かぎろひのうた

無系譜の短歌集団として50年の歴史をもつかぎろひ誌社に参加して、かぎろひ誌社と旭川歌人クラブの活動をお知らせしたい

かぎろひ詩社創立70周年記念歌会

2024-08-25 08:43:00 | 仲間の歌
1 お母さん たいへん苦労をかけました母の姿にまだ及ばない          安藤のどか

2 ふわふわの雲に乗っけた悲しみよどこか遠くへ飛んでいってね!        上原詩穂子

3 山道を峠二つで日本海オロロンライン ツーリングと併走           矢島 弘美

4 気がかりの白内障の手術終え見廻り明りて幸せ深し              神林 正惠

5 梨の木に鳥の巣在りて我が庭に新たな命育まれ居り              神林めぐみ

6 使われて使われ疲れ歯ブラシは未だキッチンの蛇口を磨く           白岩 常子

7 雨の夜壮絶な音と光り電柱に雷が落ち怯えてゐる我がゐる           小城 悠子

8 草刈りの騒音の中三角の夫の竹笠左右に揺れる                緑川 恵子

9 大吟醸独り酌む世のゆたけきよ 一人呑む夜のうらさびしさよ         竹内 幹夫

10 廃屋の玄関脇に一本の角スコップは錆びて立ちおり              松平多美子

11 寂しさに手に取るスマホ会話せずひとりびとりが孤独なる塔          福屋みゆき

12 この本の君の思いを消さぬよう栞の位置を変えずに返す            深山すみれ

13 雨去りて碧き稜線見え隠れ霧の衣の淡くたなびく               宗方 信子

14 盆迎え親の命日忘る歳実家の過去帳そっと開き見る              風無 光子

15 AIやスマホにタマシイ抜きとられこゑをあげたしわれは人間         斎藤嶺 也

16 みしみしとせまる緑にのまれゆく社の森におぼえある花            河原由美子

17 一葉に汝(なれ)が書きにし春の誌(うた)根づきて壁に息をしてゐる       土蔵 寛二

18 森の奥わけいつてゆく蝦夷鹿(ユク)の群れおのもおのもの蛍を追ひて      大関 法子

19 見知らねど歌に惹かれし人の訃よ鯖三枚に下ろして炊かん           鎌田 章子

20 ホームに佇つ我が脇すり抜け跳びたてる名知らぬ虫は碧き宙(そら)へと     杉本稚勢子

21 自転車のベル鳴らし来しアイス売り握りしめたる五円はおぼろ         湯浅 純子

22 塀を超す白立葵はさわやかに咲き上がるなりまだ伸びている          丹呉ますみ

23 もう少しちゃんと育てておけばって言うお母さんのもう少しって        桑原憂太郎

24 真夏日はUVカットでおさへても炙りだされるハートのくすみ         並木美知子

25 立葵の搖れいるままに花虻は花粉にまみれて脇目もふらず           及川 文子

26 合歓の花きれいだったよ大連は引き揚げ船で帰りし母は            長谷川光子

27 反り返り反り返りつつ幼子は翼のやうにシンバルを打つ            斉藤 純子

28 夫や子の留守を一人で帰省せし娘はむすめの顔となりをり           本間久美子

29 子等の住む街も揺れしと告げてゐる緊急地震速報ののち            清水紀久子

30 人間は十人十色と言うわりにいざという時潔白が要る             中島ひかり

31 地震に戦争、災害、温暖化このままいけば地球は壊れる            上野 節子

32 臙脂色のオープンシャツを手に取れど着せたき父はこの世におらず       柊 明日香

互選の結果 
一位は詠草番号12番の深山すみれさん。得点は20票
二位は詠草番号27番の斉藤純子さん。得点は11票
三位は詠草番号6番の白岩常子さん。得点は9票
四位は詠草番号23番の桑原憂太郎さん。得点は8票
五位は詠草番号26番の長谷川光子さん。得点は8票
(同点の場合は先着順)
選者賞として 
桑原賞(かぎろひ詩社代表の桑原憂太郎選)は詠草番号21番の湯浅純子さん
大関賞(新墾選者、本日の講師)は詠草番号10番の松平多美子さんでした
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2024年7月の歌

