東京都内にある全部で62の土木遺産の鑑賞術。新しそうなのはビルになっちゃった宮下公園(2020)、恐竜橋こと東京ゲートブリッジ(2012)、大橋ジャンクション(2010)など。古いものでは羽村のまいまいず井戸(鎌倉時代)、江戸城石垣(江戸時代)、玉川上水(1653)など。明治から昭和にかけてのものが最も多そうだ。東京ゲートブリッジのトラスボックス複合構造という世界唯一の形は、航路のため橋桁を50m . . . 本文を読む
1964東京五輪直前の東京を活写した開高健『ずばり東京』にならい、2020五輪前夜の狂騒から感染症不安へ急転回した東京を取材・記録した本。私はむしろ、今の東京をつくった1960年代の都市開発のスケッチとして、この本を読んだ。空路で羽田に着いた人たちや選手の移動を素早く確実にするために、首都高速道路は、公有地(川、道路、公園)の上の空間を選んで建設された。人呼んで「空中作戦」。その日本橋上空を覆う道 . . . 本文を読む
この著者のことは知らなかった。この本には経済学部⇒外資コンサル出身らしいところと、らしくないところの両方がある。らしいところは、数字で示していること。虎麻メインタワー325mがもたらす周囲への圧迫感を地価下落効果で示し、268億円と算定している。らしくないところは、都市再生以来の自民党政権下での都市政策にかなり批判的であること。オリンピックはコミケと同じ私的事業であり国や都が財政負担する . . . 本文を読む
アフリカに関する情報が凝縮された本。印象に残ったことをノートする。1980~90年代、アフリカは「絶望」の大陸だった。人口は倍増したのに経済成長はゼロ%、貧困化、戦乱、エイズ。だが2000年代からアフリカは「希望」の大陸になった。しかしそれは資源と市場に惹きつけられているのであり、その点では植民地時代と変わらない。本書はアフリカの潜在力からアフリカをとらえ返す。広大なアフリカの固有言語は、ニジェー . . . 本文を読む
販売農家107万戸のうち、8割の零細農家(売上げ500万円以下)の総売り上げは全農業産出額の13%、1割強の上位層(売上げ1000万円以上が8割弱を稼いでいる。うち3000万円以上の層が産出額の53%を占める。プロ農家が経営規模を拡大し、食っていけない層が市場から退出している。これまでの日本農業は、基盤整備と機械化の進行によって必然的に起こるはずの淘汰と規模拡大が遅々として進まなかった。農業を聖域 . . . 本文を読む
この本で目立つのは、5組の一卵性双生児へのインタビュー。性格、学業成績、人間関係、好きなもの、あらゆることが大変良く似ている。結果、同じ大学に進み、同じような職業に就いている。遺伝の影響の大きさを測定するには、同じ家庭で育った遺伝子の等しい一卵性と、遺伝的には一卵性の半分しか共有しないが同じ家庭で育った二卵性の類似性を比較するという方法がある。知能や学業成績は、遺伝要因が20%から多い場合は50% . . . 本文を読む
横浜市の洋光台は昭和40年代に生まれたニュータウン。URと行政が連携しながら居住者とともにエリアマネジメントに10年取り組んできた。年月を経た郊外住宅地を活気づけ、将来にわたり持続させることを目的とするプロジェクト”ルネッサンスin洋光台”を進めるために これまでのエリマネはほとんど商業業務地区で行われた。既成の住宅地ではまず動機づけが課題となる。 エリア会議はまず既存の . . . 本文を読む
第1部 何が「成長」をもたらしたのか
多少の地域差はあるものの、労働者の1日の収入は3000年前のバビロンから産業革命前の西欧まで、ごく狭い範囲で上下していた。石器時代の遺跡で発見された人骨の平均年齢は30年弱、農業革命によって目立った変化はなく、産業革命前の西欧でも30~40年だった。技術進歩によって生産力が高まると人口が増え、豊かさの水準は生存ぎりぎりの水準まで逆戻りするからだ。マルサスの均 . . . 本文を読む