読書ノート  

主に都市、地域、交通、経済、地理、防災などに関する本を読んでいます。

地域産業のイノベーションシステム 山崎朗編著2019

2019年11月13日 | 経済・財政・産業(財務省・経済産業省・日本銀行)
 内容豊富な本であるところ、ここでは東京VS地方という視点から興味深い箇所をピックアップ。
・今や全都道府県で有効求人倍率は1以上だが、2.0を超える県からも人口は流出し続けている。最も低い沖縄県からの流出は少なく人口は増えている。
・東京ですらイノベーションを生み出せていない。
・日本には世界大学ランキングにアメリカに次ぐ103大学が名を連ねる。トップ100位に10校を目標設定した日本再興戦略のKPIは不適切だ。
・科研費の配分は東大と京大だけで20%を占めていたが最近16.9%まで低下。科研費に対する論文の生産性は地方大学の方が高い。
・日本の地方には、最新鋭の製造拠点が存在し、工場はマザー工場化し、地場産業も高度な技術と研究開発能力を有している。不足しているのは一歩踏み出す勇気だ。
・地方メッセは規模は小さいが、継続的開催されることにより、出展者、来場者の情報や知識を地域内に取り込み、地域インベーションを誘発する可能性を持つ。
・経産省と文科省が連携したクラスター政策は、予算規模は小さいが九州の半導体エコシステムに大きなインパクトを与えた。企業数は大きく伸び、地場企業の技術開発力向上や多数のベンチャー創出があった。地域の半導体企業は、大手メーカーの戦略転換(海外展開)に翻弄されたが、それを契機として系列から自立し自らグローバルビジネスを展開した。
・震災復興政策の一つとして始まった神戸医療産業都市は、350社、9400人雇用、市内経済効果1532億円にまで成長した。エンタープライズゾーン構想はかなわなかったがその後構造改革特区、都市再生、地域再生という一国多制度を活用。各種の支援策、規制緩和が講じられた。
・福岡は地方中枢都市(支店都市)からクリエイティブ都市になりつつある。起業率が高く、創業支援環境が充実。コンパクトで住みやすく異文化受容性が高い。
・東京という巨大都市は、「集積がもたらす負のロックイン効果」が生じている可能性が高い。同質的な企業や人材が集積すればするほど、それ以外の企業や人材にとっては居心地が悪く、結果として多様性異質性がさらに喪失していく。

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