2024-07-20 17:51:32 | 仲間の歌
1 「羽根咲きのピンクの朝顔可愛い」と亡友(とも)分けくれしその白き種   吉田この実

2 手稲山の裾野に天女の衣のごと雲は引かれて盛夏の朝           白岩 常子

3 北国の森の香りがするようで夜更けに削るコーリン鉛筆          北原さつき

4 それぞれのバスが来たので会釈して一時(いっとき)の友にさよならをする  及川 文子

5 偶然に通り掛かった球場で地区大会の母校の応援             神林めぐみ

6 猛暑日の暑さ身に沁む白昼を机上のあじさゐ涼を誘ひぬ          安藤のどか

7 愉しみを自由に選ぶる楽しさを楽しみをれど兆す寂しさ          本間久美子

8 日高路を初めて訪いしあの夏の車窓に輝く海を思えり            松平多美子

9 お手をしてオカハリもするロボットの犬は待合室のアイドル        清水紀久子

10 ラジオからのピアノに合わせて皆同じ動きをしている日本の朝       桑原憂太郎

11 山頂を諦め座る足元にチングルマの綿毛ねじれて揺れる          緑川 恵子

12 高齢者は無料と知りて旭山動物園にさっそく行きぬ            上野 節子

13 八百円のわが愛用のファンデーション二割値上げか二度見直して      鎌田 章子

14 鹿入りて「大方のレタスやられた」と肩おとす夫のため息漏れる      杉本稚勢子

15 間引きせし人参食めばカリカリとリズムの生まる日曜の朝         柊 明日香

16 長生きを願う想いが絶たれてく菊ではなくてコロナのさいた       中島ひかり
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2024年6月 歌会

2024-06-15 21:49:42 | 仲間の歌
1 連日を金鍬持ちて畑作業なせば小指に胼胝が住みつく       吉田この実

2 弾まない夫との会話は弾けずに残りしポップコーンのやうだ    清水紀久子

3 我だけが傷ついたのではないと知る花二輪ほど買って帰れり    福屋みゆき

4 カレンダー月の初めにめくる時新たな景に手を止め見入る     緑川 恵子

5 牛丼にぷるんと温玉乗せるだけそれで世界は少し明るい      中島ひかり

6 道の辺は崩るる土砂と倒れたる白樺数多 何の腹いせ       白岩 常子

7 此の地にて半年暮らしこんなにも別れの辛い人々の居て      神林めぐみ

8 晴天に新芽の花々競いして私がいちばん天を仰ぐや        風無 光子

9 今度こそむせないようにゆっくりと飲もうと飲んでむせてしまって 桑原憂太郎

10 たんぽぽも可愛いからと咲かせあるお隣りの庭は日向の匂い    及川 文子

11 渚滑川の激つ瀬音と木漏れ日とひとときわれを異界に誘ふ     鎌田 章子

12 古里のよっちゃんちでも今頃は田植えの最中か今日も強風     上野 節子

13 次々と騙す手法の見事さよ霊媒師ならわれもできそう       柊 明日香

14 泡沫は全て流れてゆくものを何も見えない遠の木枯らし      安藤のどか

15 朝まだき堤防ゆけば自転車のハンドル握る手のかじかめり     松平多美子

16 さくら色のカーテン掛かりて抜け落ちた今年の春の残り香の中に  杉本稚勢子
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2024年5月 歌会の歌

