読書ノート  

主に都市、地域、交通、経済、地理、防災などに関する本を読んでいます。

空から見える東京の道と街づくり 竹内正浩2013 実業之日本社

2020年05月03日 | 地理、観光(国土地理院、観光庁)

 本棚にあった本シリーズ続きます。
 第1部都市計画としての道のうち、第1章環状道路に56ページと6割以上を使っている。東京の幹線道路は放射方向と環状方向とから成るが、放射道路が江戸時代からの歴史を持つのとは対照的に、環状道路は、自動車交通に対応するために都市計画によって新しく造り出さなければならなかった。幹線環状道路が初めて明文上登場するのは昭和2年の「都市計画街路」。しかしそれはほとんど未完のまま戦後に持ち越され、戦災復興都市計画はGHQに否定された。
 環状6号線(山手通り)は完成したものの幅員が戦前規格の22mであったため激しい渋滞が日常化し、首都高中央環状線と地下鉄大江戸線を地下に掘る工事に合わせ、拡幅が実施された(平成21年にはまだ工事中)。
 環状7号線は、昭和2年に整備開始されたものの遅々として進まなかったが、昭和のオリンピック開催前に大田区から板橋区まで開通。その後美濃部革新都政などで消極的になり、58年かけて昭和60年に完成した。
 環状8号はさらにスローで、昭和31年の本格着工から50年かけて平成18年に開通。最後の区間は練馬区の笹目通り~目白通りと、川越通り~板橋区環八高速下交差点。
 環2から環4はいまだに事業進捗中。
(感想)
 それぞれの場所について、直近と以前の2枚の航空写真があって便利。
 第2章以下にも、接続が予定されながら工事が始まらない首都高や東名の「イカの耳」、一部区間だけ幅広い道路(例えば両国駅前)など、道路計画が途中で中断している実例が紹介されているる。
 都市計画学者の言葉「『東京には都市計画がない』という人がいるが、正しくは『あったけれども実行されなかった』のだ。」を思い出した。
 市街地ができてしまった後に新たに広い道路を通すのは非常に困難であり、長い時間、巨額の費用、多くの犠牲を伴う。


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