Good News Ministry

聖書的観点から見た世界の社会的、政治的、文化的、地域的現実を捉え、祈り備える。

中国 南シナ海に弾道ミサイル 軍事的緊張高まる

2020年08月28日 | 世界情勢
中国軍は26日、大陸部から南シナ海に向けて中距離弾道ミサイル4発を発射した。米国防当局者が明らかにした。中国が「核心的利益」に位置付ける南シナ海領有権主張を否定し、経済・軍事両面で圧力を強める米政権に対する「警告」とみられる。ただ、米軍も南シナ海での活動を活発化させており、小さな計算違いが偶発的な軍事衝突に発展する恐れもある。発射について中国政府からの発表はない。「他者を犠牲にし、自国の利益追求のためにルールに基づく秩序を覆そうとしている」。エスパー国防長官は26日、ハワイの政府系研究機関で講演。弾道ミサイル発射には言及しなかったものの、中国への対抗姿勢を鮮明にした。米当局者によると、中国軍が発射したミサイルは西沙諸島と海南島に挟まれた航行禁止海域に着弾した。「ミサイルの種類については現在分析中」としている。

一方、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは中国軍が26日午前、内陸部の青海省から「東風26」、沿岸部の浙江省から「東風21D」を1発ずつ発射したと報じた。いずれのミサイルも大型艦艇を攻撃できる能力があり、「空母キラー」と呼ばれる。中国軍筋は同紙の取材に「米軍が頻繁に軍用機や艦艇を南シナ海に派遣し、潜在的危機を高めていることに対する中国の返答だ」と警告した。米政府は7月、中国の南シナ海領有権主張を「完全に違法」と非難。米軍も同月、南シナ海で空母2隻による演習を実施し、外交・軍事両面で圧力を強化した。一方、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報英語版は今月上旬、中国軍が東風26の発射訓練を開始したと報じていた。中国は地域紛争時に米軍の介入を阻む「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略を打ち出し、空母キラーを含むミサイル戦力を大幅に増強した。米軍はこれに対抗するため、日本などに地上発射型ミサイルを配備し、西太平洋での中国軍の活動に制約を加える構想を掲げている。(8/27/2020 時事通信)

ミサイルを打ったタイミングから見ると、これは中国のアメリカへの選挙妨害である。因みにその共和党大会で「中国共産党は人類の敵だ!」という発言があった。日本にもこれぐらいのことを言える骨のある政治家が一人ぐらい出てきて欲しいと思う。

1日千人死亡 武漢ウィルスが米国人の死因第3位 

2020年08月18日 | 世界情勢
全米で流行が続いている新型コロナウイルス感染症が、アルツハイマー病や事故、糖尿病などを抜いて、米国人の死因の第3位に浮上した。米ジョンズ・ホプキンス大学の統計によると、米国の新型コロナウイルス感染者は540万人以上、死者は17万人以上に上る。過去3週間の統計では、1日の平均で1000人以上が新型コロナウイルスのために死亡した。米疾病対策センター(CDC)やフリーデン元CDC所長によると、新型コロナウイルス感染症による米国内の死者数は、事故、肺疾患、糖尿病、アルツハイマー病などによる死者数を上回り、心疾患とがんに続いて3番目の多さになった。

新型コロナウイルスによる米国人の死亡率は、他国に比べて大幅に高いとフリーデン氏は指摘、「先週の時点で、米国人が新型コロナウイルスのために死亡する確率は、欧州の人の8倍だった」としている。新学期を迎えた米国では、検査数の減少と陽性率の増大に対して専門家が懸念を強めている。つまり、新型コロナウイルスが依然として猛威を振るっているにもかかわらず、感染者を発見して隔離するために必要な検査数は減少傾向にある。感染状況を追跡している団体によると、米国内で実施された1日当たりの検査数は、7月下旬と比較して、平均で6万8000件減った。一方、ジョンズ・ホプキンス大学によれば、陽性率は30州以上で目標とされる5%を上回っている。こうした状況について専門家は、「我々は恐らく、他人に感染させる可能性のある10人のうち、8人を見逃している」と警鐘を鳴らしている。(8/18/2020 CNN)