2024-05-19 08:27:01 | 仲間の歌
1 時折に小さな笑いも我が部屋に術後十日余ともに越え来て    杉本稚勢子

2 いつの間にか節くれだった手の甲にハンドクリーム一心に塗る  緑川 恵子

3 漫才のタカアンドトシは道産子であれば親近感にて観おり    白岩 常子

4 群落を離れていつぽん咲いてゐる鬱金香の首の細さよ      安藤のどか

5 雪の消え乾いた景色に鯉のぼり彩り添えて春を泳げる      吉田この実

6 皐月なる最北はまだ春遠く残雪のあり山裾に見る        風無 光子

7 住んでいたのは二年でも心だけはあれからずっと函館にある   上野 節子

8 全力で走って叫んで転がって幼子はすぐ電池が切れる      北原さつき

9 白い棘ささるように飛ぶ飛行機の小さな機影の消えるまで追うて 福屋みゆき

10 廃屋は朽ちて大地に還るともトタンの屋根は錆びて残れり    松平多美子

11 ほっとする思いに見あぐ風の無き夕空にただ揺れる鯉のぼり   及川 文子

12 近々に運動会のあるらしき声の聞こえる 昔のことなり     清水紀久子

13 背伸びすれば世界が見えるのだろうか菫は低く花を咲かせり   柊 明日香

14 合格を祝いひし文にラインにて届く返信 孫との距離かな    本間久美子

15 待ち合はす友矍鑠と歩み来も我に気付かず我は気付けり     鎌田 章子

16 ちょっといいケーキを買って帰るとき須らく人は天使になれる  中島ひかり

17 ひび割れしかつての池に棲まいたる赤い金魚は母を慰む     神林めぐみ
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2024年4月歌会

2024-04-20 17:49:02 | 仲間の歌
1 剥げかけた化粧を慌てて塗り直す女心と四月の雪は        神林めぐみ

2 新聞もテレビもあらざる島牧温泉の泉質に酔い妹と湯にけぶる    白岩 常子

3 高齢の紳士弾きたる駅ピアノ武骨な指で「エリーゼのために」を  上野 節子

4 真実は祈りの中に眠りおり雪の結晶六角模様           福屋みゆき

5 丘の上の可愛い小さな赤い屋根作業小屋なり人影揺れて      吉田この実

6 上を向き口笛吹いてゐるやうな上弦の月の光あかるし       清水紀久子

7 耳うらを撫でやる指に応えつつ躯くづれて無防備なる犬      河原由美子

8 雪どけの土の香りに福寿草訪ひし友だち皆笑顔なり        安藤のどか

9 こーこーと鳴く声あれは白鳥か気高き姿仰ぎ見る春        緑川 恵子

10 遠くより演歌流して帰港船今日の大漁知らせるが如        風無 光子

11 待ち時間一二〇分でも乗るためにここに来たんだから一緒に並ぶよ 桑原憂太郎

12 母逝きし齢になりて毎日が生の一目盛と思ふ春なり        本間久美子

13 雪解けの丘にのぼれば青々と水平線はゆるやかにあり       及川 文子

14 歓びを競うが如く白樺の木々に野鳥の囀りやまず         松平多美子

15 スピーカーを押せばスマホに兄の声義弟の法事に声音の参列    杉本稚勢子

16 亡夫が植えし藤を処分すわが喜寿をことほぎながら赦しくれむや  鎌田 章子

17 掛け持ちで出席したる行事終え春のめぐりに思いを深くす     柊 明日香

18 せっかくの一度しかない人生を誰かのB G Mにするなよ      中島ひかり 
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かぎろひ3月歌会の歌

2024-03-16 17:56:20 | 仲間の歌
1 徐々にきて一気に加速の雪解けに老いは似たるや 今朝の青空     鎌田 章子

2 陽がさせば儚く消ゆる短世を咲きて氷華は煌めきてをり       本間久美子

3 雪面に長く伸びゆく群青の防雪林の影を眩しむ            吉田この実

4 最北の山すそに群れし親子鹿寒さ忘れてわれ笑顔なり         風無 光子

5 忘却の彼方に見える白いドア冬ざれの大気呼吸しつつも        福屋みゆき

6 枯れ枝にしか見えずとも雪折れの一枝挿せば桜のつぼみ        北原さつき

7 小鳥さん春はいつ来るチュンチュンチュン今日も雪かきご苦労チュンチュン 神林めぐみ

8 夜更けまで『北の動物園』読みつぎて昭和の富良野に心遊ばす     白岩 常子

9 『北愁』とふ「幸田文氏」の小説を読み終へて今眼の疲れ出づ     安藤のどか

10 夕空を右へ左へゆれながら小鳥の群れは雲にとけゆく         及川 文子

11 お向かいの嫗がたびたび尋ね来る両替をしてほしいと言いて      柊 明日香

12 甘すぎる夫が作りし甘酒をこつそり捨てる春の午後かな        清水紀久子

13 前からは日本のようで横からは外国のような男のとなり        桑原憂太郎

14 「七十になる頃笑い話さ」といいしその日がやがてもう来る      松平多美子

15 定員は割れると聞けど姪の子にお守り届けぬ受験日の朝に       杉本稚勢子

16 「汽車通の皆さん卒業おめでとう」改札横に立て札のあり       上野 節子

17 神様はどうしてこんな生き物を作ったのだろう? 猫が可愛い     中島ひかり

18 新雪に大の字になり寝転んでダイヤモンドを独り占めする       緑川 恵子
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2024年2月歌会の歌

