読書ノート  

主に都市、地域、交通、経済、地理、防災などに関する本を読んでいます。

海外メディアは見た 不思議の国ニッポン クーリエ・ジャポン編 2022

2022年10月13日 | 社会
海外メディアは見た 不思議の国ニッポン クーリエ・ジャポン編 2022 会社にすべてをささげるサラリーマン、世襲政治家の多さ、年功序列、孤独死、女性の地位・賃金・科学技術分野進出の低さ、若者の投票率の低さ、内向きで海外に出たがらない若者・・・ この本の記事で注目される日本的特徴は、現在の日本の低成長の元凶であるように感じられるかもしれない。しかし、実はそのほとんどは日本がピークだった90年頃に . . . 本文を読む

平成の東京12の貌(かお)文藝春秋編2019 Heisei Tokyo 12 Faces (Kao) Bungei Shunju Edition 2019

2020年12月30日 | 社会
 昭和から平成(1989~2019)にかけての東京の街の変貌を、12人のノンフィクション作家が書いている。うち2つは増加する外国人についての記述。 Twelve non-fiction writers wrote about the transformation of the city of Tokyo from Showa to Heisei (1989-2019). Two of them a . . . 本文を読む

日本の異国 在日外国人の知られざる日常 室橋裕和2019

2019年10月22日 | 社会
足立区竹ノ塚には50軒近くのフィリピンパブ。 八潮市には中古車業のパキスタン人が集まりパキスタン料理店もある。 代々木上原のイスラム寺院に金曜日には300~400人のイスラム教徒が集まる。 東京都に住む12,000人のインド人の3分の1は西葛西を中心とした江戸川区に在住。2000年問題のころからIT関係のインド人が急増。 軍事政権下のミャンマーからの難民が西武新宿線中井周辺の根を下ろし、よ . . . 本文を読む

日本の「中国人」社会 中島恵 2018

2019年02月14日 | 社会
 高田馬場や銀座や西川口の中国人御用達の中華料理店の記事が役に立ちそうだが、この本のメインテーマはもちろん別にある。現在、在日中国人73万人、それに短期・公務滞在者と日本国籍取得者などを含めると97万人の中国人が日本に住んでいる。その多様な実像を、この本は生き生きと描いている。  例えば、 ・川口市芝園団地の半分を占める中国人。東北三省や福建省出身者が多く、ITエンジニア。・中国人の多い地 . . . 本文を読む

富山は日本のスウェーデン~変革する保守王国の謎を解く 井出英策2018  

2019年02月06日 | 社会
 保守王国と言われてきた富山県では、社会民主主義、福祉国家のスウェーデンとよく似た、素晴らしい「日本的北欧型社会」が実現しているかのようだ、というのが本書の問いかけ。 富山の何が素晴らしいかというと、高い1人当たり県民所得、ワークシェアリング的な雇用環境と女性が働きやすい仕組み、公教育への高い信頼、独居老人の少なさなど。(感想) 北陸を賞賛する本がここ数年続けざまに出ているが、富山をスウ . . . 本文を読む

100万円で家を買い、週3日働く 三浦展 2018

2018年12月12日 | 社会
 お金をかけずに豊かで幸せな生活を実践する人々の事例を紹介・解説した本で、カギは①物の豊かさから人間関係の豊かさへ、②私有からシェアへ、③シンプル・ナチュラル・手作り志向、④日本・地方志向の4つ。著者が提唱する「第四の消費」の具体例。(感想)  23の事例の舞台の多くは、離島や農山村だったり、郊外住宅地だったり、地方小都市の商店街だったりする。たいていは、かなり前にでき上がった町で、他所から新し . . . 本文を読む

国道16号線スタディーズ~二〇〇〇年代の郊外とロードサイドを読む 塚田修一+西田義行編著

2018年11月23日 | 社会
 2000年以降、国道16号線は、均質的で無機質で殺伐としたネガティブな郊外として語られ、描かれてきた。これに対し、「本書こそが、21世紀の郊外論である」と本書「はじめに」は宣言する。しかし、16号線(東側)から遠くない場所で生活した経験を持つ私の感想としては、この本はあくまでロードサイド論であり、ネガティブな郊外論の一つであり、東京30~40km郊外エリアの一側面(どちらかというと裏面)を描いた . . . 本文を読む

「北の国から」で読む日本社会 藤波匠2017

2018年01月04日 | 社会
「北の国から」は、昔、家族が見るテレビを通りすがりに見ただけ。 この本を読むと、主人公の黒板五郎は、経済学でいう合理的な人間と逆の生き方を自ら選択している。商品経済、分業を否定し、都市化の流れに逆らっている。 そのために自ら苦労し(死にかけたこともあった)、さらに子どもたちを巻き込み、苦労させている。 まず、都市化が進んだ80年代に子ども2人を連れて富良野に帰り、電器もない廃屋に住もうとする。家を . . . 本文を読む