武漢ウィルス 米国人の死因第3位 

2020年08月18日 | 世界情勢
全米で流行が続いている新型コロナウイルス感染症が、アルツハイマー病や事故、糖尿病などを抜いて、米国人の死因の第3位に浮上した。米ジョンズ・ホプキンス大学の統計によると、米国の新型コロナウイルス感染者は540万人以上、死者は17万人以上に上る。過去3週間の統計では、1日の平均で1000人以上が新型コロナウイルスのために死亡した。米疾病対策センター(CDC)やフリーデン元CDC所長によると、新型コロナウイルス感染症による米国内の死者数は、事故、肺疾患、糖尿病、アルツハイマー病などによる死者数を上回り、心疾患とがんに続いて3番目の多さになった。

新型コロナウイルスによる米国人の死亡率は、他国に比べて大幅に高いとフリーデン氏は指摘、「先週の時点で、米国人が新型コロナウイルスのために死亡する確率は、欧州の人の8倍だった」としている。新学期を迎えた米国では、検査数の減少と陽性率の増大に対して専門家が懸念を強めている。つまり、新型コロナウイルスが依然として猛威を振るっているにもかかわらず、感染者を発見して隔離するために必要な検査数は減少傾向にある。感染状況を追跡している団体によると、米国内で実施された1日当たりの検査数は、7月下旬と比較して、平均で6万8000件減った。一方、ジョンズ・ホプキンス大学によれば、陽性率は30州以上で目標とされる5%を上回っている。こうした状況について専門家は、「我々は恐らく、他人に感染させる可能性のある10人のうち、8人を見逃している」と警鐘を鳴らしている。(8/18/2020 CNN)

日本 4-6月 GDP-27.8%

2020年08月18日 | 世界情勢
内閣府が17日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比7.8%減、年率換算では27.8%減だった。マイナス成長は3四半期連続で、減少率は比較可能な1980年以降でこれまで最大だった2009年1~3月期(前期比年率17.8%減)を超えた。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言などにより、経済活動が停滞したことが影響した。1~3月期は年率換算で2.5%減だった。QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比7.6%減で、年率では27.1%減だった。生活実感に近い名目GDPは前期比7.4%減、年率では26.4%減だった。名目でも3四半期連続のマイナスとなった。実質GDP増減への寄与度をみると内需がマイナス.4.8%分、外需がマイナス3.0%分だった。項目別に見ると個人消費は8.2%減と、減少率が1980年以降で最悪だった14年4~6月期(4.8%減)を超えた。3四半期連続のマイナスだった。

新型コロナ感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言などを受けた外出や営業自粛の影響で、旅行や外食などサービス消費を中心に落ち込んだ。設備投資は1.5%減で、2四半期ぶりのマイナスだった。企業収益や国内経済の先行き不透明感の強まりで、機械などへの設備投資が落ち込んだ。民間在庫の寄与度は0.0%のマイナスだった。住宅投資は0.2%減と、3四半期連続のマイナスとなった。新型コロナの感染拡大を受けて経済活動が鈍り、住宅の新規着工にも遅れが目立った。公共投資は1.2%のプラスだった。輸出は、自動車などが落ち込んだほか入国制限の厳格化で訪日外国人が激減して、18.5%減となった。輸入は、原油需要が落ち込んだことなどから0.5%減となった。総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べて1.5%のプラスだった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.0%のプラスだった。(8/17/2020 日本経済新聞)

