直心是道場

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映画の話 ~ 夢

2016年02月20日 | 映画の話
2月20日
雨がよく降りました。
昨日に比べると肌寒い一日でしたが、季節は春に近づいていることを感じさせる雨の一日でした。

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映画の話 ~ 夢 / 1990年 黒澤明 監督

世界のクロサワ。「七人の侍」や「生きる」「どですかでん」「影武者」など、お話したい映画がたくさんありますが、今日は監督が晩年に制作した映画「夢」をご紹介します。

この映画は、黒澤監督が見た夢を「日照り雨」「桃畑」「雪あらし」「トンネル」「鴉」「赤冨士」「鬼哭」「水車のある村」の8つの短編にまとめたオムニバス形式の映画です。
映画を通じて監督自らの人生を振り返るような構成になっていて、「日照り雨」で使われたセットは生家を再現したものであったり、「トンネル」は戦争の不条理を描き、「赤冨士」「鬼哭」では、放射能を中心に「人間が自然をコントロールできるのか…」という警鐘を描いています。

それぞれの短編に黒澤監督の想いが伝わってきて、一つひとつの短編を語りたくなりますが、最も印象に残っている短編「水車のある村」の話をします。
美しい川の流れ、自然と共に暮らす穏やかな村。感謝を忘れずに生きる村人たち。この村で行われる賑やかな葬送のパレードで映画が終わります。
村の長を演じた笠智衆さんのセリフ…

「生きていくのはつらいとか何とか言うが、あれは人間の気取りでねえ。生きているのはいいもんだよ、面白い。」

人生の悩みや苦しみをすべて包みこんで、それでもなお「生きるているというのはいいもんだよ」という言葉。
この映画を観てから四半世紀が過ぎようとしています。
あの当時、仕事ではグループホームを任され、プライベートでは結婚するなど、充実した日々を送っていた一方で、思うようにならないことの多さに苦しみ、自分の“幅”の狭さに悩んでいました。
今も、自分自身の本質はそれほど変わっていないのかもしれません。それでも50歳を越えてこの映画「夢」を観ると、「生きるているというのはいいもんだよ」という言葉が、若い頃感じていたとは違う響きで私の心に伝わってくるのです。

黒澤監督がこの映画を制作したのは80歳。
監督が想う「生きるているというのはいいもんだよ」には到底及びませんが、これからの人生においても「生きるているというのはいいもんだよ」を追い求め続けていきたいと思っています。

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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2016-02-21 22:09:04
兼松さんの映画の感じ方、良いですね~
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Re:Unknown (kanematsu4488)
2016-02-22 08:17:09
ありがとうございます!
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