2024-02-17 19:29:00 | 仲間の歌
1 猛吹雪を家に籠ればテレビより花のたよりに心和みぬ         安藤のどか

2 今し方気が済んだとでも言うように夜来の雪が唐突に止む       松平多美子

3 思い返せば苦き日々多し人生の締めはカツ丼タレを多めに       福屋みゆき

4 灯油タンクの目盛り気になる冬期間昨日すこし減り今日ぐっと減る   及川 文子

5 雪払う息子の頭に白髪のかすかに混じりていたるを見つ        白岩 常子

6 未明にて鴉鳴く声こだまして踏む雪凍りパリリと割るる        神林めぐみ

7 ガリガリと凍結路面を削りゆくタイヤの音に朝を目覚める       吉田この実

8 凍て空に瞬く星は冴えわたり幌都の街を人をも包みぬ         櫻井 若子

9 冬陽さし微風が頬に触れて過ぐ道に佇み深く息吸う          杉本稚勢子

10 ジャガイモの芽を取りイカの腸を抜き経を唱えるわれは何者      柊 明日香

11 花ことばは「努力は実る」ネコヤナギを見上げて歩く今日も三キロ   緑川 恵子

12 気嵐に河畔の雪像かすみをり人らまばらな朝を歩めば         鎌田 章子

13 暮れなずむ空に連なる夕焼けのピンクの色に心のさわぐ        神林 正惠

14 タコさんの形に焼かれるウインナー 始まりはきっと愛と思えり    中島ひかり

15 ぐらぐらになっちゃったけど生きていることが許されているってことを 桑原憂太郎

16 ラッセルの除雪した後を作業員は線路の氷スコップで砕く       上野 節子

17 バス停に人ら待つ故われも待つ行く先知らねど二つ先まで       清水紀久子
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2024年新年歌会の歌

2024-01-21 11:02:13 | 仲間の歌
1 昼間からと言われつ昼間しかできぬ主婦の忘年会に出でゆく       白岩 常子

2 廃屋に取り残された雪かきが遠い昔を寡黙に語る            緑川 恵子

3 生きている喜びかみしめ窓際に猫とたたずむ斜陽が眩し         福屋みゆき

4 降りしきるドカ雪に「もう降参」と恨めしく見あぐ低き雪雲       吉田この実

5 裏金で懐肥やした政治家よ全額能登の被災地に寄付を          上野 節子

6 ふるさとの川のほとりに佇みてひとり迎えし初日の出なり        神林めぐみ

7 注連飾り講習会でやっとこさ作って飾れば稲藁匂う           北原さつき

8 どうみてもそう見えたんじゃないだろうっていう感じの絵が飾られていて 蔵原憂太郎

9 守りたきものあるゆえに床柱かろやかに今日も磨きつづける       及川 文子

10 大地震(なゐ)に崩れし家のかたはらに写りてをりぬ赤い椿が       清水紀久子

11 能登の海を行きし思ひ出顕(た)たせたる元日の地震(なゐ)全知を超えて   鎌田 章子

12 屋根の雪を庭に下ろせば雪山は大雪像の土台のごとし          松平多美子

13 夢にゐる子猫はいまだ小さくて目も開けられずミヤミヤとなく      安藤のどか

14 ベッド起こされ庭に目をやる母の無言暮れゆく空に吸はれてゆきぬ    河原由美子

15 日の丸と大漁旗かかげ港内に底引き船は六隻になり           杉本稚勢子

16 冷えきった関係のまま我々は三十六度の熱で生きてる          中島ひかり

17 羽ばたきを忘れたわけではありませんわれの抱負はいまだに朧      柊 明日香

18 迎えるは一望千里輝ける年明けの里みな笑顔にて            風無 光子

互選の結果、一位は7番北原さつきさん「 注連飾り講習会でやっとこさ作って飾れば稲藁匂う」、二位は中島ひかりさん「冷えきった関係のまま我々は三十六度の熱で生きてる」、三位清水紀久子さん「大地震(なゐ)に崩れし家のかたはらに写りてをりぬ赤い椿が」が選ばれました。
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2023年12月歌会の歌