■米国 4-6月GDP - 32.9% 統計以来最悪
アメリカのことし4月から6月までのGDP(国内総生産)の伸び率は、年率に換算した実質で、前の3か月に比べてマイナス32.9%となりました。これは四半期の統計を取り始めた1947年以降、最悪の水準で、新型コロナウイルスがアメリカ経済に極めて大きな打撃を与えたことが示されました。アメリカ商務省が30日に発表したことし4月から6月までのGDPの伸び率の速報値は、年率に換算した実質で、前の3か月と比べてマイナス32.9%となりました。これは、四半期の統計を取り始めた第2次世界大戦後の1947年以降、最悪の水準です。

2008年のリーマンショックで最悪の3か月間だったマイナス8%台を大幅に下回り、今回の新型ウイルスの感染拡大がアメリカ経済に与えた打撃が極めて大きいことが示されました。項目別に見ると、GDPのおよそ7割を占める個人消費はマイナス34.6%、企業の設備投資はマイナス27%、それに輸出はマイナス64.1%と、軒並み大幅な悪化となりました。アメリカでは新型ウイルスの感染拡大に今も歯止めがかからず、失業率も10%以上で高止まりしていて、トランプ政権が目指す景気の回復に向けた追加の経済対策に関心が高まっています。(7/30/2020 NHK)

イスラエルとUAE 国交正常化合意

2020年08月17日 | 世界情勢
イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が国交正常化に合意した。イスラエルはヨルダン川西岸の一部の併合計画を凍結する。ドナルド・トランプ米大統領が13日発表した。仲介役を果たしたトランプ氏は声明で、関係国が合意を「歴史的」と呼び、和平に向けた画期的な前進だと評価していると述べた。イスラエルが湾岸地域のアラブ諸国と外交関係を持つのは初めてとなる。イスラエルは1948年の建国後、アラブ諸国では隣国のエジプトとヨルダンとだけ平和条約を結んでいる。(8/14/2020 BBC)

■イスラエル 他のアラブ諸国とも正常化交渉
アラブ首長国連邦(UAE)と国交正常化で合意したイスラエルのネタニヤフ首相は16日、米FOXニュースのインタビューにエルサレムから応じ「他のアラブ諸国の指導者たちとも話をしている」と述べ、国交正常化の動きが中東諸国に拡大する可能性を示唆した。ネタニヤフ氏が外交関係がない中で訪問したオマーンなどが追随する可能性が取り沙汰されている。ネタニヤフ氏は「協議したのはオマーンだけではない。秘密裏に行っている」などと語った。UAEとの合意については「両国が連携してイランに立ち向かうのは、地域の繁栄や安全保障にとって良いことだ」と強調した。(8/17/2020 Reuters)

緊張高まるリビア紛争

2020年08月14日 | 世界情勢
中東・北アフリカ諸国の政治・経済がコロナ禍の衝撃を受ける中、リビアでは紛争が激化し、諸外国の軍事介入も加熱している。特に、最近はトルコとロシアが介入を強め、リビア国内だけでなく中東・北アフリカ地域の政治・安全保障に影響を与えている。本稿では、最近のリビア情勢を整理したうえで、リビアに介入するロシア、トルコおよび他の諸外国の思惑と、今後の展望について分析する。2011年8月のカダフィ政権崩壊から9年を迎えるが、リビアでは内戦後の国家再建が進まず、政治・治安が混乱してきた。国内には政治権力、経済利益、地域、民族、部族などを軸にした重層的・複合的な対立構造が生じている。国軍や警察以上に民兵組織や武装勢力の軍事力が強く、新政府は国土の大部分を統治できていない。また、諸外国はリビアの安定化よりも国益にもとづいた介入を続けてきた。このようなリビアの状況は、「断片化(fragmentation)」と表現される。

