かぎろひのうた

無系譜の短歌集団として50年の歴史をもつかぎろひ誌社に参加して、かぎろひ誌社と旭川歌人クラブの活動をお知らせしたい

かぎろひ合評 3月号2

2010-04-18 22:19:23 | 仲間の歌
入院せしこの大病院の三階に黄昏の窓辺よ 飽かず佇む        煙山久仁子

暗闇をナースのランプが泳ぎくる近づかむとき瞳を閉じよ       早川 照子

ちちははの重き病を前にして哀しみかたを知らぬ吾がおり       蒔田 明嗣

木枯の吹く夜さみしく夫とゐて祖霊きてゐる戸口のあたり       安藤のどか

下降線辿るばかりの思惟にふと高く飛びゆく鳥探しいる        反怖 陽子
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4月歌会の歌

2010-04-18 22:17:49 | 仲間の歌
そののちのわが飲食よ友の病む細き身体を見ぬふりをして      鎌田章子

雪解けの遅きを父は嘆きつつ耕作日誌読み返しおり         柊明日香

長グツに履き替えてゆくポストまで音もなく降る春先の雨      早坂信子

もののけに今出会いたる形相で空知路をゆくますらをの群れ     蒔田明嗣

青雲は東へ流れ ひと死して家を出でゆく春の午後なり       西勝洋一

吾れ抱きて手鞠のような嬰児は小息健やか 命の温もり       久保田一恵

日曜日子等が訪い来て紫の花咲く小鉢飾りて行きぬ         煙山久仁子

小枝みな雪解の風にほぐされてツツジの葉群昼をかがやく      石山宗晏

あたらしき通帳までも出でてくるATM機に春の陽しづか      香月千代子

夢にみし君はせいねん倚り添いて歩みし昔をひた恋ふれども     安藤のどか

ささやかな夢を求めし楽園を追放さるるは吾かも知れぬ       吉川さとる

書き足りぬ想ひの数多ある故に禿びた鉛筆まだ捨てられぬ      清水紀久子

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3月歌会の歌

2010-04-03 22:31:33 | 仲間の歌
空の色に春の歩みを確かめてまたしまひこむ薄手のセーター      松倉美知子

失敗から立ち上がるものが成功す野村克也が食育を説く        鎌田 章子

降る雪の中を杖つき励む人見れば春待つ思いいや増す         西勝 洋一

白月のかくれて雪の降りいしか新聞少年の大き足跡          早坂 信子

窓ごしの雲を呼ぼうよ夕景の残照やはく一処にとどく         安藤のどか

桜咲きみんなあたたか そんなとき僕の心はかなしくあたたか     入江  翼

水戸梅花早咲き報るも北街は冷え冷え白し 月影うるむ        久保田一恵

君といた二年のおかげで今ここに自分の居場所がつくれそうだよ    智理 北杜

星形のつもりが楕円に ジーパンのつぎ当てさへも思うにまかせず   香月千代子

彼岸会の案内あれども離岸せし流氷ほども魅するものなし       石山 宗晏

結氷湖の闇に垂らしし銀の糸かすかにゆれて魚と引き合う       柊 明日香

デラシネという語のありき俺はいま心の闇を彷徨っている       吉川さとる
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5首合評 2010年3月号1

2010-04-03 22:29:11 | 仲間の歌
やがて来る不可避なものを受容する覚悟をきめよ老いし羊よ      吉川さとる

逢いたくて逢いに行く日の耳朶に蜜柑の花のコロンを少し       北原さつき

出し惜しみしてるんじゃなく全力が低空飛行で低速なだけ       小川  凛

番メシのコロッケがおいしかったからたぶん明日も生きるのだろう   但野 将平

心中を明かすことなく刻を経ていま有明の空と向き合ふ        佐川 愛子
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