1 金曜はアイルランドの思い出を夢に見たいと願いつつ寝る 智理 北杜
2 振り返り立ち止まっては先を行く 夫に追いつけと春風が押す 本間久美子
3 失なわる事の多くあり追憶の狭まる寂しさ三日月に寄せり 久保田一恵
4 風揺らぐブランコの下でカサカサとみみずが枯葉と戯れる二時 山下 秀美
5 あどけなき平成生まれの子どもらの笑顔消したるその人は誰 吉田この実
6 ふたり連れかさねし歳の夫婦やら待合室は暖なくも良き 風無 光子
7 眠られぬ夜の静寂に聴えくる桜吹雪の妖精のこゑ 安藤のどか
8 膝下の古き傷跡撫でながらお転婆たりし小学時代 白岩 常子
9 立ち枯れて捨てられしおりベンジャミンの白骨のごときスーパーの裏に 吹田美津子
10 松の木の上枝に遊ぶ小雀の春を呼ぶらし声のにぎわい 山田恵美子
11 新知事として「令和」への幕開けに相応しき男鈴木直道 上野 節子
12 さわさわと残りのページを捲る手よつかの間古の色を滲ます 河原由美子
13 雪とけて鼠の食痕露はなり白く柳の根本が光る 土蔵 寛二
14 眼下にはまだ雪残るグランドでサッカー練習春陽を受けて 櫻井 若子
15 枯葉剤に蝕まれたる人達の現在(いま)なほ惨きをテレビに見つむ 井上 敬子
16 どこからかまちに目覚めのドラミング見知らぬ人と街路樹見あぐ 松平多美子
17 どろの樹の上枝にかかるひとつ巣が春冷えあおき空に浮きゐる 橘 幹子
18 スピードを落として車は通りゆく骸となりしカラスの脇を 清水紀久子
19 来し方の「昭和」「平成」偲びつつわが残生を「令和」に托す 神林 正惠
20 市議選の近き夕べを疎遠なりし人より懇切な手紙が届く 西勝 洋一
21 眼をとじて両手合わせる我わきを通る涅槃の僧侶の気配 杉本稚勢子
22 ゆうゆうと水族館におよいでる元の姿でホッケの開き 丹呉ますみ
23 難問の一つ目処つき緩ぶ帰途白鳥一羽群れに戻り来 鎌田 章子
24 うなぶかすスノードロップはつつましく春の早きに白く咲きおり 遠藤 貞子
25 座りたるままにくぼみし座布団にいまだ不在の母を思えり 柊 明日香
26 三輪山に雲はなけれど花曇る飛鳥の里は寂しげなりき 谷口 三郎
2 振り返り立ち止まっては先を行く 夫に追いつけと春風が押す 本間久美子
3 失なわる事の多くあり追憶の狭まる寂しさ三日月に寄せり 久保田一恵
4 風揺らぐブランコの下でカサカサとみみずが枯葉と戯れる二時 山下 秀美
5 あどけなき平成生まれの子どもらの笑顔消したるその人は誰 吉田この実
6 ふたり連れかさねし歳の夫婦やら待合室は暖なくも良き 風無 光子
7 眠られぬ夜の静寂に聴えくる桜吹雪の妖精のこゑ 安藤のどか
8 膝下の古き傷跡撫でながらお転婆たりし小学時代 白岩 常子
9 立ち枯れて捨てられしおりベンジャミンの白骨のごときスーパーの裏に 吹田美津子
10 松の木の上枝に遊ぶ小雀の春を呼ぶらし声のにぎわい 山田恵美子
11 新知事として「令和」への幕開けに相応しき男鈴木直道 上野 節子
12 さわさわと残りのページを捲る手よつかの間古の色を滲ます 河原由美子
13 雪とけて鼠の食痕露はなり白く柳の根本が光る 土蔵 寛二
14 眼下にはまだ雪残るグランドでサッカー練習春陽を受けて 櫻井 若子
15 枯葉剤に蝕まれたる人達の現在(いま)なほ惨きをテレビに見つむ 井上 敬子
16 どこからかまちに目覚めのドラミング見知らぬ人と街路樹見あぐ 松平多美子
17 どろの樹の上枝にかかるひとつ巣が春冷えあおき空に浮きゐる 橘 幹子
18 スピードを落として車は通りゆく骸となりしカラスの脇を 清水紀久子
19 来し方の「昭和」「平成」偲びつつわが残生を「令和」に托す 神林 正惠
20 市議選の近き夕べを疎遠なりし人より懇切な手紙が届く 西勝 洋一
21 眼をとじて両手合わせる我わきを通る涅槃の僧侶の気配 杉本稚勢子
22 ゆうゆうと水族館におよいでる元の姿でホッケの開き 丹呉ますみ
23 難問の一つ目処つき緩ぶ帰途白鳥一羽群れに戻り来 鎌田 章子
24 うなぶかすスノードロップはつつましく春の早きに白く咲きおり 遠藤 貞子
25 座りたるままにくぼみし座布団にいまだ不在の母を思えり 柊 明日香
26 三輪山に雲はなけれど花曇る飛鳥の里は寂しげなりき 谷口 三郎