2014年夏から、2つの「政府」が首都トリポリおよび東部のトブルクに拠点を置いて対立する状況が発生した。この対立はリビアの国家再建や内戦復興を阻害し、「イスラーム国(IS)」など過激主義テロ組織が伸張する要因となった。そのため、国連や欧米諸国が調停に乗り出し、2016年1月に統一政府「国民合意政府(GNA)」が設立された。しかし、元国軍の軍人だったハリーファ・ハフタルが指揮する軍事組織「リビア国民軍」がリビア東部〜南西部を実効支配してGNAに対抗しており、国家統一を妨げてきた。また、リビアに対する諸外国の介入は「代理戦争」の様相を呈している。UAE、エジプト、サウジアラビアなどは、リビアでのムスリム同胞団の台頭を警戒し、イスラーム主義勢力と対立するハフタルを支援してきた。これに対して、トルコやカタールは北アフリカにおける影響力拡大のほか、ムスリム同胞団を支援する一環で、トリポリのGNAを支援してきた。近年はロシアも軍事介入を強める一方で、イタリアはGNAを、フランスはハフタルを支援するなど、欧州の対リビア関与は一致しておらず、リビアの「断片化」を助長している。

2019年4月、ハフタルが指揮する「リビア国民軍」がリビア全土の支配を狙ってトリポリに侵攻し、GNA勢力(GNA傘下の国軍や民兵組織の混成勢力)との間に大規模な戦闘が発生した[5]。国連によれば、戦闘による避難者は2019年だけで20万人を超えており、一般市民にも甚大な被害が発生している。「リビア国民軍」はUAEやロシアの軍事支援を受けながらトリポリ侵攻を続けていたが、2019年末からトルコがGNAへの軍事支援を強化したことで、GNA勢力が徐々に盛り返してきた。2020年6月4日、GNA勢力はトリポリ全域を制圧し、「リビア国民軍」はリビア中部~東部に撤退した。今後の戦局は、GNA勢力が中部沿岸のシルト(Sirte)と内陸部のジュフラ(Jufra)を押さえられるかどうかで大きく変化するだろう。シルトは東部の油田地帯や石油輸出ターミナルの入り口に位置する要衝で、もしGNA勢力が掌握すれば、国内の石油権益の支配が可能になる。現状では、国内の油田・石油施設の大部分は「リビア国民軍」に支配されている。

また、ジュフラには「リビア国民軍」がトリポリ侵攻や南西部の支配に利用した空軍基地があり、同基地をGNA勢力が制圧すれば、リビア国内の勢力図は大きく塗り替えられるだろう。しかし、同基地はロシアの民間軍事会社ワグナー(Wagner)の拠点でもあり、5月下旬以降、ロシア製の戦闘機や防空システムが集められている。7月中旬以降、GNA勢力はトルコの支援を受けながら、兵力をシルト付近に集結させている模様である。しかし、シルトとジュフラは戦略的に重要な拠点であり、「リビア国民軍」が容易に明け渡すとは考えにくい。今後の戦局は不透明であり、緊張状態は継続している。

トルコはGNAを支援することで、中東域内で対立するUAEやサウジ、エジプトに対抗する狙いがある(これらの国々は「リビア国民軍」を支援している)。また、東地中海における天然ガス開発競争において有利な立場を得るために、リビア(GNA)を利用しようとしている。トルコの対リビア介入が強まったのは、2019年11月にエルドアン大統領とサッラージュGNA首相が、①両国間の安全保障協力、特にトルコからリビアへの軍事支援に関する覚書と、②東地中海における両国間の海洋境界設定に関する覚書に署名してからである。当時、「リビア国民軍」はトリポリへの攻勢を強めており、窮地に立たされたGNAは外部の支援を求めていた。この点で、東地中海の天然ガス開発競争において孤立し、協力相手を求めていたトルコと利害が一致したといえる[7]。

GNAを支持するトルコは、国産の軍事ドローンBayraktarシリーズや装甲車BMC Kirpiなど武器や軍需品をGNAに提供してきた。また、トルコ軍に加えて、2019年末からはシリア人戦闘員を多数送り込んでいる。リビア、トルコ、シリアでの報道によると、すでに約1万6千人以上がリビアに派遣され、3千人以上がトルコ国内で訓練を受けているという。6月上旬、トルコ空軍・海軍はリビア近海で演習を行い、リビア国内に2ヶ所の軍事基地を設立する計画を明らかにした。また、チャブシュオール外相、アカル国防相、ギュレル参謀総長などが相次いでトリポリを訪問しており、GNAの政府・軍高官と会談している。トルコのリビア介入は中東・北アフリカにおける地域大国間の確執や東地中海の天然ガス開発競争と連動しており、今後も強まると考えられる。

