かぎろひのうた

無系譜の短歌集団として50年の歴史をもつかぎろひ誌社に参加して、かぎろひ誌社と旭川歌人クラブの活動をお知らせしたい

2020年新年歌会の歌

2020-01-30 09:17:17 | 仲間の歌
2020年1月25日、旭川市常盤公園内にある旭川常磐館の旭川文学資料館展示室で「歌誌『かぎろひ』65周年展」の講演会が行われました。
前半はかぎろひ詩社代表の西勝洋一氏が「中山勝と『かぎろひ』」を、後半はかぎろひ詩社若手の桑原憂太郎さんが「最近の分かりづらい歌を考える」を話される予定でした。
残念ながら後半の講師桑原憂太郎さんの身内にご不幸があり出席は叶わなくなりました。急遽『かぎろひ』に連載された「分かりづらい歌」10編と『短歌人』に書かれた「わからないっていうな」を印刷物で紹介し、ブログに書かれていた「わからない歌7」を代読してご容赦いただくことになりました。


2020新年歌会      

1、 「かぎろひ」の資料開けるたび手が止まる展示の前の作業楽しき     上野 節子

2、 何事もなき事をただ祈りつつ友の検査の結果を待ちをり       吹田美津子

3、 蟹の如平たき家並浮かばせて冬夜しんしんと立つ街路灯       橘  幹子

4、 座らずにスーッと靴下の穿ける朝優しき妻と今しなれるや       本間久美子

5、 四十雀鳴きつつ枝を渡りゆき夜半を積れる雪散らすなり        吉田この実

6、 薄明の凍える道に踏み出せば光の粒が撒かれておりぬ        松平多美子

7、 空港の待合にいる人らみな空爆のニュースを黙して見入る       桑原憂太郎

8、 思い込みの強いわたしは幼少に鬼を猫と言ひはりてをり        安藤のどか

9、 マラソンと競歩の奉仕を志す我にもあれや成せるものあれ        白岩 常子

10、 キャビンより見る日本海おだやかに視野の限りに今夕陽落つ     笹川 淑子

11、 喫茶店文化の薫りまだ残る店で流れるショパンも味わう       智理 北杜

12、 「お父さんが心配するよ」と子に言はるグリルに干しけた紅鮭残り   鎌田 章子

13、 雪の片真昼の風にひらひらと流れゆくなり筆洗ひ終うる       河原由美子

14、 急ぎゆく女子高生がぶつかりて振り向き詫びる笑顔がすがし      土蔵 寛二

15、 奥の院への石段登る女(ひと)ひとり山は静かに暮れゆかんとす     谷口 三郎

16、 希うことなく叶ふ令和の子「黒マスクデモかっこいい」といふ       加藤多華子

17、 蝶々となって飛びたき日のありぬ予測不能の青春のごと       下澤 風子

18、 年月を重ね結びし絆さえほろほろ解け 行く冬の道         西勝 洋一

19、 賀状にてまだ九十歳と恩師より尊敬するはやっぱり恩師       風無 光子

20、 映像の美しき初日を拝しつつ令和二年の安寧祈る           神林 正惠

21、 海洋にひかる海豚に君かさね二十歳の君の宴をひらこう       山下 秀美

22、 妹と晴れ着で出掛けし正月の雪下駄キュキュッ昭和遠かり      矢島 弘美

23、 留守番の夫は家中灯をともし見てゐぬテレビの音高くをり       清水紀久子

24、 ラ・ノビアをペギー葉山が若い声で歌う懐かしさラジオ深夜便に     丹呉ますみ

25、 購いし君を頼りに三十年 『日本語大辞典』殿今後もよろしく      井上 敬子

26、 秋まきの小麦の根ぐされ少雪禍と聞きて降る雪ただ眺めおり      杉本稚勢子

27、 象亀の背にしかとしがみつきゆくらゆくらと春の野をゆく        柊 明日香
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2019.12月 歌会の歌 | トップ | 2020年2月歌会の歌 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

仲間の歌」カテゴリの最新記事