限界国家 - 人口減少で迫られる最終選択 毛受敏浩2017

2017年08月14日 | 社会
第1章 「限界集落」という言葉があるが、日本列島全体が「限界国家」になる危機を迎えている。介護も農業も人手不足、年金の信頼度低下、公共交通は立ちゆかなくなる。海外の学者からは、日本は既に手遅れではないか、という声をたびたび耳にする。このままでは資産家や有能な若者から海外脱出を志向するようになる。第2章 移民は増えているが外国人の犯罪件数は減っており、治安には影響が及んでいない。最大のトラブルは犯罪 . . . 本文を読む

<オリンピックの遺産>の社会学―長野オリンピックとその後の十年 石坂友司・松林秀樹 2013

2016年04月30日 | 社会
長野オリンピックが地元にもたらしたものを多面的に論じている。第1章 長野オリンピック関連事業費のうち、直接の大会運営費と施設整備費(合わせて2500億円)はテレビ放映権料とスポンサー収入でほとんど賄われ、県市の補助金が黒字として残った。間接経費は新幹線、高速道路、オリ関連道路で計1.3兆円弱。 長野市はビッグハット、エムウェーブはじめ6つの施設を整備し、その維持管理行政コスト(利用料収入控除後)が . . . 本文を読む

犯罪の世間学:なぜ日本では略奪も暴動もおきないのか 佐藤直樹 2015

2016年02月15日 | 社会
第1章 日本には西欧には存在しない独特の「世間」があり、法や権利よりも「世間」が社会の隅々を支配し、人々は「世間」に縛られ、それが犯罪抑止、治安の良さにつながると同時に、自殺率の高さの原因にもなっている。 世間にはいくつかの非公式のルールがある。贈与・互酬の関係、身分制など4つ。 この非公式なルールを逸脱すると「世間」から排除されるため、自己抑制がかかる。(感想) こういう理由づけは、なるほどと思 . . . 本文を読む

新東京風景論~箱化する都市、衰退する都市 三浦展

2014年11月27日 | 社会
 第1章、第2章では、品川東口の再開発地区、イケア、ショッピングモール、ディズニーランドなどを「箱型空間」「ベルトコンベア的な空間」として批判⇒私の感想 行きたい人が好きで行くんだし、数時間過ごしたら出てくるんだし、そんなに目くじら立てなくてもいいんじゃないの。箱から一歩出れば東京は箱とは反対の複雑で混沌で、だけど安全で清潔な空間だらけじゃないか。 第3章 ザハ・ハディドの新国立競技場案 . . . 本文を読む

生き心地の良い町~この自殺率の低さには理由がある 岡檀 2013

2013年09月03日 | 社会
 徳島県海部町(今は合併して海陽町の一部)。県南の海辺にあるこの小さな町は自殺率が離島を除き全国最低水準。 その理由をインタビューやアンケート、さらには統計解析まで駆使して解明した本。 この町の特徴は、1.狭い地区に住宅が密集し、住民同士の接触密度が高い。2.異質や異端に対する偏見が小さく、いろいろな人がいた方が良いという意識。3.年長者が年少者を抑え付けない、人物本位主義。など。 同じように小さ . . . 本文を読む

地方にこもる若者たち 阿部真大 2013 

2013年08月31日 | 社会
 前半現在篇のまとめ(P83)によると①イオンモールなどが並ぶ郊外は地方の若者の満足度を高め、地方都市はちょうど良い理想的な生活の場である。②モータリゼーションは地方の煩わしい人間関係を排除し地方都市の魅力を高めている。③彼らは友人関係や家族関係には満足しているが、仕事に対する満足度は著しく低い。その前提となるインタビュー調査の信頼性は疑問が残るが、このまとめは感覚的には納得できる。というか、モー . . . 本文を読む

旅を生きる人びと バックパッカーの人類学 大野哲也 2012

2013年08月19日 | 社会
 自ら自転車で5年間世界を放浪していた著者が、大学院で人類学を学び、フィールドワークとしてタイやネパールで日本人バックパッカーから聞き取りをするなどしてまとめた書。 バックパッカーには移動型、沈潜型、移住型、生活型の4タイプ。 日本人バックパッカーは日本社会の風潮を拒否し「自分探し」のためにバックパックの旅に出るのだが、「自分のやりたいこと」へのこだわりは日本社会の「前進主義的価値観」のコインの裏 . . . 本文を読む