2011年8月のカダフィ政権崩壊から9年を迎えるが、リビアでは内戦後の国家再建が進まず、政治・治安が混乱してきた。国内には政治権力、経済利益、地域、民族、部族などを軸にした重層的・複合的な対立構造が生じている。国軍や警察以上に民兵組織や武装勢力の軍事力が強く、新政府は国土の大部分を統治できていない。また、諸外国はリビアの安定化よりも国益にもとづいた介入を続けてきた。このようなリビアの状況は、「断片化(fragmentation)」と表現される。2014年夏から、2つの「政府」が首都トリポリおよび東部のトブルクに拠点を置いて対立する状況が発生した。この対立はリビアの国家再建や内戦復興を阻害し、「イスラム国(IS)」など過激主義テロ組織が伸張する要因となった。そのため、国連や欧米諸国が調停に乗り出し、2016年1月に統一政府「国民合意政府(GNA)」が設立された。しかし、元国軍の軍人だったハリーファ・ハフタルが指揮する軍事組織「リビア国民軍」がリビア東部〜南西部を実効支配してGNAに対抗しており、国家統一を妨げてきた。

また、リビアに対する諸外国の介入は「代理戦争」の様相を呈している。UAE、エジプト、サウジアラビアなどは、リビアでのムスリム同胞団の台頭を警戒し、イスラーム主義勢力と対立するハフタルを支援してきた。これに対して、トルコやカタールは北アフリカにおける影響力拡大のほか、ムスリム同胞団を支援する一環で、トリポリのGNAを支援してきた。近年はロシアも軍事介入を強める一方で、イタリアはGNAを、フランスはハフタルを支援するなど、欧州の対リビア関与は一致しておらず、リビアの「断片化」を助長している。2019年4月、ハフタルが指揮する「リビア国民軍」がリビア全土の支配を狙ってトリポリに侵攻し、GNA勢力(GNA傘下の国軍や民兵組織の混成勢力)との間に大規模な戦闘が発生した。国連によれば、戦闘による避難者は2019年だけで20万人を超えており、一般市民にも甚大な被害が発生している。

「リビア国民軍」はUAEやロシアの軍事支援を受けながらトリポリ侵攻を続けていたが、2019年末からトルコがGNAへの軍事支援を強化したことで、GNA勢力が徐々に盛り返してきた。2020年6月4日、GNA勢力はトリポリ全域を制圧し、「リビア国民軍」はリビア中部~東部に撤退した。今後の戦局は、GNA勢力が中部沿岸のシルトと内陸部のジュフラを押さえられるかどうかで大きく変化するだろう。シルトは東部の油田地帯や石油輸出ターミナルの入り口に位置する要衝で、もしGNA勢力が掌握すれば、国内の石油権益の支配が可能になる。現状では、国内の油田・石油施設の大部分は「リビア国民軍」に支配されている。また、ジュフラには「リビア国民軍」がトリポリ侵攻や南西部の支配に利用した空軍基地があり、同基地をGNA勢力が制圧すれば、リビア国内の勢力図は大きく塗り替えられるだろう。しかし、同基地はロシアの民間軍事会社ワグナーの拠点でもあり、5月下旬以降、ロシア製の戦闘機や防空システムが集められている。

