梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

銀行との付き合い(その4)

2021年11月13日 06時33分38秒 | Weblog
【取引の仕方】

銀行との取引の仕方であり、複数行との付き合い方でもあります。わが社は四行と取引をさせてもらっています。都市銀行、地方銀行、政府系、準政府系(所謂半官半民)です。銀行の数は、少なすぎると他行との比較で融通が利かず、多すぎるといざという時支援をもらえません。取引銀行の数につては、会社の規模や格などに見合ったものがあると思っています。

複数の取引の良さは、それぞれの銀行の特性や機能を活かせるところです。都市銀行はネームバリューもあり総合力や情報量が優れています。地方銀行はきめ細かく地域経済に密着しています。政府系は国の制度や特別融資を提供しています。準政府系は官と民の良さを融合しています。返済期間、支払い利息、担保や保証など提示される条件は異なりますが、その違いが選択肢の広がりとなります。

いざという時の為にメインバンクはあった方がベターです。メインバンクの動向を注視ししながら、サブ的な他行もフォローしてくれるからです。しかしメインバンクには、こちらからの片思いとならないように留意しなくてはなりません。メインバンク の(であろう) 銀行に、しっかり自社を意識してもらうことです。変な例えですが、夫婦の愛情も時によっては確かめなくてはなりません。

実は、リーマンショック後の大幅な赤字補填に際し、わが社のメインの銀行は繋ぎ融資に消極的になり、不動産の担保を暗に要請されました。細かな経緯は省略しますが、断りました。結果、しばらくその銀行から新規の融資は受けられませんでした。その難局で他行が融資してくれたお陰で、わが社の今日があります。次項【担保の捉え方】で触れますが、銀行は既得権を死守し、決裁者(その時の支店長や次長)の意向にも左右されます。

今ではその銀行との関係は元に戻っています。私の一時の感情は消え去って、むしろ正論を伝えてくれたと理解しています。「銀行は晴れの日に傘を貸して雨の日に取り上げる」と揶揄する人がいます。銀行の立場からしたら正論でしょう。だからこそ我々企業は、銀行が気持ちよく何時でも傘を貸してくれるように、普段から努力することが大事なのです。

少し話はそれますが、我々鉄鋼流通業が材料をメーカーから仕入れる場合です。景気の波(需給のバランスが崩れる)があり、メーカーも強気と弱気の時があるのです。需要が弱い時何社ものメーカーを手玉に取り、ある流通業は安値を引き出しました。しかし流れが逆転すると、メーカーはその会社に供給を一切止めました。企業にとって利益の追求は使命ですが、駆け引きだけにおぼれれば、世間は相手にしなくなります。金融機関も同じで、広く薄く条件次第で借りる企業からは離れていくことでしょう。

定期的な転勤によって銀行担当者は変わります。経営者の交代は長期になりますので、一行一行長く丁寧に付き合うことを前提にすれば、銀行内で申し送られる実績は物をいうはずです。ただし全て銀行の言い成りになるのではなく、主張すべきははっきり伝えることです。裏付けがあり厳しいことをズバリいう社長を、銀行は逆に評価する側面があります。身の丈に合わせけん制的に付き合う複数取引は必要で、主導権を取られない気構えも大事だと思います。

【担保の捉え方】

担保とは、融資を受ける際に返済不能になった場合に備えて、損失を補えるように融資してくれた銀行に保証をすることです。銀行からすればなんとか事前に提供して欲しいのが担保で、その担保には物的担保と人的担保があります。物的担保とは、土地や建物などの不動産がもっともメジャーなものです。人的担保とは、融資を受けた債務者が返済できなくなったときに、債務者以外の人が債務者に代わって返済をする契約を結ぶことで、つまり社長による個人保証です。

日銀調べ(2019年)によると、銀行の企業向け融資では担保や保証をつける契約が金額ベースで全体の半分を占めるとのことです。金融庁は銀行が担保・保証へ過度に依存し、融資先の経営や成長力の評価が不十分になっているとして、融資姿勢の転換を促しているようです。担保や保証を要求されるかどうかは、当然その会社の規模や業績や内部留保などにもよります。

そのデータの見方を変えれば、全体の半分は担保や保証を付けず融資を受けていることも明らかな実態です。過去の銀行との取り決めで担保を提供してしまったとしても、その後状況が変化・改善をしているのであれば、いずれ解除することも一つの決断です。先にも書きましたが銀行は立場上、既得権の行使は当たり前と受け止めた上で、無理だと思わず気長に交渉することも考えるべきです。

前回、「経営計画書は立派な○○になります」と書きました。○○に入るのは「担保」です。物的でも人的でもない担保として、経営計画書は無形の立派な担保となると思います。 ~次回に続く~

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