かぎろひのうた

無系譜の短歌集団として50年の歴史をもつかぎろひ誌社に参加して、かぎろひ誌社と旭川歌人クラブの活動をお知らせしたい

2018年11月号 合評の歌

2018-11-17 21:44:47 | 仲間の歌
            抄出 柊 明日香

今宵また届かぬ恋うた唄ひをり庭の蛙が声はりあげて             清水紀久子

大家族の農継ぐ男に嫁ぎたる姉はひたすら働ききたらむ            井上 敬子

丹精の父の畑は雑草の楽土と化して夏日を返す                北原さつき

人の死が風雨の強さ示すのか川の排水泥土に埋まる              久我 洋三

朝顔の鉢を祖父が運び込む孫は手ぶらの始業式の朝              佐藤 満雄
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2018年11月歌会の歌

2018-11-17 21:40:27 | 仲間の歌
1 あたたかき粥なり啜りゐしときに君がこころの浸みとほり来る 土蔵 寛二

2 眼裏をハープの音色が撫でていき記憶のモノに彩戻り来ぬ 智理 北杜

3 黄葉のプラタナス道に木洩れ日の姪のハンドル一直線走る 久保田一恵

4 胸底に棲みし緋魚のいつぴきは夜の静寂に太りゆくらし 安藤のどか

5 霜月の名残の花に移り飛ぶ働き蜂がたちまち消える 山田恵美子

6 仲間入り後期高齢者にすっぽりと気持ち裏腹止めるは難し 風無 光子

7 ひと夏の漁の名残かあかい旗風にちぎれて浜に立ちおり 杉本稚勢子

8 いつの間に逆転したる歩速かな振り返りつつ娘は前を行く 清水紀久子

9 待つことを重ねゆくうち日は暮れぬ〝待つ身はつらい〟と笑ろうてゐる間に 河原由美子

10 風立てば種々の枯葉がグランドに「眠れる森の美女」の舞いいる 白岩 常子

11 親切とは親を切ることと言いし人を思い出すなり介護を終えて 丹呉ますみ

12 ぽつねんと机の上に置かれし母からの便り紙幣入りたり 谷口 三郎

13 あの笑みも声さえ再び聞けぬとは 布団に潜り泣ける姉の死 櫻井 若子

14 アルバムに往時辿れば恥ずかしきことのかずかず湧いてくるなり 西勝 洋一

15 風の調べ聴きて幽かに唄へるか唐松空を狭め揺れゐる 橘  幹子

16 ピアニストの指の動きのしなやかさ最前列席にコンサートを聴く 井上 敬子

17 頑迷となりたるゆゑか納得のいかざることのなんと多しや 鎌田 章子

18 こけももの紅く熟れずく実を一つ十月の庭で口にころがす 吉田この実

19 車椅子を押されて老婆が席につきショートピースをふかし始める 桑原憂太郎

20 若い頃「紅葉なんてただの葉っぱ」と言いし友に誘われて行く 上野 節子

21 畑すみのキャベツに群れいる青虫に晩秋の雨しとしとと降る 柊 明日香

22 豊作の大根引くを前にして足骨折の不覚を悔やむ 神林 正惠
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2018年9月号合評の歌

2018-11-02 13:43:38 | 仲間の歌
               抄出 桑原憂太郎

雪解けを待ちてお墓に花供へ新しい法名指でなぞりぬ      杉本  光

大株のセロリを持てばずっしりと取り立て野菜の香り際立つ   吉田この実

二つ生る葡萄の房を一つ切るぽとんと落ちた陽だまりの中    谷口 三郎

俄雨に犬を抱へて溌剌と走り行く少女の脛の眩ゆし       本間久美子

立つことも叫びの中で庭に佇つ咲きゆく花の何と美し      館内 幸子
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2018年10月歌会の歌

2018-11-02 13:15:23 | 仲間の歌
「こわれもの(フラジャイル)」と書かれし小包クリムゾンキングの宮殿より届きたり      智理北杜

家壁に張りつく蜻蛉は太陽にゆだねる様は貼り絵の如し                    久保田一恵

初霜に一面覆わる公園を歩むそばから朝日にとけゆく                     吉田この実

楢の木は風に吹かれし残り葉を落としはせぬと凛として立てり                 谷口三郎

踏み軽き古時なるミシン元気なり吾も傍にて文化の日迎う                   風無光子

水色の記憶をとどめ紫陽花は紫陽花のまま乾きゆくなり                    清水紀久子

青き星のうつつは穢土といふけれど秋ふく風のなんと爽やか                  安藤のどか

北加伊道の「加伊」はアイヌ語とここに生き武四郎の書に語源を知れり             白岩常子

スーパーのレジの合計ちらっちらと見ており薄き財布をにぎり                 杉本稚勢子

イカを追い港から港を航海す「海のジプシーさ」と船頭笑いぬ                 櫻井若子

捨てられしテレビパソコン霊園に向かう道辺に黄落すすむ                   山田恵美子

子どもの頃向かいの貸家に越してきたどの家族とも仲良くなりし                丹呉ますみ

年古れど知らざることの多多ありて若き人らに導かれおり                   神林正惠

イボタ蛾の落翅一枚持ち上げて路上の蟻のひそかなる列                    橘幹子

短歌(うた)の師の遺作『月影』とまみえたり如何なる思ひを込めし油彩や           井上敬子

音たどり青き秋空見上げればかなた小さく機影が光る                     遠藤貞子

建つ家も解体されてゆく家もそぼ降る雨に濡れて 晩秋                    西勝洋一

昨日までサイドミラーで揺れていた小さなクモが消えている朝                 桑原憂太郎

まなぶたの皺にめり込むアイシャドー遅き日の出に惑ふあしたに                鎌田章子

やすやすと雪に散らせてなるものか五分咲きの薔薇に覆いかけやる               柊明日香

女医さんに診察されて久びさにドキドキしたとバツイチの君                  上野節子

紅葉林につつまれ碧き網走湖 航線見えしがやがて消えゆく                  河原由美子 
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