7月中旬以降、GNA勢力はトルコの支援を受けながら、兵力をシルト付近に集結させている模様である。しかし、シルトとジュフラは戦略的に重要な拠点であり、「リビア国民軍」が容易に明け渡すとは考えにくい。今後の戦局は不透明であり、緊張状態は継続しているトルコはGNAを支援することで、中東域内で対立するUAEやサウジ、エジプトに対抗する狙いがある(これらの国々は「リビア国民軍」を支援している)。また、東地中海における天然ガス開発競争において有利な立場を得るために、リビア(GNA)を利用しようとしている。トルコの対リビア介入が強まったのは、2019年11月にエルドアン大統領とサッラージュGNA首相が、①両国間の安全保障協力、特にトルコからリビアへの軍事支援に関する覚書と、②東地中海における両国間の海洋境界設定に関する覚書に署名してからである。

当時、「リビア国民軍」はトリポリへの攻勢を強めており、窮地に立たされたGNAは外部の支援を求めていた。この点で、東地中海の天然ガス開発競争において孤立し、協力相手を求めていたトルコと利害が一致したといえる。GNAを支持するトルコは、国産の軍事ドローンBayraktarシリーズや装甲車BMC Kirpiなど武器や軍需品をGNAに提供してきた。また、トルコ軍に加えて、2019年末からはシリア人戦闘員を多数送り込んでいる。リビア、トルコ、シリアでの報道によると、すでに約1万6千人以上がリビアに派遣され、3千人以上がトルコ国内で訓練を受けているという。6月上旬、トルコ空軍・海軍はリビア近海で演習を行い、リビア国内に2ヶ所の軍事基地を設立する計画を明らかにした。また、チャブシュオール外相、アカル国防相、ギュレル参謀総長などが相次いでトリポリを訪問しており、GNAの政府・軍高官と会談している。トルコのリビア介入は中東・北アフリカにおける地域大国間の確執や東地中海の天然ガス開発競争と連動しており、今後も強まると考えられる。

経済面でも、トルコはリビアの電力・エネルギー部門への進出や100億ドル規模の輸出といった計画を打ち出している。トルコにはGNAへの軍事支援にとどまらず、リビアへの進出を多角化させ、今後のリビアにおける政治的・経済的影響力を強化させる狙いがあると考えられる。GNA勢力がリビア中部にまで勢力圏を広げ、トルコがリビア国内に軍事拠点を確保すれば、トルコの影響力はさらに大きくなるだろう。他方で、トルコのリビア介入には制約もある。国境を接するシリアとは異なり、リビア情勢がトルコにとって直接的な脅威となるわけではない。すでにシリア内戦に深く介入しているトルコにとって、リビアでの紛争に過度に引きずり込まれることにはリスクも伴う。トルコの介入は、あくまでもハフタルを支援する諸国へのカウンター・バランシングと捉えるべきで、現時点ではあらゆる資源を投入して「リビア国民軍」を排除することは想定されていないだろう。GNAを軍事的・政治的に支援することでハフタルや諸外国を牽制し、今後のリビアの政治プロセスをトルコの利益に沿った形で進めようとしているとみられる。

ロシアはリビアに介入することで、中東・北アフリカ地域における欧米の影響力を削減し、長期的にはシリアに次ぐ地中海進出の足掛かりを確保したいと考えているようだ。また、カダフィ政権時代からの強い経済関係があり、エネルギー開発、インフラ事業、兵器・軍需品輸出などの利権を維持・拡大するねらいがある。ロシアは2019年下旬からプーチン政権に近い民間軍事会社ワグナーを投入することで、対リビア軍事介入を強化させてきた。2020年7月に発表された米国防総省の報告書によると、800〜2,500人のワグナーの兵員が「リビア国民軍」を支援するために派遣されている。また、米アフリカ軍(US AFRICOM)はロシア軍の輸送機がリビアにワグナーの兵員を送り込み、戦闘機MiG-19やSu-24、対空防御システムPantsir-S1を展開している様子を衛星写真とともに公開している。