2023-12-16 17:41:57 | 仲間の歌
1 北愁とふ言葉はじめて知りにけり北の愁ひの沁みる夕やみ          安藤のどか

2 「こんなことしていられぬ」とう病む友のラインに冬陽のオーラが注ぐ    杉本稚勢子

3 この町に夢と憧れ積み重ね天まで伸びるかタワーマンション         清水紀久子

4 手の欠けし珈琲カップが捨てられぬとつくに捨てたる思ひでなのに      本間久美子

5 流行語大賞に「あれ」が選ばれ三番館で飴をもらいぬ            上野 節子

6 雪雲の低く覆える西空へ鴉が鴉を追いて飛びゆく              吉田この実

7 何となく元気なさそうな気がしおり景気づけにほら一杯やれば?       福屋みゆき

8 越して来しマンションの赤子泣く声も久しくなりて初霜の朝         白岩 常子

9 木の幹を自在に歩き回りいるゴジュウカラは忍者のごとし          柊 明日香

10 「雪だよ!」の声に飛び起き窓辺まで一目散に子は駈け出しき        松平多美子

11 わが家の前を通りて新雪に花降るように猫の足あと             及川 文子

12 外は雪薪のはぜる音聞きながら窓辺の鉢にウミガメを描く          緑川 恵子

13 夫には夫の地雷私にも地雷はありて無口な夕餉               北原さつき

14 音楽を聴く行為には才能が必要無いから音楽が好き             中島ひかり

15 雪撥ねに大胸筋の叫びしをこれからだぞと足が諭しぬ             鎌田 章子

16 しょぼくれた初老の男に妬まれてしまう師走の雪のちらちら          桑原憂太郎

17 送る年あれも、これもと居残りて来る年に託し柏手を打つ            風無 光子



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2023年11月歌会の歌

2023-11-18 18:37:14 | 仲間の歌
1 毎日のように何かを捨て今日は裏紙にメモの言葉の山を          上野 節子

2 国道に車を寄せて銀杏を拾う人いて迂回して過ぐ             松平多美子

3 争いを目をそらさずに見ておりぬ空月星が子供が見ている         及川 文子

4 苦しみも大いなる恵みと受け入れて向日葵の花は伸びやかに咲く      安藤のどか

5 荒縄にぐるぐる巻かれた蔓薔薇は棘で噛みつく抗うように         緑川 恵子

6 砂糖菓子まかしたように真っ白な雪の世界に心遊べり           福屋みゆき

7 葉をおとし雪を待つてる樹のやうだ地下水脈に生かされてをり       河原由美子

8 駅前の更地となりし割烹屋おせちの味を今に思えり            白岩 常子

9 機窓より見下ろす白雲そのままを地上は映す黒き影成し          吉田この実

10 咲ききらぬままに残れるバラのあり立冬の朝の雨に濡れつつ        柊 明日香

11 寒さます指編みカバー思い出す母が先生ほどき毛糸で            風無 光子

12 花びらを食べる幸せ菊の香の膾味わう重陽の膳              北原さつき

13 回覧板にバスの減便の告知有りて不安増しゆく冬を向へる         本間久美子

14 私と目があったなら腹を見せ尻尾なんかを振りはじめやがる        桑原憂太郎

15 沈みゆく夕日に照らされし岩礁に立つ白波のしぶきの高し         杉本稚勢子

16 偶像が職業になり願望になって人ではなくなっていく           中島ひかり 

17 雪積みて家内(やぬち)明るしパンの耳のフレンチトースト口に溶けくる   鎌田 章子

18 ネクタイが揃ひて頭を下げる図を何度見たのか 何度見るのか       清水紀久子 
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