大躍進」の失敗、資源自給の非効率な立地政策、文化大革命の混沌といった状況の中で、重化学工業化は無理やり進められた。戸籍制度(都市戸籍と農村戸籍)を導入し、都市人口を抑制。農村は人民公社化され、重化学工業化を支えるための犠牲を強いられ疲弊。
 80年代に農村工業化政策を打ち出し郷鎮企業が発展。人民公社は解体。しかし90年代に民営企業や外資企業が発展すると、都市基盤、産業集積を持たない郷鎮企業は衰退。計画経済時代の主役、国有企業は活力なく、90年代には破産と民営化により比重は10%台まで低下。
 開発区の乱立により、少ない補償で土地を奪われた農民の大量出現。

第4章 中国経済のゆくえ