ロシア政府が公式に、ロシア軍やワグナーによる「リビア国民軍」への支援を認めたことはない。しかし、2018年11月にはハフタルがモスクワを訪問し、ショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長に加えてワグナーの経営者とされるエフゲニー・プリゴジンと会談したと報じられており、当時からロシア政府・軍部のトップレベルでワグナーを介したハフタル支援が計画されていたとみられる。外交面でも、ロシアは国連安保理常任理事国として、ハフタルおよび「リビア国民軍」に対する非難声明への拒否権を発動している。シリア内戦において顕著なように、中東・北アフリカにおける欧米主導の秩序構築を妨害することで、自国の影響力を維持・拡大する狙いが見て取れる。同時に、リビア紛争をその他の地域・領域における問題(例えばクリミア危機以降の対露制裁)を有利に進めるためのレバレッジとする計算もあるだろう。ただし、ロシアはハフタルの「一点賭け」というわけではなく、GNAのサッラージュ首相や国連リビア支援ミッション(UNSMIL)のサラーマ前代表(2020年3月辞任)などもモスクワに招き、協議を行ってきた。

また、トルコのエルドアン大統領をはじめ外務省、軍、情報機関の高官とリビア情勢について頻繁に協議している。ロシアは繰り返し「例外なくリビア国内のすべての勢力と対話する」と強調しており、多様な紛争当事者との関係を維持することで影響力を高めようとしてきた[12]。この行動は、シリア内戦におけるロシアの立場とも通じるところがあるだろう。GNA勢力のトリポリ掌握後も、ワグナーによる「リビア国民軍」支援は継続している。8月上旬には、リビア東部沿岸にS-300地対空ミサイルシステムが配備されたとの情報がSNS上で出回っている[13]。また、ロシアもトルコに対抗して、アサド政権に近いシリア人戦闘員200~300人をリビアに投入している。トルコ・ロシア間での協議は繰り返し行われているものの、リビア紛争に関して妥協点は見えておらず、ロシアの対リビア介入の動向は不透明である。

リビア情勢の急変を受けて、大きく反応したのは隣国エジプトである。6月20日、シーシー大統領は演説でシルトをエジプトの国家安全保障上の「レッドライン」と呼び、GNA勢力が東進を続ける場合は軍事介入の準備があることを示唆した。さらに7月20日、エジプト議会がリビアへの軍事介入を全会一致で可決した。この直前の16日にはリビア東部の有力者や部族指導者がカイロを訪れ、シーシー大統領と面会していた。これらの動きにより、エジプト軍がリビアに介入するための条件は整ったといえよう。エジプトの強硬な対応の背景には、リビアの不安定化によって国家安全保障が脅かされることへの警戒感がある。両国の国境は1,200kmにおよぶ砂漠地帯であり、エジプトはリビアからのテロ組織、犯罪組織、武器、ドラッグなどの流入に悩まされてきた。

GNA勢力とトルコの東進によってリビア東部が不安定化することは、エジプトにとって大きな脅威となる。ただし、現時点ではエジプトがリビアに大規模な軍事介入を行う可能性は低いとみられている。限定的な空爆やリビア東部国境地帯への地上軍の派遣はあり得るが、リビア中部への進軍やトルコ側勢力との直接衝突は現実的でない。あくまでも、断固たる軍事的姿勢を示すことでGNAとトルコをけん制する狙いがあると考えられる。現状では、トルコの支援を受けたGNA勢力が攻勢を弱める気配はなく、事態沈静化への糸口はみえない。トリポリ掌握をリビア東部に支配圏を広げる絶好の機会だと見ているGNAは、「リビア国民軍」との停戦や対話に応じるのは、シルトとジュフラを制圧した後であると主張している。

また、諸外国の介入はシリア内戦や東地中海のエネルギー開発競争、中東・北アフリカにおける勢力圏をめぐる競争などと連関しており、妥協点は見出しにくい。ロシアとトルコの交渉が進まず、エジプトが軍事介入を示唆する中で、緊張状態は継続するだろう。リビアを舞台にトルコ・エジプト・ロシアが全面戦争を繰り広げる可能性は低いが、突発的な衝突が各国を軍事的に巻き込む可能性はある。GNA勢力と「リビア国民軍」の間で停戦が実現したとしても、戦闘の被害を受けた住民や移民・難民への人道支援、停戦監視と政治プロセスの進展など、課題は山積みである。国際社会の支援が不可欠だが、国連や欧米諸国の関与は限定的であり、各国の軍事介入に翻弄されてリビア情勢は今後も「断片化」が進むと懸念される。(8/13/2020 笹川平和財団)

ベイルートで大爆発 死傷者4000人以上

2020年08月05日 | 世界情勢
2020年8月4日午後6時頃(現地時間)、ベイルートの港で倉庫が爆発した。爆発はキノコ雲と数キロ先まで到達するほどの爆風を伴う大規模なもので、5日朝の保健省発表によると78人が死亡、4000人以上が負傷した。爆発場所の周囲では広範囲にわたって建物が破壊された。レバノン治安当局は、爆発現場にあった倉庫に2014年から硝酸アンモニウム2750トンが保管されており、これが爆発した可能性が高いとの見方を示した。ディヤーブ首相は爆発原因を調査する委員会の設置と48時間以内の原因報告を命じ、爆発の原因を作った人物の責任を追及すると述べた。

爆発に関して多くの報道は、8月7日にレバノン特別法廷がハリーリー元首相暗殺に関与したとされるヒズブッラー構成員の被告4名に判決を言い渡す予定である件を引き合いに出し、ヒズブッラーが爆発に関与した可能性をほのめかした。米国のトランプ大統領も、米軍幹部がベイルート港の爆発は「何らかの爆弾」によって引き起こされた可能性があると指摘したと述べた。他方、ヒズブッラーは事件数時間後に出した声明において、「国民的悲劇に深い哀悼の意を表明する」、「悲痛な災難、前例のない被害には全レバノン人の一致団結を必要とする」と述べると同時に、市民救出作業に従事した医療関係者を称賛し、爆発への関与を否定した。ヒズブッラーを支援するイランも犠牲者への弔辞を表明した。ヒズブッラーを安全保障上の敵とするイスラエルも人道支援を申し出た。(8/05/2020 中東調査会)

ベイルートの街が半分崩壊し、家に住めなくなった人が30万人と言う、正に終末的状況。今までの情報を総括してみると、この爆発は単なる事故ではなく、トランプが言う様に、人為的な可能性が強いのだが、レバノン政府は何故か黙っている。分かっているのは、イスラエルの攻撃ではないこと、経済破綻しているレバノンはイランに出て行って欲しいと思ってること、とは言え国内のシーア派が急増していること、爆破が起こった場所(港の倉庫)はヒズボラが仕切っていたこと、真相を公表しても、騒ぎが大きくなるだけで誰も得はしないこと.. いずれにせよ、中東情勢はますますきな臭くなって来ている。

イラン 7人に1人ウィルスで死亡

2020年08月04日 | 世界情勢
イラン国営テレビは、同国では新型コロナウイルスにより7分に1人が死亡していると報じ、適切なソーシャルディスタンス(社会的距離)が取られていないと警告した。保健省によると、3日に確認された過去24時間の新型コロナによる死者は215人。国営テレビは保健省のラリ報道官の発言として、これにより累計死者数は1万7405人となったとした。3日の感染者数は2598人、累計は31万2035人となった。国営テレビは、マスクを付けず、距離を取らずにテヘランの繁華街を行き交う人々の様子を伝えた。一部専門家は、新型コロナ死者に関する公式発表の正確性を疑問視している。4月には議会の研究所が、死者数が保健省発表の2倍に達している可能性を示唆するリポートを公表。公式統計は病院での死亡例と検査で陽性となった人のみに基づいていると指摘した。英BBCは、匿名筋によるデータでは、死者数が公式発表の3倍に達している可能性があると報じた。保健当局はこの報道を否定、数字の操作はないとしている。(8/04/2020 Reuters)